【夏の日の君に】
僕の恋はこの日突然始まった…
「ねぇ、〇〇!今日一緒に帰ろぅ」
「夏焼、お前昨日も同じ事言ってたろ?」
同じクラスの夏焼雅とは6年間同じクラスでまぁ、言ってみれば『腐れ縁』ってやつである。
「昨日も、って事は…聞こえてたのにシカトしたの!?」
「はぁ?シカトして何が悪いんだよ。俺は別にお前と帰りたくねぇもん。」
何故か知らないが最近になって、夏焼は帰りに俺を誘うようになった。
「つーか、何で他の奴誘わないで俺なわけ?」
「!!…それは、その何て言うかぁ…」
「何だよ?はやく言えよ。」
「あの…、そうだ!アレだよ!アレ!」
「はぁ?なんだアレって?」
「ほら、忘れたの?プ→ル行く約束したじゃん」
「!ちょっと待て!そんな約束しらねーぞ!」
「したよぉ。だから、ほら!」
そう言うと夏焼はカバンからプールの券を2枚取り出した。
しかも、ご丁寧に俺と夏焼の名前まで印刷してある。
「これ、マジ…?」
「もちろん☆」
「しかも、日付今日までじゃん!」
「そうだよ。だからずぅ〜っと、一緒に帰ろうって誘ってたのに…」
「しょうがないよなぁ。わかったよ。じゃあ、一回家に帰って用意してくるよ。」
「やったぁ♪じゃあねぇ、3時に学校集合ね☆」
俺は完全に夏焼のペースにハマっていた…
「わかった。それじゃあ、俺帰るわ。」
夏焼は六年の間では「可愛い子」として少し有名だったが俺は一年の時から同じクラスだったせいか他の奴が言うほど可愛いと思わなかった。
「…水着どこに置いてあったっけ?」
俺らの学校はプールの授業は三年までの変なキマリがあった。
それでも、だいたいの奴は夏休みはプールやら海に行くから水着は持っていた。
…ガサ…ゴソ…ガサ…ゴソ
「確かこの辺りの段ボールに‥あった!」
久しぶりに見た水着はどこか懐かしく新鮮だった。
「おぉ〜、My水着ちゃん!久しぶり♪」
去年新しくしたばかりの水着はあの頃では少し大きかったが今ではちょうどのSizeだった。
「…俺も息子も成長したなぁ〜」
俺は水着やらタオルやらをバックに詰め家から出て行った。
「夏焼はたしか…家、学校の近くだからもういるかもなぁ」
そんな事を考えながら俺はチャリ学校に走らせた。
「そう言えば、夏焼の水着姿みるのって三年ぶりだ」
学校まで後10メートル位の距離に来たところでふとそんな事を俺は思っていた。
「…!オーイ(^O^)/こっち、こっち」
やっぱり、夏焼は学校にもう着いていた。
「お前、来るのはやいな?」
「そぉ?でも〇〇も来るのはやいじゃん♪」
「そうかぁ?」
学校の時計台を見るとまだ2時50分だった。
「本当だ。まぁ、いいじゃん。それよりはやく後ろ乗れよ。」
「えっ!…いいの?」
「いいも何もお前チャリじゃないじゃん。」
「でも…家近いから自転車すぐ取って来れるよ」
「いいから、後ろ乗っちゃえよ。時間勿体ないしさぁ。」
「ぅん。ありが‥とう。」
そう言った夏焼の顔は少し紅く染まっていて、一瞬俺の胸は鼓動をはやめた気がした。
俺は夏焼を後ろに乗せて自転車を走らせた。
「なぁ、夏焼」
「っん?なぁに?」
「お前…。もうちょっと離れてくれない?」
「あっ!ごめん…」
学校からプールまでは自転車で15分位だがその間俺と夏焼には会話はなく俺はひたすら自転車を走らせた。
「おっ?見えてきたぞ。」
「あっ!本当だぁ(^-^)」
周りを見てみると駐輪場にも駐車場にも殆ど止まっておらず、この季節には珍しく人が少なかった。
「今日、人少ないみたいだねぇ。」
「そうだな、いつもならこの時期は混んでるのにな。」
「まぁ、とりあえず中入ろうぜ。」
「そうだね♪」
俺と夏焼はチケットを受け付けの人に渡した。
「いらっしゃい。…あら?この券今日までじゃないの。よかったわね♪今日は人も少ないし、カップルはあなたたちだけよ。」
俺も夏焼もこの発言に一瞬言葉を失った。
他の人からみたら俺達二人はカップルに見えるらしい…
「ちっ、違いますよ。私たちはただの友達ですよ!」
俺が言う前に夏焼が先に受け付けの人にそう言った。
「あら?そうなの?でも折角なんだからデート気分で楽しんで頂戴よ。」
俺も夏焼も少し顔を赤らめながら更衣室に別れて行った。
