【小学6年生〜春〜】
春休みも終わり、今日から新学期。
「俺もいよいよ6年生...小学校生活も今年で終わり...か」
学校への登校中、ふとそんな事を考えてると
??「お兄ちゃん、なにボーッとしてるの?」
一緒に登校していた妹の千聖が、横から俺の顔を不思議そうにのぞきこんできた。
「別に...そういえば、千聖も小4かぁ〜..早いなぁ〜」
「はぁ??お兄ちゃんまだ寝てるんじゃないの?そんなの当たり前だよ!!千聖は今日から...」
妹の千聖は元気が取り柄で、よくしゃべる活発な子だ。勉強はいまいちでよく教えてやっているが、
体育系となると上級生にもひけをとらないガッツをもっている。
「だいたいお兄ちゃんは夜遅くまでゲームを....あっ!!??ちゃんだぁ、〜〜」そう言って、急にダッシュで駆け出す千聖。
ふと視線をやると、そこには千聖と同級で大親友でもある菅谷梨沙子ちゃんが、こちらに向かって手を振っていた。
「おはよー!りーちゃん..アハハ」
「おはよー!千聖ちゃん..エヘヘ」
なにやら朝から和気あいあいとしてる2人。
「あっ..千聖のお兄ちゃんおはようございます」
梨沙子ちゃんが丁寧に挨拶をしたきた。梨沙子ちゃんはパッと見、小4とは思えないくらい大人っぽい雰囲気をもった子で、
おそらく同級の男子にとっては、<あこがれの的>=<隣の席になりたい女子ナンバー1>の栄冠は間違いないだろう。
家にもたまに来るんで、一緒に遊んだ事も何度かある。基本はおとなしい子なんだけど、千聖と一緒だと結構はしゃいだりして、何かと大変だったりもする。
「おはよー梨沙子ちゃん..そっかぁ〜梨沙子ちゃんも小4かぁ〜」
「えっ?なんですか〜?」
梨沙子ちゃんは不思議そうに、こちらを見ている。
「あっ..いや、梨沙子ちゃんはかわいいなぁ〜..なんてね..ハハハッ」
..何言ってんだ俺。
「えっ!!..あっあの〜その〜梨沙子..そんな...」
別に深い意味はなかったんだけど、急にそんな事を言ったので、梨沙子ちゃんはあたふたしながら下を向いてしまった。
「もぉ〜お兄ちゃん!!また訳わかんない事言って、りーちゃん行こ」
「う..うん..」
そういって千聖は、梨沙子ちゃんと手を繋いで、先に行ってしまった。
「ごめんね、りぃーちゃん。お兄ちゃん休みぼけがまだ抜けてないみたいなんだよ〜..まったくもぉ〜」
「ううん、でも千聖ちゃんがうらやましいよ。梨沙子1人っ子だから..」
「でも、ウチのお兄ちゃんみたいなのがいたら大変だよ〜」
「そんな事ないよ。千聖ちゃんのお兄ちゃんはよく遊んでくれるし、おもしろくてやさしいし、梨沙子...」
「どしたのりぃーちゃん?また顔が赤くなってるけど..」
「はぇ?..ううん、なんでもな〜い...ウフフ」
「へんなのぉ〜」
遙か前方で、なにやら楽しげに話してる2人を見ながら、俺も学校へ向かった。
学校に着き6年生のフロアに行くと、廊下に人だかりができていた。ウチの学校は一年ごとにクラス替えがある。
各教室前の掲示板に貼ってあるクラス分け表で自分の名前を確認して、各々教室に入っている。
こうゆう、新学期初日の雰囲気は、なんかいい。さすがに6年生ともなると、
同級のやつはたいていが顔なじみなので、どのクラスになっても楽しくやっていける気がする。
「さて、俺は何組かなぁ〜」
少しワクワクしながら、一番近い4組の掲示板から順番に見る事にした。その時
「○○〜!!」
隣の3組の方から、俺を大声で呼びなから、こちらに向かってくる奴がいた。
「よぉ〜○○!、俺達3組だぜ!!また一緒だな!!!..ヤッホーーィ♪」
そう言って、自分で確認するとゆう、ささいな楽しみを粉砕したのは、親友の藤本だった。
「マジか!!5年生で一緒だったから、今回は別々になるだろうと思ってたけど、やったな!!!」
そう言って、俺と藤本はガッチリ握手をした。
「しかも!!」..藤本はさらにテンションを上げて話し出した
「驚くなよ〜..女子にはあの村上と矢島もいるんだぜ!!」
「えっ!?....えっ〜〜!!!」
藤本の口から出た2人の名前に、俺は思わず声を上げてしまった
「びっくりしただろ!!スポーツ少女四天王の内の2人が、俺達と一緒のクラスにいるんだぜ!!これで運動系は、男女ともに俺達のクラスでもらいだな♪」
俺と藤本はいわゆる悪友とゆうやつで、なにかとクラスで起こる問題の元凶になる事も少なくないが、運動系となると抜群の強さとコンビネーションを発揮する。
小5の時も俺達の活躍で、クラスを何度か勝利させたりもした。
そんな俺達に、さらに心強い味方が..。
村上は同級の女子の中でもズバ抜けた運動神経の持ち主で、何をやらしても無難にこなす万能少女だ。
女子はもちろん、男子も彼女の指示には黙って従う奴もいる。
その影響力は絶大で、俺達も彼女の率いるクラスには、何度となく苦汁を味わされた。
藤本いわく、四天王の中でも彼女は、一番敵にしたくないタイプだそうだ。
もちろん俺も同じだ。
矢島は、村上ほどではないが、それでも普通の女子と比べると、あきらかに異彩を放っている。
一番の魅力はなんといっても、小学生ばなれした快速にある。
華麗なフォームから繰り出されるその走りっぷりに、一緒に走ってる奴らはもちろん、見てる人すら圧倒させられる。
もちろん女子の短距離では敵なしだ。
男子でも、おそらく彼女に勝てる奴は数人いるかいないかだろう。
しかも持久力も兼ね備えてて、マラソン大会では確か、何年か連続で1位を取っている。
藤本いわく、彼女の足なら世界を狙えるとか..
これはいいすぎだ。
さらにこの2人..ものすごく美人だ。
おそらく、3組になった男子全員が、神様に感謝してる事だろう。
村上は同級の女子の中でもズバ抜けた運動神経の持ち主で、何をやらしても無難にこなす万能少女だ。
女子はもちろん、男子も彼女の指示には黙って従う奴もいる。
その影響力は絶大で、俺達も彼女の率いるクラスには、何度となく苦汁を味わされた。
藤本いわく、四天王の中でも彼女は、一番敵にしたくないタイプだそうだ。
もちろん俺も同じだ。
矢島は、村上ほどではないが、それでも普通の女子と比べると、あきらかに異彩を放っている。
一番の魅力はなんといっても、小学生ばなれした快速にある。
華麗なフォームから繰り出されるその走りっぷりに、一緒に走ってる奴らはもちろん、見てる人すら圧倒させられる。
もちろん女子の短距離では敵なしだ。
男子でも、おそらく彼女に勝てる奴は数人いるかいないかだろう。
しかも持久力も兼ね備えてて、マラソン大会では確か、何年か連続で1位を取っている。
藤本いわく、彼女の足なら世界を狙えるとか..
