− 952 さんの恋愛話 −
| 今から二年前、俺は大学受験するべく予備校に入った。最初は「勉強に集中汁!!」と意気込んで友達も作らず現役合格を目指してた。
しかし勉強ってのは退屈ですぐに飽きて友達もジャンジャン作ってバイク乗りの奴らと遊び捲ってた。 そんなこんなで、成績なんぞ上がるわけでもなく下がる一方で「こりゃマズい、マジで夏から勉強汁!!」と心を入れ替えて予備校にも行くようになった。 辛い予備校生活たまには良い事があるもんである日、自習室に凄い可愛い子がいた。着ていた制服から都内の超有名某お嬢様学校だと解った。 しかし、アタックしようにも勇気が無い…。 なぜなら俺は当時、彼女いない歴18年目つまり生きて来てこの方「女と付き合った事が無い」のだ…orz。 そんな俺に出来る事は友達に「あの子超可愛いよ〜」って言う事と毎日予備校に行ってその子をチラ見する事だけだった。 結局、俺にはチラ見しか出来ず夏休みは終わった。 この頃になると正直、勉強には全く手がつかなかくなってた。 もう、寝ても覚めてもあの子この事ばかり。 しかし「勉強しなくちゃ」と思い、気分転換する為に近くの土手までバイクを走らせる。この土手は、当時受験の悩み事なんかあったりして一人になりたい時に行ってた俺のお気に入りの場所だ。 ここで、気分転換しようとしたがやはりあの子の事ばかり。 「名前なんてーのかな…」「彼氏いるんかな…いるだろうな…可愛いし…」 はては、バイクに向かって「なぁ〜JADE。お前どー思うよ?俺の気持ち解んのお前だけだよ…」と喋りかける始末。 みんなは「嘘だろw」とか言うかも知れないけど当時の俺は、受験のプレッシャーと片思いのおかげで心身ともにボロボロだった。 そして成績も上がらず、片思いも進展せず9月、10月が過ぎ11月も中頃だったと思う。 遂に進展があった。 11月中頃のある日、予備校の女友達からメールが入った。「952が可愛いって言ってた子のアドgetしたよ!!952に教えても良いってさ〜」 キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!! マジでこう叫んだw しかし、俺は好きな子になると素の自分が出せず格好付けたりしてしまう癖がある…そのせいで今まで何度もフられてきた。 今回は慎重にマジ慎重に… とりあえず、初めは「初めまして952です。よろしく〜」と自己紹介メールを送った。するとすぐに「よろしく〜佐緒(仮名)です!!」 再び キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!! 俺の心臓バクバクのドキドキ。 「次は何て返したら良いんだぁ!!??」 もう頭の中真っ白…orz 何も思い浮かば無いので、どこの学校か知ってるのに「学校どこ行ってるんですか?」 俺って本当駄目な奴だ…っと再確認しますた…orz やはり学校は俺の予想と的中。都内某有名お嬢様学校だった。この後、メールのやり取りは深夜まで続いた。 午前0時。佐緒でメールのやり取りは止まり、「何かつまんない事言っちまったかな…明日もメール出来んのか?」見たいな事考えながら寝た。 次の日、朝起きると「ごめん!!昨日寝ちゃった…楽しかったよ〜」とメールが入ってた「マジかよ!?メール返って来たよ!!」と朝からハイテンション。 その日も一日中メールし午前0時、佐緒の就寝と共に終わった。 メールのやり取りが何日か続き、その頃には 午前0時佐緒就寝→続きの日の朝「寝ちゃった」メール→一日中メール の方程式が出来上がっていた。 しかし、喜んでばかりもいられない問題が発生した。 問題とは佐緒は俺の顔を知らないのだ…。 俺はもちろん、佐緒の事知ってたが「知らない男が自分の事知ってたら、キモがられるだろーな…」って思って佐緒には俺も佐緒の顔知らないって事にしてあった。 