古代天皇の即位年齢

飛鳥時代までの古代における天皇の即位年齢は壮年に達してからが多いのですが、奈良時代に入ると成年に達しないで即位する天皇が増えてきます。古代においては官僚制度が未整備で実力のある天皇(大王)でなければ国家を治めることができなかったのだと思います。
ただし、応神朝のような古代でも武烈天皇のように若年での即位が記録されています。
古事記や日本書紀には天皇以外の年齢は、ほとんど記録されていないので天皇即位への歴史を追いかけるのが難しいのですが、年齢の分かっている厩戸皇子(聖徳太子)や天智天皇などで、天皇即位への経過を検証してみたいと思います。

武烈天皇:9歳で即位、実在性に疑問

武烈天皇は9歳で即位し18歳で崩御したことになっていますが、この年齢が本当なら、この時代としては異例です。天皇をサポートする後ろ盾や官僚組織がなければ無理だと思います。そのためか武烈天皇の実在性については疑問がもたれています。
ただし、古事記と日本書紀には天皇の崩御年齢は記載されておらず、扶桑略記や水鏡に18歳、帝王編年記や皇代記には57歳、天書に61歳と書いてあるようです。

厩戸皇子(聖徳太子):31歳で独立

厩戸皇子(574〜622)は、601年(27歳)に斑鳩宮の造営を始め605年(31歳)に斑鳩宮に移っています。これは厩戸皇子が実質的に有力王族として独立したことを意味するのだと思います。つまり、いつでも天皇位を継げる準備が整ったことになるのだと思います。そう考えると30歳以上というのが、この頃の天皇が即位できる年齢だと推測できると思います。
ただし、この頃は生前譲位の例はなく、推古天皇が厩戸皇子よりも長生きしたので厩戸皇子の即位は実現しませんでした。なお、崇峻天皇が崩御し推古天皇が即位した時には、厩戸皇子は18歳でしたので、厩戸皇子の即位はもちろん考えられなかったのだと思います。

天智天皇(中大兄皇子):3度目で即位

乙巳の変(645)で蘇我氏を倒し皇極天皇が退位した時、中大兄皇子(626〜671)は19歳でしたので、天皇位を継げませんでした。
そして次の孝徳天皇(596〜654)が崩御した時、中大兄皇子は28歳でした。まだ若いと見られたのでしょうか適正に問題があったのでしょうか、この時は母親の斉明天皇(皇極天皇)が重祚しています。
そして、斉明天皇(594〜661)が崩御した際に中大兄皇子は35歳でしたが、直ぐには即位せず称制にて政権を運用しています。最終的に中大兄皇子が即位したのが7年後の42歳になってからでした。

弘文天皇(大友皇子):24歳で即位は疑問

天智天皇(626〜671)の息子の大友皇子(648〜672)の即位は疑われており、天皇として諡号を贈られたのは明治になってからでした。天智天皇が崩御した時、大友皇子は24歳でしたので、まだ即位できる年齢には達していなかったと思います。
実際、天智天皇の臨終の間際に、弟の大海人皇子(天武天皇)は、天皇位は皇后(倭姫)に継がせて大友皇子に補佐させるよう進言しています。もし、壬申の乱で大海人皇子(天武天皇)が政権を奪取しなければ、倭姫の即位が実現していたかもしれません。

文武天皇:15歳で即位、持統太上天皇の後ろ盾

天武天皇(?〜686)が崩御すると皇后の持統天皇が即位しました。持統天皇は自身の息子である草壁皇子(662〜689)に継がせたかったのだと思いますが、まだ若い(24歳)ので中継ぎとして即位したのだと思います。しかし、頼みとした草壁皇子は3年後に薨去してしまいます。そのため、次に持統天皇は草壁皇子の息子の珂瑠皇子(683〜707)に期待しました。ライバルの高市皇子(654〜696)が薨去すると、珂瑠皇子は15歳という異例の若さで即位し文武天皇となりました。
持統天皇が太上天皇として文武天皇を補佐したようです。また、持統太上天皇の崩御後は義父にあたる藤原不比等の補佐があったと思われます。虚弱体質なのか文武天皇は25歳で崩御しています。

聖武天皇:24歳で即位、藤原氏の傀儡?

