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歴史における三世代(明治〜現代)
江戸時代の有名な川柳に「売家と唐様に書く三代目」というのがあります。一代目が苦労して始めた商売を二代目が発展させ三代目が潰してしまう。唐様に「売家」と書いてある貼紙に三代目の趣味と教養が偲ばれるというお話です。 明治〜終戦(1868〜1945)
第一世代(1868〜1885) 建設期
明治維新を戦った西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允、岩倉具視など英傑たちは1800年前後に亡くなっています。そのため、1885年の内閣制度ができるまでを第一世代としました。
この時期には幕府の政治制度を廃止して新時代の制度がつくられていきました。佐賀の乱や西南戦争のような士族よる反乱も起きていますが無事に鎮圧されています。 年表 1869 版籍奉還 1871 廃藩置県 1873 徴兵制度 1875 元老院設置 1877 西南戦争 主要人物 明治天皇 (1852〜1912)在位(1867〜1912) 西郷隆盛 (1828〜1877)薩摩出身 大久保利通(1830〜1878)薩摩出身 木戸孝允 (1833〜1877)長州出身 岩倉具視 (1825〜1883)公家
第二世代(1885〜1912) 発展期
この時期には内閣制度がスタートし憲法が発布され、帝国議会が開催されています。国家としての新制度が確立されました。 また、帝国主義国家として海外進出を始めました。朝鮮での権益をめぐって清国と戦い勝利し、ロシアと戦い勝利しています。結果として台湾と韓国を植民地として獲得しています。アジア唯一の帝国として幸運で順調なスタートを切りましたが、日露戦争での講和では賠償金を取れず国民には不満の残る結果となっています。 年表 1885 内閣制度 1888 枢密院 1889 帝国議会 1894 日清戦争 1902 日英同盟 1904 日露戦争、台湾割譲 1910 韓国併合 主要人物 伊藤博文 (1841〜1909)長州出身、首相 板垣退助 (1837〜1919)土佐出身、自由民権運動 山縣有朋 (1838〜1922)長州出身、首相 松方正義 (1835〜1924)薩摩出身、首相 大隈重信 (1838〜1922)佐賀出身、首相 桂 太郎 (1848〜1913)長州出身、首相 西園寺公望(1849〜1940)公家、首相
第三世代(1912〜1945) 混乱期
第一次世界大戦に日本も参戦しドイツの租借地だった中国の青島や南方諸島を獲得しています。大戦後に発足した国際連盟で日本は常任理事国となり世界の列強の仲間入りすることになりました。しかし、その後のワシントン海軍軍縮条約で日本の軍艦は英米の6割とされてしまいました。 第一次世界大戦の頃には日本は好景気でしたが、その反動で不況に転じ、関東大震災や恐慌が更に追い討ちをかけます。この後は終戦まで景気は浮揚することはなく暗い世相が続きます。一方で1920年代には新しい社会風俗としてモボ・モガがはやり、大正デモクラシーが盛り上がり、普通選挙が実施されています。 満州の柳条湖での爆破事件をきっかけに満州事変がおこり、関東軍は満州を征服し傀儡政権による満州国を建国しています。爆破事件は日本の謀略でしたが、天皇や日本政府の知らない所で関東軍の起こした事件でした。この柳条湖の事件は国際的に非難され、日本は国際連盟を脱退せざるを得なくなり、日本は国際的に孤立します。 国内では閉塞感がただよい青年将校によるクーデター事件(五.一五事件、二.二六事件)が起きています。「君側の奸を討つ」として政府首脳の排除を狙ったテロですが、その後の展望もない杜撰な決起行動でした。 その後、中国で盧溝橋事件が起き、本格的な日中戦争が始まります。日本軍は短期決戦のつもりで首都の南京を攻略しますが、戦争は終結せず泥沼化します。日本の中国進出とその後の仏印進駐は米国などの反発を強め石油禁輸などの措置が取られ日本は苦しい立場に追い込まれます。日本は米国と外交交渉を重ねますが、ついには太平洋戦争に突入します。 太平洋戦争も日本軍としては短期決戦のつもりでした。緒戦においては戦果を上げられましたが、長引くにつれ国力の差は大きく、日本が勝てる戦争ではありませんでした。また、神風も吹かず、和平の調停をしてくれる国もありませんでした。 昭和天皇は皇太子(今上天皇)に宛てた手紙で敗因について次のように記しているようです。