これはいいすぎだ。
さらにこの2人..ものすごく美人だ。
おそらく、3組になった男子全員が、神様に感謝してる事だろう。
そんな感じで、まだ教室にも入らない内から、藤本と廊下で盛り上がってると、急に俺の目の前が真っ暗になった。
「だぁ〜れだぁ?」
後ろから両手で俺の目を覆いながら、誰かが耳元で甘くささやいてきた。
「この感じ..確か前に..」
頭の中で記憶を整理し、少し考えた後
「桃子だろ?」
俺はそう答えた。
そうすると、そっと両手が離れ、視界が戻った。
「せぃかーーい!!!」
その声に反応して俺が後ろを振り返ると、同級の嗣永桃子が悪戯っぽい笑みを浮かべて、俺を見つめていた。
「おはよぉ〜○○くん。すぐ桃子ってわかっちゃったみたいだねぇ...なんでぇ?」
「嗣永は声がアレだからな...プッ」
横から藤本が桃子に毒づく。
「なによ藤本!文句あんの!!」
「いえ..ありません」」
藤本即答。
桃子は、さっきまでとはまるっきり違う表情で、藤本に歩み寄り威圧している。
「確か小4の時だったかなぁ〜、廊下で桃子に同じ事されたのを思い出して...それでピンときたんだ..」
俺は窮地に立たされている藤本を救うべく、桃子に話しかけた。
「もっ...桃子感激ぃ〜..覚えててくれたんだぁ〜」
またまた桃子の表情は一変し、瞳をウルウルさせながら、今度はこちらに歩み
「もっ...桃子感激ぃ〜..覚えててくれたんだぁ〜」
またまた桃子の表情は一変し、瞳をウルウルさせながら、今度はこちらに歩み寄ってきた。
「うっ..」
俺は少し後ずさりしながら、さらに話を続けた。
「あの時は確か、同じクラスになれてどうとかって言ってたような....まさか...」
俺はチラッと藤本を見ると、奴は渋い表情で頷いていた。
「そうなんだよぉ〜!桃子も3組なのぉ、また君と一緒のクラスになれて、桃子すんごくハッピーだよぉ〜」
桃子はさらに俺の目の前まで歩み寄ってきた。
「うわぁ〜桃子スマイルきたー!!!このままでは桃子の虜に...こんな時、俺を救ってくれるのはもちろん...」
と、心の中でそう叫びながら藤本の方を見ると、奴はいつの間にか教室の入口のとこに立ってて、
目が合った俺に対し、不適な笑みを浮かべながら、教室内へ消えていった。
「えっ!..エーーー!!!うそぉ〜〜ん..」
俺は心の中で泣いた。
なんとか桃子の呪縛から自力で抜け出し、教室内に入った俺は、自分の席で優々とほかの仲間達と話してる藤本のとこに、真っ先に向かった。
「おい!藤本!!!お前だけ先に逃げやがって..ひどいぜ!」
俺は少し強い口調で、藤本に詰め寄った。
「何言ってんだ。ラブラブだったくせに。俺は気をきかせただけだぜ」
藤本は、俺の言葉に動じるどころか、逆に笑みを浮かべながら、俺に反撃してきた。
「なっ..何言ってんだ。俺は別に..」
思わぬ藤本の反撃に、俺は少し動揺した。
まわりにいる仲間も、俺達の話に興味を示してきて、なにやら雲行きが怪しくなってきたので、
とりあえずこの話にふれるのはやめる事にして、簡単にごまかしてから自分の席に向かった。
荷物を整理し、改めてクラス内を見回すと、やはり男子はほとんどが顔なじみの奴らばかりだ。
そして、気になる女子の方は...ふと、人だかりができてる輪に目をやると、その中心に村上と矢島がいた。
さすがに美女が2人揃うと迫力が違う。まわりの男子も、チラチラとその光景を見ながら、幸せを噛みしめてるようだ。
今風に言えば、俺達は間違いなく勝ち組だろう。
ほかには...あそこで、机に座って先生がくるのを静かに待ってる、ちっこいのは清水だなぁ〜..あいかわらずまじめだ。
また少し視線をずらすと、そんな清水とは対照的で、なにやら桃子と数人の女子が、キャーキャー騒いでいる。一緒になって騒いでる女子...あれは徳永と熊井だな。
また騒がしいのが揃ったもんだ。
そんな事を思いつつ、3人の方に視線をおくっていると、桃子がそれに気づいたらしく、こちらを指差しながら、徳永と熊井に何か言っている。
なんか嫌な感じがしたので、俺はすぐに視線をべつにうつそうとした....その直後、
「○○くぅ〜〜ん!!!」
それほど離れた位置ではないのにもかかわらず、桃子が大声で俺の名前を叫びながら、手を振ってきた。
その横ではなぜか、徳永までもが満面の笑みで、こちらに元気よく手を振っている。
熊井も、手を振りかけてたが、さすがに恥ずかしかったらしく、まわりの視線を気にしているみたいだ。
「何考えてるんだあいつは..」
言うまでもなく、クラス中の視線が俺に集中した訳で、6年生初日の朝礼前だというのに、俺はすでに卒業したい気分だった。
体育館での始業式が終わり教室に戻り、席でくつろいでいると、
「おい○○、行くぞ」
唐突に藤本が俺に話しかけてきた。
「??...行くってどこへ..」
「決まってるだろ!村上のところだよ!!」
「なんで?」
「いいから、今がチャンスなんだ」
やけに焦る藤本が気になり、村上の方を見てみると、めずらしく彼女のまわりに女子がいなく、村上一人が席にいた。
「なるほどねぇ〜...そうゆう事かぁ...分かった。ついていってやるぜ!そのかわり、帰りになんかおごれよ」
それとなく藤本の目的が分かった俺は、そう言いながら椅子から立ち上がった。
「ああ、分かってるって。ほら行くぞ!!!」
そういって、足早に村上の席に向かった藤本の後を、俺も追いかけた。
「よっ..よう、村上」
一足先に、村上の所へ行った藤本は、席の横に立ち少し緊張した口調で、彼女に話しかけていた。
「はい?」
それに気づいた村上は、下から藤本を見上げていた。
「あっ..いや..その」
藤本はテンパってしまったらしく、言葉が見つからないようだ。あの村上の吸い込まれるような瞳に、直視されてるのだから無理もない。
...藤本は今まで、村上と一緒のクラスになった事がない。奴は以前から村上の事が気になってるらしく、
「村上と一緒のクラスになれたら..、一緒に帰れたら..、デートしたら...」
と、いろんな村上妄想をよく俺に話してくれる。
ただ、相手はあの村上..ライバルは星の数程いる。
いや、それよりもなにも、村上とゆうハードルがあまりにも強大なため、挑戦もせず辞退する奴が多い。
しかし、村上と一緒のクラスとゆう幸運を手にした男子にとっては、卒業までのこの一年で、そのハードルを見事に越え、
彼女のハートにゴールデンゴールを決めたい...とゆう気持ちに目覚めた奴らもいるはず...その筆頭が藤本だ。
俺はそんな藤本をアシストすべく、村上に話しかけた。
「よぉ〜村上、元気か!一緒のクラスなんて久々だなぁ〜」
そうすると、藤本を見ていた村上は、俺の方に視線を映してきた。
「こんにちは、○○くん。...同じになるのは、...3年生の時以来だね..」
村上は俺を見て少し微笑みながら、落ち着いた口調でこたえてきた。
村上は小学生3年の時に、この学校に転校してきた。
あの頃から村上はかわいかったが、当時一緒のクラスだった俺は、そんな事を意識することもなく、仲良く話したり、遊んだりしてた記憶がある。
4〜5年生はお互い別々のクラスになり、男女とゆう意識が高まっていく時期とゆう事もあって、
顔を合わせてる事はあっても、ほとんど話をする事はなくなったが、6年生になった今、なぜか俺は村上と自然に話す事ができた。
「あれからもう3年経つのかぁ〜..早いよなぁ〜」
「うん、私もこの学校に転校してきたのが、まるで昨日の事のように思えて....でも、この1年で卒業なんだよね..」
そう言って、村上は少し寂しげな表情をした。
そんな村上の表情に、少しさみしさを感じつつ、俺は話を続けた。
「ああ...確かにさみしいけど、考え方を変えれば、まだ一年も残ってるんだ。
お互い、いい思い出をつくっていこうぜ!!......なんてな。....ちょっとカッコつけすぎかな?」
「....ちょっとねぇ..クスッ」
「ハハハッ」
少し悪戯っぽく笑った村上につられ、俺も一緒に笑いだした。
「村上、よろしくな」
「こちらこそ、よろしくね。○○くん」
そしてお互い、改めて挨拶をかわした。
場の雰囲気も良くなったとこで、俺は横で村上に見とれてる藤本に目で合図した。
それに気づいた藤本は満を持して再度、村上に話しかけた。
「村上、あの..え〜と」
やはりまだ表情がかたい。がんばれ藤本..そう思った時、
「藤本くんもよろしくね」
まだ照れてる藤本をよそに、村上の方から先に挨拶をしてきた。
「あっ..えっ..よっ..よろしく」
ふいをつかれた感じの藤本は、少し照れなからも村上に挨拶をした。
「むっ.村上、俺の名前知ってたんだ?」
「もちろん」
藤本の問いに、村上は笑顔で頷いていた。
その後は3人で楽しく会話し、緊張もほぐれた藤本も、いつものノリで村上と自然に話ができるようになっていた。
そんな感じで、村上に話かけてる藤本に気をきかせるため、ちょうどトイレに行きたかった俺は、タイミングを見て、その場から離れた。
休み時間も終わりに近づき、トイレから戻ってきた俺が教室に入ろうとすると、
ドンッ!!!
