精神科エッセイ3

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精神科エッセイ3をここから続けます(H.16.11.3の分からこのページにあります)。

ここではパニック障害、ナルコレプシー、血管性痴呆、アルツハイマー型痴呆、統合失調症の家族指導、精神療法、行動療法、精神分析療法、認知療法、痴呆のケア、統合失調症と遺伝、病名告知、チック、トゥレット症候群、ADHD、SST、睡眠時無呼吸症候群、臓器障害と向精神薬、水中毒、m-ECT、性同一性障害、社会不安障害(SAD)、うつ病の磁気療法、勃起障害(ED)不安障害、SSRI、SNRI自閉症、学習障害(LD)、ADHD、アルツハイマー病、血管性認知症、慢性疲労症候群、薬物乱用頭痛、非定型うつ病、医療観察法、Schneiderの一級症状などについて主に書いています。

パニック障害について、続けて説明します。
パニック発作が反復すると、患者は発作中にみられる身体症状の一つか、二つに強くこだわるようになり、なにか身体的な原因があるに違いないと信じ込み、不安がつのる(心気症)。一方、発作がくり返されると、たとえば高速道路を走っているときにまた発作が起こったら予期不安)大事故になるとか、新幹線のなかで発作に襲われたら誰も助けてくれないと言って、高速道路の運転や新幹線を恐れ(空間恐怖)、避けるようになる(恐怖症性回避行動)。高度な場合は自宅から一歩も外に出られなくなることもある(H.16.11.3)。


パニック障害がつづくと、日常生活ははなはだしく障害され、活動の範囲は縮小する。身体的、精神的な健康感は損なわれ、意気消沈し、続発性うつ病を呈することもまれではない(H.16.11.4)。


パニック障害の治療の第一歩は、患者に病気の本態を説明し、効果的な治療法があることを保障することである。発作を止めることに全力をあげる必要がある。三環系抗うつ薬(イミプラミン、クロミプラミン)高力価のペンゾジアゼピン(アルプラゾラム、クロナゼパム)が有効である。初期の段階で発作をなくすることができれば、それ以後の段階への進展を防ぐことができる(H.16.11.5)。


予期不安が強く、回避行動が高度なときは、まず薬物で発作をとめ、発作が起こらないことを実感したうえで、それまで回避していたものに徐々に挑戦させる(エキスポージャー療法)(H.16.11.6)。


ナルコレプシーとは、1)反復する日中の居眠りがほとんど毎日、少なくとも3か月以上持続する。通常眠気は耐えがたく、居眠りの持続は30分以内で後はさっぱりとする。2)情動脱力発作の臨床的確認(情動脱力発作とは、笑い、得意、興奮、怒りなどの強い陽性感情の動きにより誘発される、両側性の骨格筋緊張の突然の喪失で、通常1分以内)。
以上の2項目が必要にして十分な診断基準である(H.16.11.7)。


このほか就床後間もなく、自覚的には半分目が覚めているにもかかわらず、生々しい現実感を伴った鮮明な夢をみる入眠時幻覚と、入眠時幻覚による不安、幻覚体験に通常一致して全身の脱力状態が起こる睡眠麻痺、および夜間熟眠困難もしばしばみられる症状であるが必須ではない。行動中の記憶が短時間失われる自動症、精神面の弛緩、肥満、頭痛、多汗症、糖尿病などが合併することが多い(H.16.11.8)。


眠気の発症は10歳代に集中し、とくに14~16歳に著しいピークを示す。情動脱力発作が眠気より早く起こることはまれである。一般人口中のナルコレプシーの有病率は正確にはわかっていないが、0.02~0.16%という推定値がある。ナルコレプシーは低い浸透率をもつ多因子型の遺伝様式を示す(H.16.11.9)。


日本人ナルコレプシー患者においては、第6染色体短腕上にあるヒト組織適合抗体HLA領域の、ある遺伝子が全例陽性である。この遺伝子自体は正常者の約16%でも陽性であり、発症の十分条件とはいえない。ナルコレプシーの一卵性双生児報告例14組のうち11組が不一致であり、環境因子が発病に関与していると考えられる(H.16.11.10)。


<ナルコレプシーの治療>
規則正しい生活により夜間の睡眠を十分にとることがまず大切である。日中残る眠気に対しては覚醒効果をもつ精神賦活剤を朝と昼に投与する。情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺などに対しては三環系抗うつ薬クロミプラミンが特効的である(H.16.11.11)。


車の運転や危険な作業は避け、なるべく体を動かし、自分の判断で時間配分のできる職業が適応しやすい。患者は日常生活で挫折をくり返すため、消極的であきらめやすい性格変化をきたすことが多く、治療からも脱落しやすい。早期発見と早期治療および治療の継続が大切である(H.16.11.12)。


新潟の地震でエコノミークラス症候群が話題になっていますが、精神病院での身体拘束でも肺塞栓を起こすことが指摘されています(H.16.11.13)。


血管性痴呆は二次性痴呆(明らかな原因によって起こる痴呆)では、老年期痴呆の原因として最も頻度が高いものである。高血圧、心疾患、喫煙、糖尿病、高脂血症などの既往は発症の危険因子となる。血管性痴呆は45歳以後から発症し、女性よりも男性に多い。いくつかの診断基準が提唱されているが、現在ではNINDS-AIRENによる診断基準とハチンスキー虚血スコア(7点以上)が最も広く用いられている(H.16.11.14)。


<血管性痴呆の症状>
比較的急激な発症、階段様増悪、高血圧、他臓器での動脈硬化性病変の存在、神経徴候(多巣性の神経症状、錐体路・錐体外路徴候)などの存在は、血管性痴呆の診断に役立つ(H.16.11.15)。


痴呆症状は脳血管障害の部位に左右されるまだら痴呆とよばれるゆえんである)。皮質下に小梗塞が複数存在(多発梗塞)して起こる痴呆の頻度が最も高く、皮質下痴呆の症状(動作緩慢、忘れっぽいなど)のほかに、うつ病に似た状態や神経衰弱様状態を呈することがある(H.16.11.16)。


<血管性痴呆の治療>
ある程度の回復はみられるが完全回復は望めない。治療のポイントは、軽症痴呆のときに生活指導を含めた対応による再発の予防である。高血圧や糖尿病の管理は痴呆の増悪を予防する。少量のアスピリン内服は、再発予防に効果的である(H.16.11.17)。


<アルツハイマー病とは>
初老期、つまり45~60歳で発病し、痴呆の進行とともに失認、失行、失語などの巣症状や側頭葉症候群などが加わり、症状の進行が早く、ついには高度の痴呆に陥り植物状態となる。全経過が短く、長くても8~10年とされている。脳は高度の萎縮に陥る(H.16.11.18)。


<アルツハイマー型痴呆の定義>
一般に60歳以上で発病し、老年期痴呆とよばれるもので知的機能障害を中軸として進行する。ただ、経過中にアルツハイマー病にみられるような明らかな巣症状が認められず、症状の進行も遅く、脳の萎縮もそれほど高度ではないことから、典型的なアルツハイマー病とは臨床的には区別される(H.16.11.19)。


しかしながら脳の病理組織学的所見ではアルツハイマー病と区別することが困難であることから、アルツハイマー型痴呆(senile dementia Alzheimer type: SDAT)と呼んでいる(H.16.11.20)。


ただ、研究者のあいだでは初老期痴呆(アルツハイマー病)とアルツハイマー型痴呆(SDAT)をあわせてアルツハイマー病と呼ぶ人が多い(H.16.11.21)。


わが国でも最近では血管性痴呆との比率が欧米に近づいている。性差では3:2の割で女性が多いとされている。遺伝については家族性にみられるものもあるが多くは散発性であり、生物学的遺伝形式は明らかではない(H.16.11.22)。


<アルツハイマー型痴呆の診断>
発病初期においては脳波、CTなどの検査では異常所見は認められない。そこで臨床症状によらなければならない。初期症状としては物忘れ(記銘力障害)ではじまることが多く、しだいに総合的な知的機能障害が認められるが、そのなかでもとくに記銘力障害が著明な場合はアルツハイマー型痴呆と考えてよい。ただうつ状態や妄想が先行する場合もあるので注意を要する(H.16.11.23)。


最近は陽電子放射断層撮影法(positron emission computed tomography: PET)により脳のグルコース代謝の異常が早期にみられることや単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(single photon emission computed tomography: SPECT)なども初期の補助診断として必要である(H.16.11.24)。