我が国人が あまりに皇国を信じ過ぎて 英米をあなどったことである
我が軍人は 精神に重きをおきすぎて科学を忘れたことである 明治天皇の時には 山縣 大山 山本等の如き名将があったが 今度の時はあたかも第一次世界大戦の独国の如く 軍人がバッコして大局を考えず 進むを知って 退くことを知らなかったからです。 注 山縣:山縣有朋、大山:大山巌、山本:山本権兵衛
年表
1914第一次世界大戦 1920国際連盟 1922ワシントン海軍軍縮条約 1923関東大震災 1927昭和金融恐慌 1928普通選挙 1929世界恐慌 1931満州事変 1932五.一五事件 1933国際連盟脱退 1936二.二六事件 1937盧溝橋事件(日中戦争) 1938国家総動員法 1940仏印進駐 1940日独伊三国同盟 1941太平洋戦争 1945終戦 主要人物 大正天皇 (1879〜1926)在位(1912〜1926) 昭和天皇 (1901〜1989)在位(1926〜1989) 摂政(1921〜1926) 山本権兵衛(1852〜1933)海軍大将、首相 寺内正毅 (1852〜1919)陸軍大将、首相 原 敬 (1856〜1921)平民宰相(首相) 高橋是清 (1854〜1936)官僚出身、首相 若槻禮次郎(1866〜1949)官僚出身、首相 濱口雄幸 (1870〜1931)官僚出身、首相 犬養毅 (1855〜1932)官僚出身、首相 岡田啓介 (1868〜1952)海軍大将、首相 廣田弘毅 (1878〜1948)外交官、首相 近衛文麿 (1891〜1945)旧公家、首相 米内光政 (1880〜1948)海軍大将、首相 東條英機 (1884〜1948)陸軍大将、首相 小磯国昭 (1880〜1950)陸軍大将、首相 鈴木貫太郎(1868〜1948)海軍大将、侍従長、首相 松岡洋右 (1880〜1946)外務大臣、満州鉄道総裁 石原莞爾 (1889〜1949)陸軍中将、関東軍参謀 宇垣一成 (1868〜1956)陸軍大将、外務大臣
終戦〜現代(1945〜2011)
第一世代@(1945〜1960) 復興期
戦後は米国の占領下で、象徴天皇制の新憲法を制定し、戦前とは違った民主的な政策が次々と実施されました。女性の参政権、労働組合結成、農地開放、財閥解体、教育制度改革などの政策が実施されています。また、東京裁判や公職追放令で戦前色の一掃がはかられています。
経済の復興のためには石炭、鉄鋼と順次重点的に産業の復興を行っています。1950年の朝鮮戦争は日本の経済に特需をもたらし、日本の景気を好転させています。 1951年にはサンフランシスコで平和条約が締結され、1956年に国連に加盟し国際社会に復帰しました。また、米ソの冷戦の始まりにより、自衛隊が組織され、日米安保条約が締結されています。 年表 1946日本国憲法 1950朝鮮戦争 1951サンフランシスコ平和条約 1956日ソ共同宣言 1956国連加盟 1960日米安全保障条約改定 主要人物 昭和天皇(1901〜1989)在位(1926〜1989) 吉田茂 (1878〜1967)首相 鳩山一郎(1883〜1959)首相 岸信介 (1886〜1987)首相
第一世代A(1960〜1972) 高度成長期
