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EVAの世界
90年代に作られたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」は、映画として新劇場版が作られ続けており、今なお高い人気を誇っています。
エヴァンゲリオン
エヴァンゲリオンは、来襲する使徒と呼ばれる敵と戦うため国連特務機関ネルフによって作られた人造人間(ロボット)です。エヴァンゲリオンは、エヴァあるいはEVAと略されて呼ばれますが、これは聖書の創世記に出てくるアダムの伴侶のイブのことです。この名称からして女性、そして母親のイメージが色濃く込められています。
碇シンジ
主人公の碇シンジは思春期に入りかけた14歳の少年です。父親の碇ゲンドウ(ネルフ司令官)に強制されてエヴァンゲリオンに乗って操縦することになります。
碇シンジはおとなしく自己主張のない少年で、逃避的な自分自身に嫌気がさしており、嫌々ながら強制されエヴァンゲリオンに乗っています。
大人の女性たち
主人公の碇シンジを取巻く登場人物は女性が中心です。男性の登場人物に比べて人間的な生きいきとした性格描写がなされています。
葛城ミサト 碇シンジの教育係りを務める29歳のネルフ職員。男性的でズボラな性格で酒飲みです。 赤木リツコ ネルフのコンピュータシステム(マギシステム)の責任者で30歳。葛城ミサトの親友です。クールで理知的ですが、大量のコーヒーを飲み、灰皿に吸殻の山を築いています。
大人の男性たち
主人公の碇シンジの身近にあって人間的な女性陣に対して、大人の男性の登場人物は主人公との心理的な距離は遠く非人間的な存在として描かれています。
碇ゲンドウ 主人公・碇シンジの父である碇ゲンドウは国連特務機関ネルフの司令官です。冷静沈着で独善的な策略家であり、何を考えているのか内面を見せない存在です。 冬月コウゾウ ネルフの副指令。大学で教授をしていた経歴を持つ人物で碇ゲンドウを補佐します。碇ゲンドウより10歳以上年上の60歳です。 加持リョウジ ネルフ職員で諜報活動を行い、三重スパイとも言われています。そのため、この人も謎の人物として描かれます。 ゼーレ ネルフを操る秘密組織。メンバーはモノリスのホログラムに身をやつして、その姿を現すことはありません。陰謀を図る大人たちの象徴として描かれているのだと思います。
EVAの搭乗者
エヴァンゲリオン(EVA)の搭乗者はすべて14歳の少年少女たちで、同じ学校のクラスメートです。ここでも女性が活躍し人間的な存在として描かれています。
綾波レイ 無口で従順、自己主張のない少女です。碇シンジの母親の碇ユイから作られたクローン(複製)人間です。碇シンジと心を通わせる数少ない存在でもあります。 惣流・アスカ・ラングレー 反発心の強い勝気な少女ですが、そのプライドの裏側には精神的に不安定な面を持っています。 鈴原トウジ 祖父と父はネルフ関連の研究者で妹想いの少年です。関西弁を喋る熱血漢で、碇シンジの友人。物語ではあまり目立つ存在ではありません。 渚カヲル 5番目の搭乗者として選ばれた少年ですが、実は敵(使徒)であるという複雑な存在です。碇シンジとの友情も芽生えますが、最後には自死を選びます。
EVAの魂
人造人間エヴァンゲリオンには亡くなった人間の魂が宿っていると言われています。その魂と搭乗者がシンクロしてエヴァンゲリオンを操縦しています。
EVA初号機 初号機の搭乗者は碇シンジですが、そこには碇シンジの母親の碇ユイの魂が宿っています。 EVA弐号機 弐号機にも搭乗者の惣流・アスカ・ラングレーの母である惣流・キョウコ・ツェペッリンの魂が宿っているようです。 EVA零号機 零号機の搭乗者は綾波レイですが、その魂は赤木リツコの母・赤木ナオコとも言われますが、はっきりしません。
EVAへの搭乗
人造人間エヴァンゲリオンにはプラグスーツを着て搭乗しますが、周りはL.C.L.と呼ばれる液体で充填されます。碇シンジにとってみれば母親の魂の宿った機体の中で羊水とも思える液体に包まれた状態になります。一種の母体回帰と考えても良さそうです。
物語のテーマ
主人公には、他人への恐れがあり、人間関係をうまく結べない悩みがあります。そのため、他人との関係や互いに分かりあえることが物語のテーマとして展開して行きます。この物語に出てくる人類補完計画とは、人類の魂を一つに融合することにあるようです。
なお、自分とは何なのか、何をすべきなのかという存在の問題も主人公や綾波レイによって語られます。これも、もう一つのテーマとして提示されています。
大人の男性への恐怖
物語の全体を見ると、主人公の父親への恐怖や大人の男性への距離感を感じます。反対に女性に対する親しみ、あるいは母親志向、胎内回帰志向のようなものを感じます。これは、おそらく作者の志向でもあると思います。
主人公の成長
主人公は14歳で思春期に入るころであり、まだ大人になっていません。自分の両親や自分の育った家庭を客観的に見ることのできてない年頃なのだと思います。
男の子なら、父親を比較対象の基準にして自分の人生を決めていくことができます。そして、やがては自分の父親を一人の男性として客観的に見ることができるように成長していきます。 作者(庵野秀明監督)は、対談で「シンジ君って昔の庵野さんなんですかって聞かれるんですが、違うんですよ。シンジ君はいまの僕です(笑)。14歳の少年を演じるくらい僕は幼いんです。」と語っています。(「庵野秀明スキゾ・エヴァンゲリオン」97年発売) 作者はこの物語で父親との確執をテーマに据えていたようです。しかし、この物語では父親を克服するような方向には行けそうもありません。その前段階で悩み精神的に格闘しているように見えます。おそらく、観念的な思弁で父親を克服しようとするのは無理だと思います。
参考文献
「エヴァンゲリオン用語事典 第2版」エヴァ用語事典編纂曲 八幡書店
「完本エヴァンゲリオン解読」北村正裕 静山社文庫 「庵野秀明スキゾ・エヴァンゲリオン」大泉実成編 太田出版 「庵野秀明パラノ・エヴァンゲリオン」竹熊健太郎編 太田出版 2011.03.02 野沢 清 kiyoshi_nozawa@yahoo.co.jp |