<アルツハイマー型痴呆の脳病変の生物学的側面>
脳は高度な萎縮に陥るが、とくに大脳辺縁系皮質、側頭葉、後頭葉、頭頂葉皮質に著明である。組織学的には、神経細胞の萎縮・脱落、老人斑、アルツハイマー神経原線維変化などが認められる(H.16.11.25)。


そのなかでも特に老人斑とアルツハイマー神経原線維変化が同時に、しかも多数出現することが特徴である(H.16.11.26)。


アルツハイマー型痴呆は、これまで有効な治療薬がなかったが、国内では初の抗アルツハイマー薬としてアリセプト(一般名塩酸ドネぺジル)が承認、発売された。アルツハイマー型痴呆は脳内の神経伝達物質アセチルコリンの濃度低下が原因の一つとされるが、アリセプトはアセチルコリンを破壊する物質の働きを阻害し、脳内のアセチルコリン濃度の低下を防ぐ働きがあるとされる。そのため根本的な治療はできないが、軽、中等度のアルツハイマー型痴呆に対しては進行を遅らせる効果が期待できるという(H.16.11.27)。


痴呆にみられる精神症状、とくに不安、焦燥、抑うつ状態、妄想状態、せん妄状態、興奮、問題行動などに対してはさまざまな向精神薬の使用が必要である。また患者に対するケアが必要で、集団および個別の精神療法や作業療法および生活指導などが大切である(H.16.11.28)。


<老人斑とアルツハイマー神経原線維変化>
老人斑銀染色を施した標本で観察すると多数の変性した神経突起が球状をなして黒く染まってみえる。この老人斑は必ずアミロイド線維が含まれており、アミロイド線維の沈着が先行し、二次的に神経突起の変性がおきるものと考えられる。したがってアミロイドの前駆物質(amyloid protein precursor: APP)がどのような機序でアミロイド物質として線維化するかが、注目されている(H.16.11.29)。


次に神経原線維変化であるが、これは海馬の皮質にとくに多数見出される。神経細胞内に生ずる特異な線維状の物質からなり、嗜銀性に富み糸くず状の線維が束状をなして存在し、細胞は死滅していく。生化学的にはリン酸化したタウ蛋白がその主要成分である(H.16.11.30)。


このほかに、大脳皮質のアセチルコリントランスフェラーゼが著明に低下していることから、その起始核である視床下部のマイネルト核の神経細胞脱落などが注目され、ノルアドレナリンの起始核である青斑核、セロトニンの起始核である縫線核などの細胞の減少なども注目されている(H.16.12.1)。


最近、とくに遺伝子学的な検討が進められ、染色体上の遺伝子の変異がつぎつぎに報告されている(H.16.12.2)。


神経原線維変化(neurofibrillary changes)は老人斑(senile plaque)とともにアルツハイマー病(AD)脳にみられる代表的な神経病理学的変化である(H.16.12.3)。


神経原線維変化をはじめて記載したのはドイツの神経医学者Alois Alzheimerで、彼が51歳発症の痴呆患者を報告した1907年にさかのぼる(H.16.12.4)。


神経原線維変化は神経細胞体内にneurofibrillary tangle(NFT)として鍍銀染色で嗜銀性を示す、火炎状あるいは錘状の封入体として観察される(H.16.12.5)。


NFTはAD以外でもいくつかの疾患で出現することが知られており、老人斑より疾患特異性という点では特異的ではない。しかし老人斑が正常老化でも出現するのに対し、NFTが広範に出現する病理像はAD以外にはなく、痴呆の程度とよく相関し、変性していく神経細胞内の異常を反映した構造物と考えられている(H.16.12.6)。


これからしばらくは、「統合失調症」の患者さんの家族の方向けの啓蒙パンフレットから引用してご紹介します。

「統合失調症」は残念ながらまだよく原因が分からない精神病の一つですが、放っておくと「普通の生活を送る上で必要な判断ができなくなったり、きちんとした行動が取れなくなったりする状態」が進みます。
20歳前後のこれからというときに病気になる人が多いのです。
また、おおよそ100人に一人が「統合失調症」にかかり、大変多くの患者さんがいます。
どうして病気になるのかは、先の通りまだよく分かりません。
きっかけのある人もいますが、もともとの本人の素質環境が関係するようです(H.16.12.7)。


診断は、特別な検査はないのですが、これまでに知られた体や脳の病気でないこと症状を調べて行います(H.16.12.8)。


症状には、目立つものとして「居ないはずの人の声が聞こえる、悪口を言われている」などと訴える「幻覚」や「自分が人から見られている、見張られている、意地悪をされている、毒をもられている」などありえないことを信じてしまう「妄想」や話の筋道が通らなくなり支離滅裂な会話になってしまう「連合弛緩」がみられます(H.16.12.9)。


また、異常に興奮したり、怒りっぽくなることも多くにみられます。
仕事や学校、家庭での生活ができなくなります。人との付き合いがうまくいきません。
また、感情の動きが鈍くなったり、やる気が無くなってしまい、なげやりになり、だらしなくなり、閉じこもってしまうなどもよくみられる症状です(H.16.12.10)。


治療ですが、まず「長きにわたって続ける必要があること」を知らねばなりません。
山あり谷ありといった経過をとることが多い病気です。短距離走ではなくマラソンです。
初めからあまりに気負いすぎてもいけませんし、途中で気を抜いてもいけません。
先に、本人の素質が関係していると書きましたが、現在のところ「脳の一部がほかの人に比べて敏感すぎるのではないか?」というのが有力な考えです(H.16.12.11)。


敏感すぎる脳に対して、薬が有効です。
薬は「抗精神病薬」という種類を使います。
その働きは 1:気持ちを落ち着ける効果(鎮静効果)
        2:幻覚・妄想といった症状を弱める効果(抗精神病効果)
        3:元気づける効果(賦活効果)
が主なものです(H.16.12.12)。


副作用は、手のふるえやこわばり・よだれ・口の渇き・立ちくらみ・眠気・だるさ・生理不順などがみられることがありますが、一般にひどい副作用は少なく、種類や量の調整で対応できることが多いものです(H.16.12.13)。


薬は、「目立つ症状に効きやすく」「続けて飲む必要があり」「症状・状態により変更すべきであり」「人によって種類や量には大きな違いがあり」「一般の薬と一緒に飲んでも問題が少ない」などの特徴があります(H.16.12.14)。


そのほか治療には生活の指導を行ったり、作業レクリエーションを通じて症状の軽減をはかることも重要です。本人の「不自然な考え」などを、会話を通じて正していく「精神療法」も用いられます。また保健所の利用や福祉の援助、家族会やその他の施設・制度の利用も有効です(H.16.12.15)。


治療には家族ができることが多くあります。
家族は生活の基盤であり、心の支えであり、最も身近な治療の協力者です。
まず、家族の人はいろいろと気持ちも動揺することと思いますが、病気は家族の対応が悪かったために起こったものでも何かの「罰」でもありません。
「脳」という体の一部が調子をくずしたのです。
もちろん、患者が望んで病気になったわけではありませんし、たんなる「なまけ」でもありません。周囲の苦痛が大きくとも患者も苦しんでいることは分かってあげるべきです。患者さんは自分が病気であるということも分からないほどに「混乱」している場合も多いのですが治療すべき「病気」です(H.16.12.16)。


病気が悪くなる確実なきっかけとして
1:抗精神病薬の中断
2:家族が患者に対して批判・敵意・過保護をもって対応する
3:生活や人生上の過度のストレス
があげられています。
薬をやめてただちに悪くなる人はむしろ少ないようですが、時間とともに確実に悪化します。本人の状態にあった薬を続けるべきで勝手な判断はいけません(H.16.12.17)。


家族の人はなるべく、批判的なことを患者さんに言わないようにすべきです。
病気のためにできないこと、本人の苦痛を常に考える必要があります。
なるべく命令はさけます。
家族の方の考えとして、お願いの形で患者さんに話すことが良いようです。
例えば、「こんなに遅くまで寝ていて駄目な奴だ、早く起きろ」と言うよりは、「遅くまで寝ていると掃除もできないし、私にはだらしなく思える。9時に起床するようにしてほしい」と言ったほうが良いでしょう(H.16.12.18)。


