− マサ◆aBIq9yWij6 さんの恋愛話 −
| もう20年近く前、俺が限定解除に挑戦していた頃の話。 当時俺にはミキという彼女がいた。バイト先で知り合い、お互いバイク乗りだった ことから意気投合し、それが進展して付き合うようになった。 俺は中古で買ったCBR400Fで、ミキは当時出たばかりのRGV250γに乗っていた。 俺はまだ17歳、ミキはふたつ年上の19歳だった。 しかし免許歴はふたつ年上だったミキの方が長く、ミキにはその当時流行っていた レーシングチームに属していたGSX-R750に乗る兄貴やその仲間としょっちゅう行動を 共にしていたこともあって、テクがある。認めたくはないがまだ中免を取って 半年足らずの俺とでは雲泥の差があった。 しかしやはり男のメンツみたいなものがあって、面白くはない。 密かにミキのいない時に走り込んで勝とうと努力しても、やっぱり一緒に峠などに 走りに行くと勝てない。そして余計俺のプライドを傷付けるのが、落ち込む俺に ミキは年上だからって露骨に子供をあやすみたいな物言いをしてくるのだ。 ミキ「あらーマサちゃん落ち込んでんのー?そんなに気にしちゃダメでちゅよぉ(笑)」 俺「うっせーな、γの方が軽いんだから下りで速いの当たり前だろー」 ミキ「あー男らしくない。じゃあバイク交換してもう一回走る?」 俺「…今日はやめとく」 ミキ「あははーマサかわいい」 俺「うるっさいなー。もうほっとけよー」 こんな感じでいつもからかわれる。そんなんだから付き合うといってもまだ キスくらいしかしてなく、やはり俺としても男として、ミキに対して何か ひとつでもいいから勝てるというものを作ってからでないとその先に進もうと いう気が起きなかったのだ。 そんな中考えたのが、ミキに内緒でこっそり限定解除の試験を受けるということ。 なんだかんだいっても中免しかない奴より限定解除持ってる奴の方が偉いのだ。 峠で勝てなくても免許で勝ってやる。まだ若かった17歳の頃の俺、今考えると 本当にガキくさい屁のツッパリだったが、当時は本気でそう思っていた。 もちろん当時は、今のように教習所で大型二輪が取れるような時代ではなく、 限定解除を果たしたければ試験場で一発試験に合格するしかなかった。 合格率も5%とも2%とも噂されるような難しさと聞いていたし、まともにやっても いつ合格するのかわからない不安があった。幸い俺は、ミキの兄貴にも結構 可愛がってもらっていたので、訳を話し試験に受かるコツとかを教わることにした。 実際ミキの兄貴、トオルさんはいい人で、実車を使って取り回しや引き起こしの 練習をさせてくれた。しかも自分のGSX-Rよりもチームの別の人のCB750Fの方が 練習にぴったりだということで、借りてきてくれたのだ。さすがにそこまでして もらうことに恐縮していると、トオルさんは トオル「気にすんな。男の意地っての、わかるしなあ。ミキに内緒で限定解除して ビックリさせてやれよ。そうだ、俺そろそろ買い換えるつもりだったから、 お前が5回以内で受かったら俺のGSX-R20万で売ってやるぞ?」 俺「ま、マジっすか?あれサイクロン付いてるし、サスとかステップとか 他にも色々手加えてるじゃないっすか。あれを20万なんかでいいんですか?」 トオル「だから5回以内に受かったらな。限定解除の試験はそう甘くねえぞ(笑)」 俺「は、はいがんばります!」 そんなこんなでそれから数日間、俺はトオルさんの協力を得ながら日々試験合格に 向けて練習に励む毎日だった。 ところでそんなことをしてれば、当然ミキと会う時間はなくなる。それまでは バイトが終わるとそのままミキと走りに行くか、ファミレスかどっちかの家で ダベってることが多かったのに、ずっと断りを入れて一目散に消えていたのだ。 段々ミキが不機嫌になっていくのが傍で見ていてもわかった。 それでも最初のうちは、レストランでウェイトレスをしていたミキが厨房の俺に オーダーを通す際にツンツンしてたくらいだったのだが、やがて休憩室で一緒のときも 一切口をきかなくなってしまった。遂にたまらず俺が話し掛けた。 俺「ねーミキ、怒ってんの?」 ミキ「……」 俺「なんかしゃべれよう」 ミキ「やだ!」 俺「なんでー?」 ミキ「わかんないの?最近バイト終わるとすぐいなくなるくせに。浮気とかしてんの?」 俺「そ、そんなんしてるわけないじゃん!」 ミキ「じゃあどこ行ってんのよ?言っとくけど浮気なんかしたらどうなるか わかってんでしょうね?」 今まで見たこともないようなすっごいジトーっとした目で睨むミキ。浮気なんかでは もちろんないけど、内緒ごとをしてるのは事実なのでなんとなく挙動不審になってしまう。 俺「な、なに?」 ミキ「こ・ろ・す」 俺「……(汗汗汗!!!!)」 どうも昔から俺は口下手というか、うまく言いくるめることもできず、かといって 逆ギレして黙らせるなんてこともできないタチで、そんな風に言われると本気で 慌てふためいてしまうのだ。そんなところがまたミキにからかわれる要素になって しまうのだろうが…。このときもなんて言ったらいいか咄嗟に言葉が出ず、押し黙ってしまった。 そんな狼狽しきっている俺を見ていたミキは、やがて我慢できなくなったみたいに プッと吹き出した。 ミキ「あはははは!!な〜んてね(笑)」 俺「?????」 わけがわからずキョトンとしている俺にミキが畳み掛けるように言った。 ミキ「マサさあ、限定解除しようとしてるんだって?地獄耳のあたしが知らないとでも 思ったか(笑)」 俺「えっ?なんで知ってるの?」 ミキ「兄貴締め上げて白状させた(笑)。だってマサがバイト終わっていなくなる ときっていっつも兄貴も家にいないんだもん。すぐに一緒にいるってピンとくるよ」 俺「えーっ、トオルさん言っちゃったのかよー」 ミキ「あたしの尋問には兄貴も勝てない(笑)」 ちぇっ、内緒で限定解除する野望が潰えてしまったじゃないか。しかし落ち込んでる 暇もなく、ミキの奴は俺にどんどん切り込んでくる。 ミキ「なんであたしに黙ってそんなことしてたの?」 俺「え、い、いやあ別に大した意味はないけど…」 ミキ「あたしたちさー、最初付き合うときに絶対隠し事しないようにしようねって 約束したよね?あれ破るの?」 俺「いや、ち、違うよ〜。別に隠し事なんかじゃないって…」 ミキ「…マサちゃんさ、あたしにいばりたいとか思ってたんじゃなーい?」 俺「……」 ミキ「図星だ(笑)。そうだったんだ。わーかーわいい(笑)」 俺「べ、別にそんなんじゃないってば!」 ミキ「いーじゃない、あたしそういう男の子の意地っ張りなとこ、好きだよ」 俺「もうほっといてってー!そういうわけだから、しばらくミキとは遊べない!」 ミキ「んーふふ」 俺「な、なんだよう…」 ミキ「そういうわけにはいかないんだなっ」 俺「えっ?」 ミキ「あたしも限定解除することにしたからね。これからは毎日一緒に練習しよ♪」 工工エエエ(´д`)エエエ工工 トオルさん、恨みます。orz 結局その後はミキも参加しての限定解除へのトライへとなってしまった。 |