− ヘタレ◆7W1JBBoYOY さんの恋愛話 −

ヘタレ…25歳(当時)=彼女居ない歴のブサメソ毒男レプ海苔
    恋愛経験は乏しい・女性から受けたトラウマで、
    自分に自信が持てず、他人に過剰に気を遣うようになる。
    生真面目で融通が利かない奴によくみられる。

Kei…22歳・大学4年(当時)・ZONEの右でギター持って歌う娘に似てる
    仕事への責任感の強さから、1人で仕事を背負おうとし、キツく見られがち。
    普段の性格は明るく、人当たりは良い。結構ミーハー。

Min…21歳・大学3年(当時)・Myuのサークル仲間

Myu…20歳・大学2年(当時)・Keiと一番仲がいい



臨時雇いの職場を辞め、職探しをしてた時のこと。
希望する職は募集もなく、繋ぎのつもりで飲食店でのバイトを始めた。
学生が多く、女性の比率も高い店だったが、
その環境に正直、何の期待もしていなかった。
自分はブサメソで毒男でしかも社会人、おまけに要領も悪い奴。
年下の学生に「何やってんすか」とか言われながら働く毎日。
それでも、週5〜6で働いてると不思議に何とかなってくるもので、
通勤でバイク乗れる(さほど遠くはなかったが)ことを楽しむ余裕もできてきた。

バイト始めて一月半ほどたった日、飲み会をしようということに。
自分は下戸だし、大して乗り気にはなれなかったんで、
「バイクだから」ってのを理由にして断るつもりだった。
でも、明るくてノリのいい女の子3人組が、
「ヘタレさんも行きましょうよ〜」としつこいくらいに言ってくる。
そこまで言うなら…と「呑まない事」を条件に参加することに。

女の子が多いんで、華やいだ雰囲気の飲み会だった。
場違いな感は強かったが、それなりに楽しいもんだ。
それに、誘ってくれた例の3人組がエラく盛り上げてくれる。
酒も進んできた中、やけに積極的なアプローチをかけてくる娘がいた。
3人組のうちの1人、Kei(仮名)である。

Kei「隣座ってもいいですか〜?」

正直戸惑ったが、返事も待たずに、Keiは隣に座ってくる。

Kei「ヘタレさんいつも一生懸命でいいですね〜」

ヘタレ「いや、ただ要領が悪いから必死なだけだよ」

Kei「そんな事ないですよ〜、それに気遣いがしっかり出来てていいです、
なんかジェントルマンって感じ」

ヘタレ「そうかな…?」

Kei「だって今までのメンバーにはいなかったタイプですよ〜
学生のみんな、自分の事に手一杯で、手抜きしようとしてばかり
ヘタレさんは社会人だし、気遣いできる余裕があるっていうか」

褒められ慣れてない自分は戸惑うばかり。
Keiはどんどん畳み掛けるように喋ってくる。
それを見たKeiの後輩のMinとMyuが、

Min&Myu「Keiさんずる〜い、ヘタレさん独り占めじゃん」

Kei「へっへ〜いいでしょ〜」

もう何が何やらqwせdrftgyふじこ、って感じ。Keiは喋り続ける。

Kei「頑張りやのヘタレさんの夢って何ですか〜?」

ヘタレ「あ、うん…素敵な嫁さんと可愛い子ども連れて、散歩すること…かな」

恥ずかしい話だがこれは本気だ。「幸せな家庭」毒男故に叶わぬ夢…。
楽しそうにKeiは答える。

Kei「素敵な夢じゃないですか!へっへ〜私だけいい事聞いちゃった」

Min&Myu「またKeiさんばっかだよ〜、何だかな〜」

…なんだか皆さんテンション上がり過ぎ、大丈夫か〜?
なんて思ってたときに、Keiが発した言葉に自分は驚愕する。

Kei「私なんか相手にどうですか〜?晩婚でもよければ」

…一瞬ドキッとしたが、すぐに冷静になる。
まぁ、酒入ってるし…本気なわけ無いか、こんなブサメソに…。
毒男らしい思考に戻っていく自分。
過去の色んな経験・トラウマ等から、自分に自信が持てない奴だったから。

そんなこんなで、異様な盛り上がりを見せた飲み会もお開き。
ベロベロに出来上がった面々をよそに、自分はバイクに跨る。

3人組「安全運転で帰ってくらさいねぇぇ〜」

うわ、すげぇ歩き方…3人組は肩組んで帰ってく。
なんだか疲れた…家に帰り着くとすぐに眠ってしまった。

飲み会から2・3日して、Keiと一緒にバイトに入る事に。
明るく話しかけては来るが、飲み会以前とさほど変わらぬ様子。
ま、そんなもんだわな、と思いながら忙しく日々は過ぎていった。

更に一月後、また飲み会があるという。
MinとMyuがもうすぐバイト辞める事になり、その送別会も兼ねて。
今度も呑み無しで出る事にした。
Keiはバイト終わり次第出るつもりだったが、体調がすぐれないとの事で欠席。

Min&Myu「Keiさん、今日は休肝日にする〜だって」

なんか残念だな…と思う自分が居た。

Keiが来ないと分かった途端、学生達はKeiの事を話題にする。
…とは言うものの、愚痴というか、陰口というか…。
「あの人絶対性格キツイわ」「なんか『鉄の女』っていうか…」
「一緒に入ったらあの人がほとんどやってくれるからラクだけどw」etc…
そんなことを言い合う中で、MinとMyuがフォローしようとする。
何が送別会だよ…自分は正直、来るんじゃなかったと後悔してた。

次の日、Keiと一緒にバイトだった。

Kei「昨日の飲み会どうでした?」

ヘタレ「ん…まぁまぁ、ね、Keiさんもいなかったし」

申し訳なく思いながら、言葉を濁す。

Kei「あの2人居なくなっちゃうのすごく寂しいなぁ…気が合う娘達だし」

ヘタレ「3人仲良かったしなぁ、店の雰囲気変わりそだね」

…Minがバイトのヤリチンと付き合ってた時、そいつがMyuにもちょっかい出そうとし、
面倒な事になった挙句半月で別れ、MinとMyuは仲直りできたが、
お互いバイト先に居づらくなって辞める、というのが本当の事情…
というのは後に聞いた話。ロクに仕事しねぇヤリチンに消えて欲しかった…。