「キャッ!!」
「うわっ!!」
教室から突然人影が飛び出してきて、俺にぶつかってきた。
「イテテ..なんだなんだ 」
ふと視線を戻すと、教室内からダッシュで飛び出してきた徳永が、俺にぶつかって廊下で尻もちをついて倒れていた。
「いた〜い!もぉ〜誰よバカ!!」
「.....」
「あっ..○○くん、どこ行ってたのよ!大変だよ!!」
俺に気づいた徳永は、なにやら慌てた口調で、尻もちをついたまま話だした。...が、
「...なぁ〜徳永...」
「なに?」
「いや..なんだ..その...今はお前の方が大変だぜ..」
「なんで?」
「だからその....見えてんぞ」
「へぇ??.........キャーーッ!!!」
やっとソレに気づいた徳永は、一気に顔が真っ赤になり、あたふたしながら慌ててスカートを戻し、俺の方を睨みつけた。
「ちょっと!!どこ見てんのよ!!!エッチ!スケベ!!変態!!!」
と、人が行き交う廊下で顔を真っ赤にしながら、俺に向かってすごい罵声を飛ばし始めた。
「なっ..何言ってんだよ!徳永がいきなりぶつかってきたんだろ。それに俺は別に見たくて見たわけじゃ..」
「なによ〜!じゃあ私が悪いってゆうの!!最低!!!」
そんな感じで口論してると、教室の入口のところに、いつの間にか熊井が立っていて、冷たい視線を俺におくりながら、ポツンと呟いた。
「...○○くんて変質者なんだ...友理奈こわい..」
俺は戦意を失い、徳永にあやまった。
「それで...徳永、何が大変なんだ?」
少し凹んだ俺は、ふと先程の徳永の言葉を思いだし、彼女に聞いた。
「大変?なにが??」
「何がって..なにかあったから急いでたんじゃないのか?」
「...そうよ!こんな事してる場合じゃないわ!!大変なのよ!!!」
徳永は少し考えた後、また慌てた口調になった。
「だから何が大変なんだよ?
「藤本くんと舞美ちゃんが大変なの!!!」
慌てている徳永の代わりに、今度は熊井が話し出した。
「藤本と矢島が!?」
「そうなのよ!!だから君を呼びにいこうと思って..さぁ早く早く!!」
そういって、徳永は強引に俺の腕を引っ張って、教室内に入ろうとした。
「なんだよ!まだちゃんと話を..」
「もう!いいから早くいってあげて!!」
そういって、熊井は俺の背中を無理やり突き飛ばし、俺達は教室内になだれ込んだ。
徳永と熊井に急かされて教室に入った俺は、なにやら村上の席の方で、藤本と矢島が言い争ってるのに気づき、そちらへ向かった。
「あんたみたいなのが、愛にちょっかいだそうだなんて...身の程をわきまえなさいよ!!」
「なんだと!!もういっぺん言ってみろよ!!!」
「何度でも言ってあげるわ。愛とあんたじゃ、月とすっぽん、豚に真珠よ...あっ..もちろんすっぽんと豚はあんたね..クスッ..」
「なっなんだと!!!」
矢島の人を見下した叱責に、藤本は怒りをあらわにしている。
矢島は、かわいさはあの村上をも凌ぐくらいの美少女で、運動神経も抜群...だが、その性格に難がある。
お嬢様育ちのせいか、異常にプライドが高く、また男子をかなり毛嫌いしていて、バカにしたり、凹ますような発言を平気で言い放つ。
だから、男子との争いはしばしばだ。
一部の男子の中には、そんな矢島がいいとゆう奴もいて、奴隷みたくなりさがってる輩もいる。
矢島に対しては、女子も気を使ってるやつが多く、外面だけ矢島と仲良く付き合ってて、陰ではひどい事をいってる女子もいる。
矢島もそれを知ってか知らずか、どことなく距離をとっているようだ。
そんな矢島だが、村上とは大親友で、唯一心を開いている存在だ。
プライベートでも一緒に遊んでるみたいだし、あの矢島が、「舞美」と名前で、しかも呼び捨てにされて怒らないのも、村上だけだ。
そんな矢島だけに、大親友である村上にちょっかいを出す男子がいた日には、矢島が勝手に品定めして、追い払っているようだ。
「やめなよ舞美..藤本くんとはただ話してただけだし..」
「何言ってんのよ愛。こうゆうのは最初が肝心なんだから!!へんになつかれでもしたら、あとが大変だよ」
村上の言葉を無視して、さらに追い打ちを駆ける矢島の発言に、藤本は限界がきていた。
「矢島!!!!」
バコッッ...ガタンッ
「なによ...口じゃ勝てないからって今度は暴力なわけ?これだから野蛮人は嫌なのよ..」
椅子を蹴り倒し、矢島に詰め寄る藤本に対して、矢島は臆するどころか、さらに毒舌を吐き続けている。
そんな一触即発な中、俺は大声で叫んだ。
「藤本!!!!!それくらいでやめとけよ!!!」
「....○○」
俺に気づき、こっちに振り返った藤本は、まだ興奮冷めやまぬ表情だったが、
普段出さない俺の表情と声質に、我を取り戻したのか、少しずつ落ち着いた表情に戻っていった。
シーンと静まり返った教室...そんな静寂の中、俺は矢島を睨んだ。
「なっ何よ.○○、大声なんか出して..バカみたい..」
矢島はいつものように、強気で毒舌を放ってきたが、俺はそんな矢島の言葉をスルーして、静かにしゃべりだした。
「矢島...お前にとって村上が大親友なのと一緒で、俺にとって藤本も同じなんだ。だから..
「だっ..だから..何よ?」
「だから..もしまた、今みたいな事を藤本に言って怒らせたら、今度は止めないし....俺も許さない」
俺の真剣な表情に、さすがの矢島も視線をそらし、動揺しているようだ。
「...以上だ...行こうぜ藤本」
「おっ..おう」
そう言うと、俺の発言にあっけにとられていた藤本と一緒に、俺はその場を後にした。
「許さない!!絶対許さないから!!!」
「舞美?」
○○の後ろ姿を見ながら怒りをあらわにしている矢島に、村上が話しかけた。
「○○の奴..みんなの前で私に大恥をかかせて..あいかわらず私をバカにしてるわ!!」
「確か舞美って、○○くんとは4年生の時に一緒だったんだよね?」
「そうよ!!あの頃からあいつは私に反抗的だったけど、あいかわらず生意気だわ」
「....」
「まぁ〜いいわ。あいつもまた、私と同じクラスになったのが運の尽きだし、この一年の内に必ずあいつもほかの男子同様に、私の前にひざまづかせてやるんだから..」
「....クスッ」
○○の事を、必死になって話している矢島を静かに見ながら、なぜか村上は微笑しだした。
「なによ愛!いきなり笑いだして..」
「なんか舞美うれしそうだね」
「えっ!?..そっ..そんなわけないじゃない!なっ..なにいってんのよ。」
村上の唐突な発言に、矢島はなぜか動揺していた。
「全く...○○と一緒になれてうれしい人なんていたら見てみたいわ」
「私は.......正直うれしいかなぁ.....」
「えっ!?」
「ううん、なんでもない。..あっ舞美、先生きたよ。」
そんな村上の意味ありげな発言を気にしつつ、矢島は自分の席に戻った。
初日恒例の大掃除のため、げた箱の担当になった俺が、掃除のため教室から出ようとすると、桃子、徳永、熊井が俺の所にやってきた。
「○○くぅ〜ん、さっきはカッコよかったよぉ〜...桃子なんか胸がキュンとなっちゃった」
「べっ別に..そんなんじゃないよ」
両手を胸の上におき、瞳をウルウルさせながら詰め寄ってきた桃子に、俺は少し動揺しながら答えた。
「あの舞美ちゃんが何も言い返せないんだもん。○○くんてやっぱすごいよ!!」
その横で今度は徳永が、真剣な表情で頷きながら、俺をほめている。
「いやっ..そんな事ないって」
俺は、謙遜しながらも少しだけうれしくなった。
「ほんと、さっきまで千奈美のスカートの中を覗いてた変質者とは思えないよ!」
「いやっ..それほどでもっ....て、ハァ??」
少しだけ気分が良くなっていた俺は、一瞬熊井の言葉に照れながらも、すぐ矛盾に気づき、熊井の方を見返した。
熊井はいつもの冷たい表情ではなく、かわいい笑顔で俺を見ている。
おそらく熊井的にとっては、無意識に出た誉め言葉なんだろう。
しかしこの発言...今はやばい...そう思った矢先..
