ここでは、マイムマイムに次いで日本でも比較的良く知られている歌を通じて、引き続きヘブライ語の諸相を見ていくことにします。
(1)ハバ・ナギラ
ハバ・ナギラ(音楽)
(1-1)基本的事項
歌詞:"Hava nagila venismecha, hava neranena venismeha, ulu achim belev sameach"
(カタカナで):ハバ ナギラ ベニスメハ、 ハバ ネラネナ ベニスメハ、 ウル アヒーム ベレブ サメアッハ
訳:さあ、喜ぼう。立て、兄弟よ、心から喜びなさい。
(1-2)歌詞解説
"hava"、これは「さあ○○しよう」という意味の感嘆詞(かけ声)です。引き続き動詞が来ます。"nagila"、この動詞の語根は"g-y-l"で、この動詞は"ain-yod"という形なのでやや特殊な変化をしてhif'il形が、"hegil"となります。これは「彼は大いに喜んだ」という意味になります。これを"nun"を接頭して"nagil"とすれば、「私たちは喜ぶであろう」という意味になります。よって"have nagila"で「さあ、大いに喜ぼう!」という意味になります。"nagila"の最後の"a"は音韻を揃えるための接尾辞で、より感情的な感じが出ます。
次に、"nismecha"ですがこれの語根は"s-m-ch"で、やはり「喜ぶ」という意味です。"pa'al"体だと母音は"a-a"なので"samach"となり、「彼は喜んだ」の意味になります。これが"nismach"と"ni"が付くと「私たちは喜ぶであろう」という意味になり、"hava nismecha"で「さあ、喜ぼう」という意味になります。"nismecha"の前の"ve"はマイムマイムの時の最初の"u"と同じ"waw"という文字で、普通は"ve"と読むのですが、"sh"の前では"u"と発音します。
続いて"neranena"ですが、この語の語根は"r-n-n"です。原型は"ron"(彼は喜んだ)という特殊な変化をしますが、「私たちは喜ぶであろう」は通常に"ne"を接頭して"neranen"となります。そして"hava neranera"でこれまた「さあ喜ぼう」あるいは「さあ、喜びの声を挙げよう」という意味になります。ヘブライ語には先のマイムマイムの"s-y-s""sason"と言い、ハバナギラの今までに出てきた3つの単語と言い、「喜ぶ」と訳せる単語が多くあります。
その次に"uluですが、この語根は"'-l-h"です。この語は「起きる」「立ち上がる」という意味の頻出語ですが、"pe-ayin""lamed-he"と二重に特殊な動詞です。ヘブライ語に於いて命令形は、二人称複数未完了体から接頭辞を覗いて作るのですが、この語の場合該当する語が"taulu"(あなた方は立つであろう)なので、命令形は"ulu"となり、「立ち上がれ!」の意味になります。その次の"achim"は「兄弟」「同胞」を意味する"ach"の複数形で「同胞達よ」の意味になります。
最後の"sameach"ですが、これは先に説明した動詞"s-m-ch"の命令形です。命令形の作り方は直前に記したとおりですが、この動詞は"lamed-chet"という特殊な動詞なので、最後の部分が"sameach"と"-ach"と言う形の終わり方をします。「喜びなさい」という命令語です。その前の"belev"の"be"は「中に」という意味の前置詞、"lev"は「心」の意味の普通名詞です。
歌詞の説明は以上です。実際の歌は同じフレーズが何度も繰り返しますが、これはアシュケナージ系(東欧系)ユダヤ人の宗教的一派である「ハシディーム」(敬虔なる人々)の「シムハット・トーラー」(「律法の喜び」と言う意味で、歌い踊りつつ神を賛美する)の影響が見て取れます。
(2)ヒネ・マ・トブ
ヒネ・マ・トブ(音楽)
(2-1)基本的事項
歌詞:Hineh mah tov umah naim shevet achim gam yachad
カタカナで:ヒネ マ トブ ウマ ナイム シェベト アヒム ガム ヤハド
訳:見よ、兄弟達が一同に座していることは何とすばらしく美しいことか。
引用:旧約聖書 詩編133章
(2-2)歌詞の説明
"hine"、これは「見よ」「ほら」「ここに」と言った意味の感嘆詞です。"ma"これは「何」という疑問詞ですが、ここでは「何と」という意味の感動詞として使われています。"tov"「良い」という意味の形容詞です。創世記最初の「神は良しとされた」の所でも使われています。"u"先の歌でも説明したように「そして」の意味です。"nayim"「和んでいる」という意味の形容詞です。
"shevet"「座している」と言う意味の副詞です。休息日と訳される"shavat"と同語源です。"achim"上の歌でも説明しましたが、「兄弟達」という意味の名詞です。旧約聖書ヘブライ語は単語が1万強しかなく、同じ単語がしばしば出てきます。"gam"「ことさらに」と言った感じの強調句です。"yachad"「一緒に」という意味の副詞です。ヘブライ語で数字の1を"echad"と言いますが、これと同語源です。
הִנֵּה מַה טוֹב וּמַה נָּעִים שֶׁבֶת אָחִים גַּם יַחַד
(3)ハバ・ナリマ
ハバ・ナリマ(音楽)
(3-1)基本的事項
歌詞:HAVA NARIMA NES VA'AVKA, YAHAD PO NASHIRA SHIR HAHANUKA.