今考えると「普通、顔知らない女にアドレス教えてって言うかよ…orz」って感じだが、当時は佐緒に嫌われたくない一心で必死に格好良い自分を作ってた。 はては、「バイク乗ってるの知られて暴走族って思われたらどうしよ…」って事で自分の大切な相棒であるJADEすら、彼女の前では「無きもの」にしてた。 そんなある日、佐緒からメールで「952に会いたい」って来た。俺は前出の通り当時18年間彼女いない歴を更新中だったので顔には全く自信が無かった(今も無いが…) 「会えば佐緒に嫌われる、でも会わないと前には進めない…どうしよ」と考えたが、やはり前に進もうって事で会う事にした。 俺は何だかんだ理由を付けて佐緒と会う事を引き延ばそうと抵抗したが、無駄な事だった。 勿論、俺も佐緒と会いたいし二人きりで話したい。でも「18年間彼女がいない」と言う事実が俺をネガティブな方向へと持って行っていた。 結局、約束の期日が決まり俺は佐緒と会う事になった。 約束の日。俺は暴走族と思われたく無いのでバイクで行かない事を決めていたが、急遽バイク仲間との用事が入り、その帰りに佐緒と会わなければならなくなった。 つまり、佐緒に俺がバイク乗りである事がバレてしまうのだ。 バイク仲間との用事が終わり、不安に押し潰されそうになりながら約束の場所へバイクを走らせた。 到着予定時刻の五分前に約束の場所である予備校の裏の公園に着いた。 俺は佐緒の姿を探しながら公園を歩いた。心臓が尋常で無いスピードで鼓動してるのが解った。喉もカラカラに渇いている。 公園を一周して見ても佐緒の姿は確認出来ず、俺の中で「逃げられたか…」と言うネガティブ思考が働いた。俺はどうにか落ち着こうと思い、タバコを吸って(すいません。当時はまだ未成年でした)気分を紛らわせようとしたがいつもよりタバコがマズい…。 タバコの匂いを消すのと落ち着きたかったので近くの自販機でコーヒーを買い、飲んでると入り口から佐緒が入って来た。 俺はこの時点で後戻りは出来ないと思い、逆に開き直り佐緒に声をかけた。 俺は佐緒に近付き「佐緒さんですよね?」と声をかけた。彼女は満面の笑みで「はい!952さんですか?初めまして。」とお辞儀して挨拶して来た。 この後の事は緊張のあまり何を話したか良く覚えて無いが突然、佐緒が「入り口に止まってるバイク、952さんのですか?」と尋ねて来た。 この瞬間、「しまった!!」と思い否定しようとしたが手にはヘルメットが握られてた為正直に「…そうですよ。」と答えた。 俺は得意のネガティブ思考で最悪の事態を想定したが、佐緒は意外にも「凄い大きいの乗ってるんですね!?これ何て言うバイクですか?ナナハン?」と尋ねて来た。 予想外の答えに驚きながら「!?。これはHONDAのJADEって言うナナハンより全然小さい250tですよ。」と答えた。佐緒は「でも、大きくて乗るの大変そうなのにこんなの乗れるなんて凄いですね。それに凄い綺麗!!大事にしてるんですね」とまた、笑顔で言ってくれた。 大好きな人に大好きな自分のバイクを褒めて貰えた事で俺は多少救われた思いがした。 その後、佐緒は門限が決められていりので帰らなければならなくなった。 「今日は楽しかったよ。952さんがバイク好きって解ったし。今度乗ってみたいな…なんてw」この時の佐緒の笑顔は今日一番だった。「俺も楽しかったよ。バイクは今度機会があったらねw」俺もこの時には自然に笑って話す事が出来るようになっていた。 俺のバイクにはモリワキのワンピースが付いていて公園がある住宅街でエンジンをかけるのは迷惑になるので、佐緒を送るついでに駅がある大通りまで押して歩いた。 佐緒は「なんで、押して歩いてるの?」と、かなり不思議そうな顔をして言うので俺は「俺のバイク、マフラー変えてちょっとうるさいからあそこでエンジンかけると周りに迷惑になるんだよ。だから広い通りまで押して歩いてんだよ。」と教えた。 佐緒は「優しいんですね」と笑って言ったが俺にはその言葉の意味が良く解らなかった。 