「ねえ..○○くん、今のどうゆう事?」
桃子は俺を見つめながら微笑んではいるが、いつものスマイルとは明らかに違う。俺は、少し動揺しながら桃子に話しかけた。
「なっ..何がだよ..」
「千奈美ちゃんのスカートの中を覗いたのかって聞いてるの!」
あきらかに口調が変わり、ストレートに話題の核にせまる桃子に危険を感じてきた俺は、とりあえず正直に話す事にした。
「……とゆう訳で、完全な不可抗力だったんだよ、なぁ徳永」
俺は事の真相を桃子に伝え、徳永にも同意をもとめた。
「うん。確かにそうだけど...あのいやらしい視線も不可抗力だったのかなぁ〜?」
「はぁ〜!!?」
徳永は俺に対し悪戯っぽい笑みを浮かべながら、せっかく納まりかけていた話しを、蒸し返してきた。
「なんなんだこいつは..」...徳永にそんな疑問を抱きながら、俺は恐る恐る桃子の方に視線をやると、すでにそこには笑顔すらなく、悪魔にも見て取れるような素の表情で俺を睨みつけている桃子がいた。
こうなると何を言っても無駄だ...そう思った俺は一呼吸し覚悟を決めて.........駆け足で教室から逃げ出した。
「ちょっと待ちなさいよ○○!!!この裏切り者〜!!!!」
……
「千奈美...なんか○○くん、かわいそうだよ..」
「..うん、そうだね..」
「あとで桃ちゃんにちゃんと話そうね..」
「..うん」
桃子から必死に逃げている○○を見ながら、2人はポツンと呟いた。
「痛てて..桃子の奴、おもいっきりひっかきやがって...まったく徳永達も止めるならもっと早くしろよな...ブツブツ」
??「どうしたのその傷..?」
げた箱の掃除をしながら、愚痴をこぼしている俺に、一緒に掃除をしていた清水が話しかけてきた。
「いや、ちょっとな..」
「どうせ桃ちゃんあたりにやられたんじゃないの〜」
清水は悪戯っぽい笑顔で、鋭いとこをついてきた。
「なっ..なんでその事を..」
「やっぱりそうなんだ。だって、○○くんにそんな事できるのって、桃ちゃんくらいだもん..」
「清水は何でもお見通しだな..」
「クスッ」
清水は微笑しながら、バケツの水で雑巾を洗い出した。
清水はまじめで頭もよく、先生達からの信頼も厚い。しかも面倒見もよく、クラスのみんなからもいろいろ頼られる事が多いみたいだ。
同級の中では一番ちっちゃい彼女だが、その器は誰よりも大きく感じる。
「そういえば、さっきは大変だったみたいだね」
「えっ..?」
ゲタ箱を拭きながら、清水が少し心配げな口調で話してきた。
「なんか藤本くんと舞美ちゃんが喧嘩したって聞いたけど...わたし、その時職員室に行ってたから..」
「あ〜その事か、別にたいした事じゃないよ」
「でも、○○くんが止めてくれなかったら大変だったって、女子達が言ってたよ」
清水はこちらを振り返り、表情を曇らせながら俺を見ている。
「たまたま止めたのが俺だっただけだよ。もし清水がいたら、同じ事をしてたと思うぜ」
「そんな事ないよ。..私だってきっと..」
そう言いかけると、清水は少し寂しげな表情になり、下を向いてしまった」
「清水..?」
「ううん..何でもない。さぁ!早く掃除終わらしちゃお!!」
そう言うと清水はまた、テキパキと掃除を始め出した。
「でも、矢島にはまた嫌われただろうなぁ〜」
「...それは..ないと思うよ..」
掃除を続けながら俺が矢島の事を話すと、清水はボソッと呟いた。
「えっ?なに?」
「ううん、なんでもない、それよりげた箱の上を拭いてよ。わたし届かないから」
「あっ..ああ」
清水の言葉が気になりつつも俺は、げた箱の上を拭きだした。
「...いいなぁ〜背が高いって、わたしも早く伸びないかぁ〜」
「えっ?」
ふと俺が振り返ると、清水は頭のてっぺんに手をやり、自分の身長を確認する仕草をしながら、不満げな表情をしていた。
「なんだよ清水、あいかわらず身長の事気にしてるのか?」
「うん..前はそれほど気にしてなかったんけど、学年が上がるごとに、まわりの子はどんどん背が伸びてて、なんかわたしだけ取り残されてるみたいだから..」
清水は少し寂しげな表情をしながら、俺を見上げている。
確かに同級の女子に比べると清水は小さい。しかし俺達はまだ小学生だ。まだまだ成長期はこれから..身長だっていくらでも伸びる...
俺はそう思っているが、当事者の清水にして見れば、頭では分かっていても、そうは割り切れないんだろう。
「大丈夫だって!その内まとめて一気に伸びるって!!」
「そうかなぁ..」
「ああ!!俺が保証するぜ!!
正直、絶対伸びるとゆう確証はなかったが、俺はそう言って落ち込んでいる清水を励ました。
「じゃ.じゃあ、...もしも...もしもだよ、このまま身長が伸びなかった時は、○○くん..わたしをその〜...責任をもって助けてくれる..?」
そう言うと、清水はなぜか少し頬を紅くしながら、俺をじっと見つめていた。
「責任?助ける?...なんかよく分かんないけど、俺にできる事だったらなんでも協力するぜ!!」
「ほんと!!?
「ああ、まかせとけ!!」
「約束だよ!!!..やったぁ...もう、無理して牛乳飲まなくていいかも..ウフフ」
俺の返答を聞くやいなや、清水は急に元気なり、なにやら1人でぶつぶつ言いながら、いつも見せない不適な笑みを浮かべていた。
「おっ..おい..清水、大丈夫か?」
「えっ?、うん大丈夫だよ。あっ!もう掃除時間終わっちゃうね。急がないと..」
そう言って、清水はまたテキパキと掃除を再開した。
「なんか変な約束しちゃったけど、清水も元気になったみたいだし、まぁいっか..」
俺はそう思いながら、掃除を続けた。
「お〜〜い、○○〜」
掃除も終わり教室に戻る途中、向こうから藤本が大声で俺の名前を呼びながら走ってきた。
「ハァハァ...○○大変だ」
「どうしたんだよ藤本、そんなに慌てて..」
「4組に女子の転校生が入ってきたんだけど..」
「転校生?」
「ああ..しかもだ、もぉ〜ありえないくらいかわいくて、すでに学年中の男子の間で大騒ぎになってるんだ」
藤本はよほど興奮してるのか、熱い口調で俺に詰め寄りながら説明してきた。
「へぇ〜そうなんだ」
「なんだよお前、興味ないのか?あれ見たら、もうほかの女子なんて話しにならないぜ」
「興味はあるけど、なんかなぁ〜...それにお前、村上一筋とか言ってなかったか?」
「それはそれ、これはこれだ。お前はまだ彼女を見てないからそんな落ち着いていられるんだ。ほら行くぞ!!」
「ちょっ..」
そう言って藤本は強引に俺の腕を引っ張り、4組の教室に向かった。
「早く早く!!」
そう言って、4組に急ぐ藤本は、それほど乗る気でない俺の背中をグイグイと押してきた。
「そんなに焦るなよ.......ってなんだあれ?」
6年生のフロアに着いた俺は、4組の教室前の廊下に人だかりができているのに気づいた。
「あちゃー、遅かったかぁ〜..こうなりゃあ強行突破しかないな..よし○○、俺に続け!!」
「おっおい!?」
そう言うと藤本は、あきらかに俺達の割り込みを、不服そうにしてる男子の波をかき分けて、4組内がよく見える所まで俺を誘導してくれた。
「無茶するなよ藤本」
「何言ってだ!お前のためにこの特等席を用意してやったんだぞ!!
