− コヲロギ◆9WiYtfh4uA さんの恋愛話 −

彼女と知り合ったのはある秋の日。俺は秋が苦手だ。
あまり女性とお付き合いする経験がなかったのだが、夏とは違った乾燥した空気、
眩しい位だった街からも少し落ち着いた雰囲気が漂い、
空が一年で最も高くかんじる時期。
何となく…人肌恋しいというか、何というか。
俺はバイク板にいる位なので、まぁ趣味はバイクに乗る事。
他の趣味は特にない。
愛車はSR400外見はほぼノーマル。キャブやマフラー交換くらいで落ち着いていた。
気分転換にブラっとどこかに走りに行くのが好きだった。
彼女に合ったのは出先で寄った喫茶店だった。黒髪で、長さはセミロング位?
目が大きくておっとりした感じ。まぁ第一印象だが。

郊外にポツーンとあるログハウス調の喫茶店、いかにも好きでやってますという雰囲気。
ただその店の木の匂いと、ウマイコーヒー&カレーが好きでよく通っていた。
その日もフラっと立ち寄りコーヒーを飲んで帰ろうと思っていた、
「いらっしゃいませ」と注文を取ってくれたのはいつものオバチャンとは違う、彼女だった。
一目惚れだった。胸がズキューンとなった気がした。
コーヒーを飲みながら彼女に気付かれない様にチラチラ目で追っていた。
家族(店長)と常連?と楽しそうに笑顔で話す彼女。可愛いなぁ(*´д`)ハァハァ
ヘタレな俺は声を掛ける事など出来る訳もなく(´・ω・`)として店を出る。
彼女が営業スマイルで「また来て下さいね」と言ってくれるだけで嬉しかった。

ミエミエなアピールだがしょっちゅう喫茶店に通った。
元々違う目的で通っていたし怪しまれてはいない(はず)。
しかし少しづつ勇気を出して彼女に話掛ける事も増えた。
と言っても世間話程度だがorz
彼女は大学に通いながら夕方は店の手伝いをしてるそうだ。年下には見えない位落ち着いた雰囲気だ。
日に日に常連と化していく俺は最初は店の角のボックス席だったが、空いてる時にはカウンターにも座るようになった。
カウンター席ならマスターや彼女と話す機会も増えるからだ。
2人は今時には珍しいくらい仲の良い親子で、マスターもイイ親父な雰囲気が漂っていた。
マスターと話すと実はマスターもバイク乗りでKH250に乗っているそうだ。
道理でバイク乗りの客が多いし、いつもバイクの俺も変な目で見られない訳だ。
それからはバイク話に盛り上がり、よくマスターと走りにでる事もあった。
店が郊外という事もあり近くの山道なんかを常連数人と流したもんだ。…親父世代ハヤス(´・ω・`)
俺のテク不足かorz

山道を流してそのまま喫茶店へ、それが休みの日のスタイルになっていた。
その日も昼過ぎから常連Aとあのコーナーが、とかマスターのKHは、みたいな話に盛り上がっていた。
すると奥から大学から帰ったのか、彼女がヒョコっと顔を出してマスターに何やら頼み事をしていた。
マスターは大声で、「ダメダメ、KHは貸せん」と言っていた。
俺は思わず「どうしたんですか?」と聞いてしまった。
彼女(K子)が駅前に用事があるが、自転車orバスでは遅くなるので、バイクで行きたいと言っていた。
K子ちゃん免許持ってたんだ、ってかKHで駅前行くのかよとw
俺は思わずキタ――(゜∀゜)――と心の中で叫んだ。
さりげなく、且つ親切を装いw「よかったら乗せて行こうか?家向こうだし」
K子「いいんですか〜?」
マスター「コラ、K子!!」
俺「イイっスよ親父さん、俺帰るついでだし。」
マスター「まぁコヲロギ君なら安心できるが…」
K子「じゃあ私ヘルメット取って来る」
俺は内心ドキドキしながら暖気をしに駐車場に出て彼女を待った。

