− 唐揚げ定食◆HiW/z4M4x. さんの恋愛話 −
| その出来事は、今からおよそ6〜7年前の話。 当時、俺には好きな子がいた。 仮に名前を「麻子」としよう。 同い年で・・・ なんつーかな、思いっきり笑顔が眩しい、そんな子だったよ。 嬉しかったり、楽しかったり、感動したり、悲しかったり、 そんな時、気持ちを顔いっぱいに表現してたな。 その頃の俺はまだ20になるか、ならないか。 大人にはなりきれないし、子供でもいられない。 中途半端で我が侭な、遊んで暮らすいい加減なヤツだった。 ひょんな事から仲良くなって、 お互い意識してた事もあってか、 二人が付き合いだすまでにさほど長い時間は要さなかった。 楽しかったなぁ、毎日のように逢って、 二人で何でもないことを遅くまでだべったり。 猿みたいにセックスして、色んな場所に行って、 くだらないことで沢山笑ったり泣いたりしてたっけ。 彼女はお酒を飲む度に、 当時流行の七分丈の短いカットソーを目一杯引っ張って腕を隠してた。 麻子「お酒を飲むと、浮かんでくるのよ。前にオートバイで転んだ傷の跡が」 彼女の二の腕より下には赤い痣が浮かんでいた。 彼女の傷は、原付で転倒した際についたもので、 実際、相当深かったモノらしい。 その頃、俺は車の免許しか持っておらず、 どちらかといえば、この板でよく叩かれる「四輪DQN」の典型だった。 バイクに興味も理解も無かった。 友達の後ろに乗っかって「こりゃあ、おっかねえ乗り物だ」位しか思わなかった。 だからということもあってか、 俺「バイクは危ないから乗るなよ、お前運動神経アレだし、 怪我でもするんじゃないかと思うと心配だよ」 と、事ある毎にバイクに否定的な立場をとっていた。 麻子「でも、あたし原付しか乗れないし(普通免許持ち) そんなにスピード出さないから大丈夫だよ。 大体、今、原付も持ってないし。」 俺「友達にスピード出してなくても骨折したヤツいるぜ (実話バンディットで、転けて骨折したw) 兎に角、危ないから乗らない方が良いよ」 思えばそれは、束縛だったし、嫉妬だったような気がする。 彼女はとても行動的で、 そんな彼女の原付買って何処にでも行っちゃいそうなバイタリティーに、 無気力気味だった当時の俺は嫉妬していた。 交際も一年を過ぎた頃、彼女は大学の校舎移動の為、 自転車通学が困難になり、通学の足として原付を購入したいと言い出した。 かなり言い合ったよ、 お互い頑固だったから、意地張っちゃってさ。 特に俺は馬鹿で(今も変わらないかも知れないけど)相手の気持ちを理解しないヤツだったし。 口論も白熱して、別れそうになっちゃったり。 お互い予定が合わなくて、逢える機会が減っていく中、 このままどっかに麻子が消えていくんじゃないかと、不安な自分でいっぱいいっぱいだった。 今にしてみればホント、みっともなくて、情けない話なんだけど。 そんなくだらない喧嘩の後、少し逢わない時間が続いた。 次に会ったとき、彼女は紺色のモペッドに乗っていたよ。 なんつーかなぁ、カッときたよね。 あんだけ口論になって、結局お前はそれに乗るんかい!!みたいな。 彼女の意志で、彼女の金で、彼女の為に、彼女がそれに乗る事に何一つおかしな事は無いのにね。 結局俺は自分のことしか考えてない、自己中心小僧だったわけだ、うん。 別にそれでも彼女とは続いたよ、何となく、だらだらした関係に変わっていったけど。 だらだらと惰性にも似た関係に変わっても、続いていくならそれこそが真実だ。 愛し合っていても、状況的に続かないで終わるなら、それはその程度の関係だ。 今も昔も俺はそう思う。 結局はじめの一年間が燃え上がるような恋愛だっただけに、 惰性に変わってしまってからの関係は一年弱しか続かなかったよ。 嫉妬深く、寂しがりやで、感情的で、頑固で馬鹿な、そんな俺を好きだと言ってくれたのにさ。 麻子は最後まで俺の我が侭な性格と折り合いをつけようとし、 俺の愚かさを理解し、受け止めようとしてくれていた。 