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【少女】

1 名前:名無しさん 投稿日:05/01/27(木) 21:18:42

私がその少女に出会ったのは
妻と娘が亡くなって十日位経った夜でした
虚しくなり、酒で寂しさをごまかそうと繁華街へ同僚達を誘い
浴びるほど飲んでいつの間にか一人ぼっちで寝ていた時です
「こんばんわ」
まだ小学校の低学年ぐらいだろうか
私は丁度同じぐらいだった娘を思い出した
「君のような子供がこんな夜中に何してるんだい」
「おじさん、私、萩原舞って名前があるんだよ」
大きな目が愛くるしい
「ゴメン、ゴメン、で、その舞ちゃんは悪い子かな
こんな夜更けに盛り場にいるなんて危ないよ」
「私いつもここにいるの」
小さな手をバタバタさせている
私は娘がよくこんな感じで駄々をこねてるのを思い出した
「おじさん、どうしたの。悲しいの?」
「いや、それより送ってあげるよ。お家は何処だい」
舞ちゃんは悲しそうな目をして
「それはできないの。私はここを動けないから」
不思議な事を言う子だと思いつつ
「じゃあ、朝までおじさんとお話しようか」
娘と同じぐらいのこの子が危険な目にあってはいけないと
私はずっと話しを続けた

妻との出会いから娘が生まれた時の喜び
そして成長を見守るにつれ芽生える大黒柱としての心構え
でもそれは突然奪われてしまった
動かない妻と娘
絶望に狂いそうだった
そして今日も気を紛らわそうと自棄酒を煽る
しかし、舞ちゃんと話しているうちにこれではいけないと気付いた
そうだ、死んだ妻と娘の為にもしっかり生きなければならない
「舞ちゃん、ありがとう。なんかおじさん元気が湧いてきたよ」
そうだ、悲しんでばかりいられない
いつまでも荒れていたんでは妻と娘に顔向けできない
「舞ちゃんは娘が勇気付ける為に寄越してくれた天使かも知れないね」
「おじさん、元気になった。よかった」
舞ちゃんは笑って朝日に向かって走り出していった


「ヤマさん、分かりました。男は〜山〜雄38歳。10日前に妻と子供を事故で亡くしてますね」
酔っ払って外で寝込みそのまま凍死したらしい仏を前に刑事が同僚に言った
「そいつは可哀そうに、でも、いい夢見ながら死んだんだろうな
こんなに幸せそうな死に顔は始めて見た」

 

つづく