− 383 さんの恋愛話 −

その日、仕事で嫌な事が重なり、鬱憤晴らしにいつもの峠を荒々しく攻めてた。

気分にむらのある走りはいい結果を生まない。
左コーナーでひざを擦った瞬間、後輪が外に飛んだ!
(潰れた空き缶がクリッピングポイントに!ありえねーってか、気付けよ俺!)
そして、次の右コーナーのガードレールとお友達になる結果となった。

…冷たいアスファルトの上で、自分でメット外したのは憶えてる。

救急車で運ばれた病院で目が覚めると、左腕が動かない。
医者の話だと鎖骨が逝ってるらしい。
そして今から頭部等のレントゲン撮影との事。

{あーあ、やっちまったか…。バイクはどーなったのかな?}

ストレッチャーに乗せられ病院内をあっちこっち行ってる内に、愛車がどうしても気になってきた。

「看護婦さん。俺のバイクってどうなったか判りませんか?」
「今はそれどこじゃないでしょ?」
「そうっすね…」

その日は検査とギプス設置(?)で更けて行った。
次の朝、目が覚めて現実と向かい合った。

{あー、夢じゃなかったか。それにしてもバイクはどーなったんだろ?}
{完治にはどの位かかるんだろ?}
{会社に連絡しなきゃ…、クビかな?}
{親父、怒るだろうな〜}

その内、朝の回診の時間が来たようだ。

「おはようございます。検温お願いします。」
「あ、昨夜の看護婦さん。」
「どーも。痛みはどうですか?」
「動かなければどうでもないです。」
「あなた珍しいですよ?気が付いて最初に気にしたのがバイクってw」
「俺にとっちゃ、唯一無二の友人みたいなもんですからね。」
「私にとっちゃ、バイクなぞ単なる足だがw」
「え?看護婦さんバイク乗り?」
「大型免許は持ってるけど、乗ってるのはチョイノリw」
「ふ〜ん。もったいないね。」
「君は何乗ってるの?」
「俺はVFR400。中免しか持ってねし。」

…ピピピー
ここで検温終了。

「じゃ、またね。」
「はい。また…」

その日は、彼女現われなかった。
次の日の朝、

「おはようございます。本日この病棟担当の森です。よろしく。」
「あ、どーも。」
「バイクの消息判った?」
「友人が馴染みのバイク屋に頼んで引き取ってくれたみたいですが、どうやらお釈迦みたい…」
「そう、残念ね。でも、命あっての…って言うしね。気を落とすな!」
「そうっすね。」
{あーあ、まだローンも残ってんのに、怪我より痛て〜(泣

午後の検温の時、

「○○君、オフ車なんて乗る?」
「え?乗った事無いけど。」
「私の友達がセカンドに持ってるDTを売りたいって言ってるんだけど、足にどう?」
「考えておきます。」

正直、オフ車は足つき悪いのと、オタッキーなイメージ(オフ乗りの方々スマン)で敬遠したかったが、せっかくの申し出に真剣に悩んでいた。通勤にも足は必要だったし。
夜の検温時に、

「どう?DT乗ってみる気になった?」
「正直背の低い俺には乗りにくそう。」
「トレイルのテクを憶えて、信号待ちではスタンディングスティルとか出来るようになればかっこいいかもw」
「夢のまた夢って感じだけどw」
「君が要らないんなら私が買おうとか思ってたりする。」
「え?森さんが?」
「正直、オフ車のイメージが今一なのは知ってるけど、私は興味あるな。」
「…乗ってみようかな?」

って事で、商談は成立。一ヵ月後退院し、晴れてオフ車乗りデビュー決定!
どうしてもあの長いバイザーや顎もとの開いたメットが気に入らず、普通のフルフェでDT250乗りとなった。
入院時に携番&アド交換してた森さんからメールが入る。

「私もXLR買っちゃった。一緒に林道行かない?」
「まだオフロードは経験ないんでチョい不安。」
「大丈夫。私の友人にトレイルのプロがいるんで、一緒にレクチャー受けましょう。」

