【バレーボーイズ】
「…よし!おまえら準備はいいか?!」
「「「おうっ!!」」」
俺たちは昨日この波浪中学の1年生になったばかりだ。そして今は体育館の前…
「…さすがに緊張するなぁ…」
「決心が鈍るだろ!早く開けろよ○○!」
「…よし!」
ガラッ!
シ〜〜ン…
「…あれ?」
「何だよ?!誰もいねぇじゃん!」
俺たち4人はバレーボール部に入部しようと意気込んで来たわけだが…
「何でだよ?」
「知らねえよ」
この口が悪い上に常にテンション高いのが亀井と田中。
「はぁ〜…緊張したね」
このインテリぶってるノッポが道重だ。
「…1年はみんな帰ってるみたいだし…今日のところは帰ろうぜ」
「「ええぇぇ〜?!」」
「そうだよ。それに明日は部活動紹介があるんだしさ。もともと僕らフライングじゃん?」
「ちぇ〜じゃあ明日に備えてとっとと帰って寝るか」
「あ〜あ、なんか損した気分だなぁ」
そんなこんなで雑談しながら帰る4人。俺達4人は同じマンションに住んでいる。
「じゃあな」
「明日」
「バイバ〜イ」
やつら3人は1階に住んでいる。このエレベーター前でようやく1人になる。
俺は最上階の12階だ。この12階には…
ピンポ〜ン
「あ〜!やっと帰ってきた!遅いぞ○○ちゃん♪」
「あ、桃…嗣永先輩…」
嗣永桃子…1歳年上だが、小学校の通学班が何年も一緒だったため仲が良い。というか幼なじみの1人だ。
「もぉ〜…学校じゃないんだから、今まで通り桃でいいよ!」
「う〜ん、俺なりのケジメなんだけどなぁ…ってそれより桃…嗣永先輩!」
「……」
「…あの?」
「桃って呼ばないと話してあげないから!」
「…桃」
「な・ぁ・に♪」
…ぶっちゃけ桃はカワイイ…年上には見えないし…
「今日バレー部練習やってなかったんだけど…女子もやってないじゃん?何で?」
「女子部は今日はお休み♪明日からまた地獄の猛特訓なのよ…」
可愛く凹んでみせる桃を華麗にスルー
「男子は?何で練習してないの?」
「あぁ…えっとぉ…すぐ教えてあげようかと思ったんだけどぉ、言いづらくてぇ…明日!部活紹介で先生から発表があるから!」
「じゃあまぁ、いいけど」
そう言って桃は慌てて家に引っ込んでしまった…何が隠されてるんだろうか?
ここでちょっと俺達の自慢話を。
俺達4人は小学校の頃に入っていた、少年バレーボール団『スペジェネ』(正式名称は忘れてしまった)で全国大会を優勝した実績を持っている。私立中学からいくつも誘いがあったが、遠くまで通うのは面倒だし、4人で同じ学校でプレイしたいというのもあった。
それに波浪中学はいつも地区大会ならベスト4には入る力があった。そのバレー部に入部しにきたわけなんだが…
まぁ、桃が明日分かると言ってるんだし、今日はのんびりクラスの連中の名前でも暗記するかな。
「おはよ○○」
「おっす」
「あれ?亀井と田中は?」
「マラソンして学校まで行くって。もう行っちゃったよ」
「ははは…」
「○○〜!お早よう!」
「おう、雅」
「雅ちゃぁん♪おはよ♪」
「道重くんも、おはよ」
「ちょっとちょっと!あんた達には私の姿が見えないわけ?!」
「悪い悪い…おはよ、千奈美」
「よ、よぉ、千奈美…」
「おはよぉ♪」
夏焼雅…うちの隣に住んでいる幼なじみ。みんなの憧れの的で、小学校ではアイドルのような存在だった。きっと中学でもすぐ人気者になるだろうな…
徳永千奈美…5階に住んでる、こいつも幼なじみだ。真っ白な歯に笑顔がチャームポイントだ。
ちなみに道重は千奈美のことを好きなようだ。
「せっかくだから4人で学校行こっか?」
「そーだね♪」
「あ、あれ友理奈ちゃんじゃない?」
