− ヒロ◆bEwXqsQAjo さんの恋愛話(その2) −
| 短大に入学してからあの子と初めて会ったのは一番最初の授業が始まった時だった。
男は三割くらいしかいなくて女の子が七割を占めるこの学校で彼女を初めて見た時におれは 「随分見た目の若い子がいるなぁ」 とそんなようなことを思ってた気がする。 ちょっと話し掛けてみたら名前は理恵(字だけ変えてます)と言っていた。 長い髪を薄く茶色に染めてるのが印象的なとても可愛らしい子で背は170あるおれの肩をちょっと越えるくらい 150あるかないかだろうか? あまり背は高くない。 まだ話すこと自体初めてだし何を話していいかもわからなかった。 特に何かを話したわけでもなくその日はもう授業がないこともありパソコンで遊んでから帰宅した。 当時(とは言っても二年弱ほど前)はまだ千尋さんのことが尾を引いていて自分から女の子との関わり合いを遠ざけていたし短大の女の子ばかりという空間は苦痛でしかなかった。 「仲良くなってからまたあんなことになったら・・・だったら何もないままの方がいい」 そんな気持ちがあった。 それだけあの日の影響はでかいものだった。 それでも何度か授業で一緒になるうちに自然と話す回数も多くなった。 ある時バイクの話になった。 「私ねぇ、いつかナナハンのバイクに乗りたいんだ」 「おお!頑張るねぇ」 「頑張るよぉ」 「まぁおれもいつかは大型に乗りたいけどね」 そんな話をしてから初めてバイクが好きな女の子に出会ったこともあって理恵ちゃんのことが気になりだしてきた。 ただ昔のことがあるからなかなか一歩先へは行けないでいた。 当時はどうしても踏み出す勇気というものが持てなかった。 夏休みを挟んで後期の授業が始まってからは少しずつ話し掛けるように心がけた。 時間をかけてもいいから理恵ちゃんともっと話せるようになりたい こう思えるようになったのは不思議だった。 あれだけ女の子との関わり合いを避け続けていたのに。 何がそうさせたのか それは今もわからない 帰り道に理恵ちゃん運転の車と信号で並べば手を振ってくれた。 「優しい子だなぁ」 そんなことの積み重ねで少しずつ気持ちは理恵ちゃんへと傾いていく。 この年のクリスマスの日にゼミのクリスマス会がありプレゼント交換で理恵ちゃんへおれが持ってきた小さなぬいぐるみ付きのマグカップが回った。 喜んでもらって嬉しかった。 二年になって中型の免許を取ってホーネットを買ってから初めて学校へ行った時に理恵ちゃんが話し掛けてきた。 「新しいバイク大きいね、排気量はいくつ?」 「250だけど」 「わりと小さいんだ」 「あのバイクは600のと作りが一緒だから」 教室の窓から駐輪場へ行く道が見えるためおれが通ったのが見えたのだろうと思われるようなことを聞いてきた。 今まではエイプに乗ってたし新しいバイクのことは何も言ってなくていきなりデカイのに乗ってきたから驚いてたのかもしれない。 普通ならここで 「いつか後ろに乗ってみる?」 とか言うだろう。 だけど言う気になれなかった。 いくら気持ちは傾いてきてるとはいえまだそれを気軽に言えるような状態じゃなかった。 それから夏休みが過ぎて後期の授業が始まった頃くらいからよく行くゲーセンに生茶のパンダがUFOキャッチャーの景品で入るようになった。 UFOキャッチャーは得意で生茶パンダを集めだしてから青と黒と茶を三つ並べて携帯のカメラで撮った写真を理恵ちゃんに見せれば 「かわいい」 と言ってる。 「ほしいならあげるよ、いっぱいあるし」 とおれが言えば 「ほんとに?ありがとう」 と嬉しそうな顔で喜んでる いい顔する子だななんて思ってた。 次の週の火曜日に渡す約束をしていて昼時に会ったから茶と青のパンダを見せた。 「かわいい〜!どっちにしようかなぁ?」 「いいよ両方で」 「いいの?お金結構かかってるんじゃない?」 