また、患者さんのおかしな話に対してあたまから否定をするのは考えものです。
患者さんの苦痛を理解してあげるべきです。その上で「不思議がる」のが良いようです。
例えば、「宇宙人が攻めてくる」と言う患者さんにはまず患者さんの不安について分かろうとしてあげてから、「不思議だ」と告げたらどうでしょうか?
いかにおかしな考えでも患者さんにとっては本当のことと思われているようですから(心的事実)(H.16.12.19)。


病気の人は「融通がきかない」「同じ失敗を繰り返す」「高望みしがち」「緊張しがち」「要領が悪い」「変化が苦手」などの特徴があります。したがって、「わかりやすく、具体的に」「繰り返しをいとわず」「思いやりをもって」指導していくべきです。
仕事でも患者さんにあったものとそうでないものがあります。
例えば、セールスなど人の相手が主になる仕事仕事の内容がよく変わる職場、あまりにこまかい仕事、流れ作業など本人のペースでできない仕事は苦手です(H.16.12.20)。


治療が十分な軌道に乗らずやむを得ず、入院を希望する場合以下のことに注意が必要です。
まず、入院希望が本当に患者さんのことを考えた結果であるのかということ。
入院が必要な理由を十分に家族が説明、納得できるかということ。
患者さんに対してその理由を説明できるかということ。
患者さんが納得するような患者自身が苦痛に感じている例えば、不眠、不安、いらいら、身体の不都合などをとらえているかということです(H.16.12.21)。


患者さんが希望せずとも入院にふさわしい症状や問題行動があれば、今の日本では医療保護入院という保護者の同意による入院が可能です。
もし、症状や問題行動が著しくて家族では対応が不可能な場合は原則として警察の保護を依頼することになります(H.16.12.22)。


また、症状や問題行動のため自分を傷つけたり、人に危害を加える恐れがあるときには警察もしくは保健所を通じて県知事の命令精神保健指定医2名の診察により入院となる措置入院の制度があります。
万一の場合は、やはり早めに病院へ連絡することが重要です(H.16.12.23)。


以上を考え十分に「治療」がおこなわれたなら「統合失調症」は薬を続ける必要はあるものの十分によくなる病気と思われます(H.16.12.24)。


治療の中断・再発では以下のことに注意がいります。
1.変化に気付くこと
(不安・不眠・体の変調・ひきこもりなど)
早いうちでは患者さんもどこかおかしいという気持ちがありますし、外来で治療できます。薬の調整も容易です。
2.薬の必要性について繰り返す・受け入れやすい説明をする。
「気持ちを安定させる薬」、「不安・不眠を治す薬」などの説明が患者さんにとっては受け入れやすいと思われます(H.16.12.25)。


3.環境の調整
仕事があっているか?・生活の習慣が患者さんのために良いか?など)
4.家族・患者ともに病気に対して理解を深める。
(例えば、患者さんの症状での問題を「なまけ」「性格」のせいにしていないか?)
(H.16.12.26)。


5.患者・家族・医療者の間に思いの差はないか?
(「不眠やあせり、体の症状、敏感さなど」患者さんが苦痛に思う症状と、「意欲の低下や興奮など」の家族が困る症状と、医者や看護者が注目しがちな「幻覚」「妄想」というように違いはないか?)(H.16.12.27)。


6.薬の調整で問題が減る点がないか?
(量、種類、副作用への処置、服薬時間、回数の調整など)
薬の調整をするのは医師ですが、不都合がある場合は申し出てみるのも一法では?
(H.16.12.28)。


7.活用できる社会資源や制度はどうか?
障害者年金、精神障害者通院公費負担制度、税制度の優遇、保健所、作業所など)
(H.16.12.29)。

「統合失調症」の患者さんの家族の方向けの啓蒙パンフレットからの引用はここで終わりです。


精神療法とは、患者をして自発的内省と再建的体験を持つことを援助し、これを通じて、自己と他人の関係において洞察を得ていき、人間的成長が達成されるように計ることをいう(H.16.12.30)。


1.支持療法・・・弱点を支え、健康な部分を助長する。
受容、助言、説得、保証、暗示、環境調節など)
2.再教育療法・・・誤った行動を修正して、好ましい行動を伸ばす。
行動療法、森田療法、心理劇、集団療法など)
3.再構成療法・・・自己洞察を得させて、人格の再構成・成長を計る。
精神分析療法、交流分析、現存在分析、認知療法など)
(H.16.12.31)。


行動療法は、誤った習慣による個人の特有の不合理・不適切な行動を修正する。
主として、神経症の治療に用いられる。
系統的脱感作、フラッディング法、嫌悪療法、モデリング、オペラント条件づけ、バイオフィードバック法など(H.17.1.1)。



精神分析療法について>
人間の思考や考えは意志によって統制された意識された活動だけでなく無意識的動機によって規定される部分が大きい(無意識の存在)。
無意識的な心理葛藤により神経症・精神病の症状が生じる。
無意識的葛藤は本能的な欲求が自我の防衛機制によって抑圧されるために生じるため、これを自由連想法などの特別な方法で意識化することにより症状を解消させる。
過去における患者の立場・生活などを理解すれば病的状態に至るまでの過程が理解できる(力動的立場)。
発病の原因となった内的な葛藤の性質や由来・自己の病理性について患者自身が理解することを「洞察」という。
自由連想法とは、頭に浮かぶ考えを批判や選択をせず話をさせ、無意識を理解しようとする方法である(H.17.1.2)。


認知療法は、個人のもつ考え(スキーマ)、考え方のうち不合理、不適切なものを正す。不適切な感情は思考の歪みによる。
認知療法は思考の歪みを正すことで、うつ気分、不安などの感情をコントロールする。
元来、うつ状態の人は時間、自己、世界に対して否定的な考え方をすることが多く、その不合理な部分を正すことで症状の軽減をみたことから認知療法が理論化された。
「ALLorNONE・過度の一般化・マイナス化思考・拡大解釈・結論の飛躍(mind reading)・感情的決めつけ」などを「うつ的な思考パターン」としてあげることもある(H.17.1.3)。


<痴呆のケア>
原則的にはその人にあった対応をすることがすべての人間関係の基本であり、特別に老人という人間がいるわけではないといえる。
しかし、対応・ケアにより症状が変化するのも事実であり、家族への指導なども重要となる。一般的な面を列記する。

*変化に早く気付く。痴呆の可能性を考慮にいれる。
(痴呆に気付かず普通の応対をしたり、叱ったりすることで問題行動の悪化がみられる。)
*急激な変化を避ける。
*安心できる人、なじみの場所などをつくる。
(短い接触を数多く持つほうが有効。)
*老人を尊重して、本人の言動を許容し、なるべく理解するように努める。
(本人の「虚構」の世界を承認してあげる。論理的な説得より感情的な納得をはかる。)
(本人のもつ良い点を努めてみていく。良い点を誉め、叱責は避ける。)
*仲間、集まりをつくり、孤立させない。
(なじみの人とは会話の内容が支離滅裂でも雰囲気を楽しむ「偽会話」が成立)
*合併症などの体の治療やリハビリを行い、寝こませないように努める。
*適切な刺激を与えて、頭・体を使うようにする。
*できないことのみを補助し、残された機能を維持するように努める。
(補助は最低限にし、できることは最大限にさせていく。)

痴呆は、治療が困難であっても、ケアは必ずできる疾患であることを考慮する。
家族の要求する水準には達しなくても、また、種々のスケールの上で変化がみられなくとも、ケアによりよくなる部分はある。小さな変化でも評価してゆくことが重要になる(H.17.1.4)。


新聞によると、新潟県中越地震の被災地へ派遣されていた精神科医の診察でみられた被災児の症状で、乳幼児で多かったのは、母親から離れられなくなるもので、怖くて家やトイレ、風呂に入れなくなった子もいたという。またこのほか、落ち着きがなく乱暴、些細な事に敏感に反応などの相談があり、中には再びおむつが必要になったり、指しゃぶりしたり、赤ちゃん言葉に戻ったりと、赤ちゃん返り(退行現象)するケースもみられたという(H.17.1.5)。