池田内閣の所得倍増計画により経済は大きく成長しました。「三種の神器」と呼ばれたテレビ・洗濯機・冷蔵庫といった家庭電気製品が普及し軽自動車が一般家庭にも入り始めました。60年代末には3Cと呼ばれたカラーテレビ・クーラー(空調設備)・自動車(カー)が一般家庭にも普及し始めています。 また、東京オリンピックに向け新幹線や高速道路を整備し、その後の経済成長を促しています。おかげで1968年にはGNPで西ドイツを抜き世界第二位になっています。オリンピックや万博の誘致で経済成長を促す経済政策は、この後、韓国や中国でも踏襲されました。 一方で、空気や水に対する環境汚染やごみ処理問題が深刻になった時期でもありました。 年表 1960所得倍増計画 1964東海道新幹線 1964東京オリンピック 1969東大紛争 1970よど号ハイジャック 1970日本万国博覧会 1971ドルショック(ドル円交換停止) 1972沖縄返還 主要人物 池田勇人(1899〜1965)首相、1949衆議院初当選 佐藤栄作(1901〜1975)首相、1949衆議院初当選
第二世代@(1972〜1993) 経済発展期
70年代には、ドルショックや石油ショックなどがあり不景気な時期もありましたが、田中角栄の日本列島改造論により、地方への公共投資が盛んに行われ日本経済は発展していきました。また、日本の自動車産業や電子産業も次第に力をつけ頭角を現し始めています。 80年代には日本からの輸出増大により、日米貿易摩擦が問題になり、日本の自動車や電機の工場が米国などに進出しています。80年代末には金余りのため不動産投資が活発になりバブル景気が進行しています。日本が金持ちになり米国の不動産などを買いあさった時期です。また、一般庶民にもバブルの影響がおよび、NTTの株が売り出されると先を争って買い求めていました。 1990年の不動産投資への金融の規制(総量規制)が行われると、たちまちバブル経済は崩壊して行きました。不動産価格の下落のため、お金がまわらなくなったのです。 年表 1972日中国交回復 1973変動為替相場 1973石油ショック 1976ロッキード事件 1982行財政改革 1985国鉄民営化 1985プラザ合意、円高進行 1987リゾート開発、バブル景気 1988農産物輸入自由化(牛肉、オレンジ) 1988リクルート事件 1989昭和天皇崩御 1990総量規制、不動産バブル崩壊 主要人物 田中角栄 (1918〜1993)首相、1947衆議院初当選 福田赳夫 (1905〜1995)首相、1952衆議院初当選 大平正芳 (1910〜1980)首相、1952衆議院初当選 中曽根康弘(1918〜 )首相、1947衆議院初当選 竹下登 (1924〜2000)首相、1958衆議院初当選 父・竹下勇造(1900〜1984)島根県議会議員 海部俊樹 (1931〜 )首相、1960衆議院初当選 宮沢喜一 (1919〜2007)首相、1953衆議院初当選 父・宮澤裕(1884〜1963)衆議院議員 祖父・小川平吉(1869〜1942)司法大臣、鉄道大臣
第二世代A(1993〜2006) 停滞期
バブル崩壊後に、一時的に非自民内閣が発足しますが、その後は自民主導の連立内閣に戻っています。ただし、55年体制といわれた自民党と社会党による政治支配の時代は終っています。 バブル経済の後始末は進まず、拓銀(北海道拓殖銀行)や山一證券の経営が破綻しています。この間、経済は停滞し不景気が続いています。小渕政権時に公共投資により一時的に景気は持ち直しますが長くは続きません。また、ITブームなどで株価が上昇しますが、これも長続きはしませんでした。 小泉政権により構造改革が始まり、金融再生プログラムによって銀行の不良債権処理のめどがつきました。バブル崩壊の後始末が、ようやくついたことになります。 また、小さな政府を目指した小泉構造改革では道路公団の民営化と郵政民営化が行われました。田中政権以来の保守政治家の権益に手を入れたと言われています。これにより保守政治家の利権構造が変わったかもしれません。 