− しゃんぷー◆dwmwIUwJ42 さんの恋愛話 −
| 毎年この季節になると私がバイクに乗るきっかけになった出来事を 思い出します。ずっと昔、私の初恋にまつわる切ない思い出です。 わたしがまだ中学二年生だった時、わたしには気になっていた二つ年上の 男のコがいました。彼はわたしの近所に住んでいて、 家族ぐるみの付き合いがあったので、小さい時から幼なじみとして 育ってきました。 一人っ子のわたしにはまるで兄のような存在で、わたしは彼の事をいつも 「おにいちゃん」と呼んでいました。 おにいちゃんもわたしのことを「○○(名前):以下しゃんぷー」って 呼んでくれて、他人から見れば本当の兄妹のよう見えたと思います。 いつもわたしは、おにいちゃんにまとわりついていました。首根っこに 抱きつくのが大好き。 し「おにいちゃん!」 兄「重たいよ、しゃんぷー。あっ、風呂上がりか?いい匂いだ。」 し「そう、おにいちゃんが好きなシャンプーの香りだよ。」 兄「髪が濡れたままだと風邪引くぞ。」 し「はぁい。」 わたしは小さいときからおにいちゃんの事が大好きでしたが、そんな事は 口に出せることもできず、いつかおにいちゃんがわたしの気持ちに 気付いてくれて、二人が恋人同士になれることを夢見る毎日でした。 でも、おにいちゃんはそんなわたしの気持ちなんて気付きもせず、いつも おどけてわたしを笑わせてくれました。剽軽ものだったのです。 おにいちゃんは元バイク乗りの彼の父の影響から、小さいときから オートバイが大好きで、16歳になったらすぐにオートバイ(原付)の免許を 取りました。 夏生まれのおにいちゃんは、夏休みになったらすぐに試験場で原付免許を とって私に見せてくれました。 兄「しゃんぷー、見ろよ。免許だぜ。」 し「見せてー。ぷ。変な顔で写ってるw。」 兄「ほっとけよw(ぐりぐりパンチする♪)。これでバイクに乗れるんだ。」 し「どこかに連れてって。」 兄「んー。この免許じゃ二人乗りはできないんだ。」 し「え〜、ツマンナイ。じゃあおにいちゃん、大きいバイクの免許とって。」 兄「まあ、見てろって。」 おにいちゃんの父親は基本的に彼がオートバイを乗る事は賛成していましたが 誰でも卒業させてしまう「教習所」で普通二輪をとることは許さず、試験場で 試験を受ける事を条件としていました。 教習所(公認ではなく、練習専門の教習所)で練習のかたわら、 おにいちゃんは彼の父から譲り受けた50ccのミニバイクであちらこちらに ツーリングを楽しんでいるようでした。 そのバイクは彼の父が初めて乗ったバイクで、いまはおにいちゃんの初めての バイクになっていました。私が乗っても手足がちじこまるほど小さい 黄色いヤマハのGR。 毎週の様に、週末は関東近辺にツーリングに行き、いろんな話をわたしに 話してくれました。週末の夜、おにいちゃんはガレージの中で、今日 走ったばかりのミニバイクの掃除&メンテナンスをするのが日課でした。 わたしは作業しているおにいちゃんの背中にもたれかかり、その日に おにいちゃんが見た&感じたことを聞くのが大好きでした。 し「今日はいい天気だったね。今日はどこまで行ったの?」 兄「しゃんぷー、観音崎って知ってるか?」 し「わかんない」 兄「三浦半島の東京湾側っていえば分かるかな?、その岬の先端まで 行ってきたんだ。」 し「海がみえたの?」 兄「海辺に真っ白なホテルがあって、そこから海がよく見えたよ」 し「ああん、行きたぁい、行きたい、行きたい。。。」 わたしはおにいちゃんと、ステキなホテルのテラスで一緒に海を 眺める事を想像したら、もう行きたくて行きたくて仕方がなくなって しまいました。足をばたばたさせて、おにいちゃんの背中に抱きついて、 連れて行ってもらう事を何度も御願いしました。 し「行きたい。いーきーたぁーい!」 兄「重たいよしゃんぷー。わかったよ。じゃあ、俺が大きいバイクの免許 取ったら、しゃんぷーを乗せて一緒に行くよ。」 