− ヤマハの人◆V4/xGh2fZU さんの恋愛話(その8) −
| 京都の彼女と別れたあと〜今の彼女に出逢い、付き合い始めるまで。 第一話 真夜中、彼女に電話をかける。いつも、他愛の無い話をして、「またな、 おやすみ」と言って電話を切る。たまにしか逢えないけど、たまにしか逢え ないからこそ、大切に育ててきた、この気持ち。彼女との距離は少しだけ遠 いけれど、俺と彼女の間には、見えない糸があるということを俺は信じてい た。 ひとりで眠るときにはいつも、俺の腕を枕にして眠る、彼女の重みを思い出 しながら眠った。そして時々、彼女の夢を見た。彼女に逢えない日は、アル バムを見て過ごした。彼女とたくさん撮った写真はもう、アルバムに入りき らなくなっていた。 彼女には、たくさんの想い出と、たくさんのぬくもりをもらった。俺は彼女 に与えてもらってばかりいた。俺は彼女に、何かを与えていることができて いるのだろうか。切ない夜を過ごしながら、俺は彼女のことを想う。 いつか、この糸がもっともっと短くなって、彼女と一緒になれたらいいのに。 いつものように、彼女に電話をかける。いつも、他愛の無い話をして、 「またな、おやすみ」と言って電話を切る。だけどその日は違った。 いつもと違う彼女の声に、俺は戸惑っていた……。 夢と違うことがあるとしたらそれは、目が覚めたら彼女はもういない、とい うことだった。彼女の声を聞くことも、彼女のぬくもりを感じることも、も うできない。いっそ、彼女のことを嫌いになれたらいいのにと思っても、そ ううまくいくはずは無い。 やりきれない思いが胸を刺す。 “彼女を想う気持ち”というエンピツで心に線が引かれる度に、“失恋した 時の、辛く切ない気持ち”という消しゴムで必死に消していった。しかし、 そんな自分に嫌気が差していた事も事実だった。 失恋した事は辛い思い出かもしれない。だが、“彼女を好きになってよかった” という気持ちと、“彼女と過ごした日々は、大切なものだった”という気持ち は、紛れもない事実だった。それに気付いた俺は、何かが吹っ切れたような気 がした。 好きだった、バイクでの夜の散歩も、再びするようになった。俺は以前の明 るさを、徐々に取り戻していった。ここまで来るのに、2年近くの月日を要し た。 今の彼女に出逢ったのは、それからしばらく経ってからの事だった。 ある日、たまたま、当時の俺の職場の近くまで来たから、ごはん食べに行か ない?と妹からメールがあった。どうせまたおごってもらいたいんだろうな ーと思い、しょうがねえなと思いつつもOKした。 間もなく仕事が終わり、待ち合わせ場所であるイクスピアリの入り口に行くと、 女がふたりいた。一人は俺の妹。もうひとりは、妹の職場の同僚とのことだっ た。とりあえず挨拶をして、ところで何を食べようか。という話になった。 その頃、和食に飢えていた俺の提案で、京料理の店に入ることになった。 京料理...京都_| ̄|○ まあそれは置いといて、食事をしながら適当に話をすると、けっこう俺と似 ているところがあり、性格の話や、音楽の話などで盛り上がった。しかしひ とつだけ、趣味が決定的に合わない部分があった。俺は車とバイクが好きで、 彼女は、車もバイクも全然興味が無いということだった。 どっちも興味ねーのか。つまんねえな。と思いつつ、食事は終了。彼女は、 自分の分は払うと言ったが、「いいよいいよ。もともと妹にはおごるつもり だったし、ついでだから」と断り、会計を済ませる。 「じゃあ俺、バイクだから」と先に帰ろうとした時、彼女にメールアドレス を訊かれた。俺はさっきの会話を思い出した。 ――「休みの日は何して過ごしてるの?」と訊くと、彼女は「家でゴロゴロ してる」と言っていた。「うわ、もったいねえ。外で遊んだほうがいいぞ」 と言ったら、「じゃあ、今度どこか連れてって下さい」と言われたのだ。 軽く「いいよ」と言ったものの、社交辞令のつもりだった。もう会うことも 無いだろうなと思っていたから、軽く返事をしてしまったのだ。