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【罰ゲーム】

1 名前:名無しさん 投稿日:05/02/05(土) 02:18:46

「前から好きだったの・・・・・・・私と・・・・・付き合って下さい!」
俺は耳を疑った
俺の目の前に立って、俺の顔をじーっと見て、俺に告白しているのは・・・・・・・
クラスのアイドル(アクが強いので苦手な人も多いけど)、桃子ちゃんである
そして、俺がずーっっっっと前から片想いしていた、桃子ちゃんである
夢に違いない・・・・・と思って唇を強めに噛んでみた・・・・・・・痛い・・・・・夢じゃない
「ねえ、私のこと・・・・・・・・キライ?」
桃子ちゃんが不安げな上目遣いで俺の方を見ながら言う
やばい、何か言わないと・・・・・・・・・・
「あの、うーんと、いわゆる、そのー、俺も桃子ちゃんが大好きです!」
桃子ちゃんは見る見るうちに笑顔になり、俺の手を握った
「あ、あの、早速なんだけど、明日、どこか行かない?」
俺は桃子ちゃんに告白される寸前まで、桃子ちゃんとのデートを妄想していた
だから、思わずいきなりデートに誘ってしまった
ああ、桃子ちゃん、突然デートなんて誘ったら変な人だと思っちゃうよな・・・・・何やってんだ俺?
だけど桃子ちゃんは、ちょっと恥ずかしそうに、「うん・・・」と小さな声で答えた
「じゃあ、明日、9時に、公園の時計の所で・・・・・・・・・・」
俺がそこまで言ったところで、背後から声がした
「桃ちゃーん!もういーよー!」
振り向くと、同じクラスの女子、矢島、梅田、村上の3人がニヤニヤしながら立っていた
「ゴメンね〜!これ、罰ゲームだったのー!ウフフフフ」
村上が俺の肩を叩きながら、邪悪な笑みを浮かべて言った
桃子ちゃんの方を見ると、申し訳無さそうな表情で下を向いている
信じられない、いや、信じたくない
さっきの桃子ちゃんの笑顔と、握った手の暖かさは本物だったと思いたい
村上達は桃子ちゃんを連れて、俺に背を向けて帰っていく
「桃子ちゃん、俺、待ってるから!明日、9時に公園で、待ってるから!」
嬉しそうに笑い声を上げる村上たち3人と、悲しそうに下を向いている桃子ちゃんの背中に、俺は声をかけた

翌日、俺は8時30分に公園に行った
あれは罰ゲーム、だから桃子ちゃんは来る訳無い
わかっているんだけど、桃子ちゃんを待たないといけないような気がする
いつまで待っても桃子ちゃんが来なかったら、完全に振られたら、諦めがつく
待たないで、自分に言い聞かせることだけで、自分自信に納得させるのは嫌だった

9時になった
桃子ちゃんは来る気配がない
そりゃそうだよな・・・・・・・・でも、もう少し待ってみよう

12時になった
やはり桃子ちゃんは来ない
雲が出てきた

3時になった
桃子ちゃんは、ひょっとしたら夜の9時だと思ったのかも・・・・・・・・・・・
そんな訳ない、と、わかっているけど、少しでも可能性があるなら、待ちたい
雨が降り出した

6時になった
冷たいと思っていた雨が、気持ち良く感じる
頭がぼーっとしてきて、クラクラする
こりゃカゼをひいちゃったな

7時になったような気がする
夢の中なのか現実なのかわからない
来る訳の無い桃子ちゃんが来た
これは夢だ

俺は布団で寝ているようだ
頭がガンガン痛み、熱っぽくて、目がグルグル回る
記憶の断片がいくつかあるが、夢なのか現実なのかわからない

「何で待っているのよ!」
と叫んだ桃子ちゃんが、傘を投げ捨てて俺の方に駈け寄る
そして俺は桃子ちゃんの肩に捕まり、ふらつきながら家に帰った
あの桃子ちゃんが金を取らずにそんなことをするはずが無い
これは夢だ

「ごめんなさい!私が悪いんです!ごめんなさい!」
桃子ちゃんが泣きながら俺の両親に必死に謝っている
あの桃子ちゃんが俺のために涙を流すことなんてあるはずが無い
これは夢だ

「ね〜え、早く入ってきてよ!」
桃子ちゃんが湯船の中から俺を誘う
どんなに頑張っても肝心の部分が見えない
残念ながら夢だ

「おかえりなさ〜い!子供達はもう寝ちゃったわよ」
エプロン姿の桃子ちゃんが俺を出迎える
これも考えるまでもなく夢だ

目が覚めた
枕元にお粥と置手紙がある
『心配だけど仕事に行きます 学校には欠席の連絡を入れてあります 
 目が覚めたらお粥を食べてパジャマを替えなさい
 あんなカワイイ女の子を泣かしちゃダメだぞ 母より』