「別に頼んでないけど..それに、こんなとこで見なくても、4組の教室に入れば..」
「バカいえ、4組の男子がそんな事を許してくれるもんか!!奴らにとって今や教室内は聖域となってるんだ。
部外者が立ち入ろうものなら、即座に排除されるのがオチさ。」
「なんだよそれ?意味わかんないんだけど..」
「おいあそこだ!!あの窓際に座って外を眺めてる子!!」
俺の問いを途中で遮り、藤本は必死になってお目当ての転校生を指で示してきた。
藤本が指さす方に視線をやると、そこに彼女がいた。
少し茶色がかったキレイなロングヘアーに、あきらかに小学生離れしている大人びた顔、そして..おそらくまわりの視線が
一身に自分に注がれているのを知りながらでの、あの落ち着きはらった涼しげな表情...確かに騒がれる事だけある.........が..。
「どうよ!!マジやばいだろ!!」
「えっ..あっ..ああ」
「なんだよお前、興味ないとかいって俺より動揺してるじゃんか!」
藤本の言う通り、俺は彼女を見てから少し動揺していた。ただそれは、ほかの男子が感じているものとはおそらく違う感覚...どこかなつかしさを感じる。
「あの子どっかで見たような..」
「あれだけのルックスだ。TV、CM、雑誌..どっかにでた事あるかもな」
「そうかなぁ..」
「そうに決まってるさ。じゃなきゃ、あんなかわいい子をそこら辺で見れるわけないもん」
「そっ.そうだよなぁ」
どこか気持ちはすっきりしないままだったが、藤本の言う事が正論だろうと、俺はそう自分に言い聞かせた。
「ウォォォ!!!」
「なっなんだ?」
急にざわつくまわりの男子の視線の先を見ると、外を眺めてた彼女がこちらを見ていた。
ここぞとばかりに俺以外の男子は、自分の顔をアピールしよう必死だ。
そんな様子を涼しげな表情で見つめている彼女を、俺は呆然と立ちつくして見つめていると、ふと彼女と視線が合った..気がした。
そうすると、それまで表情をほとんど変えなかった彼女が、少し驚いたような顔になり、なにか考える仕草をした後に、こちらを見ながら微笑んだような気がした。
「.....」
「おい○○見たか?いま彼女、俺の方を見て微笑んだぜ!!ちくしょう、笑顔も極上だぜ」
そう言って、さらに興奮するのは藤本だけでなく、まわりの男子も同じように盛り上がっている。
俺自身も、今の彼女の笑顔は俺にくれたのでは..的気持ちもあったが、まさかそんなはずはないと、自分に言い聞かせていた。
「おい先生がきたぞ!!」
その声にふと我に返り廊下を見ると、各クラスの先生達がこちらにやってくるのが見えた。
「おい○○、教室に戻ろうぜ」
「ああ」
「名残惜しいけど、またすぐ会いにくるからね、なっちゃん」
「なっちゃん??誰だそれ?」
「誰って..あのかわい子ちゃんの事さ。フルネーム聞いたんだけど、なんむずかしい名前で、頭文字の夏しか覚えてないんだ」
「ふ〜ん、なっちゃん....か」
俺はどこか、ふにおちない気持ちを抱えたまま、教室に戻った。
「おい藤本帰ろうぜ」
「悪りぃ、ちょっと1組の小川に用事あるから、少し待っててくれよ」
「ああ、わかった。」
藤本はそう言うと、教室内から走って出ていき、1組の教室の方に消えていった。
俺は、藤本を廊下で待ってようと思い、教室から出る事にした。
「○○..君??」
「えっ?..」
教室内から出ると、ふいに誰かが俺の名前を呼んできたのでそちらを見ると、そこには4組に転校してきた彼女が立っていた。
「やっぱり○○くんなんだ!...また会えたね..わたしの事覚えてる?」
「きみは..」
彼女は俺を当人だと確認すると、先ほど遠方からチラッと見せた笑顔を、今度は間近で俺に向けてきた。どこかその瞳は、潤んでいるようにも見える。
その瞳を見た瞬間、俺の中で忘れていた記憶が少しずつ蘇ってきた。
「なっちゃん..夏..もしかして、夏焼...夏焼雅か??」
「そうだよ!!やっぱり覚えててくれたんだ.....」
「マジかよ!!めちゃくちゃなつかしいなぁ!!」
「うん..わたしがこの学校にいたのは1年生の時だけだったから...だから誰も覚えててくれなくて...」
「5年ぶりだもん無理ないよな....」
「でも、○○くんは覚えててくれた..」
そう言って、彼女はじっと俺を見つめていた。
夏焼雅...彼女がこの学校にいたのは1年生の時だけだ。
無口でおとなしかった彼女は、あまり目立たない存在だったが、よく男子にいじめられて泣かされていたような気がする..。
確か一緒のクラスだった俺も、彼女をよく泣かせてたような..まだ記憶が曖昧だが..。
でも確か、彼女が転校する時には俺の方が。
「..○○くんどうしたの?」
俺がそんな記憶の余韻に浸っていると、彼女が不思議そうに俺の顔をのぞきこんできた。
「いや..ほんとにあの泣き虫だった雅なんだなぁって..」
「..泣き虫...かぁ〜。そういえば、○○くんにもよく泣かされたなぁ〜..」
「えっ!!いや..それは..」
「クスッ、心配しなくていいよ。小さい頃の事だし、全然気にしてないから」
「そうなんだ..よかった」
俺はその言葉に少しホッとした。そんな俺の表情を見ながら、夏焼は小さな声でボソッと呟いた。
「....だって、それ以上にきみはわたしを守ってくれたし..」
「えっ?なに?」
「ううん、なんでもない..うふふ」
そういうと彼女は、とてもやさしい表情をしながら俺を見ていた。
「ところで○○くん、ちょっとお願いがあるんだけど」
「なんだよ、みや...いや..夏焼」
「いいよ。昔みたいに雅って呼んで」
「うん、わかった。それで雅、お願いって?」
「学校内を案内してもらえないかなぁ〜なんて思って」
「あれからこの学校も随分変わったからなぁ〜..いいぜ!俺にまかせとけ!!」
6年間この学校にいる俺にとって、そんな事は朝飯前だったので、俺は喜んで引き受けた。
「ありがとう○○くん!!...あっ、でも....いいの?
