引き続きもっと最近に作られた、より複雑な歌について見てみましょう。今回説明する「黄金のエルサレム」は、イスラエルの天才的作詞・作曲家であるナオミ・シェメルが作った歌で、結果的に第3次中東戦争によるエルサレム奪還を預言した歌で、今はエルサレム市歌となっています。日本でもたまにメロディーがBGMとして流されることがありますが、詩、歌共に世界の一級品です。
黄金のエルサレム(音楽)
(1)歌詞
1, avir harim tzalul kayain, vereiach oranim
nisa'a bereach haarubaim im kol pa'amonim.
ubetaldemat ilan vaeben, shvyah bachaloma,
hair asher badad yoshevet, ubeliva homa.
(refrain) yerushalayim shel zahav, veshel nechosht veshel or,
halo lechol shiraich ani kinor.
2. eihah yavshu borot-hamayim, kikar hashuk reikah
ve’ein pokedet ether-habait,ba’ir haatika.
ubamearot ashelba sera, meyalelotruchot
ve’ein yored el yam-hamelach bererech yericho.
(refrain)
3. achbevoi hayom lashir lach, velach kikshor kutarim
katonti mits’ir banaich, umeacharon hameshorerim.
ki shmech tsorevet ethashfatayim, kineshikattsarach
im eshkachech Yeryshalayim asher kula zahav.
(refrain)
4. chazarnu el borot hamayim, lashuk velakikar,
shofar kore behar-habait ba’ir haatika.
uvamearot asher basera, alfei shemashot zochrot
nashuv nered el yam-hamelach be derech yareicho.
(refrain)
カタカナで:
1番
アビル ハリム ツァルル カヤイン ベレイアッハ オラニム
ニサー ベルアッハ ハアルバイム イム コル パアモニム
ウベタルデマト イラン バエーベン シュブヤ バハロマー
ハイル アシェル バダッド ヨシェベット ウベリバ ホマー
(繰り返し)イェルシャライム シェル ザハブ ベシェル ネホシェト ベシェル オル
ハロ レホール シーライフ アニ キノール。
2.エイハー ヤブシュー ボロート ハマイム キカル ハシューク レイカー
ヴェエイン ポケデト エト ハル・ハバイト バイル・ハアティカー
ウバメアロート アシェル バセラー メヤレロート ルホート
ヴェエイン ヨレド エル ヤム・ハメラッフ ベデレフ イェリホー
(繰り返し)
3、アフ ベボイ ハヨム ラシール ラフ ヴェラフ リクショール クタリーム
カトンティ ミツイール バナイフ ウメアハロン ハムショレリム
キ シュメフ ツォレーブ エト ハシュファタイム キヌシカット サラーフ
イム エシュカヘフ イェルシャライム アシェル クラ ザハブ
(繰り返し)
4、ハザルヌー エル ボロート ハマイム ラシューク ウラキカル
ショファール コレ ベハル ハバイト バイル ハアティカ
ウバメロート アシェル バセラ アルフェイ シュマショート ゾフロート
ナシュ−ブ ネレド エル ヤム ハメラフ ベデレフ イェリホー
(繰り返し)
訳:
1番
山々の風はワインのように冷ややかで、松のにおいが
夕方の風に乗って太鼓の音と共に漂っていく。
そして木も石もまどろんで夢の中に休むとき、
ただ一人立つこの町は城壁の中にある。
(繰り返し)黄金のエルサレムよ、そして銅と光の町よ、
貴方にとって私は竪琴でありたい。
2番
水ためはどこへ行ったのか、市場は廃墟のようだ。
そして誰も古代の都市エルサレムにある神殿を散策しようとしない(できない)