で、Keiとの間に特に進展もなく、2ヶ月ほど経過する…。


2ヶ月間はとにかく働き通しの日々だった。
MinとMyuという主力メンバーが抜けた事と、学生達の夏休みが重なったことで、
人手がとことん足りず、新しく雇った学生バイトもすぐ辞めてしまう状態。
何より閉店業務が出来るのが店長とマネージャのKeiだけになってしまったのが痛い。
そこで、毎日のように働いている自分に白羽の矢が立ち、
忙しい中にマネージャ修行も組み込まれる事になった。

ヘタレ「あまりにも異例過ぎる抜擢なんでは…?」

長「技術に不安があるがしゃーない。お前の真面目さは俺も買ってるしな
…っつーか誰かがやってくれんと、俺は休むことすら出来んのだ(涙)」

ヘタレ「…頑張ります、てかお疲れ様です…心から」

店長は1歳年上で、仕事には厳しいがおもろい人である。
自分は店長にいじられキャラにされてはいたが、十分に信頼していた。
店長が毎日大変な思いしてるのは良く分かってたんで、少しは楽させてやらんと、
と頑張って働いた。そんな状態なので、Keiと一緒にバイト入っても、
軽い話程度の余裕しかなく、ただ忙しく過ごすしかなかった…。

夏休みも終わりかけて学生達が戻りかけてくると、不満をぶちまける奴が続出。
「給料少な〜い」←休みとってたんだから当然だろ
「何でヘタレが先にマネになってんの?ありえねー」←だったらサボらずに仕事しろって
終いには店長が一喝してたが、それでも陰ではブツクサ…しょうがない奴ら。
それでも少しシフトに余裕が出来てきたんで、店長が2日程休みをくれるという。

長「たまには息抜きしてこい、八耐行きたいっつってたのに休みやれなかったしな…
シンドイ思いさせて悪かったな、罪滅ぼしにもならんかもしれんが」

…せっかく休みもらったんだし、と思って、久々にツーリングを計画する。
バイトの忙しさから、休みがあっても寝てばかりで出かけてなかったし。
まぁ、2日あっても体休めたいし日帰りくらいかな〜。
などと考えながらニヤニヤしていると、不意に声をかけられた。

Kei「ヘタレさん、なんか嬉しそ〜、イイことでもあったの?」

ヘタレ「うぉっ!ビックリした…うん、休みもらえたからちょっと出かけようかって思って」

Kei「いいなぁ…私ゼミもあるし、あんまり出かけらんないから羨ましいな
バイクで出かけるの?じゃぁ気をつけて、安全運転で、ね」

ヘタレ「うん、ありがと」

自分はKeiと話したことよりも、ツーリングに行けるって事が嬉しくてしょうがなかった。
そして訪れた休み、隣県までのちょっとした日帰りツーだったが、走れることが楽しい。
途中訪れた観光地でお土産を買って、峠道も走って、無事に帰宅。
更に1日はひたすら寝て過ごし、またバイトである。
お土産を事務所に置いて、忙しく働いてると、Keiがシフト確認に店を訪れた。

Kei「あっヘタレさんだ〜お疲れ様、楽しんできましたか?」

ヘタレ「うん、楽しかったよ、事務所に大したもんじゃないけどお土産あるから、どうぞ」

Kei「有難うございます!お土産お土産ぇ〜っと」

事務所からKeiが出てきた頃、お客さんの出入りが激しく、手が離せない状態。
Keiは何か一声かけたそうだったが、こちらにはそんな余裕は無かった…。
店を出る前に、笑って軽く手を振るKeiが見えたが、会釈するのがやっとだった。
少し申し訳なく思いつつも、後から後からやってくるお客さんの応対を続けるのみ。

そんなこんなで忙しい一日も終わり、やっと事務所に戻る。
ふと見ると、自分のお土産の箱になにやら書いてある。
どうもこの店には、お土産をもらったら、箱にメッセージを書く習わし(?)があるらしい。
見ていくと、学生達は「うまい」「ありがと」程度の事しか書いてない。
…まぁ先に自分が格上げされたことを良く思ってないのが多いし…こんなもんだろ。
よく見ていくと、Keiのメッセージを発見。どれどれ…。

『ヘタレさんいつもお疲れ様。お土産美味しかったですよ〜、ありがとうございます
今度はわたしもドライブ誘ってくださいね☆ Kei』

心の中で「ドライブじゃなくてツーリングなんだけど…」
と無粋極まりないツッコミを入れつつ、嬉しく感じている自分が居た。
その反面、「ま、社交辞令だろ」と冷めた考えの自分も居た…。

自分に芽生え始めた感情に気づかないまま過ごしていたある日、小さな事件が起こる。


お客さんが少なく、珍しく仕事に余裕のあった日のこと。

?「あー良かった、ヘタレさんいたよ〜」

聞き覚えのある明るい声。誰かと思えばお久し振りのMyu…それにKeiもいる。
Keiには珍しく元気が無い。いつも明るく元気のいいMyuと居る事で、
余計に際立って感じられる…何かあったんだろうか?

Myu「ちょうどヘタレさんに会いたいって思ってたとこなんですよぉ〜」

そう言って2人はカウンター席に座る。なんだか嬉しい事言ってくれるじゃないか。
Keiと目が合うが、少しはにかんだ様に微笑んで、また表情が曇る…。
う〜むどうしたもんか…と思っていると、Keiがぽつりぽつりと口を開く。

Kei「あのね…ヘタレさん、このバイトを辛いとかシンドいとか思ったこと…ないですか?」

ヘタレ「う〜ん…俺の本当にやりたい仕事って訳じゃ無いけど、やりがいはあると思うし、
シンドいなりに楽しんでる…かな?それに、Keiさんみたいに可愛い娘も居るしw」

Myu「もぉ〜ヘタレさんたら何言ってんですかぁ」

自分とMyuは笑うが、Keiは浮かない表情。…余計な事言っちゃったかな?
うぅ〜困ったな〜なんて考えていると、Keiが意を決したように口を開く。

Kei「わたしね…このバイト…辞めようかと思って」

あまりに寝耳に水の話のため、頭の中に疑問符が飛び交い、うわずった声で応える。

ヘタレ「え…何で?どうして?こんな急に…」

Kei「わたしが頑張って仕事すればするほど、他の皆が…楽しようとしてるのが判って…
それに…仕事の事で何か言う度に、嫌味言われたり、陰で文句言われてたり…
皆に判ってもらえなくて、なんだか…独りだけで働いてるような感じがいつもしてた…」