「??、いいに決まってるだろ」
「いやっ..そうじゃなくて..」
「うん??」
雅の視線が俺に向いてないのに気づき、ハッと我にかえった俺だったが、すでに手遅れだった。
後ろを見ると、そこには藤本が笑顔で立っていた...いやよく見ると藤本だけでなく、ほかの男子達も俺を包囲するかのようにあちこちから見物...いや、取り囲んでいた。その目はあきらかに殺気立っている。
「○○くん、ちょっとお話があるんだけど、いいかな?」
藤本は雅の手前、紳士的口調で俺に話しはしているが、目は笑っていない。
「夏焼さん、○○くんはこれから僕ら男子と約束があるんで、学校の案内はできないんですよ。あっ..でもご心配なく、かわりの案内役をすぐ用意しますんで。」
藤本は、そう笑顔で雅にいうと、今度は3組の男子に向かってしゃべりだした。
「おい、清水はまだいるか?」
「...ああ、いるぜ」
「よし、彼女に夏焼さんをまかせよう」
しばらくすると清水が教室から出てきた。
「あなたが夏焼さん?」
「えっ..」
「学校内の案内をお願いしたいとか?」
「ええ..そ..そうですけど..」
「わかりました。...それじゃあ行きましょう。まずは職員室からです。」
「あっ...でも..」
「それじゃあ○○くん、ごゆっくりと..」
そういって俺の方をチラッと見た清水の表情も、心なしか少し怒っている感じはしたが、すぐに笑顔にもどり俺の方を心配そうにみてる雅の腕を引っ張って、この危険地帯から離れていった。
「いってらっしゃーい」
笑顔で雅と清水を見送る男子達だったが、彼女達が見えなくなると、藤本を含めまわりの男子達が続々と俺の方に集まってきた。
「さて○○、一体どうゆう事なのかゆっくり聞かせてもらおうか?」
そういって俺は、まだ下校してなかった6年男子達に取り囲まれながら、3組の教室内にて連行された。
「.....」
「やっぱり男子って最低よね。ちょっとかわいい子が転校してきたからって、みんなであんなに大騒ぎしちゃって.....ほんとバカみたい。そう思わない愛?」
「えっ!?..ええ」
そういって、まだ教室内に残っていた矢島は、○○に激しく詰め寄っている男子達の輪を、じっと見つめている村上に話しかけた。
「あ〜あ、○○ったら何も言わず耐えてるわよ。わたしにあれだけの事いっといて、なんてざまなの...なんか見てらんないわ。...帰ろ愛..」
「...うん」
そういって、矢島はどこかさみしそうな顔をして教室から出ていった。
「......ばか」
矢島のあとを追って教室から出ようした村上は、出口の前で立ち止まり、必死に耐えている○○の方を見ながらポツンとそう呟いた。
言葉とは裏腹に、その表情はどこか心配げな感じだった。
村上、矢島が帰ったあとも、俺への激しい言葉責めの拷問は、永遠と続いた。
こうして、俺の小学校生活最後の1年が、初日から慌ただしく始まった。
「あ〜、夏焼さんと村上、俺は一体どっちを..」
「..また言ってるよ」
朝から同じ事を何度も呟いている藤本を見ながら、俺はそう思った。
「おい○○、夏焼さんとはほんとになんでもないんだよな?」
「はぁ〜..ほんと何回同じ事言わすんだよ..」
藤本は、昨日の事をよほど気にしてるのか、昨日から俺にしつこいくらい言い寄ってきていた。
俺は、雅が昔この学校にいたことがあって、少し学校の事を聞かれただけだと弁明したが、やはりまだ疑っているようだ。
「まさか夏焼さんが昔この学校にいたなんて..俺とした事が迂闊だったぜ」
「ああ..俺もびっくりした」
雅が昔この学校にいたという話しが広まると、どことなく思い出した奴や、知らないのに知ったかぶりする奴も出てきた。
どうやら、藤本は全く覚えてなかったみたいだ。
「でも、学校内の事をなんでお前に聞くんだ?しかも4組の彼女がわざわざ..」
「..知らねえよ」
「なんか怪しいんだよなぁ〜」
そう言って藤本が、俺にさらにしつこく追求していると、教室内に1組の小川と2組の高橋がダッシュで入ってきた。
「おい藤本!夏焼さんが購買部にお買い物に行かれたみたいだぞ」
「ほんとか!!小川」
「ああ、4組の田中達もどさくさに紛れて、一緒についていったみたいだぜ」
「こうしちゃいられない!行くぞ小川、高橋」
そう言って、藤本は席を立ちあがった。
「おい、○○も行こうぜ」
「...高橋、○○はいいんだ」
「そうそう、○○は昨日抜けがけしたから..」
藤本と小川は冷ややかな視線を俺に向けながら、高橋にそう言うと、ほかの男子にも声をかけにいった。
「...なんかすごい事になってるな、高橋」
「ああ、2組も大変だよ..俺はそれほど乗り気じゃないんだけど、小川に無理やりな..」
「だろうな。お前は須藤一筋だもんな。どうだ?須藤と一緒のクラスになった感想は?」
「..ああ、うれしいんだけど、なんか緊張しちゃって、まだまともに見てないんだ」
そういって高橋は、少し照れ笑いをしていた。
藤本と一緒で、俺は小川や高橋とも昔から仲がいい。小川は藤本と一緒のタイプで、好奇心旺盛で結構ふざけたりする。
高橋も今はふざけたりはしているが、根はおとなしく、まじめな奴だ。俺達と付き合わなければ、きっと優等生になってたに違いない。
そんな高橋の初恋?の相手..2組の須藤茉麻、彼女は村上、矢島とともに、スポーツ少女四天王の1人だ。
運動神経は普通だが、圧巻なのはその小学生離れした体格とパワーだ。
ドッチボール、バレーボール、バスケットなどなど、その長所を発揮できる競技は、まさに彼女の見せ場だ。
もう1人、須藤と同タイプの四天王、1組の梅田えりかとの、ガールズパワーは、男子にとっても脅威、いや凶器以外のなにものでもない。
高橋は須藤とは逆で、小柄でパワーもないが、運動神経はかなりいいので、お互いの短所を補えるいいカップルになるんじゃないかと、俺は勝手にそう思っている。
「高橋、まだ新学期は始まったばかりだ。あせるなよ」
「ああ、わかってる」
「お〜い、高橋行くぞ〜」
「あ〜、今行く。じゃあな○○」
そう言って高橋は、藤本達の輪に加わり、教室から出ていった。
「高橋..頑張れよ。...それにしても、なに考えてるんだあいつら」
「すごい人気だね、夏焼さんて」
「えっ..」
雅のおっかけと化して、教室から出ていった藤本達を俺が呆然と見ていると、清水が話しかけてきた。
「なんだか、1組から4組までの男子が、みんな夢中になってるみたいだけど、○○くんは行かなくていいの?」
「はぁ?なんで俺が行かなきゃいけないんだよ」
「だって、○○くんて夏焼さんと知り合いなんでしょ?」
「知り合いっていっても、1年の時に一緒のクラスだっただけだよ。それに、俺はああゆう追っかけには興味ないし」
「ふーん、そぉなんだぁ〜..ふーん」
そう言いながらも、清水の表情はまだどこか疑ってる感じだ。
..そういえば昨日、清水は雅と一緒にいたんだよなぁ〜..もしかしてなんか聞いたのかな?
別にやましい事は思いあたらなかったが、俺は表向きは平然としながらも、心の中でそんな事を考えながら、少し動揺していた。
「..夏焼がなんか言ってたのか?」
「ううん、夏焼さんほとんどしゃべらなかったし。案内したのも結局職員室だけで、そのあと用事を思い出したとかいってすぐ帰っちゃった」
「あっ..そうなんだぁ..そっか、そっか」
もしかしたら俺が覚えてないだけで、雅を泣かせてた事以外にも、何かしてたかも?..とゆう、不安も少しはあったので、清水の言葉を聞いた俺は少しホッとした。
これで変な誤解もされずに済む...そう胸をなで下ろしていると、背後になにやら嫌な気配を感じた。
「○○く〜ん..」
「うわっ〜!!...桃子」
ものすごく冷たく、ホラー映画でよく聞く、幽霊のような声に、俺がそーっと振り返ると、そこには見るからに機嫌がよろしくないオーラを放出している、桃子が立っていた。
「ちょっと小耳にはさんだんだけどぉ..」
「なっ..なんだよ?」
「○○くんと4組の転校生の子がイチャイチャしてたってはなし〜...ほんとぉ?」
「うわぁ〜こえーッ」
うすら笑顔を浮かべ話してる桃子に、俺はホラー映画以上の恐怖を覚えた。
これはいわゆる、嵐の前のなんたらとゆうやつで、迂闊な事をいえばたちまち大暴走してしまう..そんな雰囲気だ。
俺は恐る恐る話し出した。
「あっ..あのな桃子、彼女とは少し話しはしたけど、別にイチャイチャはしてないよ」
「ふぅ〜〜ん..ほんとかなぁ〜」
「ほんとだって!なぁ〜清水」
俺は、自分だけではこの窮地から脱っせないと思い、事のなりゆきを知ってる清水に話題をふった。
