「――傍に、いたい」




ああ。
この目だと思う。
鋭く、心まで抉るように真っ直ぐ、突き刺さる視線に俺は捕らわれたのだと。
どくん、と鼓動が跳ねる。
唇が乾いて、カサついている。
握り締めた拳はじっとりと暑くもないのに汗をかいて、気持ちが悪かった。
乾いた唇をそろりと舐め、噛んだ。
突き刺さる瞳は出会った頃からなに一つ変わっていない。

ああ、この目に、




………トーン


トーン――



不意にボールが跳ねる音が耳の奥で甦る。

鮮やかに、蘇る、ヴィジョン。
跳ねたボールは大きな掌に吸い込まれるようにして、収まり、鋭い視線が俺を見据える。
そして次の瞬間には青い空へと高く、飛ぶ。
振り下ろされる腕、ラケット、微かにあった視線が満足気に笑んでいた。


鮮やかに駆け抜けた黄色いボール





名を呼ばれて辺りをゆっくりと見回すと、そこは確かに教室の一角でしかない。
でも、確かに今、自分は目の前の彼と対峙していて、そしてあの瞬間に負けたのだ。

胸を押し上げる訳も分からない思い。
くすぐったいような、泣き出してしまいたいような、とても複雑な感情が、どうしようもなく胸を震わせている。
す、と視線が合う。
抑えようもない笑みが口元を押し上げた。

ゆっくり、瞑目して、瞼を持ち上げる。
眼差しは、変わらない。



……ああ。
どうしようも、ない。



ただ、この瞳に、負けたのだ。







今もなお、焦がれつづけている。