…それは、自分も感じていたことだ。どうもココの学生バイト達には、
いかに楽をしていい給料をもらおうか、という態度がありありと出ているように思える。
今時多い、「義務を果たさずに権利だけ主張」てな連中ばかり。
自分と店長との話の中でも、お互い危惧していた事でもある。

Kei「あ、でも…ヘタレさんと一緒のときは違ってたよ、いつもすごく一生懸命で、
『あぁ、わたしも頑張らなきゃ』って気持ちになれてたし…」

ヘタレ「そんな事無い…俺いっつもKeiさんに迷惑かけてばっかだったじゃないか…」

Kei「ううん…ヘタレさん、どんどん仕事上達してたし…嬉しかったんだよ、
一緒に頑張ってるひとがいるんだ、って…でも、わたしもう限界かも…」

…どうして、頑張ろうとする者ばかり傷つかなきゃなんないんだ…。
周りの事を考えようとすればするほど利用されて…どうして…。
そう思うと同時に、口をついて言葉が飛び出していた。

ヘタレ「俺は…俺はKeiさんに居て欲しい…辞めてほしくない…!」

Kei「えっ…」

ヘタレ「俺、Keiさんはこの店に必要な人だと思ってる
仕事の能力もそうだけど、仕事に取り組む姿勢とか、お客さんに対する態度とか、
学生でなかなか出来る事じゃないよ…そういうとこ、信頼も、尊敬もしてる
それに、『Keiさんがいるから』って理由で来てくれるお客さんも沢山居ると思うよ
俺みたいに、Keiさんの笑顔に元気づけられてる人は沢山居るよ、絶対に」

いろんな想いで頭の中ゴチャゴチャになりそうになりながら、更に続ける。

ヘタレ「それから、きっと、メンバーのみんなも分かってるはずだよ
Keiさんがいつもみんなや店の事考えて仕事してるの…
みんな照れとかあって素直に言えないだけじゃないかな」

…これはまぁ、「嘘も方便」ってのかも…飲み会の陰口大会の件もあったから、
実際のところ、みんなが本当はどう思ってるのかなんて分からないけど。

ヘタレ「もしどうしても辛いとか、気分が重いって言うなら、少し休みを取って、
バイトから離れてゆっくりしてみてもいいんじゃない?そんな時も必要だよ
その間は俺が代わりに何とかするから…頼りになんないかも知れないけど」

Myu「そうですよ!それに、私もバイト復帰する事になったし、頑張りますから」

ヘタレ「えっ、そうなの?」

Myu「そうなんです〜ココのバイトすごく楽しかったし、Keiさんやヘタレさんも居るし
店長も『人手不足だし、余裕あるなら戻ってきてくれ』って言ってくれましたから」

そんな感じのやり取りも交えながら、必死に説得を続ける自分。
少しずつ、Keiの表情も和らいで見えてくる…自分の下手な喋りも、役に立ったのかな?

Kei「ヘタレさんも…Myuちゃんも有難う…ホント今日、ここに来てよかった、嬉しい」

やっといい笑顔を見せてくれた。安心と共に自分の頬が紅潮しているのを感じる。

Kei「あ…そうだヘタレさん、携帯番号とかメルアド教えて下さい、連絡取り合いたいんで」

Myu「わたしもわたしもー、抜け駆けは許しませんよ☆なんてね」

Keiの気分も落ち着いたようで何よりだ。少しゆっくり過ごしたあと、
2人とも帰ると言う…なんか寂しいな。でもまだ片付けもあるし頑張るか。

Kei&Myu「お疲れ様です〜またメールしますからね〜」

閉店後、片付けをしながら、ふと冷静になって考える。
自分は何故あんなに必死に説得してたのか? 何故Keiの笑顔に安心して、頬が紅潮する?
帰ってしまうときに寂しさを感じる? 何故?…なぜ?

片付けし終えて携帯を見ると新着メールが2件。あの2人だな。
『一緒にKeiさんをサポートしつつ、3人仲良く頑張りましょ〜 Myu』
微笑ましい内容だ。もう1つは勿論Kei。なんかドキドキする…。
『今日は有難うございました!ヘタレさんの言葉すごく嬉しかったです。
わたしももう少し頑張れるかも…ヘタレさんに相談してよかった Kei』

…この想いは間違いない。自分は…Keiのことが、本気で好きなんだ…。

自分の中のKeiへの想いを確信して2日後、閉店作業中にKeiが現れる。

Kei「あっ…ヘタレさんお疲れ様です。店長居ますか?」

事務所にいることを知らせると、礼を言って事務所へ。だが、自分が片付けを終えても、
Keiは出て来ない…どうしたんだろう?そう思いながらもノックして事務所の戸を開ける。
中には店長とKei…えぇっ、Kei泣いてる!?ちょっとどういう事だよ!?
あqせdrftgふじこlpと錯乱モードに入りかけて部屋から出ようとしたところで、

Kei「ヘタレ…さん?一緒に聞いてくれてていいですよ…この間相談したことですから」

結局辞めたりはせずに、大学祭の前後合わせて約2週間を休むってことにしたそうだ。

Kei「泣くつもりは無かったんだけど…今までの事考えたり、ヘタレさんや店長に、
迷惑かけるって思ったら、なんか涙出ちゃって…弱いとこ見られちゃったね」

そういって涙を拭き、少し笑う。涙見たときにはキョドってしまいそうになったけど、
不謹慎だがKeiの新たな一面を見れたように感じ、正直良かったなんて思った。

長「とりあえず、今度の店内清掃の日まで来てもらって、そこから2週休み、ってことだ
Keiが休んでる間は、ヘタレに死ぬ程頑張ってもらうことになるなw
あとMyuも出てくれそうだしな、なんとかなるだろ」

はいな。頑張らして頂きますとも!…その日の帰宅後すぐメールが届く。
『心配かけちゃってゴメンなさい、ちょっと休めることにもなりましたし、
わたしは大丈夫です!店内清掃頑張りましょうね Kei』

