■掲示板に戻る■


【特命係】

1 名前:名無しさん [] 投稿日:05/01/17(月) 21:51:16

「はいみんなー、席についてくださーい」
美人だけど怖い藤本先生が教室に入ってきた
挨拶を済ませた後、藤本先生が教室の入り口の方に目をやった
「今日からこのクラスに教育実習の先生が来ます。保田先生、入って」
一見美人な、ようく見るとガッカリな、女の人が入ってきた
「圭ちゃんでーす!今日から2週間、みなさんと一緒にいろいろ勉強することになりましたー!よろしくぅっ!」
保田先生の顔を見た瞬間、矢口さんはガクガク震え出した
そして10年間飲めなかった牛乳を一気に飲み干すと、
「オイラ何も知らない、オイラ何も言わない、オイラとは関係無いから・・・・・・」
そう呟きながら教室から走って逃げてしまったが誰も気にしていなかった
その後,女子を中心に、年齢はいくつか、とか、彼氏はいるのか、など、一通りの質問が出てきたが、
「はい、保田先生への質問は休み時間にしてください、1時間目を始めますよ!」
と、美人だが怖い藤本先生がその場を収めてしまった
「えーっと、1時間目は国語だね、あ、特命係の菅谷さん、1時間目が終わったら保健室の中澤先生の所に顔を出してね」
「はいはーい、りーちゃんわかったもーん」
特命係というのは、重要な仕事を責任持って、迅速確実にこなす何でも屋のような係である
だが、実態は、頭数だけが必要なときに、その場にいるだけ、という係だ
頭がよいとは言えない菅谷でも、これなら・・・・という、クラスの窓際族のような係だ

給食の時間
「みんな〜、今日のメニューはうどんだよ〜!」
給食当番を手伝っている、保田先生がクラスの全員分のウドンの入った容器を持って教室に入ってきた
「うわーおーどんだ!おーどんだ!」
徳永がはしゃぐ
こいつは何故かウドンのことを「おーどん」と言う
藤本先生も何度も注意したが、徳永は「おーどんのことをオウドンと言うみんながおかしい」と譲らない

例の如く、須藤が真っ先に食器を持って当番の前に現れる
「あら、あなたは体が大きいから大盛り?」
保田先生が質問する
「ううん、小盛り、それでね、早く食べて一番最初におかわりするの!」
「あら、そうなの?面白い子ね」
保田先生が須藤の食器にウドンを盛ろうとしたその時、菅谷がフラフラと食器を持たずに現れた
こいつは何故かいつも真っ先に給食の匂いを嗅ぎに来る
「わー美味しそうなおーどんだー!ああっ!」
その時、菅谷がよろけてしまい、ウドンの容器はひっくり返ってしまい、床一面にウドンがぶちまけられてしまった
「ああっ、ごめんなさいぷーっ!う、う、、うえーん!」
菅谷は謝ると同時に泣き出してしまった
藤本先生は立ちあがると菅谷の頭を撫でながら
「あらあら、菅谷さん、しょうがないわねえ、みんなー、ご飯はおーどんを掃除してからよー」
皆はブツブツ言いながらも掃除を始めた
誰一人菅谷を責める者はいない
まあ、菅谷じゃしょうがないよな、週に1回はおもらしするような奴だし、という諦めムードだ

掃除をしている最中、俺はこのままウドンを捨ててしまうのはもったいないと思った
床に落ちている短めの麺を1本手に取り、金魚の水槽に入れてみた
金魚は皆ウドンに寄ってきて、すごい勢いでウドンを突っつき始める
さては理化係の石村、エサやりをサボっていたな
その直後の光景に目を疑った
なんと金魚が次々に腹を上にして浮かび上がってくる
な、なんだ!?まさか毒が?
皆に伝えようと振り向くと、恐ろしい顔で俺を睨んでいる人物が2人
菅谷と保田先生だ
菅谷は音も無く水槽に近寄ると、信じられない手際のよさで死んだ金魚とウドンを水槽から取り出した
俺以外誰も菅谷の行為には気付いていない
保田先生を探したが教室にはいない
菅谷は保田先生がいなくなった瞬間を見計らったのだろうか?
「今あった事は忘れるのよ、いいね?」
普段のアフォの菅谷からは想像できないような毅然とした態度で俺の耳元で囁いた
俺は、背筋に冷たい震えを感じながら頷いた

