Surprise Attack.




不意打ちを掛けるのはいつも俺だった。


「参謀、どうかしたん?」
まるで日本人形みたいなおかっぱがばっさりと、短くなっていた。むしろ前髪とか短かすぎるんじゃなか?
「何だ?別に何もないが・・・」
俺と柳以外いない部室ん中に、顔に似合わず低い声が響く。
「・・・や、髪、切ったんじゃのぅ?まあ、そう気を落としなさんな。」
いつものごとく無表情な顔から視線を逸らして肩に手を置いて首を振った。
「・・・?何が言いたい?」
意味がわからない。と言うような柳にだって、と前置きをして

「長かった髪を切るのは、失恋、したからって言うじゃろ?」

「馬鹿なこと言うな。邪魔だっただけだ。それにそんなもの、迷信でしかない。」
笑った俺の手を言った言葉とともに払われる。
「つれないのぅ、参謀殿は。」
払われた手で細い肩を引き寄せてククッ、と喉で笑うとすぐ傍にある小さな唇がゆっくりと開いて大きな溜息を零した。
「・・・今日はやけに絡むな。」
肩を抱く手を払うことなくいうその声はどっからどう聞いても呆れ声。
「そんなことなか。ただ気になってのぅ、」
「・・・何がだ。」
「ん?お前さんが思いを寄せとる人物じゃよ、」
「だから、そんなんじゃないと言っているだろう・・。」
もういいか?俺は帰りたいんだが。と吐き捨てる柳の肩を更に引き寄せ、耳元で呟いた。
「ほんまにいないんか・・・?好いとるヤツ・・・」
その俺の仕草に柳は細い眉をしかめて今度は黙りこくった。
「・・・・・・・・・」
地面を見つめたまま何も言わなくなった柳の顔を覗きこむようにして伺う。
「柳?」


「お前だ、と言ったらどうする」


ぽつりと。
そう吐いた次には冗談だと言って、薄い唇がいたずらに、三日月を描く。
傾いた日に照らされた髪が、さらりと流れた。
「・・・・・不意打ちじゃ、」
あんな、冗談。
嘘だと分かっていても、心の何処か。
「・・・まだまだ、参謀には適わんね。」
離れた掌を握り締め、呟いて不貞腐れれば柳はまた笑って。

ああ、不意打ちをかけるのはいつも俺だった、のに。
かけられた不意打ちに、対処の仕方が見えなくなって。




―心の何処か、動き出した鼓動を止める術を、俺は知らなかった。



YRK--textNO.2