数日後の店内清掃の日、店長の県外出張が長引いて不在、との事で、
Keiが一同の指揮をとる事に。仕事となるといつも真剣な表情のKei。
テキパキと的確に指示を出していく…がやる気イマイチの学生メンバー達。
まぁ、店長居るときなら、清掃の後店長のオゴりで飲み会ってなってたから、
アテが外れて余計にやる気無いんだろうけど…もう少し気合入れて働いてくれよオイ。

いつもより時間はかかったが、清掃終了し、みんなかったるそうに解散し、帰っていく。
戸締りとかあるんで、自分とKeiが残って作業。

ヘタレ「お疲れ様〜明日からしばらくKeiさん休みか〜残念」

Kei「ちょっとリフレッシュ休暇を取らせてもらいますね、実家にも帰ってこようかと
ヘタレさんには迷惑かけちゃいますけど…すいません」

ヘタレ「気にしないで、ゆっくり身体と気持ちを休めておいでよ
ところで、今日これからどうするの?」

Kei「飲み会ナシになっちゃったし、帰りにコンビニでなんか買って帰って食べようかな
…なんだか不健康な生活かもw」

まだ食べてなかったんだ…なんて思いつつ、何気無く言う。

ヘタレ「俺も何も食べてないしなぁ…なんなら、俺と何かご飯食べに行かない?」

Kei「えっ、ホントですか!?行きましょう行きましょう」

ヘタレ「うん……へ?」

なんか拍子抜けするほどあっさりノッてきて困惑する自分。
でも、戸惑ってる場合じゃない、話をすすめないと…。

ヘタレ「えっと…今の時間だと、近場じゃラーメンかうどんくらいしかないけど」

Kei「わたし、おうどん食べたいな〜、連れてって下さい」

ヘタレ「え、ホントにそれでいいの?」

Kei「勿論です♪普段あんまりうどん屋行ったことないし、せっかくだから」

彼女いない歴=年齢の毒男としては予想外の事態のオンパレードである。
ともあれ、行き先も決まったことだし、片付けを終わらせて店を出る。
自分はバイク・Keiは自転車なので自分はバイク押して歩くことにするが、
Keiも自転車を押し始める…乗って走ってくれてもいいのに。

Kei「ヘタレさんと一緒に歩きたいですから、わたしも押して行きますよ〜」

ヘタレ「ゴメンね、気ぃ遣わせて…」

Kei「いーんですよそんな事、ふふ、ヘタレさんホント優しいですね」

先日の元気の無さとか涙とかが嘘のように明るいKei。やっぱ笑顔が可愛いなぁ…。
そう思いながら見ていると、ふっと目が合い、Keiが口を開く。

Kei「ふふっ、ヘタレさんとデートだぁ〜♪」

……えっ?そうか…これってデートなんだ…!

正直、人生初デートだと意識してからの記憶があまり定かではない…。
焦りと困惑が入り混じって真っ白になりそうな心を、態度に出さないようにするのに必死。
ってか、初デートがうどん屋ってのは男としてどーなのよ、自分…。

小奇麗な雰囲気の店で驚いてたこと、Keiと大学祭に行く約束したこと、
打ち立てのうどんが美味しく、Keiも喜んでたこと…ホントに断片的な記憶しかない。
支払いは自分が済ませ、店を出る。

Kei「わたし、ちゃんと払いますよ〜出してもらうなんて悪いですし」

ヘタレ「俺から誘ったんだしオゴるよ、それに学生のうちはそんなに気にしなくてイイって」

Kei「…有難うございます、今日楽しかったです♪おうどん美味しかったし、
いろいろお話できたし…また、デートしましょうね♪」

Keiが休みに入って2日後、バイトしてると、Myuが来店し、カウンター席に座る。

Myu「お疲れ様です〜そろそろ復帰なんでシフト見に来ました
…ところでヘタレさん、Keiさんと2人でデートしたでしょ〜
Keiさんすっごく喜んで教えてくれましたよ…抜け駆け無しって言ったのに〜」

とふくれっ面。まぁ目は笑ってるけど…とりあえず自分も笑うしかない。

Myu「Keiさんがこっち帰ってきたら、今度は3人で何か食べましょうよ
あっ、わたしラーメンがいいな〜…ちゃんとわたしも忘・れ・ず・に誘って下さいよ」

後日、結局Keiの都合が合わず、Myuと2人でラーメン。Myuも元気で可愛い子なんだけど、
今の自分はKeiが好きなわけだし…。Keiについての事・大学祭の事話したくらい。

バイト三昧の日々を過ごす内、大学祭の日がやってきた。

実は自分、短大卒なんで、普通の大学祭ってのは未体験。どんなもんなんだろう?
Keiたちの大学にバイクで乗り込み、Keiにメールする…へ?今起きたとこ?
『ゴメンなさい…先にMyuちゃん達のサークルとか回ってて下さい Kei』
しょうがない、先にそっち行ってみるか…。大体の場所は聞いてるし…。
あ、ここかな?覗いてみると、Myuと久し振りのMin。2人同じサークルだって言ってたな。

Myu&Min「いらっしゃいませ〜ヘタレさん」

うん、明るくていいねぇ。飲み物と焼きそばを頂く。味はそれなりだが、
2人の間に挟まれ、「両手に華」状態で気分の悪かろう筈も無い。かえって緊張する…。
そんな感じで楽しく(?)過ごしていると、メール受信。『もうすぐ着きます Kei』
MyuとMinに礼を言って、Keiとの待ち合わせ場所へ。缶コーヒーを飲みながら待っていると、
Keiがやってきた。申し訳なさそうな表情だ…が、それもまた可愛い(←馬鹿)

