8月
うつばりに青き煙草(たばこ)を吊したりそのもとにゐて樂しかるべし
『原生林』「相模の歌」大正6年作
(小田急線 秦野駅南口広場)
○おのが寝(ぬ)る部屋の上にも烟草(たばこ)葉の青青(あをあを)とつり安寝すらしも
『原生林』「相模の歌」大正6年作

たばこ「秦野葉 天日干し」 秦野の竹細工 職人 山口幸男作
秦野のたばこ耕作
川魚
私は岸の草の上に着物をぬぎすてて、素裸になつて川のなかにとび込む、水の深さは三尺ばかりで、ひたひたと川波が腹にふれる。
私は兩手をのばして、ひそかに岸の蛇籠の石の隙間に指さきを入れた。今、すらりと脚に触れたうぐいの感蠋を、感覺の上で反芻(はんすう)しながら、視覺を指頭に集注して、水中を模索するのである。
私は、忽ちひやりと體ぢゆうにうぐいのなめらかな冷たい感蠋を感じた、と思つたときには、もう五六寸もあらうといふ銀色の魚を捉へてゐた。岸になげやうとしたが、私は口で魚をくはえて仕舞つた。魚はくはへられながら私の頰をひしひしと冷たい尾でうつた。川魚特有の植物性香氣が、涼しく口の中へ流れ入つた。
私は、夕ちかい川水に浸つて、涼しさにふるへながら、なお川中に魚をさがしてゐる。
秦野市水無川 川遊び
『緑草心理』
出典 郷土文学叢書 第15巻
「前田夕暮 ふるさとのうた上」〜詩歌歳時記 生い立ちの記〜 村岡嘉子編著 60p
発行 秦野市立図書館
前田夕暮歌碑めぐり 前田夕暮の散文
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