【こんな恋のはなし】
「…オレに?」
「は…早く受け取ってよ…!」
昼休み、オレは屋上で須藤に呼び出しを受けていた。2月14日…今日はバレンタインデーだ。なんとなく予想はしていたが、まさか須藤からチョコを貰うとは…。
「ぎ…義理だから。ただ作り過ぎて余っちゃっただけだからね…」
そう言うと須藤は顔を赤らめて教室へ走り去っていった。
須藤がいなくなったことを確認するとオレは1人ガッツポーズをつくっていた。
「よっしゃあ!!好きなヤツからチョコ貰えるなんて!神様…ありがとう!」
オレは密かに須藤に好意を寄せていた。女なのに男のオレよりも高い身長、いつもは冷静なのに緊張すると顔を赤らめる姿。
そんな須藤のことをオレは大好きだった。
オレは1人意気揚揚と教室へ戻った。すると悪友がオレの右手にあるチョコに気づき毒づいてきた。
「何だよオマエ…須藤と2人していなくなったと思ったら…チョコもらったの?」
「あぁ。多分本命チョコだと思う」
オレはとにかく興奮して調子にのっていた。
「しかし…須藤に本命なんて貰って嬉しいか?」
「あの空気で貰わないわけにはいかないっしょ!仕方なく貰ってやったんだよ」そう…須藤が近くにいたことも忘れるぐらいに…
はっ!と気づいた時には遅かった。後ろを振り向くとそこには目に涙を貯めて震えている須藤がいた。
「ち…違うんだよ須藤!これは…」
「…最低!!!」
そう言い残すと須藤は教室を飛び出していった。
「お…オレは悪くないよな。…はは」
悪友に返す言葉が見つからないままオレはその場に呆然と立ち尽くした。
その日の夜、オレはベットで天井を見つめながら寝転んでいた。
目をつぶると須藤の顔が浮かんでくる。
はぁ…何でよりによって、あんなコト聞かれてたんだよ…
正直、明日学校に行くのが怖い。須藤にどんな顔すりゃいいんだ…。いっそこのまま嫌われたほうが楽なのかも…
そういや…色々ゴタゴタあったからチョコ開けてないな。
オレはカバンから昼休みに須藤から貰ったチョコを取る。丁寧に包まれた包装紙を剥がし、チョコを取りだす。
…チョコはヒドい形をしたハートマークだった。正直言って味も甘すぎて、お世辞にも上出来とは言えない作りだった。
だけど…須藤がオレのために時間をかけてまでチョコを作ってくれた…。それを思うと涙が溢れでてきた。
不思議だな…全然悲しくないのに何で涙が止まらないんだろう…。
数分後には答えは決まっていた。明日須藤に謝ろう。
次の日の昼休み、オレは昨日とは逆に須藤を屋上へ呼び出した。1人先に屋上へと上がり校庭を眺めていると後ろから足音がした。どうやら須藤が来たようだ。
「その…昨日は…」
「…」
…ダメだ。須藤を前にすると頭が真っ白になっちまう…くそ!しっかりしろオレ!!
「昨日は…ゴメン。あれは誤解であって…」
「…言い訳なんかしないでよ」
「言い訳なんかじゃない!!」
「…じゃあ何だって言うの?」
「オレ…オマエが…」
「…」
「…オマエが好きだから」「…!」
「本当はチョコ貰ったときスゲー嬉しかったんだ。だけど友達の前だったら恥ずかしくて…だからついついあんなコト…」
「…っ…ぅ…」
「須藤…?オマエ泣いて…」
「バ…バーカ!アンタの為に泣くわけないでしょ…」「はは…。だよな…」
「う…っ…ぐすん」
…やっぱり泣いてるじゃん
「それじゃあ須藤を泣かした罰として…明日オレとデートしよっか!?」
「それじゃあ罰になってないじゃん…」
「まぁまぁ…1ヵ月ほど早いホワイトデーってことでさ!」
「…お返し…期待してるからね」
須藤はそう言うと、ようやく笑顔を見せてくれた。
…
次の日オレは寝坊してしまった。須藤と待ち合わせの時間まであと10分ちょっと…。
お気に入りの私服に着替えるとオレは須藤のお返し用に買ったキーホルダーをポケットに入れ、すぐさま自転車に飛び乗った。
…オレは焦っていた。自分から誘っておいて遅刻する訳にはいかない。信号機が赤になっていたことも視界に入っていなかった。
その頃、須藤はすでに待ち合わせの場所に到着していた。
「あんニャロー…遅いよ」駄々をこねていると頬に何か冷たいモノが当たった。「…やだ。。雨?」
…
なにやら人集りが出来ている。どうやら男の子が車にひかれたようだ。その男の子の右手にはキーホルダーがギュッと握りしめられていた。
2 名前:〜HERO〜 投稿日:05/04/07(木) 03:05:31
子供の頃のヒーローと言えばウルトラマンや仮面ライダーと言ったところか。
オレ自身ヒーローにスゴく憧れていた。
本当は誰かのピンチを救うヒーローになりたかった。…けど自分は脇役にしか成りえないことも分かっていた。