Kei「すみません…遅くなっちゃって、昨日遅くまでゼミやってて寝坊しちゃいました」

ヘタレ「いーよ、気にしないで…4年だし頑張ってんだね」

Kei「お詫びと言っては何だけど、しっかりご案内しますから♪」

まぁ、大学祭って言っても、思ったよりも内容は大したこと無かった。
田舎町の大学だし、こんなもんか…でも、Keiと一緒ってことがすごく楽しい。

ヘタレ「…そうだKeiさん、ひとつお願いがあるんだけど」

Kei「ヘタレさんがお願いなんて珍しいですね、何ですか?」

ヘタレ「Kei(姓)さんのこと…Kei(名前)さんって呼んでも…いいかな?」

Kei「そんなことなら、遠慮なく呼んじゃって下さい♪なんならちゃん付けでも呼び捨てでも」

ヘタレ「いや、そこまでは…MyuさんとかもKei(名前)さんって呼んでるし、それで」

Kei「そ〜ですか?ヘタレさんって真面目なんですね♪」

そんな会話しながら大学内を回って行った。で、次の週にKeiの大学祭乙&バイト復帰祝いで、
2人で飲みに行こうってことになった。店はKeiが決めるとの事。

Kei「わたし、焼き鳥とか行ってみたいんです〜女だけじゃ行きづらいし」

次の週、飲みの予定の日、閉店前にKeiが現れる…スーツ姿?驚いてるとKeiが言う。

Kei「今日、就職先の研修があったんです♪それはそうと、お店決めてきましたよ」

細身で足の長いKeiにスーツは良く似合う…自然と顔が赤くなる自分。Kei可愛いなぁ…。
…そうだ、お店お店…っと。無料のクーポン誌に載ってる店で、割ときれいな感じだな。
行く店が決まったところで、急いで片付け。店の鍵閉めて自転車持ってくる。

Kei「さすがに今日はバイクじゃないんですね、ってまぁ当然ですよね」

ヘタレ「飲酒運転なんて絶対しないよ、それに酔ったままバイク運転できるほど酒強くないし」

店に着くと、平日の夜だからか結構空いてる。で2人で向かい合わせの席に座り、
セットの焼き鳥とKeiはチューハイ、自分はビールを注文。

ヘタレ&Kei「お疲れ様〜っ!カンパ〜イ!」

下戸の自分だが、ペース守れる相手となら楽しく呑める。…でも限度はビールコップ1杯。
それでもやはり何より好きな娘との飲みだから、酒も食事も話も進む。

Kei「ヘタレさんのバイクって速そうですね、1度乗ってみたいな」

ヘタレ「…あぁ、運転する方で?Keiさん足長いし、俺より似合うかもw」

Kei「そうそうブンブ〜ン♪って…違いますよw、後ろ乗ってみたいなって思って」

ヘタレ「でもあのバイク、後ろ乗りにくいよ…それに、俺メット被ったら人格変わるかも?」

Kei「そんな〜、ヘタレさんなら、後ろ乗ってるときはちゃんと安全運転してくれそう」

ヘタレ「まぁ、2人乗りの時は後ろの人の命預かってるから、無茶しようと思わないし、
女の子は特に大事な人以外乗せたくない…乗せてもいいって思えるのはKeiさんだけかな」

Kei「ふふっ、有難うございます〜嬉しいなぁ〜♪」

むぅ…酔ってるから本気に取られてないのか…?何だかなぁ…。更に酔いはまわって、

ヘタレ「もう俺、ホントKeiさんのこと『Love♪』ですよぉ〜」

Kei「わたしもぉ〜ヘタレさん『Love♪』ですぅ〜あははぁ♪」

…もう何が何だか。そうこうしてる内にオーダーストップとなり、
自分はふらつく足取りで会計を済ませ、さほど酔ってるように見えないKeiに心配されつつ、
店を出る…が、このままでは帰れそうもないので、酔いを覚ますため2人並んで座る。

ヘタレ「あー気持ち悪い…ゴメンねホント酒弱くて…それにこんな冷たいトコで」

Kei「いいんですよ〜このままじゃヘタレさん帰れそうになさそうだし」

気分の悪さを抱えながら、隣に座ってるKeiを見る…こうして見ていると、
日頃のしっかりした印象からは考えられないほど、細く小さく、か弱く思えてくる。
それに、白い肌にサラッと伸びた黒い髪…Keiの女性的な部分を感じて、
動悸が早くなる…これは酔いの所為だけじゃないな…。かなりヤバイ。
コレっていい雰囲気なんじゃないのか…。

 手をほんの少し動かすだけで届くところにKeiがいる…抱き締めることだって容易い。
 いっそ酔いに任せて抱き締めて、想いをはっきりと伝えようか…今なら許されるかも…。

頭の中で様々な想いが葛藤を続ける。悩み続けて自分が出した結論は…

 …やっぱ、酔いに任せてなんていけないよな…素面の時にまたチャンスもあるだろ…。

少し酔いも覚めたころ、2人で立ち上がり、自転車に跨る。

Kei「ヘタレさん大丈夫ですか?気をつけて帰って下さいね」

ヘタレ「ゴメンね、ホントなら俺が送って行くぐらいでないといけないのに…」

Kei「わたしなら大丈夫ですよ♪こう見えて結構強いんですから」

走り去っていくKeiに手を振る自分。
この時はまだ、2人の関係の絶頂期が今であったことに、気づきもしなかった…。

そして後に自分は、この時の選択を…死ぬほど後悔する事になる…。

Keiとの飲みから数日後、自分が本命にしていた地元自治体の採用試験の結果が届く。
…不合格…。
腰を落ち着けようと実家に戻り、年齢制限から最後のチャンスだったため、
ひどく落ち込む…Keiも励ましメールをくれたが、それでも辛くて仕方なかった。

そして、悪い事ってのは重なるもので、母親が倒れて緊急入院し、
一歩間違えば命の危険もある状態に…手術は高確率で成功するそうだが、
今まで大きな病気になった事の無い人だから、不安ばかり大きくなる…。

そんな中でもバイトには出なければならなかったが、ミスを連発し、
やる気の無い学生バイトにまで叩かれる始末…。傍目から見てもボロボロだった事だろう。
何度かKeiと組む事があったが、迷惑かけ通しで愚痴と謝罪の言葉ばかり出てしまう…。
事情を店長とKei、Myuに話し、急ぎ休みが取らせてもらえないかと頼む。
母親の手術の前後に何とか休みはもらえたが、休みに入って2日目には他県での試験もある。
苦しい状況に、毎夜なかなか眠れず、かつて経験した鬱病に近い状態まできていた。

なんとか精神を落ち着けながら、休み前の最終日の仕事を終え、帰宅する。
…眠れない。明日は友人宅まで100km強走り、泊めてもらわなくてはならないのに…。
数時間まどろみ、明け方頃にやっと眠りについた…1時間後、携帯の音で起こされる。

