3月
木に花咲き君わが妻とならむ日の 四月なかなか遠くもあるかな
○接収されし古き屋敷に人住めり障子しろじろ往還よりみゆ(夕暮遺歌集)

2005.3.15 撮影 秦野市三嶽神社
放尿
私は子守の背に負われて、大きな富士をみてゐた。田圃の一本路がうねりながら遠く私達の足元からつづいてゐる。そして末は朝霧のなかに消えてゐる。(中略)
日がほつかりとねんねこの上から私の背なかをあたためてくれると、私は富士をみながらつよい心持になつて、こらえてゐた小便をしゅしゅ、しゅしゅと音をたててして仕舞ふ。あたたかい小便が下腹から尻にかけてしみしみと沁みわたる。
子守は知つてか知らないでか、軆を相變らず左右に軽く打ち振りながら、小聲で守唄をうたってゐた。
あたりは春まだあさい一面の水田であるー。
『烟れる田園』「春」
出典 郷土文学叢書 第15巻
「前田夕暮 ふるさとのうた上」〜詩歌歳時記 生い立ちの記〜 村岡嘉子編著 22p
発行 秦野市立図書館
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