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七人の侍
映画「七人の侍」
日本映画の最高傑作といって良い「七人の侍」は、米国でリメイク版「荒野の七人」が作られるなど世界の映画界にも大きな影響を与えています。しかし、七人のキャラクターを描き分け、それぞれを活躍させている点において「七人の侍」は傑出しています。似たような作品があっても二、三人のキャラクターを活躍させて、残りはその他大勢になってしまい埋没してしまうのが普通です。何が違うのでしょうか。
「七人の侍」の組織
「七人の侍」では、各キャラクターが、それぞれ位置付けされ組織されています。これは、将棋の駒に例えると分かりやすくなります。
王将 勘兵衛(志村喬)
沈着冷静で豪胆。兵法にも武術にも優れた侍大将。
飛車 五郎兵衛(稲葉義男)
勘兵衛の相談役、参謀として活躍。武道にも優れる。性格は穏やか。
角行 久蔵(宮口精二)
孤高の剣豪、求道者。敵陣奥深く切り込む。
金将 七郎次(加東大介)
元から勘兵衛の家来。いつも静かに笑いながら控えている。
銀将 平八(千秋実)
武術より薪割りや裁縫が得意。明るさが取り柄。
桂馬 菊千代(三船敏郎)
本来は百姓。侍にない無鉄砲で意表をついた動きで大活躍。
香車 勝四郎(木村功)
実戦経験のない若侍。若さと直線的な素直さが取り柄。
歩兵 百姓達
集団の竹槍戦法で戦う。
「七人の侍」の戦い方
敵の斥候の捕獲
久蔵(角行)、菊千代(桂馬)、勝四郎(香車)が参加。
敵陣への夜襲
久蔵(角行)、平八(銀将)、菊千代(桂馬)が参加。ここでは平八(銀将)が火縄銃で戦死。
本戦での配置
敵を誘き寄せる北の道には久蔵(角行)、西側の柵に菊千代(桂馬)、東側の柵に七郎次(金将)、遊軍として五郎兵衛(飛車)、中央に勘兵衛(王将)と勝四郎(香車)が配置。
全般に五郎兵衛(飛車)より久蔵(角行)の活躍が目立ちます。久蔵の設定は角行に相応しいと思いますが、活躍振りを見ると、久蔵は飛車かもしれません。
おそらく黒澤監督の当初の構想では、五郎兵衛(飛車)をもっと活躍させる予定だったのではないかと思います。でも、久蔵(角行)の出来を見て気が変わったのではないでしょうか。
スチール写真
レーザーディスク「七人の侍」のボックスの表のスチール写真に七人が写っています。大きく手前に菊千代(桂馬)、その後方中央に4人いますが、勘兵衛(王将)の隣に七郎次(金将)、そのすぐ前にしゃがんだ勝四郎(香車)、そしてその後方に平八(銀将)。全体の両端には五郎兵衛(飛車)と久蔵(角行)が立っています。このうち、外側に立っている四人(銀将、飛車、角行、桂馬)は戦死しています。生き残ったのは中央の三名(王将、金将、香車)でした。
「七人の侍」のヒーロー
物語の主人公は勘兵衛ですが、映画の主人公は雨の中で演技ではない壮絶でリアルな戦いをした菊千代だと思います。そんな菊千代を桂馬に例えました。少し失礼だったかもしれませんが、映画の中盤で菊千代が農耕馬に振り落とされるエピソードがあります。菊千代は跳ね回る馬が似合うと思います。
付記
監督の黒澤明は、自作のノートの七人の侍の性格について克明に書いていたようです。それぞれの性格について練り上げていたのです。また、村の戸籍も作っており家族構成や年齢まで決めていたようです。この資料はスタッフに配られたようです。
勘兵衛については、戦国時代の兵法家の上泉信綱がモデルと言われていますが、名前からすると武田信玄の軍師であった山本勘助を思い出させます。あるいは、上泉信綱と山本勘助の両方を足し合わせたような人物としてイメージされたのかもしれません。(映画の前半にある勘兵衛が盗賊を退治する話は、上泉信綱のエピソードを借りています。)
参考文献
LD「七人の侍」 東宝
「『七人の侍』と現代−黒澤明再考」四方田犬彦 岩波新書 「黒澤明と「七人の侍」」都築政昭 朝日文庫 「黒澤チルドレン」西村雄一郎 小学館文庫
2011.2.20 野沢 清 kiyoshi_nozawa@yahoo.co.jp |