〜あんなカワイイ女の子を泣かしちゃダメだぞ〜
お粥を食べながら考えた
夢だと思っていた記憶の断片・・・・・・あの中に現実があるのだろうか?
パジャマを着替えるときに調べたが・・・・昨日は風呂には入っていないようだ
まだ熱っぽくてだるい
もう少し寝ることにしよう
さっき濡らしてきたタオルを額に乗せた
冷たくて気持ちがいい

目が覚めた
だいぶすっきりしている
夕日が差している
とっくにぬるくなっているはずの額のタオルが冷たい
母さんが仕事を早退してくれたのだろうか?
「目が覚めたんだね〜!もう大丈夫?」
桃子ちゃんが絞ったタオルを手に、部屋に入ってきた
また夢だろうか?
唇を強く噛んでみた・・・・・・・・・・・・痛い・・・・・・夢じゃない・・・・・・
「今朝、お母さんに鍵、借りたの・・・・・だってカゼひいちゃったの私のせいでしょ?」
俺はまだ少し頭がボーっとしていて、何を言ったらいいのかわからない
「ごめんね、絶対怒っているから待ってないと思っていたの」
桃子ちゃんは申し訳なさそうな表情で言った
「でもね、気になって夜になって公園に行ったらいるでしょ?もうビックリしちゃった!」
桃子ちゃんは嬉しそうに言ってから、俺の額に自分の額をくっつけた
桃子ちゃんの額は冷たくて、それでもじわっと暖かくて、気持ちいい
「だいぶ良くなったようだね〜!」
笑顔で桃子ちゃんが言った
「実は、あの罰ゲームのことなんだけど・・・・・・・・・・」

桃子ちゃんはちょっと恥ずかしそうに言った
「あれはね、誰に告白するか、は自由だったの・・・・・それでキミを選んだんだ・・・・・・」
桃子ちゃんは頬を赤く染めて、下を向いて黙り込んでしまった
うーん、今度こそ俺の方から何か言わなければ・・・・・・・どうしよう・・・・
「ねえ、桃子ちゃん、あの・・・・・・・・」
桃子ちゃんはちょっと嬉しそうに、でも恥ずかしそうに俺の方を見て、言葉の続きを待っている
「俺、腹減った」
桃子ちゃんはしばらくあっけにとられて硬直していたが、やがて笑い出した
「ぷっ、ふふふふふ、何よそれ!?・・・・・・何か作ってあげようか?」
「じゃあ、ホットケーキ、甘い、あまーいホットケーキ」
桃子ちゃんは台所の方へ走っていったが、戻ってくると
「材料は揃っているから、作ってあげるよ、桃子特製、あまいあまーいホットケーキ!」
と、満開の笑顔で言い残し、再び台所へと消えていった
ホットケーキが出来あがるのを待ってる間はとっても楽しかった
ものすごくワクワクした
だけど、何か大事なことを言い忘れているような、ちょっとした不安もあった

「はい、出来たよ〜!召し上がれ!」
エプロン姿の桃子ちゃんがホットケーキを皿にのせて戻ってきた
キツネ色でいい匂いを放つ、大きさの整った、きれいな円形のホットケーキ
桃子ちゃんは料理が上手いのだろう
「いただきます」
ナイフで切り分けて、一切れにたっぷりハチミツを塗り、かじりついた
・・・・・・・・・・・ものすごくマズイ
「どう? 口に合わなかった?」
桃子ちゃんが不安げに聞いてくる
誤魔化そうと思ったけど、もう表情でバレているだろう

桃子ちゃんはフォークに刺さっている、俺の食いかけのホットケーキに食らいついた
後から考えると、あれが最初の間接キスだった
「うううううううううううっ、マズイ・・・・・・塩っ辛い・・・・・・なんでだろう?」
言い忘れていた何かを思い出した
「ごめん桃子ちゃん、うちの母さん、砂糖と塩の入れ物、ラベルを逆にしちゃっているんだ・・・」

塩っ辛いホットケーキは、結局、2人でソースと鰹節のトッピングで平らげた
それでも、蜂蜜よりはマシかな?って感じで、決して美味しいものではなかった
食べ終わってから、後片付け中に、桃子ちゃんは
「ごめんね、次からはちゃんと作るからね」と言った
「次から・・・・・って・・・・どういう・・・・意味?」
俺の問いかけに、桃子ちゃんは顔を真っ赤にして
「もう!あんな恥ずかしい告白を2度もやらせるな!バカバカバカ!罰金取るよ!」
と言いながら、俺の胸をポコポコポコポコ叩いた

母さんから「もうすぐ帰る」の電話が入ったので、桃子ちゃんも家に帰ることになった
「じゃあ、最後に熱を計るね」
桃子ちゃんはそう言って俺の前髪をかき上げ、自分の額を近づけてきた
だが、俺が額に感じた感触は、硬い額ではなく、柔らかい唇のものだった

 

おしまい