(あのオバチャンとんでもない事言いやがるな)
更衣室に俺以外には人の姿は見えず俺はどこか淋しさを感じていたがさっきのオバチャンの言葉が頭を離れず俺の鼓動はまたはやまっていた。
「さてと、それじゃあ行きますか!」
タッタッタッタ…
俺は少し駆け足でプールへ向かった。
「あれ?夏焼のやつ何処いるんだ?」
俺は辺りを見回したが夏焼は見当たらなかった。
トコトコ…トコトコ…
「あれ?〇〇もういたの?」
「!?」
俺は自分の目を疑った。そこに立っていた夏焼は俺が知っている夏焼とはまるで別人のようなだった。
「…お前本当に夏焼か?」
「えっ?なにぃ?」
「いゃ!何でもない。」
抜群のプロポーションとまではいかないが俺にはそこら辺にいる人よりも魅力的に見えた。
「ちょっとぉ!〇〇見すぎだゾ」
「!!べっ、別に見てねぇよ!それより、はやく泳ごう」
本当は図星だった。だって俺の知っている夏焼の水着姿は小3の時のスクール水着だったから…
でも今日はスポーティーな感じだった。
(ヤバイ、なんかまた鼓動がはやくなってきた)
「ちょっと待って、ストレッチしないの?」
「あぁ、そっか忘れてたわ」
俺達はストレッチを行い軽い運動のために足のつく位の深さの25メートルプールに向かった。
ザブゥン
「ぅひゃ〜、冷てぇ〜」
「ぅう〜、意外と冷たいね」
「なぁ、夏焼。久しぶりにどっちが先に向こうに着くか勝負しようぜ!」
昔は俺と夏焼でよく競争をしていた。
「いいよ(>_<)じゃあ、もし私が勝ったら…あの飛び込み台から飛んでね♪」
「いいけど☆俺が勝ったらお前が飛び込めよ!」
「えぇ!…」
夏焼は少し悩んだ後その要求に応じた。
でも、まさかあんな事になるなんて…
と、言うより俺は大切な事を忘れていた。
(はぁ…飛び込みたくないなぁ)
高さでいったら5メートル位の高さの飛び込み台に今、夏焼は立っている。
「オーイ、準備出来たか夏焼?」
「出来てるよ!…それじゃあ…行くよ!!!」
「どんと行け〜!!」
バン………バシャン!!
「おぉ〜!夏焼のやつやるなぁ。」
……5秒……10秒
「あれ…夏焼のやつ上がって来ないなぁ…。」
俺はふと小1の時にも同じような事があった事を思い出した…
「…そうだ!!やばい!助けなきゃ!!!」
俺はすぐにプールに飛び込んだ。
そう、夏焼は足の着かない場所では泳げないいわゆる『カナヅチ』であった事を…
(やっぱ夏焼のやつ震えてたんだ…何でもっとはやく思い出さなかった…俺!)
俺がプールに飛び込んでみると夏焼は手足をバタつかせていた
「おい!夏焼!落ち着け!」
「はぁはぁはぁ…」
「落ち着け!とりあえず俺に掴まれ!」
俺は急いで夏焼の手を掴み自分の体に回した。
「痛っ!おい、夏焼!足バタつかせるな!」
夏焼は少し落ち着きを取り戻し足をバタつかせるのをやめた。
「おし!そのままでいろよ。すぐプールサイドまで連れてくからな」
「…ごっ…めん…っね…」
夏焼は今にも泣き出しそうなか細い声で俺にそう言った。
プールサイドに夏焼を連れてくと夏焼は堰を切った様に泣き出した。
「おい、泣くなよ!」
「ごめんね…ごめんね」
「何謝ってるんだよ。はやく思い出さなかった俺が悪いだからさ」
「でも…だって…」
「もう、いいから。それより少し休んだらあっちのプールで遊ぼうぜ!あっちなら足も着くしさぁ。なっ?」
「…ぅん…ぅん。ありがとね(/_;)」
目を赤くし体を小刻みに震わせながら夏焼はそう俺に言った。
5分…いや、10分は休んだろうか。
夏焼も落ち着きを取り戻し俺にこう言った…
「去年も…一昨年もプール行って練習したの…だから今日も大丈夫だと思って…」
「そっか…」
「でも、飛び込んだら深くて…そしたら、頭真っ白になっちゃって…」
「そっか」
「ごめんね…それと、ありがとう。」
「もう、気にするなよ。それより、そろそろ泳がないか?」
「…ぅん(^ー^)」
やっと夏焼に笑顔が戻った。
「じゃあさぁ、ウォータースライダー行こうよ(^O^)v」
「あぁ、いいよ!」
俺は夏焼のその笑顔に気持ちが高ぶるの感じたが気のせいだと自分にこの時は言い聞かしたのかも知れない…
ヒュー…ザ‥パ〜ン!!