<統合失調症と遺伝>
遺伝についての考察方法としては以下の方法がある。
1.病気の発端者の「家系調査」
 血族の中の病気の割合が一般集団より多いかどうか調べてゆく。
.「双生児法」
 遺伝情報の異なる一卵性双生児二卵性双生児で病気の割合をみる。
 一卵性双生児で一致率が100%以下なら遺伝因が100%ではなく、不一致には環境が関与している。
3.「養子法」
 統合失調症の親から生まれ、正常者に養育された養子と、正常者から生まれ統合失調症の親に養育された養子を比較して判断する。

上記の調査から統合失調症の発病に遺伝が関与していることは明白である。ただし、病気そのものが遺伝するのではなく、病気のかかりやすさ(脆弱性)が遺伝すると考えるのが妥当かもしれない。
また環境因が関与していることも確実といえる。
かつては分裂病をつくる母親など環境因の重視が叫ばれた時代があったが、現在では再燃防止の観点から見直されている(H.17.1.6)。


<統合失調症の病名告知>
患者さんへの「告知」が問題にされる場合があるが、原則としては、「告知」すべきであると考える。ただ診断名を告げるのではなく、患者さんの訴えから症状を抜きだし医療者の判断根拠を示す必要がある。
「神経が疲れている」とか「神経過敏である」といった表現が治療的な場合もある。
患者さんの反応を十分観察し、例えば不服そうな時には、診断(名)はあくまでも医療者の判断であり、どのような診断がつこうと本人の苦痛は変わらないことを告げることもある。
障害が重篤なほど患者さんに告げる「病名」は本人の苦痛を反映したものが望ましい(H.17.1.7)。


チックとは、不随意的、突発的、急速、反復性、非律動的、常同的な運動あるいは発声である。チックはある時間は抑制することができる。チックは、ストレスでしばしば増悪し、通常は睡眠中に消失したり著明に減少する。一般には、何かの活動に集中しているときには減少する。
チックには、運動チック音声チックがあり、それぞれが単純チック複雑チックとに分けられる。単純運動チックでは、まばたきなどの目のチックが最も多い。複雑運動チックには、跳ね上がるなど全身に及ぶものもある。単純音声チックでは、咳払いが最も多い。複雑音声チックでは、コプロラリア(汚言症:社会的に受容しがたい、通常は卑猥である、音、単語、句を不随意的に発する)トゥレット症候群(Tourette syndrome: TS)に特徴的とされる(H.17.1.8)。


トゥレット症候群(Tourette syndrome: TS)は国際疾病分類第10版(ICD-10)やDSM-Ⅳでは、多様性の運動チックと一つ以上の音声チック長期間にわたってつづくチック障害と定義されている。
TSの発症頻度は10000名に4~5名とされ、病因として生物学的要因が大きく、とくに遺伝的要因の関与が注目されている。
精神薬理学的には、抗ドーパミン作用の強い薬物がTSに有効であること、中枢刺激薬によってTSの発症が促進されたり増悪することなどから、ドーパミン系の過活動が想定されている。
脳画像研究でも、ドーパミン系が重要な役割を果たす大脳基底核を中心として検討されており、体積が対照群よりも小さいという報告などもある。
TSの病態としては、ドーパミン系の異常を中心としつつ、α2-ノルアドレナリンアゴニストであるクロニジンやセロトニン再取り込み阻害薬の効果と関連して、ほかの神経伝達物質とのからみあいが検討されている(H.17.1.9)。


TSの治療にあたっては、チック症状のみでなくさまざまな合併症への考慮も大切である。
薬物療法の有効性は高く、第一選択薬としては、抗ドーパミン作用の強い神経遮断薬であるハロペリドールやピモジドがあげられる。ハロペリドールは著効を示すが、過鎮静や抑うつなどの副作用への注意が必要である。また第二選択薬としては、クロニジンがある。
さらに、合併症に対する薬物療法が必要になることがあり、たとえば、不安が強い場合には抗不安薬の追加が有効である(H.17.1.10)。


TSでは、多動性障害または注意欠陥/多動性障害強迫性障害(obsessive compulsive disorder: OCD)を高率に合併する。不安・抑うつ気分、衝動性などが認められることも多い(H.17.1.11)。


同時に、本人と周囲の人々に障害の特性を正しく理解するように促して、チック症状や合併症をもちながらも発達し適応していくように支えていくという精神療法および環境調整の果たす役割は大きい。軽症例ではこのような精神療法のみで軽快することもありうる(H.17.1.12)。


TSでは多くの場合チック症状は長期間つづくが、青年期・成人期に入って軽症化することもあれば、ときには青年期に自然治癒することもある(H.17.1.13)。


注意欠陥多動性障害(attention-deficit hyperactivity disorder: ADHD)は、知能障害はないか、あっても軽度であるにもかかわらず、発達に不相応に注意が散りやすく動きの多い状態が存在するものである。
精神遅滞でも、多動などが精神年齢で説明できない程度ならば、ADHDを合併すると考える。自閉症を含む広汎性発達障害の多動などは、その症状であり、ADHDの合併とはしない(H.17.1.14)。


行為障害は一部に合併するが、ADHDは行為障害より若年発症で、子どもをとりまく心理社会的状況は、より良好な傾向にある。ADHDは、学習障害(読字障害、算数障害、書字表出障害)と併存することがある。トゥレット障害との合併もまれではなく、その際、多くはADHDが先行する(H.17.1.15)。


ADHDは学童の3~5%に存在し、男女比は約6:1である。幼児期に発症するとされており、そのような特徴のめだつ幼児もいるが、学齢前の診断は困難である(H.17.1.16)。


ADHDの病因としては、遺伝的要因の関与は少なくない。極低出生体重、不利な養育環境、鉛中毒、母体の薬物使用、感染などの先行因子の関与も検討されている。神経伝達物質の障害も想定されているが、特定の物質の意義は不明である(H.17.1.17)。


<ADHDの治療>
薬物の有効性は確立しているが、心理療法的関与や環境調整など身体的侵襲がない方法が、まず試みられるべきであり、治療は総合的におこなわれる。
ADHD児は、その多動性や衝動性により、周囲の評価が低く、そのため反抗的、拒否的になり、さらに問題が深刻になることが少なくない。このような点については、本人の衝動性統制を向上させる認知療法的対応が有用である(H.17.1.18)。


以上で、問題が軽減しなければ薬物を併用する。第一選択は、中枢刺激薬メチルフェニデートである。作用機序の詳細は不明だが、カテコールアミン系を介して効果を生じると推測されている。メチルフェニデートは、10~30mg/日を朝食後に1回服用する。効果出現は早く、服用開始当日から落ち着くことが少なくない。効果持続は4~5時間程度で、午後も効果を望むなら昼食後にも使用するが、午後遅い服用は、睡眠を妨げるので避ける。副作用には、食欲低下、過鎮静、時に興奮の増強がある(H.17.1.19)。


中枢刺激薬が奏功しない場合は、抗うつ薬であるイミプラミンを使用してもよい。しかし衝動性や興奮には、抗精神病薬であるピモジドやハロペリドールが有効な場合がある(H.17.1.20)。


<ADHDの予後>
一部の、早期発症で多動性が強く、行為障害の合併のある例では、多動や注意障害が成人期まで持続し、薬物依存や反社会性人格障害などを呈する可能性があり、予後が良好とはいいがたい。軽症例では、成長とともに障害がめだたなくなる(H.17.1.21)。


社会生活技能訓練(Social skills training ; SST)

SSTocial kills rainingの頭文字をとったもので、わが国では「社会生活技能訓練」あるいは「生活技能訓練」とよばれる。1995年4月に診療報酬の精神科専門療法に新設された「入院生活技能訓練療法」は精神科入院患者を対象としたSSTが中心となっている(H.17.1.22)。


SSTは引っ込み思案や弱気などのために神経症症状を呈する人々に対しておこなわれていた主張訓練(assertive training)から発展したもので、米国UCLAのLibermanらが認知行動療法の理論にもとづく包括的な治療パッケージとして整備したことにより、統合失調症などの慢性精神障害へと適応が拡大し、欧米で急速に普及した(H.17.1.23)。


SSTには患者さんの関心と生活上の課題に対応して個人ごとに目標を設定し練習を進める「基本訓練モデル」と課題領域別の学習パッケージとして作成された「モジュール」がある。後者には、服薬自己管理、基本会話、症状自己管理、余暇活動、問題解決、金銭管理、職業的技能などがある(H.17.1.24)。


