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【夏休み〜玉田編〜】

1 名前:名無しさん 投稿日:05/02/09(水) 21:40:06

「なあ、千奈美」
「なーに?」
「あのさぁ…俺、熊井ちゃんに告白しようと思うんだ」
「え…?」
「だからお前も協力してくれるよな?」
「……」
「おい、何処行くんだよ!」


千奈美の気持ちに全然気付かなくて、自分の事しか考えていなかった。
○○から本当の事を聞いた時、僕は今までで一番後悔した。

あれから二日が経った。僕は部屋に閉じこもっている。
もし誰かに会ったらどうすればいいのか分からなくて、外に出るのが怖かった。

もう5時か…今日も何も出来なかった…
このままではいけない。そんな事を思っていた時だった。

「玉田くーん!」
家の外から僕を呼ぶ声が聞こえる。この声は…もしかしたら…
窓から顔を出すと友理奈ちゃんが立っていた。
「ちょっと用事があるの!」
友理奈ちゃんには何か考えがあるんだ。
今行かないと、きっと一生僕は前に進めない…
「…今、そっち行く!」

「こんばんわっ」
こっちを見る友理奈ちゃんはニッコリと笑っている。
その笑顔が申し訳なかった。
「どうしたの…?」
「はい」
友理奈ちゃんは僕に一通の手紙を差し出した。
「これは…?」
「あれー?玉田君って犬飼ってたの?」
うちの犬の前に駆け寄る友理奈ちゃんは僕に背を向けたまま言った。
「今、読んで!」

『玉田君へ

 まず最初に、ごめんなさい。
 私は玉田君の気持ちも知らずに勝手な事をしてしまいました。 
 なぜなら、私はあなたの事をまだ少ししか知らないからです。
 だから今はトモダチとしてお話をしたり、遊んだりしてあなたの事をもっと知りたいです。

 でも私より、100倍あなたの事をたくさん知りたい人がいます。

 徳永千奈美は、あなたが大好きです。
 でも千奈美は恥ずかしがりやだから、上手く気持ちを伝えられない事もあります。
 もしできるならば、あなたがそれを受止めてあげてくれませんか?
 あなたに千奈美の事をもっとたくさん知って欲しいです。

 私は千奈美の親友です。だから分かります。
 千奈美は今もあなたが好きすぎて、きっと困っています。
 あの子を助けてあげられるのはあなただけなんです。

                                       友理奈 』

「読んだ?」
友理奈ちゃんが僕を覗き込んできた。
「これ…」
「あたしが書いたの。恥ずかしかったんだから!」
「あの…ありがとう!」
僕の中でくすぶっていた物が弾けた。
「これがあたしの気持ちだから!」

こんな風に手紙を貰った事なんて初めてで、何回も読み返した。
その内、涙があふれて止まらなくなった。
友理奈ちゃんは黙って僕を見ていててくれた。

「十分泣きましたか?」
「うん…」
「じゃあ、千奈美のところ行きますか?」
「うん…」
「早く千奈美を助けてあげて?ね?」
「俺に出来るのかな…?」
友理奈ちゃんはハンカチで僕の顔を拭いた。
「出来るよ、きっと」

僕は千奈美の家に行き、話をするつもりだ。
千奈美の家までは友理奈ちゃんが案内してくれる。
けどその必要はなかった。

ふと見た公園のブランコには、千奈美と○○の姿があった。
「あいつ等がいる…」僕が指差した。
「あ、ホントだ…」
「どうしよう…?」
「どうしようって決まってるでしょ!よし作戦変更!」
友理奈ちゃんが公園に入っていった。
「ちょっと待ってよ!」僕も後を追う。

千奈美と○○は俯いてこっちに気付いていないようだった。
「千奈美…泣いてる…」友理奈が小さな声で言う。
僕のせいで千奈美が泣いている。僕は決心した。
「玉田君、先に泣いといてよかったね…」
「友理奈ちゃん、○○はよろしく…」
「任せて…あ、あと怒んないでね…」
友理奈ちゃんはウィンクをして、大きく息を吸った。