…いや、脇役ならまだいい。セリフもないエキストラで終わってしまうのが耐えられなくて…
…それでもオレには前に踏み出す勇気はなかった。余計なことをしなければ危害が及ぶことはない。その安心感にいつしか慣れていった。
…
…
その日もやはり舞波はクラスで孤立していた。『舞波は無視』は、もはやクラスの定義に成りつつあった。
石村舞波、彼女は今クラスからイジメを受けている。理由は体育祭のバレーで舞波のレシーブミスによって優勝を逃してしまったから、というバカらしいものから。
舞波も自分が悪いと自己暗示しているばかりに先生に打ち明けることが出来ないでいた。
実はオレと舞波は一時期、仲が良かったときがあった。マイペースな彼女とは話がよく合ってオレ自身スゴく楽しかった。
だけど、その体育祭の日以来、口を交わしていない。クラスのリーダー的存在のヤツから口止めを受けていたからだ。
もちろんオレだって、こんなの絶対おかしい!とは思っている。だけど舞波と話せばオレまでイジメの標的になってしまう。
結局はオレも自分の身が大切だった。そんな自分に腹が立ち情けなく思えてくる。
そんなこんなで今日1日も終わり帰路へついた。はぁ…とタメ息をつきながら公園の曲がり角を曲がる。
そこでバッタリと女の子に立ち会った。
舞波だ…。
「オマエ…なんでこんな所に…」
「偶然君を見かけてさぁ。せっかくだから一緒に帰ろうよ♪」
「あ…あぁ」
オレは舞波と一緒に帰ることになった。
数分経っただろうか…。微妙な沈黙が2人を包む。
「…」
「なに?さっきからソワソワしちゃって…」
「え?い、いや…」
「誰も見てないから心配しないで…」
舞波はそう呟くとオレにニッコリと笑顔を見せる。
全部舞波に見透かされていた…
そう思うと急に恥ずかしくなってきてしまった。
「オマエ…大丈夫かよ?」「なに?クラスのみんなが私を無視してること?」
「…その、なんつーか」
「私のこと心配してくれてるんだ??」
無理に笑顔を見せる舞波がドコか愛しかった。
「…誰にだって1度や2度のミスはあるさ。ただついてなかったらソイツはみんなの前で起こっちまう」
「…」
「おまけに運が悪けりゃそのミスだけで、そいつの未来が決まっちまう…」
「…」
「舞波…オレ…!」
「ダメ!言わないで!!」「舞波…」
「…ふふ♪ありがとね…。なんか君のおかげでちょっとだけ勇気もらえたよ」
「…そっか」
「私…家近いからもう行くね!」
舞波はそう言い残すと走り去っていった。
そのころにはオレの気持ちも何とかしてアイツを助けてやろう!と思えていた。
次の日、意気揚揚とオレは学校へ登校した。教室のドアを開けた瞬間、オレは誰かに突き飛ばされた。その姿はそのまま走っていった。
今の…舞波だよな…?
オレは服をほろうと友達に確認する。
「あぁ…今のは石村だよ。黒板を見て辛くなったんじゃね?」
オレは視線を黒板に移す。そこには舞波への中傷や批判が書かれていた。
友達は続ける。
「オマエ…チェックされてるぞ?昨日クラスの女子がオマエと石村が一緒に帰っているのを見かけたらしい」
オレは黙って耳を傾ける。「まぁオマエもイジメられたくなけりゃ、これ以上首を…」
「誰だよ…」
「あ?」
「誰だよ!?コレ書いたの!!」
オレの怒声が教室に響く。一瞬の静寂…。それを打ち破るかのようにオレの足は舞波の元へ向きだした。
晴れわたった外からは風が容赦なしにふっかかってくる。少し火照った体を冷やすには丁度いい。
舞波は屋上にいた。その後ろ姿から声をかけるのは一度ためらったが勇気を出して話しかけてみた。
「舞波…」
「来ないで!!」
「…」
「はは…。今まで我慢してたモノが全部はじけちゃった…」
無理に陽気な声で舞波は話し返す。
「舞波…教室に戻ろう?」
「ちょっと無理かもしれない…。正直クラスが怖いんだ…」
「大丈夫だ!オレは舞波の味方だからさ!」
「…そんな無理してまで助けてくれなくていいよ」
「…強がんなよ!」
「強がってなんかないよ!!」
「じゃあ何で昨日の帰り道オレに話しかけたんだよ!?」
「…!!」
「…助けてほしかったからだろ?」
「…っ…うぅ……」
「…泣きたいときは思う存分泣いちゃえよ。舞波ちゃん♪」
「ばか…う…っ…ぐすっ…」
舞波は、そのぷっくりとしたほっぺたに大粒の涙を流すとオレの胸に抱きついてきた。
もう迷うことなんてない。何の取り柄もないオレを…誰かが必要としてくれる人がいるんなら…オレは何を「躊躇」する必要があんだよ!?
少しオーバーだけど…そいつのためなら命だって惜しまないヒーローになってやる!!