慢性の精神障害をもつ人々は薬物療法などにより精神症状が改善しても、対人関係や職業生活、日常生活において特有の不器用さをもつために社会生活が障害されることが多い。SSTはこうした「生活障害(能力障害)」の改善を目標に発展し、患者さんの社会参加の促進と生活の質の向上に効果をあげてきた(H.17.1.25)。


SSTの特徴として
1)「ストレス-脆弱性-対処技能モデル」に立ち、ストレスを減らし患者の対処技能を高める治療計画を立てること。
2)ロールプレイモデリングを活用して患者の認知・学習障害に対応した社会的行動の学習を促進すること。
3)練習場面で獲得された技能が実生活でも生かされる(般化)ように宿題の実行を促すことがあげられる(H.17.1.26)。


睡眠時無呼吸症候群(SAS)は寝ている時に繰り返し呼吸が止まり、寝ながらにして酸素が欠乏する病気。満足に眠れないため、徹夜続きのような状態に陥る。
「危険信号」の役割を果たすのが「いびき」だが寝室をともにする人がいない一人暮らしの場合などは、なかなか気づきにくい。心筋梗塞、脳梗塞、高血圧症を引き起こす要因ともなる。
うつ病との類似点は少なくない。朝起きた後に憂うつな気分が抜けず、趣味もなくなり、性欲も減退する点だ。
「うつ傾向を訴える方をよく調べたら、無呼吸症候群だったということもある。食欲や肥満の有無が一つの手がかりになる」という。
一般に「うつ」の場合、食欲がなくなることが多いが、SASの場合は食欲は無くならず、むしろ高まる傾向にあるという。肥満はSASにかかりやすい人の特徴の一つである(地元誌のコラムより)(H.17.1.27)。


10秒以上呼吸が止まる状態が一晩(平均7時間)の睡眠で30回以上、あるいは1時間の睡眠で5回以上あるとSASと診断される。
単純ないびきとSASの区別は、呼吸や血中の酸素濃度を調べる「簡易型睡眠呼吸モニター」で可能である。携帯電話大などの様々なタイプがあり、金大附属病院ではまずこれらの機械を貸し出し、二日または三日間、計測してもらう。その後、SASの疑いが高まれば、入院しての本格的な検査を実施する(地元誌のコラムより)(H.17.1.28)。


SASと診断された場合、治療の「第一選択」となるのは、機械を使って鼻から空気を送り込み、気道が塞がるのを防ぐ「在宅持続陽圧呼吸療法」である。
症状の度合いや、のど・あごの形によっては、寝ている時に気道が閉じないようにする口腔内装具(スリープスプリント)の使用、レーザーや高周波などを用いた手術などを試みる(地元誌のコラムより)(H.17.1.29)。


<循環器障害と向精神薬>
向精神薬のうち循環器系へ影響を及ぼしやすいのは、フェノチアジン系抗精神病薬三環系抗うつ薬、およびlithium (Li)である(H.17.1.30)。


フェノチアジン系薬物のなかでも特にthioridazineは1度房室ブロック、心房性期外収縮、心房細動などが報告されている。
lithium (Li)は、治療量でしばしば心電図異常をもたらす。ほとんどがT波の平坦化、逆転であり、Li中止後2週間以内に正常化する。もともと心疾患のない患者でこれらの変化が生じてもLiを中止する必要はないが、定期的な心電図検査が必要である。

ベンゾジアゼピン(BZ)系薬物やcarbamazepine(CBZ)は循環器系の副作用が極めて少ない薬物と考えられている(H.17.1.31)。


Liサイアザイド系利尿剤、furosemide、spironolactoneのK+排泄促進作用により、血中濃度が上昇するので併用禁忌である(H.17.2.1)。


<腎障害と向精神薬>
向精神薬による腎障害はあまりないといってよい。ただ95%以上が腎排泄性であるLiなどは、腎機能の低下に注意をはらう必要がある(H.17.2.2)。


大部分の向精神薬は、主に肝臓で代謝されるため、腎機能により大きな影響を受けることは少ないが、主に腎から排泄されるLi、barbital、amantadine、sulpiride、tiaprideは腎クリアランス低下により容易に蓄積しうる。特に、常用量と中毒量が接近しているLi腎不全患者には禁忌である(H.17.2.3)。                   


<肝障害と向精神薬>
向精神薬による薬物性肝障害は、一般に中毒性肝障害とアレルギー性肝障害に分けられ、臨床では、アレルギー肝障害が問題となることが多い。アレルギー性肝障害は、薬物投与量と関係なく、過敏性反応と関係して、特定の個体にのみ発症する。投与後1~4週間の潜伏期間の後に発症し、再投与で肝障害が再発し、しばしば発熱、発疹、関節痛、好酸球増多、皮膚掻痒感、黄疸を伴うという特徴を持っている(H.17.2.4)。


肝機能障害は、抗精神病薬では、ブチロフェノン系よりフェノチアジン系の特にchlorpromazineで多くの報告があり、主に胆汁うっ滞型の肝障害が1~2%にみられる(H.17.2.5)。


抗うつ薬では、MAO阻害剤による肝炎型の障害が有名で、iproniazidの肝障害発現頻度は1.4%であるが、その致死率が20%と高率のため発売禁止となった。本邦で長年使用されていたsafrazineも発売が中止された(H.17.2.6)。


抗てんかん薬では、極めて稀であるが、carbamazepine(CBZ)sodium valproate致死性肝障害や、肝機能障害を伴わない高アンモニア血性脳症の報告がある(H.17.2.7)。                      


<消化器疾患と向精神薬>
抗コリン作用の強い抗うつ薬や低力価の抗精神病薬により便秘麻痺性イレウスが生じやすい(H.17.2.8)。


抗潰瘍薬cimetidinecytochrome P450(CYP450)を不活性化するが、特にCYP450 3A family への阻害作用が強い。そこで、CYP450 3A4によって代謝されるcarbamazepine(CBZ)、alprazolam、triazolamは代謝障害を受ける。他に、多くの三環系四環系抗うつ薬も代謝障害を受け、抗うつ剤の作用が増強されることがある(H.17.2.9)。


知っておいた方がよい薬物相互作用として、アゾール系抗真菌剤(ketoconazolなど)によるCYP450阻害による各種向精神薬の血中濃度上昇がある(H.17.2.10)。


体内の水分量にくらべ電解質量(とくにナトリウム)が著しく不足している状態水中毒といい、一般には外科手術後などにみられる。ところで、1938年にBarahalにより精神分裂病(統合失調症)患者の多飲水による水中毒がはじめて報告されて以来、統合失調症に限らず、精神遅滞、躁うつ病、人格障害、神経症、神経性食思不振症、アルコール依存症、パーキンソン病、てんかんなど精神科領域のほとんどの障害でこの多飲水が認められることが判明した(H.17.2.11)。


そしてこの精神障害でみられる多飲水により上記の水中毒がしばしば生じることから、精神科領域においてもこれらの病態の原因、疫学、診断、治療が注目されるに至っている(H.17.2.12)。


なお精神障害者でみられる多飲水については、心因性多飲水、強迫飲水、自己誘発性水中毒、一次性多飲水などさまざまな名称でよばれている。水中毒をも包括する概念として病的多飲水(psychiatric polydipsia)がある(H.17.2.13)。


水中毒の症状としては構音障害、ふらつき、痙攣、意識障害、麻痺性イレウスなどがあり、発見が遅れれば死に至ることもある。これらの症状の原因は、低ナトリウム血症による脳(脳浮腫)、腸管の障害であると考えられている(H.17.2.14)。


水中毒の基礎となる病的多飲水自体による症状としては尿失禁、下痢、噴出性嘔吐、膀胱の拡大と機能不全などがある(H.17.2.15)。


病的多飲水の病因についてはさまざまな仮説が考えられているが、いまのところ未解明である。最近では抗利尿ホルモン分泌不均衡症候群(syndrome of inappropriate antidiuretic hormone: SIADH)から病的多飲水の病因・病態を説明しようとする仮説が有力である(H.17.2.16)。


病的多飲水患者には視庄下部の機能不全腎の抗利尿ホルモンに対する感受性の亢進が存在する可能性が示唆される(H.17.2.17)。


水中毒に発展するおそれのある著しい病的多飲水患者に対しては隔離による水制限が必要である。この場合、朝夕の体重測定による体重日内差がめやすとなり、患者さんに与える負担も少ない(H.17.2.18)。