「ごめんなさい!熊井友理奈は玉田君とは付き合えません!」友理奈ちゃんは大きな声でそう言った。
突然の友理奈ちゃんの行動に僕も千奈美も○○もビックリしていたと思う。
分かってはいるけどやっぱりショックで…僕は顔を上げられなかった。
千奈美と○○の視線を感じる。緊張して声が出ない。

…でも、僕がやらないといけないんだ。
僕は顔を上げた。もう恐れは無い。
「徳永千奈美さん!二人でお話がしたいです!聞いてくれませんか!」

目を真っ赤に充血させた千奈美はじっと僕を見て、大きく頷いてくれた。

「あとはお二人でどーぞ」そう言って友理奈ちゃんは○○を手招きして、公園を出て行った。
僕は○○の座っていたブランコに座り、千奈美を見た。
千奈美もじっと前を向いている。僕も前を見る。
少し、静かな時間が流れた。
沈黙を破ったのは千奈美の方からだった。

「あのさ…ごめんね…」
「なんでお前が謝るんだよ…」
「なんでだろう…」
「…」
「…私、今とっても幸せだよ」
「ほんと?」
「ほんとだよ。こんな風に二人で話せるなんて思ってなかったから…」
「そっか…なら良かった…」
「ま、あんたに友理奈は早すぎたんだね」
「そんな事言うなよ…落ち込んでんだから」
「玉田には、私ぐらいがちょうど良いんだよ」
「…そうなのかもね」


僕達はいつの間にか、いつもの様に話していた。
この時やっと、僕の中での千奈美の大切さが分かった。

気が付くと辺りは真っ暗で、僕達を電灯が照らしていた。
「そろそろ帰ろっか…」千奈美がブランコから飛び降りた。
「そうだな…」

ガサッ
後ろの草むらで何かが動く音が聞こえた。
「きゃっ!なに!?」
よく見るとそこには人の足のようなものが見える。
「おい…なんだよあれ…」
おそろおそる覗いてみると、人が二人寝転がっていた。
よく聞くと、スースーと寝息を立てていた。

「○○に…友理奈じゃない!?」
「ほんとだ…なんでこんな所に?」
「まさか、私達の話聞いてたんじゃ…」
「えぇ!…でも、こいつらどうする?起こす?」
「ちょっと待って!」
僕が二人を起こそうと近づいた時、千奈美が僕を引っ張った。

僕と千奈美の体は、ぴったりとくっついた。
唇も、くっついた。
僕の人生初めてのキスは本当に甘酸っぱかった。

「…はい。起こしていいよ…」
「よ、よし!おーい○○ー!友理奈ちゃーん!」

起き上がった二人はすごく慌てていた。
ごめんなさいと何度も謝ってきた。
僕と千奈美はちょっと目を合わせて、すぐ離した。

すごく恥ずかしかった。
けど、嬉しくて仕方が無かったんだ。

 

2 名前:名無しさん 投稿日:05/03/05(土) 21:55:16

プルルル…

夜10時、突然電話がかかってきた。
「もしもし…玉田です」
「あ、あの…夜分遅くすいません。徳永という者なんですけど、あの圭司君いますか?」
千奈美からだった。
「あ〜。今圭司は友理奈ちゃんとデート行ってますねぇ」
「え?ホントですか…?」
「嘘だよ。俺だよ」
「あ…なによぉ!驚かせないでよ!」
あの日から僕と千奈美は付き合い始めた…訳では全く無い。
夕方、犬の散歩でいつも一緒になるのだけど上手く話せなくなってしまった。
話したい事は一杯あるのに、お互いよそよそしいというか…顔を見るのが恥ずかしい…
そんな時の電話だ。声だけな分、少し話しやすかった。

「ゴメンゴメン。で、何?」
「あ、そうそう。あのさぁ、今度読書記録まとめてやっちゃわない?図書館で」
「え〜?」
「ヤなの?」
「そんな事ないけどさ」
「じゃ、行こ!あと玉田〜」
「なに?」
「宿題教えて?」
「お前そればっかだな…」
「いいじゃん教えてよ天才!」
「別にいいけどね、お前には難しすぎるもんな」
「…。まあいいや、○○も呼んどいたから」
「なんであいつも?」
「ちょっと話しときたい事があるんだ」
「なにを?」
「あんたには関係ありません!」
「あっそう…」
「よし!じゃあ明日の2時ね!おやすみ!」
「ちょっと、まだ早…」