彼女を後ろに積んでいざ出発。緊張しますとも…
なんせ女性を後ろに乗せたのは初めてですから。
しかしまぁ走り出してしまえば野郎よりもずっと軽いので不安はなかった。
ただ背中にリアルに伝わる胸の感触が……。
K子「ありがとう、本当に助かったよ〜。」
俺「いや、本当に帰るついでだし……
!!そう言えばK子ちゃん帰りはどうすんだ?」
K子「あ〜あんまり考えてなかった(笑)友達にでも送ってもらいます。」
とか話しているうちに駅前に到着。俺の中の人がやたらと俺を煽る。
俺「よ、よかったら帰りも送ろうか??」
K子「本当に??…でもやっぱり悪いですよ」
俺「んじゃ今度コーヒータダにしてよw」
K子「じゃあカレーも付けますwありがとう」
お互いの連絡先を交換して俺は家で待つ事にした。

自宅でK子からの連絡を待っていた。誰かからの連絡を心待ちにするなんて…
就活以来のドキドキだw
1時間…2時間……いやそんなに早く連絡はないだろ。
飯を食ったりボーっと待っていると呼び出し音!!!
「もしもしK子です。ゴメンね、遅くなっちゃった。」
俺「ヒマだったし大丈夫だよ。迎えに行こうか?」「お願いしてもいい?」
K子を駅前で下ろした所まで迎えに行く。K子はちいさな買物袋をいくつか提げて待っていた。
彼女を乗せて喫茶店に向かい出発。トコトコと夜の山にSRの排気音を響かせた。

軽快に夜の山を登って行く。天気が良く月が出ていた。
正直、何このシチュエーションと浸っている自分がいたw
喫茶店に到着。K子「ありがとう、助かりました」
俺「いいよ、これ位の事。」
K子「ねぇ、上がって行ってよ!お茶くらいご馳走しますから。」
き、キタ━━━━(゜∀゜)━━━━
お邪魔しま〜す。…と思ったら店の方ですか(´・ω・`)
彼女は手際良くコーヒーを入れる準備をする。さすがマスターの娘。
二人きりの店内にコーヒーの薫りが広がる。
ちょっと真剣な表情でコーヒーを煎れる彼女に魅了されている。

二人分のコーヒーを煎れ終えたK子が、「とっておきの場所で飲もう」と誘ってきた。
ティーカップを持って店の裏へ。少し滑稽だw
店の裏には工具や、使い古したパーツが置いてあった。
K子「ココは昼間はお父さんが使ってるんだけど、夜は私のとっておきの場合なの」
そう言ってK子は丸太に腰かけた。
俺も丸太に座ってK子の煎れてくれたコーヒーを頂いた。
K子「今日は本当にありがとね、助かっちゃった。」
俺「いいよ、コーヒーもご馳走になったし。」
K子「アレいいバイクだね、後ろに乗ってたらコトコトって感じで。
お父さんのバイクがあんなだから、あんまりバイクの後ろって好きじゃなかったんだけど
このバイクは好きだなぁ。」
俺「俺はK子の事好きだよ…」
K子に「私もコヲロギ君の事好きだよ、いいお兄さんって感じで」…




失恋orz

分かってないのか、相手にされてないのか…
とにかくその日は何事もなかったかのように自宅に帰った。


あの告白(?)から数日が経ったが俺は変わらず喫茶店に通っていた。
K子も全く変わらず俺に接してくれていた。
秋はどんどん深まり、山々の木も朱色に染まり始めていた。
ある日マスター以下常連2名で月見をしようと話が進んでいた。
夕方から秋の山を走って、帰りに喫茶店で一杯、夜は駐車場にテントを張って
夜明けまで飲み、語り明かすというプランらしい。
マスターから誘いが掛ったが残念ながら仕事orz
マスターはヒマなら飲みにだけでも来るといいよ。と誘ってくれた。
当日は素早く仕事を済ませ、自宅へ直帰。シュラフよし!酒よし!着替えよし!
リアシートに荷物を満載して出発。既に日は暮れきっていた。

喫茶店につくと中からは常連の高笑いが聞こえてくる。
俺「ちわっス。遅くなり(ry」
常連A「おーおせぇよコヲロギ!!もぅ始めてるぞ。」
常連B「お疲れさん、まぁまぁ駆けつけ1杯どうぞっw」
と出来上がったオッサン達が絡んでくる。俺は缶ビールを一気に飲み干した。
しばらくバイク談義に華を咲かせていた。B氏はCB750海苔でA氏はバリバリの川崎党ZZR海苔。
この二人いつも最後はちょっとした喧嘩腰w
それを愛想笑いで見守るマスターもこの店の名物風景だ。
二人がヒートうpしてきたので、こりゃ飛び火しちゃかなわんと思い、夜風に当たりに外へ逃げる。