薬剤の副作用による口渇、SIADHなどが病的多飲水の発症の契機ともなると考えられることから、薬剤の減量が効果的なように思われるが、減量によって発症した症例や重症化した症例もあり、注意が必要である(H.17.2.19)。


フェニトイン炭酸リチウムが低ナトリウム血症に、デメクロサイクリンがSIADHに有効であったとする報告もみられる(H.17.2.20)。


このほか病的多飲水患者には通常の飲料水ではなく、電解質の含まれたスポーツ・ドリンクを与えることが低ナトリウム血症の予防にある程度有用である(H.17.2、21)。


また高ナトリウム溶液の輸液による低ナトリウム血症の急激な補正橋中心部髄鞘融解症(central pontine myelinolisis)を引き起こす可能性が高いため、輸液補正は時間をかけておこなう必要がある(H.17.2.22)。


電撃療法(electroconvulsive therapy:ECT)は1938年に登場し、その有用性ゆえにその後十数年にわたり精神科の最も普遍的な身体療法として多用された。しかし、1950年代以降は薬物療法の台頭およびECTに対する倫理的な批判のためその使用頻度は大幅に減少した(H.17.2.23)。


<無けいれん性電撃療法 Modified electroconvulsive therapy(m-ECT)>

欧米では原法をさまざまにモディファイした安全性のきわめて高い無けいれん性m-ECTしかおこなわれなくなって久しい。m-ECTは100%酸素の投与下で静脈麻酔をおこない、筋弛緩剤により身体けいれんを抑制しつつ、頭部への電気刺激により全般性強直間代発作を惹起する方法である。麻酔科医の身体管理のもとに手術室でおこなわれるため、不測の事態にも対処しやすく、けいれんによる身体への負担も少ないため、老人や体力の落ちている患者にも安全におこなえるという利点がある(H.17.2.24)。


<無けいれん性電撃療法の適応と禁忌>
感情障害や統合失調症のうつ状態あるいは昏迷状態統合失調症の急性期などで適応となる。とくに生命的危険がある場合は絶対適応とすらいえよう。絶対禁忌はなく、脳圧亢進、心筋梗塞あるいは脳出血の急性期、大きな動脈瘤の存在などが相対禁忌とされている(H.17.2.25)。


1993年に出された米国精神医学協会の大うつ病のpractice guidelineではECTはあらゆる抗うつ治療法のなかで最も安全かつ最も高い改善率を有し、薬剤に反応しない患者でも、その約50%に満足すべき反応が得られるとされている(H.17.2.26)。


昏迷に対する効果は絶大で、ほとんどの場合数回の施行で昏迷は劇的に解けてしまう。慢性の統合失調症に対してはまったく効果がないが、急性期の統合失調症に対しては薬物に反応しない患者でも多くの場合治療的利益が得られる(H.17.2.27)。


脳に器質的ダメージを与えるという証拠はいままでのところ認められず、致死率は10万回の施行で2回程度とされている。実際の施行に際し最も問題となる副作用は逆行性および前行性健忘であるが、重篤なものはまれであり、一般にECT終了後4週間以内に回復する(H.17.2.28)。


平成7年に埼玉医科大学の倫理委員会に「性を変える手術」をしてもいいかという申請が出た。その時の申請書には、「性転換治療は本邦では全くタブー視されている問題である。そのために患者さんは肉体の性と頭の中の性との違いに苦しんで、自殺にまで追いやられる場合もある。また手術をしようと思っても日本ではできないので、外国へ行って治療をするといったようなことで、日本の国は暗黒時代である。」ぜひ日本でも性をかえる治療をきちんとやろう、やってほしい、というように書かれている。
実は過去に日本で、性を変える性転換手術をやった人がいるが、それが法律違反であるという判決が下っていた。これは昭和44年の東京地裁の判例だが、Z病院という、産婦人科の病院で性別を変える手術が行われた。手術をした人はある大学の産婦人科の助教授だったが、手術をお兄さんの病院で行った。
その医師は、「法定の除外事由がないのに、故なく生殖を不能にする手術をした。」つまり男性3人について、男性性器を除去し、女性性器を造成した、ということで、今は母体保護法という名前になっているが、当時の優性保護法の28条に違反したので、被告人を懲役2年及び罰金40万円に処するという判決が下った。これがブルーボーイ事件と言われているものである。
このことがあったので、その後医者たちの間でも国民の間でも性をかえる手術をしてはいけないんだ、これは優性保護法に違反するんだというふうに短絡的に考えてしまった。

実際には、裁判官は非常によく考えていて、「何人もこの法律の規定による場合のほか、ゆえなく生殖を不能にすることを目的として手術またはレントゲン照射を行ってはいけない」という優性保護法の28条、重要なのは「ゆえなく」というところが問題だったわけで、裁判官は、判決を言い渡すときに、「求められるやこれに応じてやってしまったというところが問題」である、といっているので、つまり、手術そのものがだめだと言っていたわけではないのである。
つまり性転換手術というのはだんだん医学的にも治療行為としての意義は認められているけれども、いずれにしても正常な肉体を外科的に変更しようとするものであるから、ある一定の厳しい前提条件、ないしはどういう場合に手術をしていいのかといったようなことについてきちんと決めておこなわれなければ、「やってくれ」といわれて、「いいよ」とやるのはいけない、そう言っているだけで、手術をしてはいけないということは一つも言っていなかったのである。
医学界でも性転換手術はだめなのかと単純に思い込んでしまって、この問題が日本の国では闇に葬られてしまった。そういうことで暗黒時代になったということなのである。

昔は性転向症とか性転換症と呼ばれていたが、今は性同一性障害と呼ぶ。gender identity disorderと英語で言うので、日本でもその頭文字を取ってGIDという。
GIDとはどういうことかというと、性には2つの側面があるということで、われわれは性といえば、多くの場合、男性か女性かというふうに生物学的な性だけを考えるわけだが、実際には自分は男である、男として生きるのがふさわしい、あるいは女である、女として生きるのがしっくりするという自分の性をどっちの性別と認識するかという性の自己認識とか自己認知(gender identityというが)、そういう2つの側面がある。
ところが多くの人は、自分の生物学的性別性自認gender identityは一緒になっているので、性に2つの側面があることに気がつかない。性同一性障害ではこの生物学的な性別と性の自己意識あるいは自己認知と呼ばれるものが一致しない状態であるということになるわけである。

診断は、まず生物学的に男性か女性のどっちであるかということを決める。これは性染色体、ホルモン、内性器、外性器を調べれば男性か女性かということはすぐわかる。
生物学的に男性か女性かということをはっきりさせたら、その次にgender identity、自分の性別の意識はどっちであるかということを決定する。性同一性障害の方では、生まれたときから反対の性別で生活していることが多いので、生育歴、生活史を聞く中で、服装を反対にしたり、女の子なのに男の子のような活発な遊びをしたり、男の子たちと一緒に遊んだり、男の子なのに人形遊びをしたりといったようなことを、生活史としてきくとわかる。
生物学的性別と自己意識が不一致であれば、性同一性障害と決めることができるわけで、その際、除外診断として性器の異常がないこと、つまり半陰陽とか間性と呼ばれるように男性性器と女性性器の両方の特徴を持っている場合には性同一性障害の診断から除外される。

男なのに女の格好をするとか、女性が男のような服装をすることは精神医学的には異性装と呼ばれているが、異性装には2種類ある。ひとつは、例えばブラジャーとか、反対の性別の衣装を身にまとって性的な快感を得るというものである。性同一性障害の場合に反対の服を身にまとうというのは、性欲とか性的快感ということとは関係なく、少しでも自分の性の自己意識に身体的特徴を近づけたいということである。

治療。第1段階は精神療法。それを十分やった上でホルモン療法。それでもうまくないときにはじめて手術療法ということになる。手術は最終段階の治療で、全体の1割程度ではないかと思われる。

埼玉医大で倫理委員会の答申が出たときから、家庭裁判所は性同一性障害という診断がつけば名前をかえてもいいということになって、今は改名はそれほど困難ではない。反対の性別の名前とか、どっちの性別かわからないような名前をつけている人も結構ある。

(埼玉医科大学精神科 山内氏の精神保健講演会より)

(H.17.7.8)