ガチャン

「切れた…」

せっかく千奈美と二人で会えると思ったのに、あいつも来るのか…しかも話しときたい事って一体なんだよ…

翌日、図書館には僕と千奈美と○○が集まった。
「そういえば友理奈ちゃんは呼ばなかったの?」
「電話したんだけど『ごめ〜ん!あたし明日から家族で旅行行っちゃうんだよね〜』だってさ」
「そんなんだ…」
「何よ!気になるの?」
「いえ、別にそんな事無いです!」
「なら良し!」

「なぁ」
○○が割って入ってきた。
「なに?」「なんだよ?」
「暑いから早く中入らない?」
「あっ…それもそうだな」

図書館は時期のせいか少し混んでいた。
空いていたテーブルを見つけ、千奈美がバッグを置きながら言う。
「じゃあ、まずは好きな本持ってきちゃおう」
「おいおい千奈美にしてはやる気じゃんか」
「文句あんの玉田?」
「無いです…」

そんなこんなで読書記録を書き始めた。
○○は「ちょっと本探しに…」とどこかに行ってしまった。
僕と千奈美、二人きりで黙々と本を読む。

2時半を回った。もう30分も経つのに、まだ○○は戻ってこない。
「ちょっと○○遅すぎない?」
「確かに遅いなあ…ちょっと俺探してくる」
「うん」


随分探し回ったのに、一階には何処にもいない。
一階にいないとなると…僕は上の階を見上げた。

二階は静かで難しそうな本とおじさんばかり。
こんな所にいる訳ないと思いつつ、陽射しが差し込む大きな窓に目を向けた。

「あ、いるじゃん…」
○○はソファに座り、誰かと話していた。
すごく楽しそうに話していたから、こっちから声をかけられる雰囲気じゃない。
僕は見つからないように本棚の影からちらっと顔を出した。

あれ、村上さんじゃないか?
○○の奴、僕達に内緒で…
でも村上さんはあいつの憧れだし…まあいっか…
僕は結局話し掛ける事無く席に戻った。

「いなかったの?」
「いたよ」
「え?何処に?」
「二階で村上さんとお楽しみ中で〜す」
「村上さんって…愛ちゃんの事?」
「そうだよ」
「仲良さそう?」
「うん。いいじゃん、好きにさせとけば」
僕は本をまた読み始める。
「そういう訳にはいかないよ…」
「どうして?」
「ちょっと…見てくる」
「おい、千奈美!」

数分後、千奈美が戻ってきた。
「はぁ…」
「どうしたんだよ。さっきからお前変だぞ?」
「あのさぁ…なんで今日○○も誘ったか聞きたい?」
「…いや、もう別に」
「聞いて」
千奈美がぐっと近づいてきて、僕の本を閉じた。

「これから言う事を聞いてもショック受けないでよね」
「うん」
「あ〜…でもやっぱ言わない方がいいのかなぁ…」
「だから!なに?」
「協力するって約束する?」
「協力って何の?」
「もう!なんであんたはいっつもそんな鈍感なの!」
「だからなんなんだよ…」

千奈美は深いため息を吐いて、ボソッと言った。
「友理奈がぁ…○○の事好きなの…だからぁ…付き合わさせてあげたいの…」

駄目だ…これはちょっとショックかも…
「…ほんと?」
「うん…」
「でも○○は今、上で…」
「だから緊急事態なの」
「まさかあいつが村上さん好きなの知らなかった?」
「そんなのは知ってるけど…でも…」

