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![]() 達四人は本隊に追いつこうと毎日歩くがなかなか追いつけない。この山道を早い部隊はーヵ月も前に転進し、十日前に通った部隊もあり様々である。わが手島中隊は半日ほど前に通ったはずである。 そのことを示すようにいろいろの屍が残されている 一ヵ月以前のものは白骨となっておりもう臭気も薄らいでいる。蠅は食べる部分を食い尽くしたのだろうか、もうー匹もいない。虚しさを感じる。 「夏草や兵どもが夢の跡」の句を思いだす。一週間ほど前の屍は非常に臭く、何とも形容できない臭さである。どす黒い汁が流れ出ており見られたものではない。 |
屍によっては黒い大型のピカヒカ光った蠅が群がっており、黒い大きな固まりがそこにあるように見える。蛆がわき、ぞろぞろと、腐った肉を食べているのだろうか這い回っている。気持ちが悪く、おもわず視線をそらす。 自然で、一応清潔な山の中なのにどうしてこんなに沢山の蠅がいるのだろうか。 最初は不思議に感じたか、蠅の好む腐れかけの肉があれば旺盛な繁殖力でー気に増えるようだ。 屍、それは尊い命であり、日本軍の兵士の姿なのである。 歓呼の声に送られて出征し、頼もしかったその人なのである。あまりにも酷い姿であり、あまりにも悲惨な姿である。 半日前とかー時間ほど前に息を引き取ったのか、道端に腰掛けて休んている姿で小銃を肩にもたせかけている屍もある。 また、手榴弾を抱いたまま爆破し、腹わたが飛び散り「真っ赤な鮮血が流れ出たばかりのものもある。 そのかたわらに飯盒と水筒はたいてい置いてある。また、ガスが充満し牛の腹のように膨れている屍も見た。地獄とま、まさにこんなところか・・・・ その屍にも雨が降り注ぎ、私の心は冷たく震える。 そのような姿で屍は道標となり、後続の我々を案内してくれる、それをたどって行けば細い道でも迷わず先行部隊の行った方向か分かるのだ。 皆これを白骨街道と呼んだ。 この道標を頼りに歩いた。ここらあたりは、ぬかるみはなく普通の山道で緩い登り下りである。 雨があがり晴れれば、さすかに熱帯、強い太陽か照りつける。暑い、衰弱しきった体には暑さは格別厳しく感じられる。 |