夜風が気持ちいい。が少し肌寒いか…。
コオロギの羽の音色に散り逝く落ち葉が冬の到来を告げている様だった。
焼酎のお湯割りを片手に月を眺めていた。少し冷え込んできた。
店内に戻るとK子も一緒になって飲んでいた。
K子「コヲロギ君どこ行ってたの?」
俺「ちょっと夜風に当たるついでに月見してた」
K子「一緒に飲もうよ」やっぱりあの時の告白は相手にされてなかったのかな。
結局皆でワイワイやりながら飲み続けた。正直俺は酒は好きだがあまり強くない。
まぁ泊まる気で来ているしと思い許容量を大きく上回って飲んでしまった。
K子もかなりハイになっていた、そういやぁK子と飲むのも初めてだなぁ。

俺達はあーでもない、こーでもないとバイク話に夢中になっていた。
あまりに熱中しすぎたのなK子が眠そうに俺に寄りかかって来た。
俺「ぁ、ゴメンつまんなかった?」
K子「うぅん、でもちょっとだけ眠いかなぁ…」
俺「まだ終わりそうにないし先に寝たら?」
K子「ん〜じゃあちょっとだけ」とK子が俺の膝に…
逆膝枕キタ━━━━(゜∀゜)━━━。
なんか膝の辺りが柔らかいんス、んで髪がフワって…
コレは好きじゃなくてもできるのか?
それともやっぱり兄貴としか思ってないから?…
まっしばらく幸せだしいいかw

皆は逆膝枕の事など気にも止めずにガンガンペースうpしていく。
俺は飲みすぎると眠くなる質で目が虚ろだったと思う。
テントで寝るという事もすっかり忘れてボックス席のテーブルに伏せて寝てしまった。
気が付けば外はうっすらと明るくなりはじめていた。
俺の膝にK子の姿はなく、肩には毛布が掛けられていた。
激しく襲う頭痛を和らげる為に外の空気を吸いに出た。
外は霧がかかっていて、白と紫色のコントラストに感動したのを覚えている。
ぼ〜っとした頭で俺はK子の事を考えていた。
一目見た時から彼女に恋をした。しかし彼女の中では俺は兄貴的な存在でしかない…。
彼女の事を全て知っている訳じゃない、むしろ知らな過ぎる位だ。
それでも彼女の事が好きだと思えた、心奪われるとはこの事か。
その霧の朝俺は玉砕覚悟の再告白を決心した。

いつもの喫茶店の辺りも紅葉シーズンでちらほらと人気が増えていた。
K子を呼び出しタンデムして峠を登って行く。
頂上付近にはバス停や公園があり、その辺りにバイクを停める。
地元ナンバーのバイクも数台登ってきていた。
K子と二人で公園に向かって歩く、K子も何となく俺が言おうとしてた事を分かっていたのか…。
ガードレール越しに真っ赤に染まった山を見下ろしながら、自分の気持ちをK子にぶつけた…。
俺「やっぱり諦めれないよ、K子の事一人の女の子として好きなんだ」

K子「女心が分かってないなぁ…私は今の関係がいい。コヲロギ君の事、
嫌いじゃないけど、やっぱり一緒に笑ったり遊んだりしてる方がいいから。
告白なんかされたらもう元には戻れないでしょ?お互いに辛いだけだよ…。」

俺「ゴメンでも気持ちは伝えたかったから。」

K子は涙ぐみながら「こんな事なら出会わなきゃよかったのにね」と卑屈そうに言ってた。

彼女をリアシートに乗せて家まで送った。こんなに密着してる筈なのに、何故だか距離を感じてしまう。
喫茶店に着くとK子は笑顔で「サヨナラ」とだけ言って店の中に消えて行った。
自分の気持ちを告白して、自己満足を手に入れたけど、本当に大切な物を失ってしまったなぁ。
それから冬が来て、凍結の事もありさっぱりあの店には通わなくなった。
春が来て、夏が来て、また秋が来る。まだK子はあの店にいるのかな?
アレっきり会ってない、俺の中では綺麗な思い出として残っている。
こうして秋が来てコオロギの羽の音を聴くとあの頃を思い出す。
せめて願うならK子が俺の様な男の事をズルズルと引きずってない事を願います。
それでも俺はまた秋が来たらあの笑顔を思い出すんだろうけども。



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