「なんか…俺と千奈美の時みたいだな」
「そうだよ…だからこそ…友理奈には私みたいになって欲しくないの」
「私みたいって…だってお前は別に」
「好きな人に別の人が好きだなんて言われたら凹むよ〜」
「ごめん…」
「しかも!あんたの時は友理奈がその気じゃなかったから良かったよ。
けど今は違う。愛ちゃんも○○の事好きかもしんない…」
「じゃあ、どうすんの?」
「だからまぁ…その事を○○に伝えるつもりだったんだけど、こんな事になるなんて思ってなかったから…」

テーブルに顔をうずめる千奈美に、僕は精一杯格好をつけて言ってやった。

「でも最終的に決めるのは○○だろ?」
「そりゃそうだけど…今のままじゃ…」
「とりあえず、伝えるだけ伝えて後はあいつに任せた方がいいよ。
それが友理奈ちゃんのためでも、あいつのためでもあるんじゃない?」
「そうなのかな…」
「そうだよ」
「…うん。そうだよね」

これで良かったんだろうか。
もう友理奈ちゃんはきっぱりあきらめたつもりだったけど、正直○○にはくっ付いて欲しくなかった。

「決めた!」

千奈美は本を1ページ破った。

「おいおい、何してんの?」
「○○へのメッセージ書くの!口で伝えられる雰囲気じゃないしね」
「…ノート使えばいいのに」
「あんな薄っぺらい紙にこんな大切な事書きたくないの!」
「あっそう…」

『私のようになって欲しくないから 特別に教えてあげる


友理奈は○○が好きだよ』


「どうかな?これを今日言うつもりだったんだけど」
「うん。いいと思う。あれ…?」
千奈美は余白のページを選んだつもりだったのだろうけど、それの裏には何か小さく書かれていた。


『君が誰かを好きだと思う時、なぜ好きなのか、自分で理解できる?
なぜその人がいいかしら その人じゃないとダメかしら』


僕達はその言葉をじっと見つめた。
意味が分かるのに少し時間が掛かった。

「お前が…書いたわけじゃないよな?」
「うん…これ、元々あったんでしょ」
「なんかすげー偶然…」
「だってこの本、恋愛小説だし…」
「消す必要ないかな?」
「かもね」
そう言って手紙を、○○のノートに挟んだ。

気が付くと、もう時計は4時を指そうとしている。

「帰ろっか…」
「なんかぜんぜん宿題進まなかったな…」
「いいよ。明日やろ?」
「うん…」
「今度は、二人でね!」
「え?」
「それがお望みだったんでしょ〜?」
「ま…まあね」
「ほら!○○が戻ってくる前に早く!」


図書館の外から、二人が見えた。

「なんか、どうなっちゃうんだろ…」
「大丈夫だよ」
「そう…そうだよね…大丈夫…」
「うん」
「よーし!じゃああの公園に行こう!」
「…」

突然走り出した千奈美を僕は黙って追った。

大丈夫…何が大丈夫なんだろう…?どうなれば大丈夫なんだろう?
胸の突っかかりが取れないまま、千奈美を追い抜いた。

翌日、僕と千奈美は図書館に向かう商店街を歩いていた。

「お前ほんとさ〜寝坊とかありえないよ?」
「ごめんねぇ、起きたのが2時なのぉ」
「俺が家にいってやんなかったらずっと寝てたでしょ?」
「あ〜まだ眠い…」
映画館が見えてきた。一緒に映画でも見たいな…ってあれは…

「…おい」
「なに〜?」
「映画館見ろ」
「ん〜?特に今は見たいのはないかなぁ…」
「違う。看板じゃなくてその下…○○と…村上さん…」
「あ…」

○○と村上さんが映画館の前で手をつないでいる。
今、離した。

「こっち来るぞ。隠れろ!」
村上さんが小走りでこっちに向かってきた。
あわてて近くの電柱に隠れる。
通り過ぎていく村上さんの顔は嬉しそうな笑みを浮かべていた。

「まずくない?」
「まずい」
「こうなったら…最後の手段かな」
「なにそれ?」
「まあ、詳しい事は図書館で離すから」

○○の方に目をやると、にやけた顔でまだ手を振っていた。

今日も、宿題は出来なさそうだ。

「で、最後の手段ってなに?」

「肝試し!」

 

つづく