■掲示板に戻る■


【おつかい】

1 名前:名無しさん 投稿日:05/01/26(水) 23:43:08

どうして私が迷っているのか
私にも分からない
ただ、試験休みに入った暇をどこか知らない土地で
紛らわそうとしただけなのに

JRの聞いたことも無い山奥の駅で私は下車した
冬山の寒さはホームに降り立った私を即座に襲う
暖房の効いた車内で脱いでいたコートを着ていたら
無人駅なので1両編成のディーゼル車から車掌が切符を取りに来た
車掌は私の顔を見て何か哀れむような顔をした
気のせいだろうと私は改札に向かった
屋根があるだけの改札を出て私は後悔した
駅前というにはあまりにも荒涼としていた
プレハブの売店はシャッターを閉じて人を拒んでいる
車1台通れるぐらいの道が目の前の山に沿って伸びていた
人の気配を全く感じない空間に私は怖くなって
駅の時刻表を見に戻った
時刻は17時である辺りは闇に包まれだしていた
次の列車は明日の7時まで無い
受け入れがたい現実と折り合いをつけるまで
5分ほど立ち尽くす必要があった
仕方ない、とにかく今日の宿が必要である
私は駅前の案内板を見た
ここから1キロほど山道を登ったところに旅館が1軒あるだけだった
冬山で無人駅で野宿は自殺行為である
私は旅館を目指すことにした
そして道に迷ったのである

辺りはもう痛いほどの黒が支配していた
月はその存在を現そうとはしてくれなかった
もう限界だ、そう思ったとき
その少女が現れた
「何してるの」
闇に刃向かう様に白く透き通った肌をしていた
逆に黒目が何処までも深く吸い込まれそうだ
私は人に会えた嬉しさよりもこの状況に不釣合いな少女の登場に総毛だった
「君こそどうしたの。お家は。こんな夜にどうしたの」
震えを押さえながら尋ねた
「お使いの帰り。家は直ぐ傍なの」
微笑む少女。その笑顔に少し緊張が取れ
近くならそんなにおかしいことも無いかと納得し
「そうなんだ。お兄さん実は道に迷ってしまってね
よかったら一緒にお家まで付いてっていいかい?」
私は近くに家があると聞き、心細かったのでこの少女の家に泊めてもらおうと考えた
「うん、いいよ」
屈託の無い返事だ
「君、名前は?」
「梨沙子」
歩きながら答えた
「梨沙子ちゃんか。かわいい名前だね。この辺てあまり人住んでないの?」
「わかんない」
梨沙子ちゃんは振り返らず家を目指して歩く

脇道?から人が出てきた
これも少女のようだ
「梨沙子ちゃん、お使い?」
大人びた感じの印象に残る美少女だった
「うん、雅ちゃん。でも〜、いいのなくて」
この美少女は雅というのか。でも、二人ともこんな暗闇なのによく迷わず歩けるな
「まあ、いいんじゃない。手ぶらで帰るんじゃないんだから」
雅という少女は私を見ながら梨沙子ちゃんに言った
「そうだけど」
梨沙子ちゃんも私をチラッと見た
「じゃあ、また明日ね」
雅ちゃんはそう言ってまた道無き道に消えていった
私は嫌な感じがしてきた
梨沙子ちゃんは今手ぶらなのだ
脇を冷たい汗が走る
まさかそんな?この21世紀の世の中で?
漫画じみた考えを私は払拭しようと梨沙子ちゃんに話しかけようとした
その時、ふいに耳元で笑い声が聞こえたような気がした
ふふふ

その声は直ぐ耳元で聞こえている
後ろに何か気配を感じる
梨沙子ちゃんを見るとわき目も振らずに真っ直ぐ歩いている
必死で付いていくが追いつけそうに無いぐらい早く歩いている
足元に何かが絡み付いてるように進めない
ふふふ
笑い声は両方から聞こえている
私は梨沙子ちゃんに付いていっていいものか不安になってきた
お使い、いいもの、あの時確かに二人とも私を見ていた
嫌だ、そんな、こんなところで訳も分からず殺されたくない
殺される?死?
ふふふ
止むことの無い笑い声に私は限界が近づいていた
私はもう我慢できなくなり後ろを振り返ってしまった

「梨沙子ー、やっぱりよくなかったねあの人」
雅が話しかける
「うん、我慢し切れなかったみたい。あと少しだったのに」
梨沙子は冥界の入り口であるこの山に迷い込んだ人を
救い出すお使いをしていたのだ
ただ、それを本人に悟られてはいけない
黙って導くしか出来ないのであった


終わり