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お笑いコントの系譜 最近のテレビではコント番組が減っていますが、60年代から80年代ではお笑い番組の中心でした。ここでは日本のコントの歴史を振り返ってみたいと思います。ただし、同じネタを何度も演じる漫才などのコントは省いています。
マルクス兄弟
マルクス兄弟は米国で1920〜1940年代に活躍したドタバタ喜劇のグループです。たいへん人気のあったグループで、彼ら主演で多くの映画が制作されました。このマルクス兄弟の影響を強く受けているのが日本のザ・ドリフターズだと思います。特に「8時だョ!全員集合」の舞台でのドタバタ・コントはマルクス兄弟の映画のドタバタによく似ています。
ビゲダンス
ザ・ドリフターズの志村けんが演じたヒゲダンスの扮装はマルクス兄弟の中心人物のグルーチョ・マルクスの格好そのものです。これは、ザ・ドリフターズのマルクス兄弟へのオマージュ(敬意)かも知れません。
ドタバタ
マルクス兄弟の映画ではザ・ドリフターズによく似たドタバタがよく出てきます。たとえば映画「マルクス捕物帖」で、クローゼットに隠れ隙をみて移動したりするギャグやひっくり返したタンスの引き出しを引くと中身が落ちてしまうギャグなど、ザ・ドリフターズが舞台でやりそうなコントそのものです。
特技
マルクス兄弟には名人芸の指技でピアノを弾くチコと得意のハープを弾くハーポがいて映画の中で妙技を披露しています。一方、ザ・ドリフターズにも体操が得意な仲本工事やウクレレが得意な高木ブーがいます。
ダジャレ
マルクス兄弟の映画には言葉のシャレがよく出てきますが、中にはベタなダジャレも出てきます。映画「いんちき商売」ではパスポートを要求されボール紙(ペーストボード)を出し、違うと言われると洗濯板(ウォッシュボード)を出すというギャグを披露しています。ザ・ドリフターズがやりそうなギャグですね。
シャボン玉ホリデー
クレージーキャッツ
ジャズ系のコミックバンドです。60年代には「スーダラ節」などの曲が大ヒットとなり、主演映画も多く制作されました。高度成長期の60年代を象徴するコメディ・グループです。主要メンバーのハナ肇、植木等、谷啓はコメディアンとして活躍し役者としても成功しています。また、彼らの付け人から、なべおさみや小松政夫などのコメディアンが出ています。
モンティ・パイソン
69年秋から英国BBCで放送されたコメディ番組。短いコントをテンポよく放送していました。馬鹿ばかしいナンセンスなコントやパロディで歴史に残る番組です。迷惑メールを意味するスパムは、この番組のコントが語源だとされています。日本のコントはオチをつけるのが普通ですが、この番組では馬鹿ばかしさのままオチもなく終わるコントもあったりします。
ゲバゲバ90分
69年秋から、野球のナイターのない時期に放送されていました。短いコントを次々とテンポよく放送するスタイルで、モンティ・パイソンの影響かと思っていましたが、調べてみるとモンティ・パイソンと同時期に放送を開始しています。オープニングに行進曲が使われているのも両番組に共通しています。少し不思議な感じがします。
この番組からは、クレージーキャッツのハナ肇による「アッと驚くタメゴロー」が流行語にもなりました。この番組のコントはおもに役者やアイドルによって演じられていますが、コント55号の萩本欽一と坂上二郎も出ています。おもな出演者は、大橋巨泉、前田武彦、ハナ肇、宍戸錠、藤村俊二、朝丘雪路、大辻伺郎、うつみみどり、常田富士男、熊倉一雄、小松方正、松岡きっこ、沖山秀子、太田淑子、小山ルミ、ジュディ・オング、小川知子、萩本欽一、坂上二郎などです。 ただ残念なのは、ここからブレークした芸人などが出なかったことです。脚本家中心の番組だったのだと思います。
ザ・ドリフターズ
ザ・ドリフターズもクレージーキャッツと同じくジャズ系のコミックバンドです。リーダーのいかりや長介はクレージーキャッツとも親交がありシャボン玉ホリデーにも出たことがあるようです。ザ・ドリフターズはクレージーキャッツの弟分と言ってよいかもしれません。70年代から80年代に絶大な人気を誇ったコメディ・グループです。
ザ・ドリフターズは舞台で演じた「8時だョ!全員集合」以外に、スタジオ収録のコントも多く演じています。子供受けする芸風でしたが、シャボン玉ホリデー以来の日本のコントを受け継いでいるのだと思います。
コント55号
脚本はあってもそれを超えたアドリブと舞台を縦横に駆け回るという従来の漫才にはなかったコントで人気を博した萩本欽一と坂上二郎のコンビです。60年代末から70年代にかけて活躍しました。彼らが主演の映画も多く制作されています。