MAKABIM ANACHNU DIGLENU RAM NACHON, VA'IVANIM NILCHMNU VELANU HANITSACHON.
PERACH EL PERACH ZER GADOL NISHZOR, LEROSH HAMNATSEACH MAKABI GIBOR.
カタカナで:ハバ ナリマ ネス バアブカ、 ヤハド ポ ナシラ シル ハハヌカ
マカビム アナフヌー ディグレヌー ラム ナホーン、 バイバニム ニルハムヌー ベラヌ ハニツァホン
ペラフ エル ペラフ ゼル ガドール ニシュゾル、 レロシュ ハムナツエハ マカビ ギボール
訳:
1、さあ、ハヌカの松明を高く掲げよう。ここで一緒にハヌカの歌を歌おう。
2、我々はマカビだ、我々の旗はもちろん高い。贖罪の日に私たちは戦って、戦いに勝利した。
3、花から花へと大きな花輪を織りましょう。それを勝利者である偉大なマカビの頭に掲げる。
(3-2)歌詞の説明
この歌は、歌詞は余り知られていないかも知れませんが、体育大会などで優勝者をたたえるために良くかかるメロディーです。
"hava"最初の歌でも説明しましたが、「さあ○○しよう」という意味です。"narima"語根は"r-v-m"の動詞で、「挙げる」という意味です。"ayin-waw"という特殊な動詞のため、hif'il形は"harim"(彼は高く挙げた)となり、"narim"で「私たちは高く挙げるだろう」の意味になり、"have narima"で「さあ高く挙げよう」となります。この動詞から派生した形容詞が"ram"で、アブラハムの元の名前である"abram"は「高い父」の意味です。"hanuka"とはユダヤ人の故事であり祭りです。かつて、対ローマのユダヤ独立戦争の際に、マカベのユダがろうそくを何回ともしても消えなかったという故事から、民族独立、神の奇跡の象徴となっています。"nes"「奇跡」の意味の普通名詞です。"avka"「松明」名詞。
"yachad"先の歌にも出てきましたが、「一緒に」という意味です。"po"「ここで」の意味の副詞です。"nashira"語根が"sh-y-r"の動詞で「歌う」という意味です。"ayin-yod"型の格変化をします。"nashir"で、「私たちは歌うだろう」の意味になります。"shir"直前の動詞から派生した名詞で「歌」の意味です。
"Makabim"「マカベ一族」"Makabe"の複数。"anachnu"「我々は」代名詞複数一人称主格。"diglenu"<"degel"「旗」で、「我々の旗」。"ram"「高い」。"nachon"「もちろん」間投詞。"va"「そして」接続詞。"ivanim"「贖罪の日」ユダヤの大きな祭り。"nilchamnu""l-ch-m"を語幹とする動詞のhifiru型の"nilcham"から「私たちは戦った」一人称複数完了態。"ve"「そして」。"lanu"「私たちに」。"ha"定冠詞。"nitsachon"「勝利」。
"perach"「花」。"el"「~へ」前置詞。"zer"「花輪」。"gadol"「大きい」。"nishzor""sh-z-r"を語幹とする動詞でhifil型の"hishzzil"より「我々は織る」一人称複数未完了態。"le"「~へ」"el"と同じ。"rosh"「頭」厳密には弱形。"ha"定冠詞。"mnatseach"「勝利者」2番の"nitsachon"と同語根。"Makabi"「マカベ」英雄の名字。"gibor"「偉大な」。
הבה נרימה נס ואבוקה -
יחד פה נשירה שיר - החנוכה..
מכבים אנחנו, דגלנו רם, נכון
ביוונים נלחמנו ולנו הניצחון
פרח אל פרח זר גדול נשזור,
לראש המנצח, מכבי גיבור