精神療法。性同一性障害の人たちはいろいろな困難を持っている。例えば、就職したり学校へ行くときにも、制服がある、運動は男女で分かれている、学用品も男女で色が違うというようなことで、不登校になったり、学業から脱落して、低学歴で終わったりする。職場では、仕事の上で男女で違う仕事が多いし、トイレもどっちのトイレに入るか、あるいは履歴書に性別を書くようになっているが、例えば反対の性別として生活しているときに、履歴書を見たら性別が違うじゃないかといったことで最終段階でいつも就職試験をはねられてしまい、定職につけないというケースも少なくない。
世の中は、いろいろの証明書の請求の際に性別を書くことが必要になっている。そこで当事者グループが方々の自治体に証明書の請求書には性別を書かなくてもよいというふうにして欲しいと請願して、ずいぶんと事情は変わってきている。しかし日本の国は少なくとも性別二分法でいっているので、いろいろのところで性別をはっきりさせなくてはいけない。そのために下宿を借りようと思っても借りられないといった、さまざまな問題をかかえることになる。
それから親の問題だが、かつてはこういうことが公に論じられるようになるまでは、自分の子供を変な子供というふうに思って、そんな変な格好をして表を歩くなとか、外に出るなとか言って疎外したり、あるいは逆に親がこういう子供になったのは自分の育て方が悪かったんだと、自分に罪があるというふうに思って苦しんだりしているケースもある。ほとんどの親は自分の子供のおかしな行動が、ある種の病気で、治療対象であるなどとは思っておらず、自分を責めていたということが分かった。
精神療法では、性別を変えようと言う気持ちになるのは何故か、あるいは今までどんな苦痛を抱えてきたかということをよく聞いて、それについての考え方の整理をしてあげたり、生きる方法を見つけたりすることになる。
もう一つ精神療法の時期で重要なのは、自分は本当は何者なのか、どっちの性別で生きていくのがいいのかを自分自身がはっきり確認するのも精神療法の時期にすることとして重要である。

ホルモン療法。そうやって気持ちの整理をしても、やっぱり自分の性別に対して違和感があるというときには、ホルモン療法をする。男性が女性性を求めるときには女性ホルモンを投与するわけだが、そうすると少し体が丸みを帯びたり、性衝動が減ったりということになるし、女性が男性性を求めるときには男性ホルモンを打つ。すると少し毛深くなったり体つきがごつくなったりする。そういう体の変化だけでなくて、ホルモンを投与すると、精神的にも変化が起こることがいろいろの研究で知られている。ホルモン療法によって女性が男性的な精神活動を持つようになったり、男性なのに女性ホルモンによって女性としての脳の機能を持つようになったりすることが知られている。このように、ホルモン療法をすることによって生物学的な性別の特徴が減るだけでなはなくて、精神的にも安定することが知られている。だから反対の性別の服装をしてホルモン療法をやっていれば、手術をしなくてもそれで十分です、という人も結構いる。そういうことで手術にいく人は1割程度ということになる。

手術療法。精神療法やホルモン療法をやってもなおかつ実際の生物学的な性別特徴に手を加えないと、違和感があって、どうしても身体的性別に同一感が持てないというときには手術をすることになる。MTF、すばわちmale to female、男性の人が女性性を求めるという意味だが、その場合には、男性の性器を切って陰のうを反転して膣をつくるというようなことを行って、比較的簡単に1回の手術で終わる。このような手術をこれまでは性転換手術と言っていたが、今は性別適応手術,、SRS(sex reassignment surgery)と呼ぶ(性を転換するわけではなくて、性特徴をかえて別の性別に適応をするという意味で)。
一方、FTM(female to male)、すなわち、女性が男性性を求めるときには2段階の手術をする。最初に上腕部の皮膚をとって丸めて筒を作り、肋軟骨を入れて少し固みをつけたり、あるいは尿道の穴を形成する。2段階目として筒状のペニスを陰部につける。もちろん女性だから卵巣を取ったり膣を取ったりというようなこともして、2段階目の手術をするということになる。

経済的問題。これはホルモン療法とか手術療法とについて、保険がきかないという問題がある。いろいろな病気でホルモン療法はされているが、性同一性障害に対するホルモン療法というのは認可されていない。性同一性障害に対してのホルモン療法は保険では認められていない。手術も、交通事故やがんで子宮を取ったり、いろいろなことで手術療法はするし、保険でその治療は認められているが、性同一性障害という病名では、保険医療の対象にはならない。平成15年国会でこの事が問題にされたが、今後の大きな課題である。

法整備。今後の課題を上げたときに一番おくれるのはこの法整備であると思われたが、思いもかけず戸籍が変えられるようになった。名前を変えるのはできるかも知れないけれども、戸籍をかえるのはほとんど絶望的ではないかと思われた。日本には戸籍法がしっかりとある。私はだれだれの次男の何々である、と全部戸籍に載せられている。戸籍をかえると突然、次男でなくなってしまうかもしれないという問題がある。また、性別二分法という確たる分類法で社会が動いているものだから、性別を変えるのは大変ではないかと思われたが、意外や意外、これは当事者が国会議員に働きかけて、法律が通ってしまった。2003年7月10日に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」というのができ、1年後から施行となった。

(埼玉医科大学精神科 山内氏の精神保健講演会より)
(H.17.7.11)


うつ病やうつ状態の患者でも、軽症の時は精神科ではなく、体調不良を訴えて近所の身近な医院を受診することが多いため、内科などの医師にもうつ病について理解を深めてもらう必要がある。
うつ病やうつ状態の患者が最初に訴える症状はだるさや頭痛、肩凝り、不眠、食欲不振など「医者にかかるときに考えられる、ありとあらゆる症状のことが多い」という(H.17.9.21)


人前でスピーチしたり、字を書いたりすると誰でも緊張する。でも、それが苦痛で会社や学校に行けなくなるなど、明らかに日常生活に支障を来すようになっているとき、それは性格の問題ではなく、社会不安障害(Social Anxiety Disorder; SAD=社会恐怖Social Phobia)という心の病にかかっている可能性がある。
米国などの調査では、この病気で悩んでいる人は8人に1人という多さだ。治療薬の開発や診断基準などこの病気に対する対応策は確立されつつあり、専門医は「治る病気ということを知ってほしい」と早期の受診を呼び掛けている。
上島国利昭和大教授によると、社会不安障害が精神科医療の世界で本格的に知られるようになったのは比較的最近で、1990年代に入ってからだ。日本ではよく似た病気として対人恐怖症が知られており、そのうち緊張(軽症)型は症状が一致するという。
症状があらわれるのは、日常のちょっとした場面だ。社内の会議でプレゼンテーションをするとき、結婚式で記帳をするとき、昼ご飯をみんなで食べるとき。そんな日常の何でもない出来事で、不安や恐怖を感じてしまう。その場にいると、頭の中が真っ白になり、頭が火照る、手足や全身が震える、激しく発汗する、吐き気や目まいがする、などの症状が出る。
これらの症状は誰でも一度や二度は経験すること。多くの人はやがて慣れるに従って平気になっていく。これに対し、社会不安障害の患者では震え、発汗などの症状が極めて強く「プレゼンの際、手から汗が滴り落ちる患者もいる」(専門医)ほど。こうした症状は長く続き、しかも事前に出てくることから、そうした場面を避けようと、学校や会社に行けなくなる人もいる。中には人前で字を書くのが苦痛で、受け付けで記帳が必要な結婚式や葬儀に一切出たことがないというケースも報告されている。
発症のきっかけや年齢は人によってさまざまだ。「小学校の時、先生から急に当てられて」「就職後、初めての会議でのあいさつ」など。それまでむしろ活発だった子どもが、発症後、引きこもりがちになってしまうこともある。患者数も多い。精神疾患の中ではうつ病に次ぐ多さだという。
詳しい原因は分かっていない。最近の研究で脳の中で情報を伝える神経伝達物質のバランスが崩れ、恐怖や不安の感情に関係あるとされる扁桃体という部分が過敏となっていることなどが報告されているが、まだ解明には至っていないのが現状だ。
最近はちょっとしたことでも人前で話すことを要求されるなど、SAD患者にはつらい世の中だ。上島教授は「この病気が原因で、教育が受けられなかったり、恋愛や結婚ができなかったり、転職を繰り返したりと、人生そのものが大きなマイナスになることも多い。性格の問題とあきらめずに、きちんと治療に取り組むことが大切だ」と話している(H.18.2.13)