マフラー変えてるバイク乗りならみんなやってる事だし、優しいって?と思ったが言わないでおいた。 大通りに着き佐緒と別れなければならなくなった。俺は、出来る事ならこのまま佐緒といた!もっともっといろんな話がしたい!と思ったが時は無情に佐緒の門限の時間へと進んで行く。 もう、本当に別れの時。 「それじゃぁ。」佐緒はそう言うと駅の方へ歩き出した。 俺はその時、「もう一度会いたい」と言おうか迷っていた。どうしても、言葉が出て来ない。 佐緒が駅へ入る前、今ある勇気を全て出す感じで叫んだ。「あの!!」佐緒は立ち止まって振り返って、俺はもう一度叫んだ「あの!!また、会ってくれますか!!」 佐緒は笑顔で大きくうなずいて駅へ入って行った。 それから何日か後、予備校へ行くと当然の事ながら佐緒もいたが、二人ともすれ違い様にちょっと目を合わせる事しか出来なかった。 なんか、他の人達がいる前で話すのは恥ずかしい気がしたからだ。 その日、俺は授業が無かったので自習室で最後まで残って勉強していた。 時計を見ると午後10:30。通常、授業は午後10:00に終了なので、もう校舎には誰も残って無いだろうし「俺も帰るかな」と思い素早く帰り支度をして、一階へ向かった。 すると、一階の出口に制服姿の佐緒がいた。 俺は「あれ!?どうしたの?佐緒さん、今日授業だよね?何でこんな時間までいるの?」と言うと佐緒は「授業が延長して、遅くなっちゃったナリw」とちょっとおどけて言った。 しかし授業延長したのに他の佐緒と同じクラスの生徒が一人もいない。ちょっと不審に思ったが、問いたださない事にした。 制服姿の佐緒はこないだよりもちょっと幼く見えた。 俺は「こんな時間だし、駅まで送るよ。自転車取ってくるか待ってて」通ってた予備校にはバイクを置くスペースが無いので、よっぽどの事が無い限り俺は自転車で来ていた。 佐緒は「今日はバイクじゃないんですね。送ってくれるって言うからちょっと期待しちゃったかもw」と言った。 正直、バイクで来ていてヘルメットが2つあったとしても俺は佐緒を乗せなかっただろう。俺が一人でバイクに乗ってて自爆なんかで死んでも構わないが、万が一佐緒を怪我させてしまったらと考えるとどうしても乗せる気にはならなかった。 駅まで佐緒と歩く僅かな時間。この時だけは受験へのプレッシャーも日々の悩みも忘れ、佐緒の恋人になったような気分になった。ちらっと横を見ると佐緒が笑ってる本当に幸せで、漫画じゃないが本当に「時間よ止まってくれ!!」と願った。 その佐緒はと言うとしきりにバイクの事を聞いてきた「今まで、どこに行った?」とか「どうしてバイクに乗り始めた?」とか「バイクに乗ってて、辛かった事や楽しかった事は?」とかそして、最後にまた「バイクに乗りたい」と言ってきた。 俺は前出の通り佐緒をバイクに乗せたく無かったので「今度ねw」とお茶を濁す感じで言った。話の中で佐緒の家がうちからバイクで10分かからない位のところにある事も知り、二人で驚いた。 それから数週間後の12月の始めだったと思う。大変な事が起こった。 12月の始めの午前3時頃、「勉強も一区切りついたし休憩するか」と煙草に火を付けてコーヒーを飲んでた時、突然携帯が鳴った。 当時、俺は地元の友達と携帯で連絡を取り合いながら勉強していたので、「また友達からの質問か徹夜の定時連絡かな〜?」とか言いながら携帯を見ると画面には「佐緒」。普通ならもうとっくに寝てる時間だしおかしいな?と思いながら電話に出た。 「はい、どうしたの?今日は随分遅くまで起き…」俺の言葉は途中で遮られ、電話口の向こうから佐緒の泣き声が聞こえた。 「ど、どうしたの!?何かあったの?」俺は事態が飲み込めずテンパってた。 尚も佐緒は泣いていた。「どうしたの!?取りあえず落ち着いて何があったか説明して」俺自身も落ち着こうと思いまた、煙草に火を付けた。 