社員A「ちょっと早く起きなさいよ、今から店に鍵届けてきて!」

ヘタレ「…はぁ…?なんで?」

社員A「昨日朝の人に鍵渡し忘れてたの!雨降ってるし、ヘタレはアタシより店に近いでしょ!
急いでよ!朝の人が作業できないんだから!」

…なんでよりによって今日なんだ、ふざけんな!叫びながらコートを羽織り、飛び出した。

この社員A(♀)、店長も普段から頭を抱えてるほどの問題児である…。
とかく自己中で責任感がなく、気に入った相手は贔屓し、自分や店長など気に食わない相手は、
とことん叩きたおす奴だ。…正直なんでコイツが社員になれたのか理解に苦しむ。

バイクで走れる精神状態ではなく、とりあえず自転車に乗って、人のいない道をひた走る。
頭の中は、なんでだ畜生糞ったれ…等、罵詈雑言で埋め尽くされていた。

店にたどり着き、朝の人に鍵を渡し、その人が「君が悪いわけじゃないのに…ゴメン」
なんて言うのを、まともに聞こうともせずに走り出す。自宅に着いてすぐ、
店長に電話し、泣きながら訴えた…悔しくて、辛くて。…今にして思えば、店長にとっても、
早朝に迷惑な話だったことだろう。それでも「迷惑かけたな…すまなかった」
そう言ってくれた事で、気持ちを落ち着ける事が出来た。そして、眠りについた…。

目覚めたのは約5時間後。少しは気持ちも身体も落ち着いていた。
外は雨…でも行かなきゃな。荷物を載せ、バイクに跨り走り出す。
降り頻る雨の中、心が沈み…いっそ今事故ってくたばれば、社員Aも少しは反省するだろうか…
何かあればKeiは泣いてくれるだろうか…などと考えだす。

 …でも、自分はまだKeiに想いを伝えていない。それなのに死ぬ訳にはいかないだろう?

気持ちが高ぶる。無事に戻って、Keiに告白しなきゃ!その想いだけで走り続けた。

翌日の試験は気持ちが不安定で集中出来ず、正直酷いものだった。(後日出た結果も不合格だった)
だが、Keiに告白する事を決意して、試験後、自分でも驚くほどにポジティブになっている。
…問題は、いつ告白するか?現在の自分の状況・母親の手術の事などを考慮に入れ、
約半月後のクリスマスイヴに目標を定める。…それなら、プレゼントを用意しないと。
…そういえばKeiは私服の時、ペンダントを着けていた…そうだ、これだ!

帰りに小奇麗なアクセサリショップに寄る…こんな店に入るのは勿論初めてだ。
必死に迷い続ける…どんなのがKeiに似合うだろう?自分のセンスで本当に大丈夫なのか?
普段、自分の買い物の時に迷う事は少ないが、好きな人の為にとなると、
なかなか決まらないものだ…うーんどうしたものか。
小一時間ほど悩んで、2つのリングを通したペンダントに決める。

店員「ご自分で着けられるんですか?」

ヘタレ「いえ、女性にプレゼントするんです」

店員「これ男女問わず人気あるんですよ〜、もしかしてクリスマスに?ではラッピングしますね」

店員の言葉が只のセールストークなのか、本音なのかは分からなかったが、安心は出来た。
綺麗ににラッピングされた箱を、大切にバッグに入れ、バイクに跨り家路を急いだ。

母親の手術も無事に成功し、報告とシフトの確認を兼ねて店を訪れる。店にはKeiとMyuがいた。
シフトを見ると、24日…KeiとMyu?てかイヴに女の子2人でバイトするんですか?

Kei「ゼミもやんなきゃならないし、イヴに用事も無いですから…みんな入りたがらないしね」

Myu「バイトの後、サークルのパーティに出ますけど、Keiさんとラヴラヴバイトです♪」

ヘタレ「そうなの?それじゃ、閉店してから手作りケーキもってお邪魔してもいいかな?」

Kei&Myu「ホントですか?食べたいです〜♪」

ヘタレ「味の保障はしないけどね…それでも良ければ」

約束も出来た、自信は無いが当たって砕けるしかない!…そして、クリスマスイヴを迎える。


迎えた12月24日、自分は朝から忙しく作業に追われていた。
偉そうに「手作りケーキ持っていく」なんていった手前、失敗するわけにもいかない。
まぁケーキといっても、オーブンレンジなんて良い物は持ち合わせていないので、
冷やして作れるレア・チーズケーキなんだが…当時の自分にとっての精一杯である。

そんなこんなでケーキも出来上がり、雪だるまのトッピング(らしきもの)を施して、
後は向こうで頭にイチゴ載せれば、サンタっぽく見えなくも無いだろう…。
あとはプレゼント。KeiだけでなくMyuもいるので、ちゃんと用意してある。
2人に渡すプレゼントと…Keiだけに渡す特別なプレゼント。
Myuは後から用事あるって言ってたし、Keiと2人になれるチャンスはあるはず。

タンクバッグに大切にケーキを入れ、プレゼントも入れてバイクに跨る。
いよいよ勝負だなぁ…と星も見えない空を見上げて独り思う。
夜になっても、煌びやかなイルミネーションが消えぬ街を走り抜けた。
閉店作業の始まった店に到着。中では2人が忙しそうに働いている。

ヘタレ「お疲れ様〜閉店作業進んでる?」

Kei&Myu「あっ、ヘタレさんいらっしゃいませ〜♪」

ヘタレ「俺も手伝うよ、3人でやったら早く終わるし、Myuさん用事あるんだから急ごうか」

Kei&Myu「ありがとうございま〜す、頑張りましょ〜」

普段からも手際の良いKeiとMyuのコンビである、閉店作業はとても早く進んだ。

Kei「あ〜もう終わりましたね、お疲れ様です♪」

Myu「あっそうだ、ヘタレさんケーキ作ってきたんですよね、楽しみにしてたんですよ〜」

用意してきたケーキにイチゴを載せ、最後の仕上げ。KeiとMyuのもとに運ぶ。

Myu「わぁ〜雪だるま可愛い♪ヘタレさんすごいですね〜」

Kei「ホントすごいですね、こんなの作れるんだ〜」

切り分けて食べる。うん、味も悪くないし、うまく固まってる…個人的には合格点だ。
KeiとMyuも喜んでくれてるみたいだし、まぁコレは成功かな。

ヘタレ「あと、クリスマスイヴだから、そんな大したモンでもないけどプレゼント」

Kei&Myu「わぁ〜♪ありがとうございます〜」

贈ったのは、ぬいぐるみとデスク用のミニカレンダー。ホントに大した事無くて申し訳なく思う。
それでも2人は喜んでくれた。そんな気持ちが嬉しい。ケーキを食べつつ喋りながら過ごす。