次の週末、とある林道の入り口近くのコンビニに集合。

「初めまして。××言います。」<フルプロテクターのオフ乗りおねいさん。
「初めまして。○○です。今日は宜しくお願いします。」
「さて、挨拶も済んだし、軽く流してみるかな?」
「注意点を説明します。オンと違って道のグリップ感を常に気にして走るんだよ。ダートの深いコーナーでは寝かさない事。何時でもIN側の足を付けるように。立ち上がりはアクセルワークに気をつけないと暴れるからね。」
「じゃ、先頭は○○さん、次に森さん、けつは私で行って見ましょう。」
「遅かったら抜くよ。」
「森さん、ゆっくりお願いしますね。」
「あ、○○さん、プロテクターは?」
「一応下にニーガードとエルボーガードはしてます。」
「なんで表にしないの?」
「や、なんかごつくってかっこいいもんじゃないかと…」
「君、プロテクターはカッコでするもんじゃないぞ。」

そんな風に言われたが、俺にはオフはカッコ良いとは思えず、出来るだけオフ乗りの雰囲気を出さないように勤めた。

初めての林道走行はとても悲惨なものだった。
転倒二回、クラッチレバーと右のミラーが逝った(泣
そして、おきにのジーンズのひざ下に穴、裾が爆発…
{次からはニーガード、ズボンの上にしよう。それとブーツも必要かな?}
帰りにバイク屋寄ってレバーとミラーを注文、用品店でダート用のブーツを購入。
こうなるとプロテクターにフルフェがとっても似合わない。
ダート用のメットとゴーグルも追加。(後日車で引き取り。)
いっぱしのオフ車乗りの完成だ。(カッコだけw)

森さんはさすが大型免許保持者。
暴れる車体をニーグリップで保持、無転倒でクリアしてた。
まるで馬に乗っているようだ。
(途中から先頭を森さんに交代。俺は二番手走行で、後ろから森さんの綺麗なお尻を見ながら走行。そのせいで2回目の転倒が起きた事はナイショw)

後日、森さんとのメールでダート仕様装備の購入を話したら、

「○○君もすっかりリンダーだw」
「リンダーって?」
「林道を攻めるダート乗り。命名by森w」
「wせっかくなら上手く乗れるようになりたいですしね。ま、カッコはオマケですがw」
「うむ。精進せいよ!」
「らじゃ。」

2回目の林道走行は同じコースを森さんと二人で行って見る事にした。
確か一週間後の金曜の午後だった。

「じゃ、私が前行くね。無理せずついてきて。」
「はい。ガンガリマス。」

信じられない事に上りの右コーナーで森さんがスリップダウン。

「大丈夫?」
「いてて、やっちまったい。」
「おー、タンクがへこんでる。」
「私の気持ちの方がもっとへこんでるよ…」

「ダートだと右は苦手だったんだよな〜。オンよりも車体が立ってる分、押さえ利かないね。」
「そうすね。俺も足を出すべきかひざで押さえるべきか毎回躊躇する。」
「私は足出す事なんて考えてもいなかった。体重でコントロールできるもんだと思ってた。」
「森さんのでっかいケツをもってしても押さえ利かないんじゃ、俺なんかにゃ無理って事だねw」
「なんだと!」

その後は微速走行で安全に下り、帰りに家の近くのファミレスで晩飯。

「タンクどうします?」
「名誉の負傷だ。そのまま使用wタンク見て反省材料にするよ。」
「俺なんか前回折れたレバーとかすぐに交換したのに。森さんって向上心の塊だね。」
「君もやる気充分じゃん?」
「森さんと一緒だから頑張れる。」
「このー、そう言う台詞は彼女に言うように!」
「俺、彼女いないし。森さんみたいな彼女ほしいな。」
「那須と付き合うのは大変だぞ?時間が不規則だし、休みも週末に入るとは限んないし。」
「努力したいんですけど駄目?」
「や、嬉しいけど、前の彼とも時間の関係で揉めて別れてるしな〜。」
「とりあえず付き合ってみてください。損はさせません。お買い得です。」
「ははは、大安売りじゃん。とりあえず買っとくかw」
「ありがとうございます。消費税はサービスしときますw」
「www」

そんな感じでナースの森さんと付き合う事になった。
休みが合うたびにダート練習。
キス以上のフィジカルコンタクトは未だ無し。

そんな俺の恋の話しでした。



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