俺は最後まで麻子を理解し、受け止める術を持てなかった。 いや、持とうとすらしなかったのかもしれないね。 喧嘩する度、意地の張り合い、小競り合い。 何度も何度も壊れそうになる度に、二人は関係を取り繕おうとしてた。 いつしか流される俺はそれすらも面倒になって遂には尻捲って全てを放棄した。 ぶっちゃけ、恥ずかしかったよ。 俺に対して、ひたむきに接しようとする麻子と、俺を見比べると。 なんか、自分が子供だって事を思い知らされて、恥ずかしかった。 その恥ずかしさから逃げるのが、当時の俺の出した結論だった。 目一杯努力してもダメなら、仕方ないか そんな風に思う事ってあるじゃない? 清々しい、晴れやかな後味だったりするじゃない? でも 自分の出来る精一杯の努力をせずに諦めた人間に残るモノってさ、 凄く惨めで、何かウジウジして、すっきりしない気持ちだったりするよね。 自分で逃げ出した癖に、妙に後まで引きずって。 「俺は間違えた行動をとったんじゃないか?」 と、何時までもモヤモヤした疑念が残ってさ。 何となく彼女と釣り合いそうな服装ににしてみたり、 彼女が好きそうな小物を部屋に置いてみたり。 彼女が好きな、文学や芸術に触れてみたりしていた。 何やってんだろうね、ホント(w でも、不思議と復縁を迫る気にはならなかった。 や、逃げ出したのが自分だってわかってるから、それだけは出来ないことが判ってた。 その頃、毎晩とまではいかないにせよ、訳のわからん悪夢に魘される日々が続いた。 例えば・・・ 麻子が事故で亡くなり、教会の葬儀に行く夢。 葬儀の場で、共通の友人「恵理(仮名)」が言うには、 「彼女、バイクで転んで煮えたぎった油の釜に落ちて、唐揚げになったの・・・」 棺の中で包帯グルグル巻きで、変なポーズをとったまま唐揚げ状態の麻子の亡骸。 後ろを振り向けば麻子の父親が、御盆に一杯の鳥の唐揚げを持って そりゃあもう、凄いご面相で 「娘が死んだのはお前のせいだ!食え!唐揚げを食って、喰い死ね!!」 と、口にぎゅうぎゅう唐揚げを押し込まれて息苦しくなったところで目が覚めた。 それから、ごく最近までは唐揚げを見るのも嫌だったよw。 そうやってうだつの上がらない暮らしを続けながら、 いくつかの季節が過ぎた。 中途半端で我が侭な、いい加減だった俺も、少しずつ大人になっていった。 他人の気持ちを理解できない自分が嫌で、砂を噛むような夜を過ごす程に、 厭世的になり、あまりニコニコ笑うこともなくなっていった。 段々、暗く沈んだ雰囲気になった俺なんだけど、 そんな俺を愛してくれる優しい人もいたのですよ。 その子とは今も付き合ってるんだけど、 仮に名前を「ユキ」としておこう。 彼女は幾分年下で、年齢以上に子供っぽいところのある「困ったちゃん」な女の子だ。 彼女の我が侭に振り回されていくうちに、 彼女を愚かな昔の自分と重ねて、 何だか恥ずかしいような、愛おしいような気持ちになっていった。 「あの頃の俺はこんな感じだったなぁ」と顔を赤らめたり 「あの頃麻子は俺をこんな気持ちで見つめていたのかなぁ」と思ったり もう、復縁に対する未練は微塵も残ってなかったけど、 何処かで麻子のことを考えるのを止めようとはしなかった。 少しずつ、あの頃の麻子のことを理解しようとしていた。 理解したからどうって事も特に無いんだけど。 相手の気持ちを理解しようともしなかった過去の自分に対する、 けじめをつけたいというか・・・自己満足的な行為だったよ。 そういう日々の中、ある興味が湧いた。 その興味とは、 「あの頃麻子は、どんな気持ちでバイクに乗っていたんだろう? バイクに乗ってどんな景色を見ていたのだろう?」 何だか無性にバイクに乗ってみたくなった。 免許を取りに行きたくなった。 ユキに免許を取りに行くことを伝えたら驚いていた。 ユキ「どしたの?急に。バイクなんて興味ないって言ってたじゃない?」 