岩山の洞窟では風がうなりを揚げ(るだけ)、
そしてジェリコを通って死海に下る者は誰も居ない。
3番
ああ、あなた(エルサレム)の歌を歌う日が来たときに、そしてあなたに王冠をかぶせるときに、
私はあなたの子供の中でもっとも若い者よりも小さくなり、あなたの歌い手たちの最後尾につきたい。
さもなくば、あなたの名前が、天使の口付けで私の唇を焼き尽くしてしまう
もし私が、全てが金のあなた、エルサレムを忘れることがあるとしたら。
4番
我々は水ためへ、そして市場に、野原に帰ってきた
つのぶえは神殿の丘に、古代の町(エルサレム)に、響き渡る。
そして岩山の洞窟には、何千もの太陽が昇り輝き、
私たちはジェリコの道を通って、死海へと戻り下っていく。
(2)歌詞の解説
1番
"avir"「空気」の意味の名詞。"harim","har"(山)の複数形。"tsalul"「冷やっこい」という意味の形容詞。"yain"「ワイン」の意味の名詞。"ka"「〜のように」を表す"ke"に定冠詞の"ha"が合体した語。"ve"「そして」の意味の接続詞。"reiach"「香り」の意味の名詞。"oranim","oran"「松の木」の複数形。
"nisa'a"、語幹は"n-s-'"で"pa'al"態だと「(乗り物で)行く」という意味の動詞この動詞は"pe-nun"という不規則変化をするため、"hif'il"態は"nisa'a"で、「漂っていった」の意味になる。"be"「〜の中に」の意味の前置詞。"ruach"「風」の意味の名詞。"ha"定冠詞。"arbaim","erev"「夕方」の複数形。"im"「〜と一緒に」という意味の前置詞。"kol"「声」「音」の意味の名詞。"paamonim"、"paamon"「太鼓(の音)」の複数形。
"u"「そして」の意味の接続詞。"be"「中に」の意味の前置詞。"tardemat"、"tardamah"「まどろみ」を意味する女性名詞の弱形。"ilan"「木」の意味の名詞。"va"「そしてをあらわす接続詞」"ve"に定冠詞"ha"が一体化した形。"eben"「石」の意味の名詞。"shvyah"「囚われている」という意味の副詞。"shavat"と同語源。"ba"「そのなかに」の意味の前置詞。"chalomah","chalom"「夢」の意味の名詞の女性形。
"ha"定冠詞。"ir"「町」の意味の名詞、"hair"はこの場合エルサレムのことを指す。"asher"関係代名詞。"badad"「一人で」の意味の副詞。"yoshevet"、「休む」の意味の動詞"y-sh-v"の現在分詞女性形。"u"「そして」。"be"「中に」。"livah"「心」「心臓」を意味する名詞"lev"の女性形。"homa"「城壁」の意味の名詞。
繰り返し
"yerushalayim"{エルサレム}。"shel"「〜の」の意味の接続詞。"zahav"「金」の意味の名詞。"ve"「そして」。"nechoshet"「銅」の意味の名詞。"or"「光」の意味の名詞。
"ha"疑問詞だが、ここでは反語表現。"lo"「〜でない」の意味の助詞。"le"「〜にとって」の意味の前置詞。"chol","kol"「全ての」の意味の形容詞が、"le"と膠着して頭音が弱化したもの。先に出てきた"kol"(声)とはヘブライ語の綴りが異なる。"shiraich","shir"「歌」の意味の名詞の複数形の格変化形で、「あなた(エルサレム)の歌達」の意味。"ani"「私」の意味の代名詞。"kinor"「竪琴」の意味の名詞。聖書ではダビデが好んで用いた。
2番
”eicha”「どこへ」の意味の疑問詞。”yavshu”「去る」の意味の動詞”y-v-sh”(pe-yod)の過去形三人称複数。”borot””bor”「水溜り」と言う名詞の複数形。”ha”定冠詞。ヘブライ語の場合、修飾子の方に定冠詞がつく。”mayim”「水」、”bor-mayim”で「貯水槽」の意味。”ki”「〜のような」と言う意味の前置詞。”kar”「場所、場」といった意味の名詞。”shuk”「市場」(スーク)の意味の名詞。”reika”「空っぽの」と言う形容詞”reik”の女性形。
“ve”「そして」。”ein”「誰も〜でない」と言う意味の否定代名詞。”poked”「歩く」「散歩する」と言う意味の動詞”p-k-d”の現在形。”et”「〜を」の意味の前置詞。”har-habait”直訳すれば「山の家」となるが、ここでは「神殿」のこと。”ba”「〜の中に」と言う意味の前置詞。”ir”「町」「都市」名詞。”ha”定冠詞。”atika”「古代の」という形容詞”atik”の女性形。”ir haatika”は「あの古代の都市」となるが、エルサレムを指す。