「…………たい……にいるから…………て」泣き声で良く聞き取れ無かったので、もう一度聞くと「バイクに乗りたい。○○駅(地元の駅)にいるから来て」と言っていた。 俺はこれを聞いた瞬間に「夜中の3時+泣き声+外にいる=強姦された」と思い。 「取りあえず近くの交番に行って!!俺もすぐに行くから!!」と言って、簡単な身支度をしてバイクで地元の駅へ向かった。 地元の駅まで通常約10分。俺はこの時、動揺してたのと早く佐緒のとこに行かないとと思い、それこそぬふわKmで走った。 まず、地元の駅の近くの交番へ駆け込んだが佐緒は来ていなかった。その後、駅へ向かった。 終電も終わり、人気がなくなった駅で佐緒を捜すとバスの停留所のベンチでうずくまってる人影があった。 その人影が佐緒だと解り、近寄ると佐緒は突然大声で泣き出した。泣き出したのにもびっくりしたが、夜中の3時を過ぎてるにも関わらず佐緒は制服姿だった。 俺自身もう何が何だか解らず、取りあえず佐緒を落ち着かせる事で精一杯だった。 しばらくして、佐緒も落ち着き始め俺は自販機で買った暖かいお茶とあまりに寒そうな格好なのでバイクに積んであったウィンドブレーカーを渡した。 そして、何があったのかを尋ねた 佐緒の口から出た答えは意外なものだった。 「私、受験が嫌になったの…本当は美容師になりたかったのに…その事で親と喧嘩して家出たの…952さんが前にバイク乗ってる時は嫌な事も辛い事もどうでも良くなるって言ってたから…」 俺は取りあえず強姦されたのでは無かったと言う安心感と家出したと言う驚きで暫く口が聞けなかった。 「美容師になりたかったってのは初耳だな…ずっと、小学校の先生になりたいって言ってたから…でも、家出は良くないよ。まして、こんな格好だし、家の人も心配してるよ?佐緒さんちめちゃめちゃ厳しいじゃん。だから、帰ろ?」 俺は佐緒の手を引きベンチから立たせようとしたが佐緒はそれを振り払い抵抗した。 「家の人心配してるし帰るよ?もしかしたら、警察にだって連絡してるかも知れないし…」 俺は小学校の頃、一週間家出して歩いて横浜のばあちゃんちに向かってた時、親から警察に「家出人捜索願い」を出され神奈川県警に保護された経験があるので、佐緒の親も警察に連絡してるものだと考えた。 しかし、佐緒はどうにも帰ろうとしない。はては「私、もう嫌なの!!小学校から私立入れさせられて、やりたい事も出来ないでいつも周りからお嬢様とか言われて…私だって普通なんだよ!!」と逆ギレ… あまりに強情なんで俺もキレそうになって来た。 しかしそれを抑えつつ、「佐緒を小学校から私立入れたのだって、佐緒の両親が少しでも佐緒に幸せになって貰いたいって思ったからだと思うよ?隣の家のおばさんが佐緒にそんな事する?しないだろ?親だからするんだよ。 佐緒に幸せになって貰いたいって親だから思うんだよ?だから帰ろう?」 それでも佐緒は動かない…こりゃ、相当重傷だなと思い、逆療法を使って見る事にした。 「どこまで強情なんだよ!!一体何人の人に迷惑かけてると思ってんだよ!!周りがお嬢様とか言ってる!?誰もそんな目で見てねーよ!!少なくとも俺は佐緒をそんな目で見てねーよ!!自分だけ特別だと思うなよ!!」 …嘘です。見てます…orz。 さらに俺は、出かける時とっさに持ってきたパッセンジャー用のメットを渡し、「乗せてやるよ。」自分で「何言ってんだ!?」と思いながらも「ええい!!ままよ!!」と思いバイクのエンジンをかけた。 俺は佐緒に乗り方を教え、ヘルメットを被せた。 夜中の4時近く、バイパスに車はほとんどいない。JADEを全開運動させるには絶好の場所だ。いつもの俺なら脳内リミッターが外れてJADEのメーターを振り切らせてだろう。実際何台かのバイクはあっという間に俺達を抜き去っていった。 でも今日は後ろに佐緒がいる。万一の事を考え、60Km/hペースで走る。 そこそこ走って、また駅に戻った。エンジンを切って「どうだったよ?」