80年代には萩本欽一は「欽ドン!」のような素人を使ったコントでも大成功しました。今でも続いている「欽ちゃんの仮装大賞」は、その延長線上にある素人によるコントと言ってよいと思います。
サタデー・ナイト・ライブ
75年にスタートしたコントや音楽を中心とした米国のバラエティー番組。文字通り生で放送しており現在も続いているようです。この番組から多くのコメディアンが出ています。初期のメンバーにはジョン・ベルーシ、ダン・エイクロイド、ビル・マーレイ、エディ・マーフィ、マイク・マイヤーズ、クリス・ロック、スティーブ・マーティン、ロビン・ウィリアムズなどがいます。
この番組のコントは、変わったシチュエーションを設定しておかしなやり取りをする手法を取っています。ジョン・ベルーシのサムライ・シリーズでは、用心棒の三船敏郎風のサムライがさまざまな職業を演じていました。傑作として有名なサムライ・デリカテッセン、サムライ・テーラー(洋服屋)では、日本語らしき怪しげな言葉を低い声でしゃべりながら、時々、刀を出して大袈裟に切ってみせています。ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドの演じたブルース・ブラザーズは映画にもなっています。その他にもコーンヘッズやウェインズ・ワールドなども映画化されています。
ひょうきん族
「オレたちひょうきん族」は、80年代に裏番組の「8時だョ!全員集合」に対抗して放送された番組です。この番組のコントは、サタデー・ナイト・ライブと同じく変わった扮装や設定でのやり取りの面白さを出すという手法を取っています。事前に構成されたオチのあるコントではなく、自由なやり取りの面白さを追求しています。この番組では、黄色の縞々のハチの扮装が出てきましたが、これはサタデー・ナイト・ライブのキラー・ビーズを借りてきたものだと思います。
この番組で、ビートたけしの「タケちゃんマン」や明石家さんまの「ブラックデビル」のかけあいコントが人気を博しました。これによりビートたけし(北野武)と明石家さんまのトップ・コメディアンとしての地位が確立されたと思います。 また、この番組では「ひょうきんベストテン」のようなパロディの手法も取られています。従来の日本のテレビではあまりなかった手法だと思います。 この番組のおかげでフジテレビの視聴率が良くなり、会社としてもが飛躍できました。また、これ以降テレビ番組の軽薄化が進みました。
パロディ
80年代にスネークマンショーがパロディや過激なコントを展開しましたが、テレビに登場することはなくマイナーな存在でした。おもにラジオ、LP、CDの作品が多いのですが「楽しいテレビ」のようなビデオ作品も出しています。また、この系統では井筒和幸監督による「伊武とのりおのCOMBAてんねん」というビデオ作品を出しています。
こうしたシニカルで過激なコントはモンティ・パイソンの影響も感じられます。残念ながら、日本ではあまり受け入れられない分野のようです。
おまけ
欽ちゃん、タケシ、さんまなど、今でも活躍する60年代から80年代に登場したお笑い界の歴史に残る大物たちについて触れましたが、まだ残っている大物がいます。コントのコメディアンではないのですが、タモリと所ジョージです。
タモリはジャズ・ミュージシャンと親交があり、それがきっかけで芸能界に入ったようです。ジャズ・ミュージシャンには「面白がり」が多く、その影響もあるのだと思います。そういう点ではタモリはジャズ系のコメディアンと言ってもよいのだと思います。 所ジョージも「面白がり」です。クレージーキャッツの植木等の「無責任男」に憧れており、植木等とも親交があったようです。また、所ジョージはタモリとも親交があり、彼もまたジャズ系のコメディアンと言ってよいのかもしれません。
参考文献
書籍「シャボン玉ホリデー スターダストを、もう一度」五歩一勇 日本テレビ放送網
LD「いんちき商売」パイオニアLDC DVD「マルクス捕物帖」ファーストトレーディング LD「クレージーキャッツ メモリアル」東芝EMI LD「ベスト・オブ・モンティ・パイソン」ポニー・キャニオン DVD「巨泉×前武 ゲバゲバ90分!傑作選 DVD−BOX」バップ LD「サタデー・ナイト・ライブ スペシャル・ボックス Vol.1、2」パイオニアLDC VHS「スネークマンショー「楽しいテレビ」」ワンダーキッズ LD「伊武とのりおのCOMBAてんねん」ワンダーキッズ 2011.3.19 野沢 清 kiyoshi_nozawa@yahoo.co.jp |