“u”「そして」。”ba”「〜の中で」。”mearot”「洞穴」の意味の名詞”meara”の複数形。”asher”「〜ところの」関係代名詞。”sera”「岩」「岩山」の意味の名詞。”meiyalelot”「上がる」の意味の動詞”y-l-l”(pe-yod)の現在複数女性形。”ruchot”「風」の意味の名詞”ruach”の複数形。
“yored”「下る」の意味の動詞”y-r-d”(pe-yod)の現在形。”yam”「海」の意味の名詞。”melach”「塩」の意味の名詞。”yam-hamelach”で「死海」のこと。”derech”「道」の意味の名詞。”yericho”「ジェリコ」イスラエルの都市名。
3番
“ach”「ああ」と言う感動詞。”be”この場合は「〜の時には」と言った感じの前置詞。”boi”「来る」という意味の動詞”b-o-‘”の女性現在分詞形。”la”「〜のために」と言った意味の前置詞。”shir”「歌」の意味の名詞。”lach”「あなた(女性単数)に」の意味、この場合の「あなた」とはエルサレムのこと。”li”「のために」、次に現在分詞が来る前置詞。”kshor”「結ぶ」「つける」と言った意味の動詞”k-sh-r”の現在分詞。”ktarim”「王冠」「花輪」の意味の名詞”keter”の複数形。
“katonti”「小さくする」の意味の動詞”k-t-n”の一人称単数完了体、ただしこの文脈では形容詞句として読む。”mi”「〜よりも」の意味の前置詞。”tsir”若い人の意味の名詞”tsair”の弱形(後ろから”banaich”が修飾するため)。”banaich”「息子」を意味する”ben”の複数一人称女性形で、「あなた(エルサレム)の息子たち」の意味。”u”「そして」、接続詞。”me”「〜よりも」、前置詞。”acharon”「〜の後に」の意味の名詞。”ha”定冠詞。”meshorerim”「歌う」の意味の動詞”sh-y-r”からできた名詞”shorer”「歌い手」の複数形。
“ki”「なぜなら」の意味の接続詞。”shmech”「名前」”shem”の女性形で、「あなた(エルサレム)の名前」の意味。”tsorev”「焼く」の意味の動詞”ts-r-v”の現在形。”et”「〜を」、前置詞。”ha”定冠詞。”sfatayim”「唇」の意味の”sefah”の双数形(二つ一組)。”ki”「〜時に」、前置詞。”neshikat”「口づけ」の意味の”neshikah”の弱形。”saraf”「天使」の意味の名詞。複数は「セラフィム」。なお、”kerub”も「天使」であるが、”seraf”の原意は「焼き尽くす者」。
“im”「もしも」、接続詞。”eshkachech”「忘れる」の意味の動詞”sh-k-ch”の1人称単数形”eshkach”に目的辞の”ech”「あなた(女性形、エルサレムのこと)を」が膠着した形。”yerushalayim”エルサレム。”asher”関係代名詞。”kula”「全ての」を意味する”kol”の女性形。”zahav”「金」「金色」、名詞。
4番
4番は、1番から3番への返礼となっており、重複する語が多いので、重複しない語のみ解説します。
“chazarnu”「戻ってくる」の意味の動詞”ch-z-r”の複数一人称完了形。”shofar”「角笛(つのぶえ)」。”koreh”「呼ぶ」「読む」の意味の動詞”k-r-h”の現在形。なお、この語はアラビアの「コーラン」(クルアーン)と同根。”alfei”「千」の意味の”elef”の双数形。”shemachot”「太陽」の意味の”shemesh”の複数形。”zorchot”「輝く」の意味の動詞”z-r-ch”の現在形複数。”nashuv”「戻る」の意味の動詞”sh-u-v”の一人称複数未完了体。”nered”「下る」の意味の動詞”y-r-d”(pe-yod)の一人称複数未完了体。
(3)その他
この歌の1番から3番は「六日戦争」の直前に作られ、戦争でエルサレムを奪還してから新たに4番が作られました。なお、歌詞は2行づつ韻を踏んでおります。(終わり)
PS.ナオミ・シェメルさんは2004年6月26日に74歳の生涯を閉じられました。哀悼。