「うっひ〜、気持ちいい!」
決して大きなウォータースライダーではないが俺達にはちょうどよく体に当たる水しぶきと風がとても気持ちよかった。
「ねぇねぇ、もう一回滑ろうよ!」
「はぁ?もう一回って次で八回目だぞ。」
「ぃいじゃん!折角来たんだからさぁ〜。ねっ?もう一回!」
「う〜ん…。わかったよ。じゃあ、もう一回な」
「やったぁ〜!」
これで最後だと自分のなかで決めたのがいけなかったのか、この後も何度も何度も俺は夏焼とスライダーで遊んでいた。
…あれから何回滑ったろうか…
俺はもう風の気持ちよさもただウザったるく感じていた。
「…夏焼…」
「なぁにぃ?」
「俺…限界…だから…プールサイドで…休む」
「ぶぅ〜(ー”ー;)もっと、遊ぼうよ。」
膨れた顔をした夏焼はとても可愛らしく思わず抱きしめたかったが体はとてもじゃないがそれどころではなかった。
「少し、休んだら一緒に遊ぶからさぁ。」
「わかったよ…そのかわりちゃんと戻って来てね!私、流れるプールいるから(^-^)v」
そう言って夏焼は流れるプールに向かって行った。
(夏焼のやつ別人みたいに可愛いなぁ…って何考えてるんだ俺は!)
あれから10分…いや、20分は休んだろうか。俺は夏焼のところに向かった。
「あっ!やっと来た。」
「悪い、悪い。もう大丈夫だから。それと、ほら!」
俺は夏焼に浮輪を渡した。
「どうしたの、浮輪なんて?」
「今、そこで借りて来たんだよ。これあると面白いだろ?」
「うん!ありがとね(>_<)」
俺は夏焼の喜んでくれた顔がたまらなく可愛いく見えてしょうがなかった。
「?どうしたの?顔赤いよ?」
「!?…いや!何でもないよ。」
この時、俺はだんだん夏焼にひかれていくのを感じていた。
その後、俺達は日がくれ出すまで遊びまくった。
「おい、夏焼。そろそろ日もくれはじめたし帰らないか?」
「そうだね…」
夏焼は少し残念そうな顔をして俺にそう行った。
「じゃあ、着替え終わったら駐輪場に集合な」
「は〜ぃ(^O^)v」
俺は更衣室に戻って今日の事を振り返っていた…
「これで夏焼と二人で遊ぶことなんてないんだろうなぁ…」
俺は普通の女だと思っていた夏焼に恋心を抱いていた。
「…よし!」
俺は更衣室を出る直前に一つの決意をした。
駐輪場に向かうと夏焼はプールで濡れた髪を指でクルクルと回しながら待っていた。
「意外と時間かかったね。」
「そうかぁ?まぁ、いいじゃん。それより乗れよ。」
俺の決意とは『告白』である。俺はいつ夏焼に告白するかを乗りながら考えていた。
「…なぁ、夏焼?」
俺の話を遮るように夏焼が話し始めた。
「〇〇には言うね。私…好きな人がいるの…。」
俺は耳をふせたかった。
「…でもね、その人はきっと私の事なんて何とも思ってないと思うんだぁ。〇〇ならどうする?」
俺は自分の気持ちを夏焼に伝えたかった。しかし今、夏焼にそれを言ったら夏焼がどこかに行ってしまう気がした。
「俺は…俺なら…結果はどうであれ、多分…言う…かな」
自分の言葉に自分でも驚いていた。
「…そっか。…よし!」
夏焼のなかで覚悟が出来たみたいだった。その後、夏焼と何を話したか俺は覚えてなかった。気付いたら学校の前に着いていた。
「今日はありがとね。楽しかったし、〇〇のおかげで覚悟も出来た。」
「そっか…」
俺は夏焼の顔を見れなかった。俺のいい加減な言葉で夏焼が覚悟を決めたこと。フラれた時の悲しむ顔…胸が苦しかった。俺は夏焼に背を向けてチャリを走らせた。
「…〇〇!」
俺は夏焼の声に驚き後ろを振り向いた。
「夏焼雅は君の事が大好きです!付き合って下さい!」
俺は夏焼の発言に度肝を抜かれ。まさか、夏焼が好きな人が自分だなんて思わなかったから。
「俺も…俺も…好きだから!大好きだから!付き合って下さい!」
夏焼は微笑んだ後その場に泣き崩れた。
「…ぅれしぃ(>_<。)同じ気持ちでいてくれて。」
僕はこの日突然恋をした。昨日まで普通の女だと思っていた子に…
人生のなかのたった一瞬の一日かもしれないがこの日は僕達にとっては大切な一日にかわった。
おしまい