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湯川秀樹 |
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日本人としてのノーベル賞第1号。当時戦後の暗い世相にあって、明るい話題と希望を提供した。科学技術庁(当時)の原子力委員にも就任したが、「とにかく作れの気風に反対」と抗議の辞任をした。工学者でないのだから仕方あるまい(同じような苦労はイスラム圏最初のノーベル賞受賞者であるサラムも味わっている)。彼の成果はハドロン(強い相互作用をする素粒子)が直接作用するのではなく、「中間子」(レプトン)と呼ばれる短寿命の粒子の相互作用によると主張して、当時の大御所フェルミに異論を唱えたことである。その後中間子の存在を示す実験的証拠が見出され、ノーベル賞に至った。ノーベル物理学賞の場合、理論構成が天才的であっても実証されないと受賞対象にならない傾向がある。 |
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朝永振一郎 |
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やはりノーベル物理学賞受賞者。湯川秀樹とは学生時代からの友人で、良きライバルであった。湯川が先にノーベル賞を取ったときには内心あせったという。彼の受賞の対象は「くりこみ理論」である。これは、量子電磁気学において、電子の重さに裸の電子のそれを持ってくると相互作用の仮定で発散が生じるところ、その発散を無視してしまうと言う当初は乱暴な理論であったが、その後、その発散分を電子の質量に「繰り込む」と発散しないと言う形で整理し、「裸の質量」に対し「束縛質量」と呼んだ。そしてこの結果電子の実際の質量を極めて精度良く予言できたため、受賞に結びついた。現在「くりこみ理論」は、量子電磁気学に限らず、弱い力、強い力、さらには物性論(相転移等)に広く用いられ、数学的にも「繰り込み群」として、無限に対する視点の変換として理論整備されている。物理学的には自己相互作用の内在化に当たる。 |
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川端康成 |
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日本人3人目のノーベル賞受賞者で文学賞受賞。代表作に「雪国」、「伊豆の踊り子」等。彼の文学は極めて内面的であり、かつ純日本的であるため、そのような文学が世界的に認められた功績は大きい。彼のノーベル賞受賞をきっかけに、紫式部や清少納言等日本の古典について世界的に再評価が成された。私個人的には、翻訳の任に当たったザイテンステッカー氏等の業績ももっと評価されても良いと思うが。 |
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江崎玲於奈 |
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3人目のノーベル物理学賞受賞者であるが、物性論からは始めてである。彼の発想は逆転の発想で、当時の大多数の物性研究者が金属(特に遷移金属)の純度向上に血道を上げていたのに対し、あえて(少量の)不純物を混ぜたところにある。結果は「江崎ダイオード」(二極子)として結実し、現在のナノテクブームの大元を作った。彼の業績は現在の(超)バンド理論を元にすればある程度説明の付くものであるが、そこは「コロンブスの卵」と言うべきである。 |
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佐藤栄作 |
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元総理大臣。彼のどのような業績がノーベル平和賞に至ったのかいまだに不可解なのは私だけではあるまい。イスラエルのベギン元首相、ロシアのゴルバチョフ元首相、南アのマンデラ大統領やツツ司教、さらにはマザーテレサに比べてそれほどのものがあったのだろうか?彼の受賞後、ノーベル選考委員の一人が事実上解任され、ノーベル財団は佐藤栄作受賞との関連を否定していたが、本当はどうだろうか?外人も本音と建て前を使い分けるからね。 |
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福井謙一 |
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京都大学工学部教授として始めてノーベル化学賞を受賞した。対象となった仕事は「フロンティア電子理論」、つまり、化学結合は基本的に最外郭(フロンティア)の電子2個が同じ軌道を共有することにより安定化するためだが、この経験則を量子力学の交換積分の概念で現代的に定量化したことだ。工学部の先生がノーベル賞をもらうのは珍しいが、本人は「数学が好きだったので化学者になった」と言っていた。晩年は分子結合の計算機シミュレーションに力を入れていた。 |
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利根川進 |