Myu「あ、そろそろわたし行かなくちゃ、着替えてきますね」

心の中でキタキタキタ――チャンスキタ――と叫びつつ冷静に装って、

ヘタレ「んじゃ使った皿や包丁洗っとくね」

Kei「わたしも手伝いますよ〜一緒に美味しいケーキ頂きましたし♪」

2人で洗い終えたあと、Keiも着替えに行くという。入れ替わりにMyuが出てきた。

Myu「ヘタレサンタさん、ケーキとプレゼントありがとうございました♪お疲れ様で〜す」

これで店には自分とKeiの2人だけ。折角めぐってきたチャンス、後には退けない…。

Keiが事務所から出てくるまでの間、必死に気持ちを落ち着けようとする自分。
…あぁ、プレゼント用意しなきゃ、ちゃんと渡さんと意味無いし。
自分から告白するなんて3年振りだし、キョドらずにちゃんと想いを伝えられるだろうか…。
あ〜ホントどうしよう…って全然落ち着いてねぇな自分…情けない。
そんなことを妄想(?)している内に、事務所のドアが開く音がする…Keiだ。
プレゼントを手に、Keiのそばへ向かう。

ヘタレ「…あの、これ…Keiさんだけに、本当のプレゼント…受け取ってもらえるかな」

Kei「えっ…ホントですか?ありがとうございます!早速開けちゃっていいですか?
……すごい、可愛いペンダント…ヘタレさんが選んでくれたんですか?」

ヘタレ「…うん、それと、コレ文字が刻んであって…『持つ人に希望と幸福を』みたいな感じの」

Kei「ホントにありがとうございます…大事にしますね」

ヘタレ「…あの…Keiさん…」

Kei「はい?」

…あぁ、無茶苦茶緊張してきた。手や足が震えてるのが自分でも分かる。
でも、伝えなきゃ…わざわざプレゼントやケーキを用意したのは何のためだ?
自分の今の、Keiへの想いを伝えるためにしてきた事だろう?

…高ぶる気持ちを何とか押さえながら、覚悟を決めて一呼吸入れる。

ヘタレ「…俺…Keiさんのこと…好きだ!」

Kei「えっ…ええぇっ!?」

ヘタレ「バイト仲間とか、友達とかじゃなくて…ちゃんと彼氏として、男として見て欲しいんだ」

Kei「……変な声出しちゃってゴメンなさい…今、ヘタレさんが『好きだ』って言ってくれるまで、
わたし…ヘタレさんに妹みたいにしか思われてないと思ってました…」

ヘタレ「そんな…俺はずっとKeiさんのこと、1人の女性としてしか見てなかったのに…」

Kei「『好きだ』って言ってくれた事はすごく嬉しいです…でも、少し考えさせてくれませんか?」

ヘタレ「…そっか、ワガママ言って申し訳ないけど、出来れば年内に返事…もらえないかな」

Kei「…分かりました…それじゃ30日に店来てくれませんか?わたしシフト入ってるし、
確かヘタレさん休みでしたよね…それまでに…気持ち、整理しておきますから」

ヘタレ「…分かった、それでいいよ」

Kei「そんな暗い顔しないで下さい…告白してくれた時のヘタレさんカッコよかったですよ、
それに、本気で好きになってくれる人がいるって、すごく嬉しいことですから」

ヘタレ「…うん、ありがと…それじゃ帰ろうか」

…正直動揺していた。フラれるかうまくいくかの二択しかないって思ってたから。
こんな展開予想してなかったぞ…どうなっちゃうんだろう…。
ひたすら悩みながらバイクを走らせ、家に向かうしか出来なかった。

家に帰っても何もする気も起きず、ひたすら眠った…。

Keiが答えを出してくれる30日までは、ひどく長く感じられた。蛇の生殺しの気分だった。
毎日バイトに入っていたが、時間が経つのが遅い…それでもなんとか仕事をこなしていた。

…そんな中、Keiの言った言葉について想いをめぐらせていた。
『妹みたいにしか思われてない』だって?何故なんだ?どういう事なんだ?
ずっと頭に引っかかっていた。いくら考えても理由が思いつかない…。

ふと、Keiと2人で飲みに行った時のことを思い出す。

 …あの時、もしかしてものすごいチャンスだったんでは?
 自分の気持ちを押さえずに、想いを伝えてた方が良かったんでは?
 いい雰囲気だったのに、何もしなかった事で、Keiも女として見られていないと思ったのでは?

 …自分は…とんでもないバカで…ヘタレ野郎だ…

Keiの心の事なんで、真実はどうだか分からない。でも、自分に考えつく大きな理由は他に無かった。
どうしようもなく凹み、ひたすらに自分を責め続ける日々…。

そうして過ごしながら、迎えた30日。朝から実家の大掃除に駆り出される。
気分的には何もしたくなかったが、母親も退院して日が浅く、まだ十分に動ける状態でもない。
自分がやらなきゃな。ささくれた心を抱えたまま、ひたすら働く…が着る服の選択を間違えた。
気に入った服をスプレーの塩素でシミだらけに…あぁ最悪だ。

更に凹んでいたが、自分が招いた事、誰を恨む事も出来ない。
もう正直、フラれることしか考えてなかった…諦めの気持ちばかりだった。
それでも、ハッキリとした答えを聞かなきゃ…その想いだけでバイクに跨り、
店へ向かいひたすら走った。

店に着いたのは、閉店作業も終わりかけたころ。Keiと今日組んでる人は終電あるから、
多分すぐ帰るだろ…そう思って店に入る。取りあえずシフト確認に来た事にして、奥の席に座る。
Keiは事務所にいるらしい。まもなく作業は終わったようで、相棒の人が、
「終わりましたぁ〜、ヘタレさん来てますよ」と言いながら事務所に入って行く。
Keiはまだ事務所でパソコン打ってるらしく、出てくる気配なし。
先に相棒の人が出てきて「お疲れ様でした〜」と帰っていく。するとKeiがチョコっと顔を出して、

Kei「お待たせしてゴメンなさい…あと少しで終わりますんで」

Keiを待つ間、これまでの事を思い返していた。Keiを必死に説得した時の事。
何度かデートした事。2人で飲みに行った時の事…あぁ、やっぱ悔やまれるなぁ…。
でも、今更巻き戻せない…今の現実を受け入れないと…不思議に落ち着いてきていた。
もうほとんど諦めていたから…かもしれない。覚悟が出来てる、ってことかな。
…20分程して、Keiが事務所から出てきた。