年表 1993細川連立内閣(非自民連立) 1994村山連立内閣(自社さ連立) 1996橋本連立内閣(自社さ連立) 1997拓銀経営破綻 1997山一證券自主廃業 1998銀行公的資金投入 2000ITバブル(ネットバブル)崩壊 2001米同時多発テロ 2001小泉構造改革 2002金融再生プログラム 2002道路公団民営化 2003イラク戦争 2004北朝鮮拉致被害者帰国 2005郵政民営化 主要人物 細川護熙 (1938〜 )首相、1971衆議院初当選 近衛文麿の孫 羽田孜 (1935〜 )首相、1969衆議院初当選 父・羽田武嗣郎(1903〜1979)衆議院議員 村山富市 (1924〜 )首相、1972衆議院初当選 橋本龍太郎(1937〜2006)首相、1963衆議院初当選 父・橋本龍伍(1906〜1962)衆議院議員 小渕恵三 (1937〜2000)首相、1963衆議院初当選 父・小渕光平(1904〜1958)衆議院議員 森 喜朗 (1937〜 )首相、1969衆議院初当選 父・森茂喜(1910〜1989)根上町長 小泉純一郎(1942〜 )首相、1972衆議院初当選 父・小泉純也(1904〜1969)吉田、岸内閣の大臣 小沢一郎 (1942〜 )1969衆議院初当選 父・小沢佐重喜(1898〜1968)池田、佐藤内閣の大臣
第三世代(2006〜 ) 混迷期
小泉内閣の後は、一年交代で、いかにも三代目らしい政治家の内閣が続き政治は混乱しました。過去の歴史をみると第三世代の混迷期は30年以上続いています。次の歴史の転換点までは、このような状態が続くのでしょうか? それとも東日本大震災をきっかけに、政治などが大きく変わる可能性があるのでしょうか? 過去においては、安政の大地震や関東大震災で大きく政治などが変わったという兆候はありませんが、江戸時代では大飢饉の頃に改革が行われています。特に享保の改革では徳川幕府の立て直しに成功しています。飢饉ではないですが今回の大震災をきっかけに改革が行われる可能性はあるのかもしれません。 享保の飢饉 → 享保の改革(第八代・徳川吉宗) 天明の飢饉 → 寛政の改革(第十一代・徳川家斉、老中・松平定信) 天保の飢饉 → 天保の改革(第十二代・徳川家慶、老中・水野忠邦) 年表 2006安倍内閣(自公連立) 2007福田内閣(自公連立) 2008麻生内閣(自公連立) 2008リーマンショック 2009鳩山内閣(民主党) 2010菅内閣(民主党) 2011東日本大地震 主要人物 安部晋三 (1954〜 )首相、1993衆議院初当選 岸信介の孫 福田康夫 (1936〜 )首相、1990衆議院初当選 福田赳夫の子 麻生太郎 (1940〜 )首相、1979衆議院初当選 吉田茂の孫 鳩山由紀夫(1947〜 )首相、1986衆議院初当選 鳩山一郎の孫 菅 直人 (1946〜 )首相、1980衆議院初当選 谷垣禎一 (1945〜 )1983衆議院初当選 父・谷垣専一(1913〜1983)大平内閣の大臣
戦後の世代区分の別案
評価の定まらない現代の歴史についての上記の世代区分は絶対的なものでなく、曖昧なものでもあります。そこで、世代区分の別案も考えてみたいと思います。
(1945〜1960)復興期 第一世代@ → 第一世代 (1960〜1972)高度成長期 第一世代A → 第二世代@ (1972〜1993)経済発展期 第二世代@ → 第二世代A (1993〜2006)停滞期 第二世代A → 第三世代@ (2006〜 )混迷期 第三世代 → 第三世代A 第二世代を1960年の高度成長期からバブル崩壊の1993年までとし、1993年以降を第三世代とする案です。これだと現在は第三世代に入って18年となります。細川内閣以来の混乱した政治状況を第三世代とみるのが妥当かも知れません。
歴史における三世代(江戸時代)
参考文献
「易断に見る明治諸事件」片岡紀明 中公文庫
「大正天皇」原武史 朝日選書 「元老西園寺公望 −古希からの挑戦」伊藤之雄 文春新書 「枢密院議長の日記」佐野眞一 講談社現代新書 「昭和史(新版)」遠山茂樹ほか 岩波新書 「昭和天皇独白録」寺崎英成/マリコ・テラサキ・ミラー 文春文庫 「細川護定座談」細川護定、光岡明、内田健三 中公文庫 「二・二六事件 全検証」北博昭 朝日選書 「戦前昭和の社会1926−1945」井上寿一 講談社現代新書 「日本の迷走はいつから始まったのか」小林英夫 小学館101新書 「日本史小事典」坂本太郎 山川出版社 現代の政治家についてはWikipediaを参考にしました。 2011.4.14 野沢 清 kiyoshi_nozawa@yahoo.co.jp |