清水は俺の表情見て、すべてを理解したみたいで、しょうがないなぁとゆう顔をしながら、桃子に話し出した。
「うん。桃ちゃん大丈夫だよ。○○くん彼女には全く興味ないんだって」
「そうそう...えっ?」
「そうなんだぁ!!佐紀ちゃんがそう言うなら大丈夫だね。ごめんね○○くぅ〜ん疑っちゃって、もぉ〜桃子のおバカ(ポカッ)..エヘヘ」
そう言って、先ほどまでとはうってかわり、表情が晴れやかになった桃子は、自分で自分の頭をポカリと叩き、俺を見ながら照れ笑いを浮かべていた。
「あっ..ああ、別にいいよ」
さすがに、人望のある清水の言う事だけに、桃子も信じみたいだ。
でも俺、夏焼に興味がないとまでは言ってないんだけど..まっいっか。
俺はそう思いながらも、とりあえず難を逃れた事にホッとした。
ホッとしたら、なんだかトイレに行きたくなった俺は、席を立った。
「あれぇ?○○くぅん、どこ行くの?」
「トイレだけど..」
「んじゃあ、桃子もついてくぅ〜」
「はぁ??いいよ1人でいくから..」
そう言って俺は桃子から逃げるように、小走りで教室から出ていった。
「もぉ〜、○○くんのいけずぅ〜」
「...いいなぁ〜桃ちゃんは..思った事を素直に言えて..」
桃子を見ながら、清水は小さな声でそう呟いた。
「へぇ?佐紀ちゃんなぁに?」
「ううん、なんでもない..」
「あっ!?そういえば..」
「どしたの佐紀ちゃん」
「ううん、ちょっと夏焼さんの事でね..」
「なになに!?やっぱり○○くんと何かわけありなの?」
そういって桃子は、今度は清水に激しく詰め寄った。
「いっ.いやそうじゃないんだけど、ほとんどしゃべらなかった彼女が、別れ際に真剣な顔で桜の事を聞いてきたの..」
「桜?..旧校舎裏の隅のとこにある、あの小さな桜の木の事?」
「わかんないけど、多分ね..」
「桃子、新校舎に変わってから、見に行ってないなぁ〜..それで?」
「ありますよって教えてあげたら、また黙りこんじゃって」
「ふーん..へんなのぉ」
「..うん」
そういって2人は、しばらく黙りこんだ。
「あーーっ!!!」
「きゃっ!..ちょ..ちょっと..どうしたの桃ちゃんいきなり?」
静寂から一変し、急に大声を張り上げた桃子に、清水はびっくりしながら話しかけた。
「今日は席替えがあるんだよねぇ〜!!」
「うん、そうだよ。今は出席番号順だからね」
「桃子、○○くんと同じ班になりたいなぁ〜..それなら席も隣になれるだろうし、いつも一緒に...いや〜ん」
「もっ..桃ちゃん?どうしたの??」
なにやら不適な笑みを浮かべ、自分の世界に入り込んでる桃子には、そんな清水の声は届かなかった。
「桃ちゃん、わたし席に戻るね..」
「うふ..うふふ」
「.....」
清水はその場をあとにした。
「席替えかぁ〜...私も同じ班になりたいけど、今日の運勢よくなかったからなぁ〜....はぁ〜」
自分の机に戻った清水は、そんな事を呟きながら机にふさぎ込んだ。
「ねぇ??..愛?」
「ん..どうしたの舞美?」
「さっきから嗣永さん大声とか出して、なに騒いでるのかしら?..見てよあれ..なんか1人でニヤつきながらぶつぶつ言ってるわ..あいかわらずおかしな子」
「クスッ..舞美、あれはね、きっと○○くんの事を考えてるんだと思うよ。さっき彼となにか話してたし、桃ちゃんは○○くんの事になると、たまにあーなっちゃうのよ」
そう言って村上は、幸せそうな顔で立ち尽くしている桃子の方を見ながら、優しく微笑んでいた。
「一体、○○のどこがいいのかしら..」
「あら、○○くんて女子の間でも結構人気あるのよ」
「それは知ってるけど、わたしは...嫌いだわ..」
矢島はそう言ってはいるが、その口調はどこか強がってる風に聞こえる。
「はぁ...(私も、桃ちゃんみたいに、もっと積極的にならないとダメなのかなぁ...あとで後悔しないためにも)...」
村上はため息をつくと、桃子の事をじっと見つめたまま、そんな事を考えていた。
「愛?どうしたの??、ため息なんかついて..」
「ううん、なんでもないよ。あっ..そういえば、今日は席替えだね!」
「そういえばそうね。きっと男子達は今頃、私や愛と一緒の班になりたいとか思ってるんじゃないの?」
「まさか〜!?..考え過ぎだよ舞美」
「愛..あなたには分からないかもしれないけど、男子の頭の中って.....なんか、考えただけで鳥肌がたつわ、あー嫌だ嫌だ。
正直私は、愛と一緒になれれば、あとはどうでもいいのよ」
「もう、舞美ったら..クスッ」
「うふふっ」
そういって、村上と矢島はお互いに顔を見合わせて、微笑しだした。
「..でも舞美、同じ班に○○くんがいたら楽しそうだよね!」
「えっ○○!?わっ.私はあんな奴..別にいらないわよ.......でも..」
「でも?」
「でも、愛がそこまで言うんなら、一緒でもいいかなぁ〜..雑用とかになら役に立ちそうだし、いろいろと、こきつかってやるわ...うふふっ」
「あー、そう言いながら舞美、顔が赤くなってるよ〜」
「えっ!..うそ!?」
矢島は、悪戯っぽい笑みを浮かべた村上のそんな言葉に動揺し、両手で自分の顔を隠す仕草をしていた。
「..クスッ、うそだよ〜」
「へぇ?...(ポッ)」
「あっ..ほんとに赤くなっちゃった..クスッ、クスッ」
「コッ..コラァーー、愛〜」
.....そんな感じで、2人が盛り上がってる中、徳永と熊井は桃子のところに向かっていた。
「桃ちゃん?...ねぇ桃ちゃん??」
「うふふ..○○くぅ〜ん」
「..だめだよ千奈美、桃ちゃんもどってこないよ」
そういって友理奈は、○○の席の前で、完全に自分の世界に入りこんでいる桃子に困り果て、徳永に話しかけた。
「はぁ〜、しょうがない、あの手でいくわ。友理奈ちょっと入口のとこに立ってて」
「入口に?なんで??」
「いいからいいから」
「う..うん...」
友理奈は、少し不安げな顔をしつつ、教室の入口の方へ歩いていった。
「ふぅー..」
千奈美は、一息ついてから桃子に近づき、友理奈が立っている入口付近を指差しながら、勢いよくしゃべりだした。
「あーー!!○○くんが廊下で夏焼さんにキスしようとしてる〜!!!」
「うふふ..うふ..ふ.....なっ..なんですってぇー!!!○○の奴、わたしとゆうものがありながら..許さない..絶対許さない!!!おもいっきり噛みついてやるんだから〜」
徳永の言った言葉に反応した桃子は、鬼のようなすごい形相でそんな事を口走りながら、友理奈の立っている入口に向かっていった。
「えっ?..何!?..ひぇぇぇ、こわいよぉ千奈美〜」
「友理奈〜、桃ちゃんをちゃんと止めなさいよ〜。じゃないと○○くん、桃ちゃんに噛み殺されちゃうわよ〜」
「そんなぁ〜..」
おびえる友理奈に対し、千奈美は遠くから他人事のように、平然とそんな事をいっていた。
友理奈は意を決して、突進してくる桃子に向かって叫んだ。
「桃ちゃん!今のは全部うそだよ!!○○くんは桃ちゃんとキスしたいんだってぇ〜!!!...」
そう言うと、友理奈は恐ろしさのあまり目をつむってしまった。
しばしの沈黙のあと、友理奈がそーっと目を開けると、目の前には顔を真っ赤にして、またまた自分の世界に入り込んでいる桃子がいた。
「○○くんが...桃子と...キ..ス?...そっ..そんな..桃子まだ小学生だし、その..心の準備だって...で.でも、○○くんになら桃子のファーストキスあげても...いや〜〜ん、○○くんのえっちぃ〜〜」
そういって、火がでそうなくらい、さらに真っ赤な顔になった桃子は、両手で顔を覆い、自分の席に走っていった。
「.....桃ちゃん」
「..友理奈、あんたかわいい顔して、すごい事言うのね。..あーあ、桃ちゃんまた妄想入っちゃってるわ。しかも、今度はさっきよりも遠く、深い世界に..」
事の成り行きを全て見届け、ゆっくりと友理奈のところにきた千奈美は、席で完全に放心状態なってる桃子を見て、そう呟いた。
「だっ..だってぇ、あーでも言わなきゃ、桃ちゃん止まんなかっただろうし。だいたい、千奈美が悪いんだよ!!」
「まぁまぁ、とりあえず○○くんの身は守れたんだし、いいじゃない..」
「よくないよ!!..ほら、みんな何事だって顔で、こっち見てるし..」
「大丈夫だって!どうせみんな、『嗣永がまた○○の事で暴走してるよ..』ってくらいにしか思ってないから..」
「そうかなぁ〜..でも、桃ちゃんが..」