俺「姉さんの子供が仮面ライダーの大ファンでさ、俺も好きなんだけど。 それで、変身ベルト買ってあげて、そしたら お兄ちゃんは仮面ライダー(アギト?クウガかな?)だって言い出してさ。 (何故だろう?ベルトを持っていたからか??顔がイケメンなのかっw!?) 甥も喜ぶだろうし仮面ライダーみたくバイク乗ってみようかなって思ったんだ。」 嘘だ。 確かに変身ベルトを買って、甥が俺を仮面ライダーだ!と言ってたのは事実だが。 一緒に仮面ライダーを見てて、成田兄弟のバイクアクションに惚れたのも事実だが。 そんなことは免許を取る理由でも何でもない。 だからといって、本当の理由を話すのもどうかと思ったし、 結局俺は、そんな嘘を十万払って免許とる建て前にした。 しかし彼女の反応は、 ユキ「へー、優しいお兄ちゃんだね!いいよ、あたしも後ろに乗せてね〜」 とまあ、鵜呑みにしちゃったようで。 本当の理由なんてとても口には出来なかった。 車の免許しか持っておらず、ミッション原付にすら乗ったことのない俺には、 教習は決して楽なモノではなかった。 とはいえ 学科教習が無いから、仕事の合間2週間で取っちゃったんだけどね。 仮面ライダーといえば、オフロードバイクだろ!と。 免許取得後、早速バイク屋に行きXR250を購入した。 当初の予定ではDR-Z400かKLX250を予定していたんだけど、 教習期間中にユキと二人でバイクカタログを眺めて、 「どれがいいかなぁ?」と、意見を聞いていたときに、 「KLX(及び川重緑系全般)は虫っぽいからやだ、DR-Zは黄色いから無理」 と、一蹴されてしまった・・・ ユキはカタログを眺めて、 「あ、これ可愛い。これにしなよ!」 と指さしたのは、Vogue。麻子のモペッドだ。 俺「いやー、これじゃ免許とった意味無いし。だいいち仮面ライダーぽくないよ。」 ユキ「じゃあこれは?これかっこいいじゃん。これにしなよ!」 と、VARADERO。 俺「それは普通二輪じゃ乗れないし。だいいち高くて買えないよ。」 ~他にも色々あったのだが割愛~ ユキ「うーん、じゃあこれしかないね、これに決まり!」 とCR250・・・レーサーかよっ! 俺「うん・・・じゃあこれね」 で、結局XR250。しかも、旧式(当時はまだCR風の現行XRはない)。 実際違いは判らないようで、 ユキ「あたしが言ったヤツ(CR250)買ったんだー!うれしい、ふふふ〜」と喜んでました。 その後は、どっぷりとバイクにはまり、 色んなところを走り、旅し、色んな人に出会い、バイク板に出入りして(w 少しずつではあるけど、 以前のような自分勝手な我が侭さを段々失っていった。 ゆっくり変わっていく自分を見つめる度に思うことがある。 「麻子が愛した俺は、もう、いないのかも知れんな。」 おかしな話だけど麻子は、愚かで我が侭な俺を「人間らしい」と評価していた。 今の俺が非人間的だとは言わないけれど、 当時の俺と今の俺は、随分遠いところにいるような気がする。 これでいいはずなのに、何故か寂しかったり、悲しかったりするのはユキには内緒だ。 ちなみに姉には第二子として娘(俺にとっては姪)が生まれた。 名前は「亜沙子(仮名)」字は違うけど、読みは同じだ。 姉さん・・・酷だぜ(w 大体、この辺で、話は終わりになっちゃうんだけど。 ごく最近の話・・・ お互い住んでいる場所が近いせいか、ごく稀に街で麻子と会うことがある。 いつも下を向いて歩いているので、 俺は「よっ!」と、自分に出来る精一杯の笑顔で挨拶をする。 離別以降、疎遠になってしまって謝罪する機会すらなかった俺としては、 きちんと謝罪したかった。 恋人同士だった過去に自分なりのけじめをつけて、 未だ燻る、心のモヤモヤとの決別をするために。 自分のため、麻子のため、ユキのために。 でも、 麻子はチラッとこっちを見ては会釈も無しに足早に去っていく。 当 然 と い え ば 当 然 だ 仕方ないから、見かけても声を掛けることは諦めることにした。 