「二つで500円くらいだからそんなでもないよ」 「じゃあ500円払うよ」 「いいよお金は、気にしないで」 「ほんとに?両方ともでありがとう〜」 今まで見たこともないくらい嬉しそうな顔で喜んでた。 「こんなに喜んでるなんて持ってきてよかった」 と思えた こうやって集めてたのを小出しに渡してた。 そのたびに嬉しそうに喜んでる理恵ちゃんを見てるうちに少しずつ鬱状態は改善していった。 そのおかげで理恵ちゃんが気になる子から好きな子へと変わっていった。 理恵ちゃんからウシくんとカエルくんのを取ってきてと頼まれたこともあった。 何日かして取れてから渡すとこれ以上はないってくらいに喜んでた。 「取れたんだ、すごいよ。ありがとう」 「ちょっと時間かかっちゃったのはごめんね」 「いいよ、ほんとにありがとう」 こんなに喜んでる女の子は初めて見れた。 小さい子供がほしいオモチャを買ってもらえた時のような心の底から喜んでるそんな顔をしてる。 昔を引きずってたおれにはもったいないくらいの笑顔だった。 そのもったいないくらいの笑顔はおれにとって救いの笑顔になった。 心に残る迷いやもやもやしたものがあの笑顔のおかげでなくなって行く 一寸先も見えないような闇の世界に突然表れた小さな光のように理恵ちゃんの笑顔から迷いを振り切るきっかけをもらった。 「好きだって言いたかった」 「もっとちゃんと話したかった」 って後悔するくらいなら何も見えなくなるくらいに好きになろうって思うようになった。 ここまで来るのにもまた人を好きになれるようになるのにもだいぶ時間はかかった。 1999年10月12日で止まっていた時計は少しずつでも動きだしてきてる。 それに考え方も変わった。 昔のおれはあの日 千尋さんと一緒にあの世へ旅立ったのだと。 今のおれはだいぶ昔とは違ってきてる。 考え方が変われば性格も次第に変わってくることもわかった。 だけど時間がかかりすぎた。 短大の卒業式が近くなるにつれ学校へ行くことも少なくなり理恵ちゃんと話したくても会えないから話す機会自体がなかった 3月19日の金曜日は短大の卒業式。 学校も終われば理恵ちゃんに会えなくなる 少し焦りはあった。 卒業式が終わってから謝恩会の時に理恵ちゃんの携番やメアドを聞けた。 これでもう会えなくなるという事態はなんとか避けられるかな? これから少しずつメールしたり電話したりしていつか理恵ちゃんにほんの少しでも鬱から抜け出せた恩返しがしたい それができたらその時が完璧に鬱から抜け出せる時なんだと思う。 そうしたら完璧に立ち直ったことを千尋さんの所へ報告に行きたい 理恵ちゃんには千尋さんのことを話したい メットも用意したし 「バイクの後ろに乗ってみない?」 とも聞きたい 気になることはここまで来るのにこれだけ時間のかかったおれは千尋さんに許してもらえるのだろうか? いつも帰り際に好きだよって言ってから帰るのに他の人を好きになる浮気性でいいのだろうか? 答えはこれから自分で見つけるしかない。 自分の生きる道を見ていこう。 いつか今までを振り返った時に何かわかるかもしれない。 5年後 10年後 20年後 いつになるかはわからない。 わかった時におれは何をしてるのだろう? バイクに乗っている時なのか それとも飯を食ってる時なのか タバコを吸ってる時か 後先のことを考えるなんて器用なことのできないおれが考えたってわかるわけはない それよりも好きな映画の台詞 「運命なんてものはない、未来は自分で作るものなんだ」 という言葉を覚えていよう また前みたいに後悔しっぱなしにならないように とりあえず後日談はこんなところです これは今現在のことなので理恵ちゃんとはこれからどうなるかはわかりません 理恵ちゃんとメールしたり電話で話してる時が今は一番楽しいです もし付き合えたらバイクでどこに行こうかななんて一人で考えてます そんなにうまく行かないかもしれませんがね |