「もう..友理奈はあいかわらず心配性なんだから。桃ちゃんにはあとで私から言っとくから、大丈夫だよ!...それよりも、今日は席替えだよねぇ」
千奈美は、そんな友理奈をなだめると、そそくさと話題をかえた。
「えっ?..うん、そうだね..あと、学級委員も決めるって、先生言ってたよ!」
「学級委員なんてどうでもいいの!どうせ私達には関係ないし...それよりも、友理奈って誰か一緒の班になりたい男子とかいる?」
「えっ!!?..う..うん、一応いるけど...」
「え〜!だれよ?」
「..あ..あのね、桃ちゃんには悪いんだけど、私もその〜...○○くんと一緒の班になりたいなぁ〜..なんて思ってたりして。..なんか楽しそうだし..エヘッ」
「ふぅ〜〜ん、.....(友理奈も私と同じ事考えてたんだぁ)...」
少し照れくさそうに、○○の話しをしている友理奈を見ながら、千奈美は心の中でそう呟いた。
「どうしたの、千奈美?」
「ううん、別に。..それにしても、友理奈って○○くんの事が好きだったんだねぇ〜」
「えっ!!!..ちっ..違うよ〜」
「あーー顔が赤くなったぁ〜!やっぱりねぇ〜」
「ちっ..違うよ〜!私、○○くんの事なんか..」
「桃ちゃんに、いーてやろぉ〜言ってやろぉ〜...うふふ」
「ちょ..千奈美〜!!」
そういって、悪戯っぽい笑顔を浮かべ、桃子のところに向かって行った千奈美を、友理奈は大慌てで追いかけていった。
(藤本)「なぁ小川..やっぱり夏焼さんて、ありえないかわいさだよなぁ〜..」
(小川)「..ああ、ほんとだよなぁ〜。筆記用具を選ばれてる姿もすっごく絵になるし..俺、こんなに幸せな気分初めてだぜ..ああ、夏焼さん..」
購買部から帰えってきてから、すっかり放心状態の藤本と小川は、廊下でそんな幸せの余韻に浸っていた。
(高橋)「..お..お前等..大丈夫か?」
(小川)「なんだよ高橋?お前はあの夏焼さんを見て、なんにも感じないのか?」
(藤本)「無駄だよ小川。高橋は須藤が好きだから!」
(小川)「あっ.そういえばそうだったな..ほんと、あんな怪力女のどこがいいのやら..」
(藤本)「ほんとだよなぁ〜..あいつ、へたな男子よりも体格いいし..ほんと、女にしとくのがもったいないぜ..」
(小川)「だな!ハハハハ」
(高橋)「お..お前等!!須藤さんをそんな風に....あっ!!!」
須藤の事をふざけながら批判する2人に、反論しようとした高橋だったが、何かに気づき途中で話すのをやめた。
(小川)「ハハ..ほんと夏焼さんと、あの怪力おとこ女を並んで見たら、まさに美女と野獣って感じだよな」
(藤本)「プッ..野獣!!それいい!!まさに、あいつにピッタリだよ!!」
「...あいつって誰よ..」
そんな感じで、藤本と小川が盛り上がってる中、誰かが2人の後ろから声をかけてきた。
(藤本)「はぁ?誰って決まって..うわっ!!」」
(小川)「ゲッ!!!..す..須藤..」
動揺する藤本と小川の視線の先には、噂の須藤が腕を組んで、仁王立ちしていた。
「ねぇ、お二人さん?..誰が怪力おとこ女で野獣なのかな?私、すごく気になるんだけど?」
須藤は、静かな口調でそう言いながらも、2人を見る目はあきらかに殺気だっていた。
(藤本)「えっ..それは..誰だっけ小川?」
(小川)「お..おれにふるなよ!お前が言い出したんだろ藤本」
(藤本)「お前!全部俺のせいにする気か!卑怯だぞ!!」
「どっちでもいいわよ!!!バシッ!!バシッ!!」
(藤本)「痛っ!!!
(小川)「いてぇー!!」
二人の醜い争いに、業を煮やした須藤は、そう言って二人の頭をたたいた。
(藤本)「いてーな須藤!おもいっきりたたくなよ!!」
(小川)「ほんとだぜ!あーいてぇー」
「あらっ?私は軽くやったつもりだけど..」
(藤本)「あれで軽くかよ!!」
(小川)「この怪力女め!!!」
「なんですってぇ!!もう一発くらう!!!」
(藤本)「うわっ!!もういらねぇよ〜」
(小川)「助けてー、殺される〜」
そう叫びながら、藤本と小川は、自分の教室に逃げるように走って行った。
「まったく、あいつらときたら..」
「....(うわー、なりゆきとはいえ、須藤さんと2人きりに...どうしょう..」)
事の成り行きを、黙って見ていた高橋は、須藤の顔を横目で恥ずかしそうに見ながら、そう思っていた。
「ねぇ高橋?」
「は..はい」
「あんたも災難ねぇ」
須藤はそう言うと、少し気の毒そうな顔で、高橋を見ていた。
「えっ!?」
「あんた、1人の時はとってもまじめだし、頭も悪くないみたいなのに...ほんとあんなのと一緒にいたらダメだよ!アホがうつるから..」
「い..いや、あいつらはそんな...(須藤さんが俺の事を気遣ってくれてる..しかも、こんな近くで俺だけをじっと見つめて..も..もうダメだ)」
高橋の緊張感と胸の高鳴りは、すでに限界近くに達しており、顔も紅潮してきていた。
「どうしたの高橋?なんか顔が赤いけど...風邪??」
「い..いや、そ..それじゃあ僕はこれで..」
そう言って高橋は、須藤と目線を合わす事なく、その場から走って、教室に帰っていった。
「..どうしたのかしら、高橋の奴?」
「茉麻!!どうかしたの?」
「あっ..えりか」
そう言って、須藤に話しかけてきたのは、1組の梅田えりかだった。
「小川の奴が、慌てて教室に入ってきたから、どうしたのかなぁと思ったんだけど...もしかして、茉麻の仕業?」
「うん、そうだよ!私の事をバカにしてたから、2人ともこらしめてやったの..フフ」
須藤は、梅田に向かって自慢げにそう話した。
「2人?確か今、高橋がいたよね?..茉麻..あんた、もしかして高橋まで..」
「違うわよ〜、3組の藤本よ!藤本!!。高橋は2人と一緒にいただけ..」
「...小川と藤本が相手だったの?...あの2人、男子の中でも結構、実力者なのに..茉麻、あんたあいかわらずすごいわねぇ〜」
「なに言ってるのよ!えりかだって、よく同じような事してるくせに..クスッ」
「あっ..そういえばそうね..フフフ」
そう言いながら、二人は顔を見合わせ、微笑しだした。
「フフ..それにしても茉麻、私達の学年て、なにをするにしても、女子の方がリードしてるわよねぇ〜」
「そうねぇ〜..勉強は女子が上でもしょうがないけど、男子の見せ場の運動系まで、女子に取られちゃってるもんねぇ〜..はぁ〜、ほんとなさけない..」
梅田の問いに、須藤はあきれながら、そう答えた。
「だけど..そんな男子の中でも私、彼だけには一目置いてるわよ!」
「彼?...もしかして、3組の..」
「そう○○よ!!..茉麻お気に入りのね..クスッ」
梅田はそう言うと、須藤の方を見ながら、悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「ちょ..ちょっと、えりか!!なにいってるのよ〜...私は別に..」
「だって、茉麻よく言ってるじゃない?『私を引っ張っていってくれるような、強い男子はいないのかなぁ〜』って!!」
「う..うん、確かにそうだけど..」
「ほら私、5年の時に○○と一緒のクラスだったでしょ!
「...うん」
「○○って、藤本達と一緒に、よくふざけてたりもしてたけど、ここぞって時には、すごく男らしくて、たのもしいのよ!!...運動系でも、この私をリードしてくれてたし..彼なら、茉麻にぴったりだと思うんけど..」
梅田はそう熱弁しながら腕を組み、関心しながら頷いていた。
「そ..そんな..かってに..」
「茉麻が嫌だったら別にいいのよ〜...あっ!それなら、私が立候補しちゃおうかなぁ〜..」
「えっ!!..そんな..」
梅田のいじわるな発言に、須藤は困ったような顔をして、梅田を見つめていた。
「クスッ..冗談よ、冗談。私は親友として、茉麻の事を応援してるんだから...」
「えりか.....ありがとう..わたし..」
「ほらほら、そんな顔してると、○○は振り返ってくれないぞ!笑顔笑顔!!」
「うん!!!」
そんな梅田の励ましに、須藤は普段あまり見せた事のない、とても女の子らしい、かわいい笑顔で応えた。
「よしよし!!あっ..休み時間終わっちゃう!そろそろ戻らないと..じゃあね茉麻!」
「うん、バイバイ」
そう言うと、2人はそれぞれの教室に戻っていった。
「...ほかにもたくさん、恋のライバルがいると思うけど、頑張りなよ茉麻....私のぶんまで..」
1組の入口前で立ち止まった梅田は、どことなく浮かれた感じで、2組の教室に入っていく須藤をあたたかく見つめながら、そう呟いた。
つづく