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ノーベル医学・生理学賞を受賞。受賞の対象となったのは遺伝子組み替え理論。彼の研究をきっかけとして今のバイオブームがある。バイオというと今花形で「格好良い」が、実務は多分に泥臭い実験の組合せである。かれは学生の頃数学が苦手だったと言うが、バイオはたしかに数学でやるものではなく、気づきと工夫と努力によってやるものだ。学生の頃からやんちゃで気づきはすごかったという。 |
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大江健三郎 |
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2人目のノーベル文学賞受賞者。同じくノーベル文学賞ではあるが川端とは対極にあり、彼の作品に日本的な要素は全くなく、「たまたま日本人だっただけ」というのが彼の作風である。厚くて意味難解な著作が多いが、私なぞは文学的素養がないせいか、不可解・難解な意味の解明をしようとする気すら起こらなかった。ダウン症の子供(といってももう大人)を抱えている。 |
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白川秀樹 |
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2人目のノーベル化学賞受賞者だが、化学本流としては初めてになる。ようやく日本の化学も認められてきたと言うことか。彼の業績は、受賞前から「白川法」と呼ばれていたが、ポリアセチレン等不飽和重合化合物の形成に当たって、触媒を多量に入れることにより成膜させる方法の開発である。彼以前の重合化合物は粉体でしかなかったため、物性も計測できず、用途も極めて限られていたが、膜の形成により、応用範囲が急激に広がった。例えばTVの薄型画面に今は液晶が使われているが、白川膜に取って代わられるのは時間の問題だと言われている。かような人でも退官後は就職口がなく浪人していたというのだから、全国の浪人諸君、あせることはない。真価は必ず明らかになる。 |
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野依良治 |
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2年続いてのノーベル化学賞となった。野添先生の受賞対象の研究は「不斉合成」という仕事である。化合物を「普通に」合成すると、左右対称な分子がどうしても同量だけ生産される(これを光学異性体という)。ところが、薬効成分(薬として働く分子、広い意味では味の素なども)は人体の特性によりこの内一方だけである。従って合成後これらを分離しなければならないが、そもそも似ているので分離も難しい。そこで野添先生が試みたのは、金属錯体という「邪魔者」(立体障害という)を事前に組み込んでから反応させるというテクニックだった。これ自体思いつくのに天才性が必要だとは思えないけれど、彼の場合技術的に完成させたこと及びその後薬学を中心に極めて広範囲に利用されたことが今回のノーベル賞に結びついたのであろう。 |
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小柴昌俊 |
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ただ今、東京大学名誉教授の小柴先生がノーベル物理学賞を受賞したと言うニュースが伝えられました。小柴先生の専門は素粒子実験で、岐阜県の神岡鉱山跡に設置した「カミオカンデ」という光電子増倍管を何千個も並べた装置で、レプトンの一つである中間子のニュートリノを世界ではじめて観測した人です。この発見はその後、宇宙論等に大きな影響を与えました。今は弟子の戸塚洋二先生が、装置をスケールアップした「スーパーカミオカンデ」を用いて、つい最近まで質量が無いとされていたニュートリノの質量を測定する「ニュートリノ振動」という実験を
行っています。今回の小柴先生の受賞で私が感じたのは、「物理学賞は実験系が強い」と言うことです。つまり理論屋を眺めると、日本人に限っても、小林・益川理論の小林誠先生、益川先生、西島・ゲルマン理論の西嶋先生、南部・ゴールドストン理論の南部先生など大発見をした人が目白押しなのに、これらの先生を抑えての受賞となりました。正直言って意外でした。ともあれ、日本人が受賞したと言うことはうれしいことですが。 |
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田中耕一 |
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今度は島津製作所の田中耕一さんがノーベル化学賞を取られました。田中さんの
業績は、利根川さんに始まった遺伝子研究がゲノム(gene+chromosome)についての
分析がシークエンサーという自動機器により予想より早くに終了したために、研究の