と振り返ると佐緒はフルフェイスの中で泣いていた。 ヘルメットを外してやり「ごめん…やっぱ恐かった?」と聞くと 佐緒は顔を上げ首を横に振った。 「不思議な感じがした。景色が今までと全然違う見え方で…952はいつもあんな世界で生きてるんだね…」 「私、やっぱり頑張ってみる…。」と佐緒は続けた。 俺も「そーだね、それが良いよ。本当は学校だって嫌いじゃないんだろ?たまに佐緒が学校の事話してくれる時、凄い楽しそうな顔してるもん。将来の夢だって、本当に美容師になりたかったら大学出てたからだってなれるよ。今の状況で出来る最善の事しようよ。」 「バイクでね、ツーリングに行く時なんか携帯も繋がらないし真っ暗な山道とか走る事があるんだよ。そんなとこでもしバイクにトラブルがあったら誰も助けてくれない。自分の置かれてる状況の中で最善の対処をしなきゃいけないんだよ。 でも、佐緒にはそんな真っ暗な道でトラブルがあっても協力してくれる人がいるじゃん?それは家族であり、友達なんだよ。」この時、自分でも何を言ってるのか理解出来なかった。思ってる事をそのまま口に出してる感じだった。 「だから家に帰ろう?」と言うと佐緒はやっと頷いた。 携帯で佐緒の家に電話し事情を説明し迎えに着て貰う事にした。 10分後、佐緒の家族が迎えに来た。俺は、今までの状況を説明した。(バイクに乗せた事は言わなかった) 佐緒の親は頭下げまくりの謝りまくりだったが俺はそんな事より「今回の事で佐緒をあまり叱ったり責めたりしないで欲しい」と言った。 やはり、家族は警察に連絡してたらしく夜が明けたら地元を捜索する話も出ていたらしい。後日、佐緒の家族と佐緒そしてなぜか俺で警察に謝りに行き、ここでも当時の状況を警察に説明する羽目になった 事が起こってから数日後。予備校で佐緒にあった。 「こないだはごめんなさい…大事な時期なのに凄い迷惑かけたし…親にも凄い怒られたよ…本当にごめんなさい!!」と謝ってきた。 俺は「気にしないで!!色々、ぶっちゃけて少しはすっきりした?愚痴位ならいつでもお聞きしますよw」と重い空気を和ませようと冗談ぽく言った。 佐緒はちょっと笑ったがやはり表情は暗い。必死に和ませようと冗談や笑い話なんかを言うがやっぱり駄目… 俺はここで禁じ手である「バイクに乗せる」事を自ら誘って見た。 「佐緒さん、今週の日曜空いてる?」 俺は初めて、デートらしいデートに誘った。 佐緒は初め「えっ!?」って顔をしたがすぐに「はい!!大丈夫!!」と返事をくれた。その後待ち合わせ場所と時間を決め、俺の人生初デートが決定した。 それから日曜までの数日間、俺は今までに無い程の集中力でデートプランを考えた。ネットで旨い店探したり、今まではバイク雑誌しか買わなかったのにファッション雑誌買って見たり。 しかし、どれもこれも探し出すとキリが無い。そして、どれもこれも高い!! ファッションにしても、雑誌に載ってるTシャツ一枚9千円とか…「Tシャツ如きに9千円も出すならスプロケ変えるわ!!」と突っ込む始末。 どうせ、その日だけ着飾ったりしてもボロが出るなと思い、俺は飾る事無く行こう。俺らしいデートプランを考えようと決めた。 その結果、デートプランは 迎えに行く→ライコランド(バイク屋)→前にショートツーリングで見つけた景色が綺麗な峠→どっかのファミレス→映画→帰宅に決めた。 そして、俺はこのデートでもう一つ決めた事があった。 それは「告白」する事だった。 俺は第三者にも完璧なこのデートプラン見て貰い、意見を聞こうと幼稚園からの親友でありバリオス乗りのケン(仮名)の所へ行った。俺は今までの佐緒との出来事を全て話した上でケンに今回のデートプランについて意見を求めた。 すると、ケンは「お前、この計画を俺に見せて何を求めてんの?」俺はケンの言葉が理解出来ず「いや、だからこの計画俺はオリジナリティがあって良いと思ってるんだけど、お前の意見も聞こうと思って。」 