し「本当?ウレシー。じゃあ、じゃあ、わたしママに聞いてお弁当作るよ。」 わたしは本当にうれしくて、その夜は二人で眺める海の事を想像し、 なかなか寝付けませんでした。 そしてわたしは一つの決心をしました。 「連れて行ってもらった岬で、おにいちゃんに告白しよう」 海を見ながらだったら、おにいちゃんに今まで長い間秘め続けた胸の内を 打ち明けることができるような気がしました。 海の見えるテラスで二人っきり。私はちゃんと告白できるかな。 おにいちゃんはわたしを受け入れてくれるかな? キスとかしてくれるかな? きっと人生で一番幸せな日が来ると幼かった私は信じていました。 そして夏が過ぎ、秋風になり、肌寒くなる頃になりました。 おにいちゃんはバイトを始めて、昔のように頻繁に会うことが 出来なくなりました。 きっと高校の友人と遊ぶことも多くなったのでしょうね。 しばらく会えない日が続いた後、おにいちゃんが免許を取ったと いう連絡が本人からでなく両親経由で届きました。 #家族ぐるみのつき合いなので、互いの子供の話題もでるらしい。 わたしは、なぜ、本人が教えてくれないんだろうと思いました。 観音崎へ連れてってくれる約束、忘れちゃったのかな・・・ こんどの週末の夜、いつもの様におにいちゃんのガレージに 忍び込み、聞いてみようとおもいました。 「デモ、ナンテ、キイタラ イイノダロウ。」 「ナンデ、オシエテクレナイノ?」 私の中で何度も何度も繰り返す疑問でした。週末になれば解ると 思うと、はっきりさせる事も怖くなってきました。 「モシカシタラ ワタシヨリ タイセツナ ヒトガ イルノ?」 でも、その日が来ることは永久に有りませんでした。 明日は週末という日、おにいちゃんはバイト帰りに交通事故で 亡くなってしまいました。 大好きなGRではなく、自転車でトラックに巻き込まれて・・・。 即死でした。誰もみとる事もできずにおにいちゃんは一人で 逝ってしまいました。 わたしはさよならも言えず、棺に入って帰ってきたおにいちゃんの 最後の顔も、包帯に包まれていて見る事ができませんでした。 聞けなかった質問。果たされなかった約束。突然のお別れ・・・。 棺に向かって、おにいちゃんの両親もわたしの両親も大声で 泣いていました。わたしはまるで感情を無くしてしまったように 呆然とその場に立ちつくすだけでした。 わたしはお葬式でも泣く事ができず、ひとつの言葉が頭の中を 何度も繰り返されました。 「ツレテイッテ クレルッテ イッタノニ・・・」 初七日も終わった頃、わたしはおにいちゃんの両親から家に来る様に 呼び出されました。小さい箱に入ってしまったおにいちゃんを見ても やはり涙は出てきませんでした。 線香をあげていると、彼の父は私にリボンの掛かった大きな包みを わたしに手渡しました。 父「しゃんぷーちゃん、開けてごらん。息子が君にプレゼントするつもりで 買ってあったものだよ」 し「・・・・あっ」 真っ赤なヘルメットでした。おにいちゃんは約束を忘れてなかったのでした。 わたしを驚かそうと、内緒でヘルメットまで用意してくれて・・・ いままで涙が出なかったわたしは、その時初めて泣きました。 ヘルメットにすがりつき、何度も「おにいちゃん」って呼びながら ワンワン泣きました。 一度出た涙は止まることなく、ヘルメットを濡らすほど泣き続けました。 2年後、私も免許を取りました。愛車はおにいちゃんが乗っていた 黄色いGR。そしてあの赤いヘルメット。 最初のツーリングの目的地は、当然観音崎の白いホテルである事は言うまで もありません。 海辺ホテルのテラスで赤いヘルメットに向かい、小さい声で2年前の告白を しました。 いまでも、黄色いGRはわたしの部屋の中に飾ってあります。壊れたら もうパーツが無いので、もう走らせる事はないと思いますが、これが お守りとして、一生そばにおいておこうと思っています。 |