Therefore,




蓮二は人よりも寒がりだ。

「寒い。」
「・・・そうか?」

ぼそり、と吐き出された呟きは隣を歩く俺にしか聞こえない程の声量だった。
俺自身は体温が元より高いのも相まってか、さして寒さは感じない。
むしろ、朝練へ向かう前に、一走りしてきたせいか暑いくらいだ。
蓮二の場合、もともとの平熱からして低いのだから仕方ないのかもしれないが。
(平熱が35.0℃とはいかがなものか)
そして。毎年、11月半ばになると蓮二は耐え切れない、凍死すると言い出す。 それならば手袋もつければいいのに。チラと寒そうにさする手を見遣った。
(ちなみにマフラーは10月の後半から一人、すでにつけていた。 かなり、目立っていた。)

「弦一郎、寒い。」
「ああ、だから何故手袋をしてこんのだ?」

毎年繰り返している台詞を今年もまた言うことになった。
そう、蓮二と共に毎年くりかえしているのだ。

「弦一郎、俺は寒いと言ってるんだぞ、」
「分かっている。」

だったら、と蓮二の少し血の気を失くした、それでも赤い唇がわななく。
―分かっている。

「ほら、」

ちゃんと分かっているぞ。
すいと左手を差し出す。
蓮二はきょとんとした顔で俺の左手を眺めている。

「なんだ、違ったか、」

少々眉を寄せて言えば、すぐさま違う、と飛んでくる。

「どうした?」

いらんのか?
蓮二はぶんぶんと頭を振った。 そしてすぐに左手に感じたひんやりとした体温。遠慮がちに絡む、指。 くすりと笑って、その冷えた白い指を強く絡めとった。 そんな俺の態度に蓮二はどこか気に入らないのか、俯いている。
また微かに笑って握ったままの手を引いて歩き出した。

「蓮二、寒いか?」

振り返らないで聞く。学校まではもう少し掛かる。それからぎゅっと確かめるように握りなおしてやると、ぴくと微動したのが掌越しに伝わった。
それから少しの間をおいて、ぽつりと蓮二の声が聞こえた。


「・・・・・・暖かい。」


冷え切ったはずの蓮二の手はすでに暖かい。
毎年繰り返す、11月、半ばの話。



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