「ホントだ、お〜い!友理奈ぁ!」
「ぇ?あ、○○!…先輩」
熊井友理奈…1個下の小6。千奈美と同じ5階だ。友理奈とも通学班を通じて仲が良かった。でもどこか俺をバカにしたような態度で…
「は?先輩って何だよ?」
「いや、ほら、○○もう中学生だし…あ、先輩だった…」
(俺が桃に思ってるのと同じ気持ちなのか…)
「バカだなぁ、そんなの気にすんなよ。俺は今まで通りでいいよ?」
「…分かった、考えとく」
「よし、じゃあ班長さん、うちの妹をよろしく頼むよ?」
「梨沙子いい子だもん、平気だも〜ん」
梨沙子…俺の妹。2個下だ。実は血が繋がっていない、義理の妹である。でも仲が良すぎて、互いにそんなことは普段は忘れているが…あと、梨沙子はちょっとアフォだ。
「…なんかやけに多くの人に会うなぁ」
「新学期だしな」
「関係ないじゃん!」
「てかこのマンションに主要人物が多過ぎなんだよぉ♪」
「はぁ〜?!男子バレー部は無期限活動停止〜?!」
「どーゆうことだよ?!」
部活紹介中の体育館に亀井と田中の叫び声が響く
「…続きまして女子バレー部の紹介です」
騒ぐ2人をスルーする司会の生徒
「亀井!田中!静かにし!」
担任の中澤先生にゲンコツを喰らう2人。みんなもくすくす笑う。すでにクラスの主導権を握っている。
「あんたらの事情は先生達も知っとるから、あとで説明する。静かにしときな」
桃がユニフォームを来てステージで活動の説明をしながら、数人の先輩達とトス回しなどの実演をしている。
すでに男子の目がハートになってるな…さすが桃…しかし何で桃のユニフォームだけノースリーブでヘソチラ仕様なんだ?
「○○、どうなっちゃってるのかな?男子バレー」
「さあな、あとで説明聞かないとね」
「実は私もバレー部にしようかと思ってるんだよね」
「え?千奈美も?バトミントンは?」
「だってぇ〜、4人ともバレーでしょ?どうなるか分からないけど。雅ちゃんだってそうだし…1人だけバドやってるの、小学校のときから淋しかったんだから…」
これは面白くなりそうだ。もうよその紹介なんて耳に入らなかった。
教室に戻ってすぐに自由見学時間になったが、俺達は中澤先生に教室で待つように言われていた。
雅と千奈美も見学に行かず、ここに残っている。何故かと聞けば『面白そうだから♪』…他人事だと思って…
ガララッ
「お待たせ〜」
「遅えよ!」
やっと中澤先生が来た。と、もう1人。
「待たせたな。俺が男子バレーの顧問だった寺田や」
「顧問、だった?」
「寺田先生、無期限活動停止の理由は何なんですか?」
「…おのなぁ、くだらないことなんや…」
何とも言いづらそうな顔の寺田先生。
「うちに安倍って言う3年がおってな、その安倍がな…国語の授業で詩を書いたんや。で、あまりにも出来がいいもんだから全国中学作詩コンクールっちゅうのに応募させたらなんと、県の代表に選ばれてしまってな」
「すげえじゃん」
「それと何の関係があるわけっすか?」
「…その安倍の書いた詩っちゅうのが、盗作やったんや…」
「はぁ?!」
「バカじゃねえのその人」
「……」
「しかも安倍は1年の時も同じコンクールで優秀賞もらっててなあ。調べたらそれも盗作だったんや」
「呆れた人ですね…」
「色んな詩人の詩集を開いたらいい詩が載っとったから『素敵だな』と思ってやってしまったとか…おまけに盗作してるうちに自分の詩と区別がつかなくなったとか…
そのせいで校長や教頭は教育委員会やら他校とか、ぎょうさんを頭下げるハメになってな。怒りが頂点に達した3日前、おまえらが入学する前日な、活動停止にされたっちゅうわけや」