放課後
俺は給食の時間の事件が気になって、一旦下校するフリをしてからまた教室に戻った
菅谷には何か秘密がある
保田先生も怪しい
その何かを暴くため、俺は一人で教室を調べることにした
と言っても、教室のどこで、何を探せばいいのか、何を見つけようとしているのか、それがわからなかった
とりあえず、あのウドンだ、と思い、ゴミ箱を見たが、もう中身は空になっていた
水槽を見たが、何故か金魚が泳いでいる
誰かが水を入れ換え、新しい金魚を入れたのだろう
これであのウドンの手掛かりは無くなったのか?いや、雑巾だ!
掃除用具のロッカーを開いた瞬間、教室に誰かが向かってくる足音がした
俺は反射的にロッカーの中に隠れた

やって来たのは保田先生だった
「早くアレを見つけてイチー総統閣下に届けなくては・・・・・・・」
そう言いながら教室中をガサゴソと何か探し始めた
「アレさえ手に入れれば・・・・・・私のプチモニーでの出世も・・・・・・」
保田先生は壁や床を叩いて音を聞き比べたりしながら、だんだんとこっちに近づいてくる
さっきの菅谷の時とは違う、もっと生死に直結するような恐怖を感じた
見つかったら殺されるだろう、と思った
菅谷の忠告を聞かなかったことを後悔した
背中を流れる冷たい汗が床に落ちた
聞こえるはずの無い、汗がチリトリを叩く音が聞こえたような気がした
「そこにいるのは誰だ!」

やばい!みつかってしまった!
しかし、保田先生は俺に背を向け、教室の入り口の方を見ている
入り口の扉が開いて、誰かが入ってきた
金髪に近い茶色の髪
背が高く、スタイルのいい細身
透き通るような白い肌に、黒いサングラスが映える
「誰だっていいじゃない、やっぱりアンタ、プチモニーの下っ端だったのね」
「確かに誰でもいいわね、プチモニーの邪魔をするならどうせ死んでもらうことになるんだから!」
保田先生は右ストレートを放つ
サングラスの美少女はほんのわずか、体を捻っただけで攻撃をかわす
2発、3発、4発と次々に繰り出される保田先生のシャープなパンチ、キックを、彼女は器用にかわす
「くっ、アンタ、只者じゃないね」
そう言うと保田先生はナイフを取り出した
ナイフの突きをまたかわすと、サングラスの少女はナイフを持った拳を蹴り上げる
ナイフが宙を舞い、天井に刺さる
蹴り上げた足でそのまま保田先生の顔面を蹴る
崩れ落ちる保田先生の鳩尾に膝が入る
床に膝をついた保田先生は、サングラス少女を見上げると
「ぐっ、覚えていろよ!」
と、いかにも悪役という捨て台詞を残して教室から走って逃げた
「もう出てきてもいいよ」
彼女が俺に言った