文武天皇が崩御すると、次を期待されるのは、その息子の首皇子(701〜756)でしたが、当時はまだ6歳でした。そのため中継ぎとして首皇子の祖母に当たる元明天皇が即位しました。さらに元明天皇の後を首皇子の叔母の元正天皇が継ぎ、首皇子は24歳になってから即位し聖武天皇となりました。
聖武天皇の母は藤原不比等の娘の藤原宮子、配偶者も藤原不比等の娘の光明皇后でした。この時代になると、官僚組織が整備され天皇は単なる飾りでもよかったのかもしれません。
しかし、737年に疫病が流行り聖武天皇を支えた藤原四兄弟が相次いで亡くなりました。聖武天皇が36歳の時です。その後は、おそらく天皇自身による政治が行われたものと思われます。(あるいは、光明皇后が実権を持っていたのかもしれません。)

孝謙天皇(称徳天皇):31歳で即位した独身の女帝

749年、聖武天皇は出家し31歳の娘の阿倍内親王(718〜770)に譲位します。孝謙天皇の誕生です。後嗣となる男子がいなかったとは言え異例のことでした。
実際の政治については光明皇太后(701〜760)が紫微中台で実権を持っていたようです。

淳仁天皇(淡路廃帝):25歳で即位、31歳で廃帝

758年、孝謙天皇は天武天皇の孫にあたる25歳の大炊王(733〜765)に譲位しました。淳仁天皇です。大炊王の即位は藤原仲麻呂(恵美押勝)の意向だと言われています。
しかし、藤原仲麻呂(恵美押勝)の失脚にともない廃帝とされ、孝謙太上天皇が復活し称徳天皇として即位しました。淳仁天皇は、淡路廃帝(淡路公)と呼ばれ長らく正式な天皇として認められませんでしたが、明治になってから淳仁天皇と追号を贈られました。

平安時代の天皇

平安時代になると、天皇が譲位し上皇となって政治を支配する傾向が強まります。また藤原氏による摂関政治が始まるので、天皇は次第に飾り物のようになっていきます。そのため、幼年の天皇が増えていきます。

古代天皇の即位年齢(単純計算による満年齢)

      生没年       在位年   即位年齢
応神天皇(200〜310)在位(270〜310)70歳
仁徳天皇(257〜399)在位(313〜399)56歳
履中天皇( ? 〜405)在位(400〜405) ?歳
反正天皇( ? 〜410)在位(406〜410) ?歳
允恭天皇( ? 〜453)在位(412〜453) ?歳
安康天皇(401〜456)在位(453〜456)52歳
雄略天皇(418〜479)在位(456〜479)38歳
清寧天皇(444〜484)在位(480〜484)36歳
顕宗天皇(450〜487)在位(485〜487)45歳
仁賢天皇(449〜498)在位(488〜498)39歳
武烈天皇(489〜506)在位(498〜506) 9歳☆

継体天皇(450〜531)在位(507〜531)57歳
安閑天皇(466〜535)在位(531〜535)65歳
宣化天皇(467〜539)在位(535〜539)68歳
欽明天皇(509〜571)在位(539〜571)30歳
敏達天皇(538〜585)在位(572〜585)34歳
用明天皇(540〜587)在位(585〜587)45歳
崇峻天皇( ? 〜592)在位(587〜592) ?歳
推古天皇(554〜628)在位(592〜628)38歳女性
舒明天皇(593〜641)在位(629〜641)36歳
皇極天皇(594〜661)在位(642〜645)48歳女性
孝徳天皇(596〜654)在位(645〜654)49歳
斉明天皇(594〜661)在位(655〜661)61歳女性重祚
天智天皇(626〜671)称制(661〜668)35歳
天智天皇(626〜671)在位(668〜671)42歳
弘文天皇(648〜672)在位(671〜672)24歳☆

天武天皇( ? 〜686)在位(673〜686) ?歳
持統天皇(645〜702)称制(686〜690)41歳女性
持統天皇(645〜702)在位(690〜697)45歳女性
文武天皇(683〜707)在位(697〜707)14歳☆
元明天皇(661〜721)在位(707〜715)36歳女性
元正天皇(680〜748)在位(715〜724)35歳女性
聖武天皇(701〜756)在位(724〜749)23歳☆
孝謙天皇(718〜770)在位(749〜758)31歳女性
淳仁天皇(733〜765)在位(758〜764)25歳☆
称徳天皇(718〜770)在位(764〜770)46歳女性重祚

光仁天皇(709〜781)在位(770〜781)61歳
桓武天皇(737〜806)在位(781〜806)44歳
平城天皇(774〜842)在位(806〜809)32歳
嵯峨天皇(786〜842)在位(809〜823)23歳☆
淳和天皇(786〜840)在位(823〜833)37歳
仁明天皇(810〜850)在位(833〜850)23歳☆
文徳天皇(827〜858)在位(850〜858)23歳☆
清和天皇(850〜880)在位(858〜876) 8歳☆
陽成天皇(868〜949)在位(876〜884) 8歳☆
光孝天皇(830〜887)在位(884〜887)54歳
宇多天皇(867〜931)在位(887〜897)20歳☆
醍醐天皇(885〜930)在位(897〜930)12歳☆
朱雀天皇(923〜952)在位(930〜946) 7歳☆
村上天皇(926〜967)在位(946〜967)20歳☆

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参考文献
「日本古典文学大系 日本書紀」岩波書店
「続日本紀」東洋文庫
「別冊歴史読本 歴代天皇・皇后総覧」新人物往来社

2011.8.31 野沢 清 kiyoshi_nozawa@yahoo.co.jp