ケンは真顔で「俺の意見?お前これ、自分の人生賭けた壮大なギャグか?だとしたら、かなりつまんねーぞ。大体、どこの世の中に初デートでライコ行く馬鹿がいるんだよ!! それに映画って書いてあるけど何見に行くんだよ?戦争映画しか見ないくせに。 こないだ、TSUTAYAで「地獄の黙示録」と「プラトーン」借りて喜んでたお前と映画なんか行ったら、その子悲惨過ぎるぞ」 この後、俺はケンにデートについて延々三時間語られ、俺が考えた計画も白紙に戻され、ケンにも手伝って貰った結果 迎えに行く→カラオケ→ファミレス→帰る に決定した。 正直、俺はX JAPANとかドッケン、メタリカとかのハードロックしか聴かなかったのでカラオケもかなり辛い… 佐緒の好きなミスチルは俺、大嫌いだし… それでも、ケンは「今から後何日間でミスチル全部歌えるようにしろ!!カラオケは二人きりになれるから絶対お勧め!!」 と言って譲らない。 結局、俺は押し切られる形でミスチルのCDを借り、練習する事になった。 ミスチルのCDを聞き出して最初はあの鼻にかかったような歌い方にムカついてたが、何回も聴くと「なんか、良い感じの曲もあるな〜」と思えるようになった。 メールでもミスチルの話題なんか話せるようにもなり、佐緒も喜んでくれた。 そして、デート当日。 デート当日。朝の10時前に待ち合わせ場所である地元の駅に到着。JADEは前日に洗車&ワックスがけしてありピカピカ。メットも磨きファブリーズもかけ、全ては完璧!!佐緒が来るまでの間、ミラーで入念に髪型もチェック。 すると、佐緒がこっちに走って来るのが見えた。「ごめん〜待った?」とちょっと息を切らせ気味で言ってきた。 俺は「全然!!俺も今来たとこだよ。」と月並みな言葉をかけ、メットを渡した。 この時、俺は恋人同士の気分。 そして、俺等は当初の予定通りカラオケ屋へ時間は二時間。この日の為に練習した、ミスチルを熱唱。佐緒はミスチルを一緒に歌ってくれたり、俺の唯一好きな女性歌手である倉木麻衣なんかを歌ってくれたりした。 楽しい時間はあっという間に過ぎるものでカラオケは俺の中でかなり良い感じに終了。 ここで、計画立案時に親友であるケンに言われた「デートでは女に極力、金を払わせるな」の言葉を思い出し、2000円近くを俺が全額払った。 佐緒は「悪いから、ちゃんと払うよ!!」と言ったが、佐緒と付き合えるなら安いものと思い断った。 カラオケ二時間やったのと12時を少しまわったのもあり腹も減ってきたので二人は一路、デニーズへ。 ここでもケンに言われた「お前が煙草吸ってる事は絶対秘密!!」の言葉を思い出し、禁煙席へ。この時点で正直、煙草が吸いたくて溜まらなかったが「佐緒と付き合う為!!」と思い、我慢。 俺は「たらこスパゲティ」とコーヒー、佐緒は「カルボナーラ」とコーラを注文した。 俺はもっとガッツリ食べたかったがここでも奢る事を考えてたのと女の前でガッツリ食べるのはちゃんと…と思い、少々控えめに注文。 デニーズはコーヒーやコーラはお代わり自由な為、二人で飲み物だけで粘る。 「どお?つまんなく無い?」と聞くと 「全然!!楽しいよ〜さっきのカラオケだってミスチル凄い上手かったよ!!」と言ってくれた。 「上手く無いからw佐緒が倉木麻衣歌ってたのは以外だったな〜上手かったよ」 「前に952が好きって言ってたら練習したんだよ〜w」とはにかんだ顔にやられそうになる。 なんて、嬉しい事言ってくれるんだ!!付き合いてぇな〜なんて考えながら、次の目的地の事を考える。 次の目的地は夜には自分達の街の夜景が一望出来る山。俺はここを決戦の舞台に決めていた。 時計を見ると12時ちょっと過ぎに入ったのにすでに5時を回っている。 佐緒が「次はどうするの?」と言って来たので「うーん、帰ろうと思うんだけど俺ちょっと用があって行かなきゃいけない場所があるんだ。すぐ、終わるから一緒に来てくれない?」と言った。 