―― というわけでお互いのメールアドレスを交換し合い、俺は妹たちと別れた。 その日の夜、彼女からメールが来た。「今日はごちそうさまでした。ありが とうございました。」と、短いメールだった。俺は夜の散歩に出ていて、メ ールに気付いたのは深夜だったし、なんとなく面倒だったこともあり、返事 は返さなかった。 それから数日は俺からメールを送ることも、彼女からメールが来ることもな かったのだが、週末になって、彼女からメールが来た。「日曜日、どこかへ 出かけませんか?」という、短いメールだった。日曜は車のエンジンを組み 上げたかったのだが、せっかく誘ってくれたからということで、OKした。 迎えにいくから、と彼女の家を訊き、時間を決める。彼女の家は、ウチから バイクで20分位のところにあった。俺の車はエンジンをバラしている状態だ ったから、バイクで迎えに行った。 そのままタンデムでツーリング、と言いたいところだが、俺のバイクは例に よってシングルシートにバックステップ。まあバイクじゃなくても、バスと か電車で遊びにいくことはできるし、何でもいいやと思っていたら、彼女が、 「私の車で行きます?」と言ってきた。車庫に入っていたのは、ピンクのヴ ィッツだった。フルノーマルのヴィッツ。いやそれはいい。だが色がピンク。 ピンクかよと( ゜д゜) ポカーンとしている俺に、彼女は、「運転は苦手だから、 お願いしていいですか?」と、キーを俺に渡した。かくして、俺と彼女の、 初めてのドライブが始まった。 ドライブ内容は長くなるし面倒だから書かないけど、それ以来、メールも頻 繁にやりとりするようになり、何度か遊びにも行くようになった。一度、俺 の車で出かけた事があったが、キャブ仕様特有の臭いが彼女には合わなかっ たみたいだった。かといってトランポでドライブというのもキツいよなあと 思い、それ以来、バイクで彼女の家に行き、そこから彼女の車に乗って遊び に行く、というパターンが出来上がった。雨の日には、彼女に迎えにきても らっていた。 何度もドライブするうちに、ピンクのヴィッツも好きになってきた。が、や はりバイクで出かけたいなーという気持ちも大きくなり、同時に、彼女のこ とも、“妹の同僚”から“ちょっと気になる人”になっていた。そして、や っぱりバイクで出かけたいよなあという気持ちがモコ−リと頭を持ち上げた 。その気持ちは、日に日に大きくなっていった。そして俺は、ある計画を立 てた。まあ、計画といっても大したものではないのだが。 彼女の親は、“バイク乗りはみんな珍走”だと思っていたみたいだけど、 俺を見て、フツーのライダーもいるんだなと思ったらしい。それでも“バイ クは危険な乗り物”という気持ちは変わらないらしく、タンデム計画は危う い気もしたが、まず、彼女を乗せて近所を一周してみようと思った。思いた ったが吉日、早速シングルシートとバックステップを外し、タンデムステッ プを装着した。 そしてある日曜の午後。心配そうな彼女の母に見送られながら、「家の周り を一周ツーリング」はスタートした。久しぶりのタンデムに緊張したが、難 なくツーリングは終了した。彼女は、思っていたよりも恐くなかったと言っ ていた。「普通に走れるものなのね」と彼女の母が言った。「よかったら乗 ってみます?」と俺が言うと、「遠慮しておくわ」と笑った。 その次の日曜日、「二人乗りで出かけるなら、気をつけてね」と彼女の母に 釘を刺されつつ、俺と彼女は駅前のワッフル屋に向かって走った。 「車で見る景色と全然違うのね」と、チョコレートがかかったワッフルを食 べながら、彼女が言った。「うん。ちょっと気持ちいいでしょ?」と言うと、 「うん。でも、やっぱり少し恐いけどね」と言って、苦笑いしてた。 帰り道ものんびり走り、無事に彼女宅まで到着。彼女とタンデムしたのは、 これが最初で最後...かどうかはわからないが、この日以来、彼女とはタンデ ムしていない。俺のバイクも、また一人乗り仕様に戻した。 |