Kei「すみません…遅くなっちゃいまして」

ヘタレ「いーよいーよ気にしないで、なんかいっぱい仕事あったんだね」

Kei「はい、今日は発注するものとか多くて」

ヘタレ「そうだったんだ…お疲れ様」

…会話が止まる。気まずいなぁ…。2人揃ってうつむいて、静まりかえっている。
何とか話を進めないと…と自分から沈黙を破る。

ヘタレ「…この間の…答え…聞かせてもらっていいかな…?」

Kei「…はい…いろいろ考えました、『好きだ』って言ってくれたのも嬉しかったです…
……でも…今は付き合うとか…そういうの考えられなくて…色んな事を抱え込んでるし…
だから…ヘタレさんのことも…友達としてしか…」

ヘタレ「……そっか…じゃぁ仕方ない、か…ありがと、ちゃんと答えてくれて」

Kei「本当にゴメンなさい…ヘタレさんすごく優しくていい人だから…申し訳なくて…」

ヘタレ「そんなに謝らないで…俺こそゴメン…大変な時期に、こんなに悩ませて…」

Kei「…ホントヘタレさん優しいんだから…ありがとうございます…」

喋り始めた時には、泣き出しそうなほど険しい表情だったKeiだが、少し笑顔が戻る。

ヘタレ「…はは、やっぱKeiさん笑ってるのが一番可愛いよ」

Kei「もう…何言ってるんですか…ふふふ…」

…友達として…優しくていい人…か…。毎度こんな役回りばっかだな…。
心で思いながら、2人で店を出る。

Kei「わたし、明日実家帰りますんで…ヘタレさんどうぞ良いお年を!」

ヘタレ「うん、Keiさんも良いお年を!」

そっか…今年ももう終わりか…結局何も叶わない1年だったなぁ…就職も…恋愛も…。
来年は…いい年になんのかなぁ…?そう思いながらバイクに近づく。
また…相棒はお前だけに…なっちゃったなぁ…。セルを回すとすぐにエンジンがかかり、
バイクに跨り走り出す。辛いはずなのに、不思議と涙は出なかった…。

年明けから、自分はほとんど休み無く働いていた。途中で風邪引いて休みもらったのを足して、
1月の休みは計3日。そんな中で、新しい事を始めようと、月末には大型二輪免許を取りに、
教習所にも通っていた。まぁ、教習の楽しさが救いだったともいえるが。

Keiとの関係とはいうと、一緒に入る時には話はするけど、ゼミの期限が迫っているため、
会う事も少なかった。メールも時々送ったりはしてたが、返事はまばらだった…。
まぁ忙しいんだし…くらいに思っていた。それでも、ゼミ終わったら打ち上げしようって、
約束をしていて期待もあった。…だがそれも…Keiが「気分が乗らなくて…」とか、
「友達との外せない約束が出来て…」とか言ってお流れになっていた。

2月のある日、自分はMyuと組んでバイトだった。お客さんの入りも落ち着き、Myuが話し出す。

Myu「もうすぐバレンタインですよね〜わたし望み薄だけど、大学の先輩にあげようと思って…
…あ、そういえば、Keiさんもイイ感じの人いるみたいですよ〜大学に」

ヘタレ「…えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!マジで!?」

Myu「…へ?……まさかわたし…地雷…踏んじゃいました…か…?」

…どうやらMyuは自分とKeiとの間の事を本気で知らなかったらしい…仕方ないんで、
告ってフラれたことをかいつまんで話す…。

Myu「…そうですか…よく2人だけでご飯食べに行ってたし、イヴの時ヘタレさんの様子が違ってたから、
もしかして…くらいには思ってましたけど…ホントゴメンなさい…余計な事言って…」

ヘタレ「いや、謝る事じゃないよ…まぁ…かえって諦めもつくかな…」

聞いてみると、12月半ば辺りからその相手とは仲良くなってたらしい…あーもしかして、
その相手と秤にかけられてたのかも…なんて思い、ひたすら凹む。
Myuはいろいろフォローやら励ましやらくれたけど…辛いことには変わりなかった…。

…結局バレンタイン当日は風邪でフラフラの中バイト。途中でシフトを見にKeiが来て、
事務室の荷物のところに「頑張り屋のヘタレさんへ」と手紙の着いた義理チョコを置いていった。
お礼のメールを送ったが、いつまでたってもKeiからの返事は無かった…。

大型二輪免許も取れたが、祝ってくれる人さえもいない…自分に残った楽しみは、
2月末にバイトを辞め、3月にバイクで独り旅をしようと計画している事。
Keiにフラれた事とか、辛かった事とか全部忘れて、気持ちを切り替えよう…。
必要な道具は揃えてきていた…が予想外の形で叶わぬ事となる。

月末にかかってきた電話…4月からの臨時職員の採用試験を受けていた自治体からだ。
「急に3月に人手が必要になった…申し訳ないが、3月1日から1ヶ月来てくれないか」
正直悩んだ…が現場復帰のチャンス…断れようはずも無い。気持ちを切り替える暇もないんだなぁ…。

バイト最終日、同じく最終日だったKeiと組む事に。滞りなく仕事は片付き、

Kei「ヘタレさん、お疲れ様です〜お互い、今日でこのバイトとお別れですね〜」

ヘタレ「ああ、お疲れ様、大変だったけど結構楽しかったよ…Keiさんは3年ちょっと働いたんだよね、
それだけ頑張って来れたんなら、きっと就職しても大丈夫だよ」

Kei「ありがとうございます♪頑張りますからヘタレさんも頑張って下さいね」

ヘタレ「うん……Keiさん、ずっと迷惑かけてきてゴメン…いろいろ本当に有難う…それじゃ」

後ろ手に手を振り、振り返らずに走り出す。自宅についてみると、Keiからのメールが届いてた。
『そんな、最後のお別れみたいなこと言わないで下さい…会おうと思えば会えるじゃないですか』
返信はしなかった…だってもう自分の心は届かない…Keiの心の中にも自分は居ないんだから…。

…自分は、携帯に入ってたKeiの番号とアドレス、メールのデータを全て消した…。



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