「おまえ・・・・・・菅谷だろ?」
ロッカーから出た俺は訊ねた
彼女はサングラスを外しながら
「バレちゃったのね・・・・・あのことは忘れなさいって言ったのに」
「これは一体・・・・・・・・どういうことなんだ?」
「キミには隠してもしょうがないだろうから本当のことを言うしかないようね」
菅谷はため息をついた
「この教室にはね、ナチスと旧日本軍が開発した『世界制服をも可能にする悪魔の発明』の設計図が隠されているの」
「は?な、何それ?そんなバカなことが平成の時代にあるのか?」
「疑うのも無理無いけど、保田先生がこのクラス全員を毒殺しようとしたのは事実よ」
「あ、そういえば・・・・」
「プチモニーと言うのはね、世界制服を企む秘密結社で、保田先生はその一員だったの」
「で、我らがりーちゃんはそれを阻止する正義の味方ってこと?」
「正確には私が、じゃなくて特命係が、ってことね。特命係の本当の仕事はコレなの」
その時、校庭の方から機械的な金属音が聞こえてきた
窓から外を見ると、保田先生の車が変形し、大砲のような形になった
「あんたもろとも教室をふっ飛ばしてやる!」

菅谷は校庭を見ると
「チョコラブ砲か・・・あれが着弾するとまずいな・・・・・・」
と独り言を言い、なにやら黒板に書き始めた
計算式のようだが、数字よりアルファベットや見たことがない記号の方が多い
「・・・・で、シーターにこの式のデルタtを代入して両辺を微分すると・・・・・で、風速はゼロ、空気抵抗はこの距離だと無視できて・・・・」
九九もろくに言えないはずの菅谷の、この様子にあっけにとられていた
「よし、出た!ちょっと、ここに来て!」
菅谷は窓から2メートルほどの所に俺を呼びつけると、いきなりブラウスを脱いだ
小さいけれど形のいいバストを覆う白いブラジャー・・・・・・・なんて場合ではない
「いい、これで砲弾を受け止めるよ、そっち持って、絶対放さないでね!」
「う、うん」
「で、私が合図したら打ち返すからね!」
「あ、ああ」
ブラウスの両側を俺と菅谷がしっかりと持つ
「きゃはははは!発射!」
保田先生が大砲を撃った
砲弾は真っ直ぐに、ブラウスの中心目指して飛んでくる
菅谷の計算が正しかったのだ
「う、ぐっ!」
弾をブラウスで受け止めた
強烈な衝撃を必死に堪える
「ぐっ、頑張って!もうちょっと!・・・撃ち返すよ、せーのっ!」
なんとか弾の勢いを殺した俺たちは、逆に弾丸をそのまま撃ち返してやった
弾は保田先生めがけてまっしぐらである
「えっ?ウソ?あーれー!」
弾は保田先生の大砲に命中し、爆発した

「はあ、はあ・・・・・・とりあえず、終わったのかな・・・・・・?」
菅谷は俺の問いかけに、ブラウスを着ながら答えた
「うん、今日のところは、ね・・・・・」
いつものアフォな笑顔ではなく、クールな笑顔を見せてくれた
「おまえ・・・・・アホじゃなかったの?」
「敵を欺くにはナントカって言うでしょ?」
「じゃあ漢字の読み書きも・・・?」
「私、中国語だって読み書きできるのよ」
「そうか・・・・・で、このことを知ってるのは他には?」
「特命係担当の保健室の中澤先生だけよ・・・・・でね、このことは内緒にして欲しいんだけど」
「判ってるよ。どうせこんなこと言っても誰も信じてくれないし」
「あ・り・が・と」
菅谷は俺の耳元で囁くと、そのまま頬に俺のキスをした
「しかし、アホのフリの為とはいえ、オモラシまでするとはね・・・・・」
俺がそう言うと、菅谷は顔を真っ赤にして俯いてしまった
「あ、あれは、その、フリじゃなくて、あっ!」
水が流れる音がして、菅谷の足元に水溜りができる
「あ〜あ、しょうがない奴だな、雑巾とバケツ用意して」
半泣きで後始末をする菅谷を手伝い、ながら俺は
「誰にも言わないよ」
と言い、菅谷の透き通るような真っ白の額にキスをした

あくる日からも、菅谷は学校でアホのフリを続けていた


そして、2学期
俺も特命係になり、菅谷と2人でクラスと世界の平和の為に日夜戦っている