中心がポストゲノム、つまり遺伝子の機能的断片であるゲノムからたんぱく質その
ものの構造(例えば立体配座など)に移りつつあり、遺伝子構造とその薬効が解明
されれば、テーラーメード(個人に合わせた)な創薬も可能になるため、各国で
特許競争をしていますが、その分析にレーザーを用いることは従来から行われて
いましたものの(特にピコ秒レーザーでは化学反応を動的に追える)、レーザー
照光の際にたんぱく質が配座を変えたり分解してしまうことが難点でした。
そこで田中氏は、偶然にも、中間物質を使うとうによりたんぱく質へのレーザーの
当て方を工夫して、たんぱく質が分解せずにイオン化する方法を開発し、これに
質量分析器を組み合わせることによりたんぱく質の情報を得ることに成功したもの
です。同時受賞の外人はNMR(核磁気共鳴装置:ゼーマンスプリット)をたんぱく
質のような高分子に付いても計れるように高度化したもので、NMRの方がより
詳細な情報を得られるため、こちらの方の方が多額の報奨金となっています。 |
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南部陽一郎 |
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南部先生(シカゴ大学名誉教授)がやっとノーベル賞を受賞されました。ご存命中に間に合って良かったです。授賞対象は「対称性の自発的な破れ」です。素粒子論は基本的に「リー群」という代数の対象関係でまとめられます。対称性こそが宇宙の根本を支配する美なわけです。ところが素朴な対称理論ですと、素粒子の質量は零(遠距離力のみ)となってしまい、光子はともかく他の素粒子の実験事実を説明できません。この困難を回避するのに提案されたのが「対称性の自発的な破れ」で、素粒子は枠組みとしては対称性を基本とするが、実在においてはその対称性をわざわざ壊して、ずれた形で存在しているというものです。数学的には座標軸と原点の移動に当たります。例えばポテンシャルが4次関数でも、頂点でないところで展開すると低次の項が出てくるでしょう。あたかもこのようなトリックです。なお、南部先生は素粒子論について他にもたくさんの重要な解明をしています。 |
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益川敏英 小林誠 |
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この2人は共同して、現在「小林・益川理論」と呼ばれる素粒子に関する理論を提案しました。宇宙創成にかかるビッグバンにおいては粒子と反粒子が同数できるのが自然です。ところがもし同数ですと、宇宙が膨張して冷却すると共に、粒子と反粒子は優先的に結合して対消滅してしまい、宇宙に物質が残る余地がありません。そこでこの2人が提案したのは、素粒子にかかる3つの特性のC(電荷)、P(パリティ)、T(時間)の内CPが全く対称でないという可能性でした。しかももしCPが非対称(ほんの少しです)になるためには素粒子であるクォークが3種類且つ2世代、合計6個以上存在すべきであることを、それこそクォークが発見され始めた初期に提案しました。最近になってこの6個がすべて揃い、彼らの理論の正当性が証明され、今回の授賞につながりました。 |
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下村脩 |
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この人は典型的な在野の努力型の(天才型でない)泥臭い研究者です。授賞対象はクラゲ起源の緑色蛍光たんぱく質GFPの発見と単離です。同定可能なGFPのためにクラゲ数十万匹を採取しました。もっともこの先生がGFPを単離したときは単に「美しい」程度だったのですが、遺伝子工学の進歩により、GFPを遺伝子に組み込めるようになり、GFPが人体や生体内の代謝物質トレーサー、可視化物質として使われるようになってからです。すべての蛍光たんぱく質が遺伝子に組み込んでもなお発光するわけでなく、その意味でGFPは今や医学・生理学に不可欠の物質となりました。なお、遺伝子組込み及び医学応用は他の米国の共同受賞者の手によるものです。またこの人の授賞はノーベル化学賞であって、医学生理学賞ではありません。 |
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鈴木章・根岸英一 |
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2010年のノーベル化学賞です。授賞対象は「炭素骨格のクロスカップリング」、遷移金属のイリジウムを触媒に用いた炭素同士の直接合成法の開発です。しかし遷移金属は不対で変わった外殻電子を持っているので、触媒に使えば意外な働きをすることは当時も常識であり、この人たちの仕事程度でもノーベル賞になるのかと言うのが、私の正直な驚きです。ノーベル賞もネタ切れですね。あまりにも凡庸な成果で、詳しく書く気にもなれません。 |
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