1月
まなかひに朝の富士あり天雲をつらぬきて赤くそびえたるかも
(神奈川県立秦野高校 歌碑)
○煙草殻あかあか焚かれて、芋粥などふきこぼれてゐる友の家にきた
(烈風)(煙草殻―たばこがらはたばこの葉をとった後の茎)
2007.2.12 撮影 秦野市弘法山 / 秦野市 農家 煙草殻
太神楽(注1)
正月がくると太神楽ほど楽しいものはない。村はづれからひびいてくる笛の音と太鼓を、私は幾晩寝床の上で繰りかえし、くりかえし空想したことであろう。そしてさあいよいよその楽しい笛の音と太鼓が現実に冷たく晴れ渡つた村の空にひびいて來た。もう私は朝の雑煮を食べたきりで、夕方暗くなるまで、その一隊のあとを、村童の群れにまじって、家から家へ、里から里へ追って行ったものだ。私の村にくる大神楽師の一隊は、大抵5、
6人づれで、いろいろの衣装や道具を入れた荷を二人でさしかつぎにして、擔(にな)つて來る。その荷には一方には淺黄幕が張られ、一方には太鼓が吊されてあった。そして、その荷を農家の廣い庭(注2)に据えて、家によっては半日では一日でも獅子舞からはじめていろいろな曲藝をし、茶番(注3)をするのである。
注1 太神楽―伊勢神宮に奉納する神楽から出た。雑藝の一種。だいだいかぐら、大道神楽、代神楽とも。夕暮のお神楽好きについては弟滋も「詩歌」夕暮追悼号(昭和26・9)に「彼は大きくなったらお神楽師になろうと考えた」と書く。
注2 農家の廣い庭―生家の庭で演じられることが多かった。
注3 茶番―滑稽なことを演じる座興。茶番狂言の略。
『朝、青く描く』「少年の春」
出典 郷土文学叢書 第15巻
「前田夕暮 ふるさとのうた上」〜詩歌歳時記 生い立ちの記〜 村岡嘉子編著 11p
発行 秦野市立図書館
大神楽1 太神楽2 太神楽3
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