【再会】
私がこの小学校を訪れたのは何年ぶりだろうか
出張で故郷の近くまで来たのだが
出張先の都合が悪くなり次回ということになり
余った時間で行ける思い出の場所だったと言う訳だ
もう、夕暮れ時で薄暗くなっていた
校門の脇に石碑のようなものが建っていた
よく読めないが慰霊碑のようだった
いつの間に建ったのか分からないが誰か亡くなったのだろうか
違和感を感じたが、それより気になっていることがあったので
校庭に入ろうと辺りを伺うとまだ午後5時なのに生徒はおろか先生の姿もなかった
何かと世知辛い昨今の現状で、中に入るのを躊躇いましたが
あまりに誰もいないのと、確かめないと気がすまなくなったので校庭に足を踏み入れる事にした
私が小学5年生の時、初恋の人がいた
彼女の名は熊井友理奈、手足が細長く、華奢な印象があった
整った顔立ちで意志の強さを秘めた瞳をしていた
当然、まだ初心な田舎の小学生だった私が告白できるはずも無く
毎日、いじめて泣かせていた
子供っぽい愛情表現だったと思う
そんな日常を一つの事件が断ち切った
熊井さんが家の都合で都会の学校に転校するらしいのだ
私は、転校という出来事が好きな人との別れを意味すると知った
受け入れたくない現実は日々、無情にも経っていく
しかし、当時の私に何が出来たというのか
私に出来たのは転校するからもう苛めないという自分勝手な決め事だけで
その決め事を他のいじめっ子仲間にも強制したので、ひどくからかわれた
転校まであと3日となり、クラスでお別れ会を開いたのだが
私は不自然なほど接触を避け、強がっていたのを覚えてる
そして、彼女は転校して行った
私は、彼女の家まで行ったがもう其処には主の居ない空間でしかなかった
私はそこでその当時流行っていた女の子向けのTV番組のキャラクターのペンダントを拾った
唯一の思い出の品だった
私はそれをビニールで何重にも包んで、体育館裏に埋めた
その年の暮れ、両親が急逝し都会の親戚の家で住む事になり
私の実家も取り壊したので
ここにはもう来る事も無いだろうと思っていた
もう、熊井さんのことは遠い思い出になりかけていた
この出張が無ければ、おそらく永遠に
不思議と誰にも会わずに体育館裏に着いた
私はまさか無いだろうと思ったが、記憶をたどり掘ってみた
土がとても固かったので、近くの用具室にあるスコップを無断で借り掘った
土の色が変わる辺りで硬いものがスコップにあたって音を立てた
汚れて廻りのビニールもボロボロになっているが確かにあのペンダントが出てきた
郷愁に駆られ弄くってると後ろ蓋が開いた
そこには手紙が入っていた
それは私宛の熊井さんからの手紙だった
『高橋君へ
高橋君が、このペンダントを見つけてくれると信じて書きます
いつも私のこといじめてた高橋君がとっても嫌いでした
でも、転校が決まった日から、急にいじめなくなりましたよね
それどころか、一緒にいじめてた子に注意してくれたりもしました
その日から急に高橋君のことが気になりだしました
お別れ会の時、話も出来ず、そのまま引っ越すことになり少し心残りなので
来年の冬、高橋君に会いにきます。その時にお話一杯しようね
友理奈』
私は、泣いてた
自分勝手にいじめて、自分勝手にいじめなくなった私に会いたいと書いてくれている
もちろん、子供心の幼稚な愛情になる前の感情とは分かっていたが
それでも嬉しかった
熊井さんは私を許してくれている、しかも、会おうとまで書いてくれている
もう、あれから20年が経っている
今はどこかで幸せに暮らしているだろう
なにか胸の仕えが取れた気がした
帰ろうと学校を出ようとした時
校門のところで
熊井さんがあの時のまま立っていた
とても懐かしい笑顔で私を手招きした
いつのまにか私もあの時の姿になってた
もう迷うことはない
熊井さんと一緒に居よう
学校から出ることは出来ないが
私は今、たいへん幸せだ
終わり