当然、用なんて無い。俺はこの時アドリブで佐緒を油断させて決戦の舞台へ連れていく作戦を取った。 佐緒は当然「えっ!?」って顔をしたが、「う、うん。良いよ。」と返事をして来た。しかし、顔は明らかに納得いって無い。 俺等は店を出て、いざ、決戦の地へ!! 俺はわざと遠回りして夜景が綺麗になる7時頃に到着した。 ここは地元でも余り知られていない場所で告白するにはバッチリの場所だ。 バイクを止め「着いたよ」と言うと佐緒は明らかに困惑してる「用って何??」としきりに言うが俺は「良いから、良いから」とはぐらかし、前を歩いた。 そして「用ってのはこれを佐緒に見せる事だよ」と言って夜景の良く見える場所で立ち止まった。 佐緒は「わぁ!!凄い!!こんなの初めて見た!!」と素直に喜んでくれた。 俺達はしばらく、夜景を指差して「あそこが俺んちら辺」とか「あそこが駅だ〜」とか言って楽しんだ。 正直、俺は「告白しないでこのままの仲の良い友達でも良いかな」と考えたが、「いやいや、結果は解らないが一歩前進もう」と思った。 佐緒は何も知らず、隣で夜景を見て微笑んでる。この微笑みが数分後にも見られるのか… その時、俺は決心した。 「ねぇ佐緒、話があるんだけど良いかな?」佐緒は「うん?」と言って俺を見た。 俺は「俺、実は佐緒が好きなんだ… 初めて見た時から、凄い可愛いなって思って色んな奴に佐緒のアドレス知ってるか尋ねて、メールするようになってから、性格も良いし… だから、俺と付き合って下さい!!」俺は全て言った。あとは結果を聞くだけ。 佐緒は真剣な顔で「私も952の事は大好きだよ。優しいし、私が家出した時もずっと側にいてくれて、凄い嬉しかった。 でも…私は、952と付き合う事は出来ない…952に一杯迷惑かけたし、952が私の事好きだって事に気付けなかった、そんな私に952と付き合う資格なんか無いよ…だから…ごめんなさい…。」 俺はこれを聞いた瞬間、泣きそうになりながら「付き合うのに資格なんかいらないよ!!俺は佐緒が好きだ!!迷惑なんか一杯かけてくれて構わない!!だから…だから…俺と付き合って下さい!!」 それでも佐緒は「ごめんなさい…本当にごめんなさい…私は952が思うほど、良い人間じゃないよ…952には私なんかよりもっと良い人見つかるから…ごめん…本当、ごめん…」最後の方は泣いていた… 俺はもう無理だと思い「解った…俺も自分の大好きな人を泣かせたんだもんな…佐緒と付き合う資格無いよ…ごめん…」 佐緒は尚も泣きながら「ごめん…ごめん…」しか言わない。 俺は「俺は大丈夫だよwフられるのはなれてるからwそーだよなー佐緒見たいな人なら俺より良い人みつかるよなーw」と空元気で冗談ぽく言ったが正直、その場で泣き叫びたかった。 「…送ってくよ」と言って俺はまだ泣いている佐緒をバイクに乗せた。 それから佐緒の家に着くまでの道のり、俺はフルヘェイスの中で涙が止まらなかった。 そして、佐緒の家の近くで止まった。 佐緒との最後。もう二度と会うことは無いだろう。 俺は佐緒のメットを脱がし「もう、泣かないで。最後は笑って別れようよw」と無理やり笑顔を作る。 佐緒も無理やり笑顔を作り「じゃー、さようなら…952なら私なんかより良い人見つかるよ…。でも、また会ったら友達でいようね。」と言った。 俺も「そうだね、またいつかどこかで会ったら、その時はよろしく…」 二人はその後、しばらく無言で見つめ合い「…それじゃ。」「うん…元気でね」 と言って別れた。 その後、俺は受験に失敗し1浪。彼女は風の噂で地元の大学の教育学部に入ったと聞きました。俺は二浪になった今でも佐緒の事が忘れられずにいる… ある小さな街の片隅であった、二人の高校生のちょっと背伸びした恋の話でした。 佐緒へ あなたに出会えて本当に良かったです。あなたと共有した短くも充実した日々を決して忘れません。またいつかどこかで出会ったら、その時はよろしくお願いします。 |