【緊張のホワイトデー】
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今日はホワイトデーだ。
お菓子とか持ち込み禁止の学校だけどバレンタインと今日くらいは
先生も大目に見てくれるらしい。
義理チョコをくれた女友達数名に昼休みホワイトデーフェアで買ってきたちょっと可愛いクッキーを渡す。
お菓子によって意味があるらしいが俺はよく分からない。
彼女たちも深く気にしてないようだ。
さて、問題はあの子だ─
俺の好きなあの子もバレンタインにチョコをくれた。
ちょっと不恰好なソレはどうにも手作りのようで俺の期待も高まる。
彼女だけはちょっと特別にしたいと思い一緒の物は止めたのだ。
いや、充分考えたし大丈夫な筈だ…でも滑ったり白けたり、そもそも特に何も思われてなかったら…
悩む俺には授業なんか聞こえず、
いつもより早い心臓の音だけが自分にこだまする。
キーンコーンカーンコーン
授業終了のチャイムも遠くに聞こえる。
今しか無いと意気込もうとした時─
「見ーたーぞー。 私にはくれないの〜」
「お、おぅ清水!」
彼女がフイをついて現れた!
予想外の事態に高まる鼓動を押し殺し、考え抜いた答えを返事する。
「悪い悪い、ちゃんとお礼するから、帰り一緒に帰らない?」
ひたすらクールにするつもりなのに声がうわずる。
「そう言う事ならいいよw じゃ掃除終わったらね」
「じゃあ校門で」
第一関門の突破に心の中で「よっしゃーッッ!」と雄たけびをあげる。
掃除も早々に終わらせ清水を待つ俺。
校門に寄りかかり流れる生徒を見やる。
ドキドキしながら待ってるとパタパタと足音が聞こえる。
「お待たせ〜」
清水だ。
「掃除長引いちゃって〜 待った?」
「いや、そうでも無いよ。 じゃあ行こうか」
俺は商店街の方へと足を進める。
「アレ、ウチと逆だよ?」と不思議そうにたずねる清水。
「今日はこっちなんだ」緊張からぶっきらぼうに答える俺。
歩きながら色々話す。
「私だけくれないなんてひどいよ〜」と清水。
「悪い悪いつい数間違えちゃって」と俺。元々一緒に買うつもりも無いんだけど。
「折角手作りしたのになぁ〜」と唇と尖らせて不満を言う清水。
「手作りだったんだ? 美味しかったよ」とクールを装うも心の中でガッツポーズの俺。
そんな風に商店街を歩いていると甘いニオイが漂ってくる。花屋さんだ。
「うわ〜 綺麗〜」
清水が足を止め眺めてる。
「清水、花好きなの?」と尋ねる俺
「女の子はみんな好きだよ」とちょっと偏った持論で応える清水。
「貰ったら…嬉しい?」おそるおそる俺
「んー素敵だろうなー」うっとり答える清水。
そんな会話をしてると店員のお姉さんがやってくる。
「あぁこの前の君! 頼まれた物ちゃんと入ってるよ〜」
バカ!言わなくてもいいのに!と心の中で叫ぶ。
不思議そうな顔をする清水に「ちょっと待ってて」と言い中へ入る。
俺はなけなしの小遣いで頼んでおいた物を包んでもらった。
買い物を済ませ清水の元へ戻る俺。
「何を買ったの?」と尋ねる清水。
「清水へのお返しにと思って…」
緊張で身体が強張るのを感じつつ買った物を手渡す。
買ったのはキレイにラッピングされた3本の白いバラだ。
ちょっとビックリしたような顔をして「アリガト…」と小声で受け取る清水。
上手く行ったのか!?それとも失敗したのか!?
ハラハラして動けない俺に後ろから声がする
「おぉ〜その子がプレゼントの相手か〜。若いのに甲斐性ある少年だねぇ〜」店員のお姉さんだ。
「あ!ありがとうございましたっ!」
俺は白いバラと対照的に顔を真っ赤にした清水の手を引きそそくさと立ち去る。
会話が無いまま来た道を家に向かい歩く俺と清水。
手はつないだままだったが、緊張で掌も湿ってくるようだ。
商店街も抜ける頃に清水が口を開いた。
「ありがとう…」
「よ、喜んで貰えた?」
「うん…」
「そうか良かった…」
「なんで白いバラなの?」
「ホワイトデーだから白いのにしようと思って…花はバラ以外知らなかったから…」
「なんで3輪なの?」
「よく3倍返しって言うだろ? …だからなんとなく…」
「ふふっ、キザなのに単純なんだねw」
やっと清水が笑ってくれた。
「頼んだ…って花屋さん言ってたけどよく買うの?」
ちょっと不安げに清水が尋ねる。
「花買うのもはじめてだよ。 …ただ、清水には特別にお礼がしたいなって色々考えて…」
清水はニッコリ笑うと俺の前に回りこむ。
足を止める二人。
「ドッキリは嬉しいけど、買い忘れたとか嘘はダメだぞっ! ガッカリしたんだから」
清水はそう言うと手に持った花で俺の目を隠す。
急な仕草に戸惑う俺。 封じられた視界。 バラの甘い香り。 そして頬にフイに訪れた柔らかい感触。
花を手元に戻した清水は顔を真っ赤にしてる。
俺もやっと何が起きたのか理解して顔が火照るのが分かる。
「キザなのは私だけにしてね?」と清水。
「うん、清水だけだ。」と俺。
そのまま手を繋いで帰り道を歩く。
確かな言葉は無かったけど気持ちはちゃんと伝わったみたいだ。
緊張したホワイトデーはバラと清水の甘い香りがした。
終わり。