− 774 さんの恋愛話 −

15年4月19日。
暖かくなって来たので早起きし、檜原街道側から奥多摩周遊道へ向かった。
冬眠あけの慣らし運転っていう気分だったので、前がつっかえていても
イライラせず、車のペースに合わせてまったり走っていたんだけど・・・。
T字路っぽいところで前を塞いでいたトラックが左におれたとき
かなりな開放感に包まれてしまい、ブラインドコーナーで少しだけアクセルを捻った。

やばい!

集音マイクのようなのがこっちを向いている。
すかさずブレーキペダルを踏んだけどもう遅い。
ポリさんたちが3人、車道に出てきて手招きする。

「よかったな。14キロオーバーだ」
「え。たったそれだけで捕まえるんですか?」
「そのためにここにいるんだよ」

警官の1人と少し話していたけど、その時刻、
おれの他には捕まった人がいなかった。
というより、そもそも車もバイクも滅多に通らない。
「あんな狭い道のコーナーの途中で速度測るなんて、 
 普通、車は減速してるでしょうし、あからさまに
 バイクをねらい打ちしてる感じで不満なんですけど?」
「ああ、そうだよ。バイクの事故が増えてるから
 こうやって取り締まってるんだから」

「さぁ、入って」とワンボックスカー(っていうのかな)の中に押し込まれた。

中には婦人警官が1人。おれより年下かな、わりと可愛い。
おれの免許を身ながら青色の反則用紙に細かな字をさらさら書き込んでいく。
「名前は、なんて読むの?」あらかた書き終わったところでそう尋ねられた。
「さぁ、どーだか」
「あなたの名前よ」
顔を上げてこっちをにらみつける。やや上目遣いでなかなか魅力的。
「いや、ごめんなさい。ウキウキして走りにきたのに、あと少しで
 周遊道ってとこでこんなことになっちゃったんで精神的に参っちゃって
 ました」
「それで、なんて読むの?」
「774タロウです」
「774タロウ・・・さんね」と彼女が書き込む。
その様子を向かいからのぞき込むと、青紙の2行目に彼女の
フルネームが書いてあった。

「あなたは、A川B美巡査・・・ですか。寒い中ご苦労さんです。
 そうだB美さん。今度デートしませんか?」
「え?」
「彼氏とかいるんですか?」
「なに、どーいうことなの?」
「どーもこーも、一目惚れってやつですよ。知ってます? 一目惚れ」
「なんなの突然。そんなこと言っても、違反は消えないわよ」
「んなの分かってますって。それとこれとは別。単なる一目惚れです。
 それと、違反だけじゃなくて、この落ち込んだ気分も当分消えない。
 周遊道行く気分でもなくなったし、今日は暗〜く帰るけど、
 でもこれをB美さんとの良い出会いだってことにできれば、
 災い転じて福と成すっていうか、却ってラッキーというか」
「・・・・・」
「彼氏って、いるんですか?」
「ううん。仕事が忙しいし。警官っていうと」
「警官っていうと結構嫌われ者ですよね。おれも大嫌い。
 でもB美さんは別。もうなんといっても別。格別って感じです」
「ふふふ。なに、それ」
「で、どうですか。デートは」

「でも・・・」

いける! これはいけると思った。
イヤだったら「でも」なんて迷ったようなこと言うわけがない。
さらにそんな迷いを口にするってのは、言いくるめてくれれば
OKよ、ってことに決まってる。かなり強引だけどとっさに
そのように解釈して、さらに押した。

「バイク乗りって警官が嫌いなんだから、これってかなり
 貴重な、滅多にない出会いですよ。運命とか、そーいうのとは
 ニュアンス違うだろうけど。でも、この出会いって何というか。
 新婚さんいらっしゃいに出れますよ。初めての出会いは彼の
 交通違反でした、って。で、B美さんに一目惚れしたおれが
 もう一度会いたくって免停覚悟して翌日また違反して、
 だけどその日はB美さんがいなくって。とか適当に話つくって。
 なんやそれーって、かつらさんしもうけてくれますよ」

「でも、私って、コッチの方に住んでるのよ。774さんって**区でしょ」
「それだけ? OKOK。じゃぁ解決。デートしましょう。
 バイクでノンビリ走っても1時間と少しだし、奥多摩に来るのは
 おれ、苦にならないもん。むしろこっちに彼女がいた方がバイクと
 両立できて便利かも」
「ふふふ。気が早いよ。まだ彼女じゃないでしょ」

おれはいつの間にか普通の声で話してた。
いや、まくし立ててるときは、声が普段より大きくなってたかもしれない。
ま、どっちにしろ、少なくともおれの声は外のポリさんたちに聞こえてた
と思う。
で、彼らもちょっと気を遣ってくれてたんじゃないかな。
ゴホン、と警官のわざとらしい咳払いののち、
新たな被害者(違反者)が車に乗り込んできた。
B美さんの顔が赤らむ。かわいい。

車内の3人とも無言。
B美さんは、てきぱきとおれの書類を完成させて、
一枚目を切り取って、振り込み用紙と一緒におれに渡す。
「**日(いつだったか覚えてないよ)までに振り込んでくださいね」

受け取った青紙を見ると一番下の隅、枠線と用紙の下端の間の高さ
3ミリくらいのところに数字が書き連ねてある。電話番号だ。わぉ!

その車を降りると、「これ、初めて見るよ。何てバイクだい?」と
言いながら、ポリさんの1人が耳に手を当てるジェスチャー。
何ですかマンですか? って突っ込みたいところだけど、
言いたいことは分かる。というか訊きたいことというべきか。
おれは右拳を突き出してグっと力一杯握った。
ポリさん3人ともニヤっと微笑みかける。
今で言うところのハッスルハッスルのようなポーズで口を開け、
オー!っと感嘆の呻りをあげるかのようなポーズをとってくれた人もいた。
ポリどもと心が通じたかもしれない、と感じた最初で最後の瞬間だった。





ゴメン、書かなきゃよかった。
年度末が迫ってきてるので仕事が忙しくて、
まったり書き続けるのは大変そう。
そーいうわけで投げ出しちゃいます。ホントゴメン。
今度書くときは、しっかり覚悟固めてからにします。

で、簡単にまとめると。
・双方の時間がなかなか合わず、4か月で数回しか会えなかった。
・遠いので、会いに行くのがすぐに面倒になってしまった。
・違反の反動による躁状態が引き起こした出会いに過ぎなかったのか、
 情熱が長続きしなか。というか、そもそも本当にB美さんに惚れていたんだろうか。
・制服プレイをお願いするより前に2人の関係は終わってしまった。

てことで、反省することしきり。以上。



戻る