最近、知人の通夜で麻子と俺の共通の友人、 恵理と久方ぶりに再会し、帰りに二人で飲みに行った。 最近のこと、仕事のこと、恋のこと とりとめのない話を肴にちびちび酒を飲んでいたとき、 恵理が急に 「そういえば麻子のことなんだけどね・・・」 ドキッとした。 次の言葉が気になった。 結婚か?妊娠か?事故か?唐揚げか? 俺は平静を装って、 「ん?麻子、どうかしたの?」 恵理「最近連絡がとれないの。 他の友達から聞いた話なんだけど、 仕事も辞めたみたいで、何だか大変みたいよ。」 俺 「どういうことさね?」 恵理「んー、あんたには言いづらい話になっちゃうけどねー」 俺 「じらすない、そこまで話したら、最後まで話そうよ」 気になるような、聞きたくないような。 何とも微妙な空気が、酒の席に漂っていた。 恵理「麻子、ちょっと前に彼氏と別れたらしいのよ。」 俺 「そりゃ、なんでまた?」 恵理「遠距離恋愛だったんだけど、彼氏がこっちに来たみたいで、 会う機会が増えてきた途端に本性を現したんだって。」 俺 「本性?なんだそりゃ?」 恵理「昔のあんたみたい、いや、あんた以上らしいよ。 要するに束縛の嵐、暴力なんかも振るわれたらしいよ。」 俺 「俺は暴力は・・・」 恵理「あんたは束縛しかしてないけど、その遠距離君が、よ。」 俺 「はあ、それで別れた、と。」 恵理「で、あの子実家じゃない? ストーカー被害にもあったみたいよ。」 俺 「そりゃあ、ちょっと・・・非道い話だねえ」 恵理「それに不景気の煽りもあってお父さんもリストラされたみたいで。 麻子も仕事辞めちゃったし、家も大変みたいなの。 なんか麻子、やつれちゃってるらしいよ・・・可哀想だよ。」 俺 「・・・(つーか、お前やけに詳しいな。連絡とれないんじゃないのか?)」 恵理「あんたはいいよねー 何だか可愛い彼女連れてさ、仕事もまあ順調そうで、金回りも良さそうだし。 またバイク買うんだって?麻子、原付処分したらしいよ。」 俺 「・・・連絡とれないんじゃないのw?なんか近況詳しすぎない?」 恵理「二ヶ月前くらいは連絡がとれてたんだけど、 ここのところは携帯も通じないのよ。 この間、女友達だけで飲んだときにも麻子来なくて。 で、ごく最近まで麻子と連絡とってたのが舞なんだけど、 あの子が聞いた話がこんな感じだったんだよね・・・ 舞が言うには、もう昔の友達に会いたくないんじゃないかな・・・って。」 俺 「・・・そうなんだ・・・」 成る程、言われてみれば街であった麻子から学生時代のような明るさは影を潜めていた気がする。 だけど、今の俺にはもう、何もしてあげられないっす。 重い空気に押し黙らされ無力感だけが漂う酒の席は、 その辺で何でもない話題にすり替えながら、後味も悪く締め括られた。 後日、舞と会ったときにも同じような内容の話を聞かされた。 噂ではなく、事実で、状況は話で聞くより深刻らしい。 仕事中や、バイクを弄る時、ユキと会う時さえ、麻子の不幸を憂えた。 何も出来ない、する資格もない自分に歯痒さを感じながら。 と。ここまでが自分の「バイクにまつわる恋愛話」でした。 余談ですが、今日はクリスマスイブ。 俺とユキは普通にご飯を食べに行っただけです。 プレゼント交換も無し。 それは・・・ 麻子「私ね、クリスマスなんて別に興味ないの。 普通にしていればいいと思ってるの。 でもね、二人の誕生日はちゃんとお祝いしたいな。 だって、その日に生まれた人しか祝えない特別な日だもの。」 という言葉が、何時までも引っかかっているせいかもしれません。 ユキもあまりクリスマスに興味はないけど、 「一人で過ごすのは嫌だから、夜までは一緒にいてね」 との事。 多分ユキは全部見抜いてます。 それでも俺を愛してくれてます。 ユキに何を返せるかわからないけど、 自分の中の麻子との決別の為に、このスレに昔話を殴り書いてみました。 乱筆、乱文、失礼候。 ではこれにて・・・ |