社会不安障害はどのように診断され、どう治療していくか、多くの患者の治療を手掛けている田島治杏林大教授に聞いた。
-診断法は確立されているのか。
「米国精神医学会によって診断基準がつくられており、M.I.N.I.という簡易問診票があるほか、重症度を診断する基準もある。実際には面接でじっくりと話を聞いている。ポイントは患者さんが自分の状態が異常であることをきちんと認識しており、症状が長期にわたっていることだ」
-うつ病などほかの病気との関係は。
うつ病やアルコール依存、パニック障害などほかの精神疾患が併発しているケースも多い。そうした病気にも対応しながら、治療することが大切だ」
-実際の治療は。
薬物療法が中心SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という種類の薬が専用の治療薬として認可されている。効果がすぐに出ないからといってあきらめず、じっくりと治療することが大事」
-薬物以外の治療法はあるのか。
認知行動療法といって、専門家の指導の下で患者同士がグループとなってこの病気を学んだり、みんなの前で話して人前に出ることに慣れるなどの治療法もあるが、日本ではまだ本格的に導入されていない」
-治療効果は。
「ある程度効果が出るのに3か月はかかり、十分な効果が出るのには最低でも9か月ぐらい必要と考えた方がいい。治療によって6割から7割が改善する。患者からは楽になった、人前で話すことが苦痛でなくなったなどの声を聞いている。多くの患者は人知れず悩んでおり、治療によって治る病気だと知ると、先行きに希望を持つようになり治療効果も高まる」(H.18.2.13)


ジェイゾロフト錠(25mg、50mg)

選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)
効能・効果:うつ病・うつ状態、パニック障害
通常、成人にはセルトラリンとして1日25mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し、1日1回経口投与する。なお年齢、症状により1日100mgを超えない範囲で適宜増減する。
*併用禁忌(使用しないこと)
MAO阻害剤
 塩酸セレギリン(エフピー)
ピモジド(オーラップ

ピモジドとの併用によりピモジドのAUC及びCmaxがそれぞれ1.4倍増加したとの報告がある。ピモジドはQT延長を引き起こすことがあるので本剤と併用しないこと。


サートラリン(sertraline hydrochloride)は選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)タイプの経口抗うつ薬である。うつ病、うつ状態、不安障害の治療に使用される。セルトラリンともいう。

塩酸サートラリンとしてゾロフト(Zoloft)の商品名でファイザー(Pfizer)より販売されている。日本においては、ジェイゾロフトとの商標で2006年7月7日より処方が開始された。なおアメリカ連邦食品医薬品局は1991年に承認している。

サートラリンは強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、パニック障害、躁うつ病にも用いられる。

サートラリンはファイザーにより生産され、小型緑色の25mg錠、青色50mg錠、または淡黄色100mg錠で流通している(H.18.7.27)


うつ病は「心の風邪」とも呼ばれる。決して珍しい病気ではなく、だれもがかかる可能性があるということだ。一人が生涯の間にうつ病になる確率は13~17%とも言われる。この心の風邪を「磁気」で治すという治療が最近、行われるようになった。石川県内では金沢医科大学の窪田助教授(精神神経科学)が取り組んでいる。
うつ病は文字通り、憂うつな気分をはじめ、興味や喜びがなくなったり、疲れやすくなるほか、食欲や性欲の減退、不眠などの症状が出る。「「心の風邪」程度のものもあるが、風邪だと思っていたら「心の肺炎」になることもある。早期発見、治療が大切だ」と窪田助教授は強調する。
なぜ、うつ病が起きるのか。原因として挙げられるのは、脳内の神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリンの減少である。さまざまなストレスが引き金となり、受験や就職、配偶者の死などのほか、出産や育児、結婚なども要因になるという。
基本的な治療の一つである抗うつ剤の服用は、薬剤でセロトニンやノルアドレナリンの不足を補うものだ。副作用の少ない抗うつ剤が登場しているが、困ったことに、二割程度、抗うつ剤が効かない人がいる。
そんな人にとって、効果が期待できるのが磁気刺激法である。磁気を発生する器具を患者の頭に当てるものだ。金沢医科大学では、10ヘルツの刺激を10秒間、60秒の間隔をおいて10回繰り返す。これを10~12日続けるのだ。
なぜ、磁気を当ててうつ病がよくなるのだろう。窪田助教授によれば、うつ病ではセロトニンなどが減少した結果、脳の左側にある「前頭前野」という部分の血流が悪くなる。そこで、頭の左側に磁気を当てる。すると、脳内に電流が起きる。その結果、血流が改善し、うつの症状もよくなるということらしい。
磁気を当てる際には皮膚に静電気のような刺激を感じ、まれに終わった後に軽い頭痛を覚える人もいるが、副作用はほとんどないそうだ。
国内では8年連続で自殺者数が3万人を超え、その原因の少なからぬ部分がうつ病とされる。団塊世代の大量退職を来春に控えているが、うつ病の原因として、仕事を離れた喪失感も無視できないという。
そうした中、抗うつ剤のほかに、磁気刺激という治療の選択肢があることの意味は大きいだろう(H.18.7.28)


石川県立中央病院泌尿器科で2006年4月に「性機能」専門外来が開設された。その部屋は泌尿器科の診察室から離れ、人目の付かない廊下の奥にあった。中へ入ると机と椅子、ベッドがあるくらいで、医療機器は見当たらない。専門外来を担当する島村泌尿器科部長によると、ここは「相談室」だという。
「本当のことを打ち明けにくいのか、最初は残尿感があるとか遠回しに話す人が少なくない。患者さんの八割はED(勃起障害)です」
県立中央病院が「性機能」に絞った専門外来を設けた背景には「バイアグラ」の登場がある。この薬によって性的に自信を失いかけた男性が殺到するのではないか。島村部長はそう考え、専用の診療スペースをかねて要望していたのだ。
患者のカウンセリングはときに一時間に及ぶこともある。さながら「性の相談室」である。専門外来が開かれるのは毎週金曜日。この4か月あまりで患者は延べ30人が訪れた。EDには糖尿病や高血圧、前立腺がんの手術による後遺症など、さまざまな身体的理由がある。
EDになると、男らしい気持ちがなくなり、日常生活や仕事まで自信を失ってしまう。こんな患者さんを今まで何人も見てきた」
失った男性の自信を治療で取り戻す。画期的な薬の登場で、男性があきらめるしかなかった「下(しも)」の問題が医療に委ねられる時代になったのである(H.18.8.23)。


青い菱形の小さな錠剤。ED(勃起障害)治療薬の「バイアグラ」である。1999(平成11)年に国内でも承認されたバイアグラは、医療の現場でどこまで浸透しているのだろうか。国内では輸入代行業者から入手したり、海外ツアーで購入する人が急増。道路脇の電柱には「バイ○グラ」といった伏せ字広告が氾濫し、偽造品が横行した。当時の厚生省はこうした野放し状態を重くみて医師の処方のもとで認めた。「バイアグラ狂騒曲」は今も収まらず、無許可販売やインターネットによる個人輸入が行われている。
「バイアグラを精力剤のイメージでとらえている人がいるかもしれないが、医師の処方なしでは危険だ。友人から譲り受けたものを飲んで死んだ人もいる」と金沢医療センター泌尿器科の越田医師は安易な個人使用に警鐘を鳴らす。男性器の血管を拡張するバイアグラは、狭心症などの治療薬と併用すると、急激に血圧が下がり、体に大きな負担がかかる。心臓の悪い人は飲めないのだ。
バイアグラの薬の持続時間は5時間だが、欧米では36時間の効果がある「シアリス」というED治療薬も普及し、一錠で週末いっぱい楽しめるという意味で「ウイークエンド・ピル」と呼ばれている。欧米では薬を使って性生活を楽しむことに抵抗感は少ない。この薬も今後、日本で認可される見通しだ。
バイアグラは今のところ保険の適応外となっている。病気治療薬というよりむしろ、生活の質の向上を目的とした「生活改善薬」という位置づけである。
欧米のように手軽に薬を使う時代が果たして日本でも訪れるのだろうか。「性の乱れ」というバイアグラのもう一つの「副作用」を心配する声は依然として根強い(H.18.8.23)。


不安はきわめてありふれた現象であり、毎日の生活において多彩な現れ方をする。将来の危険を警告し、それに備えさせるというプラスの面をもった不安から、生活の質(QOL)を低下させる病的な不安まで、いろいろなものがある。病的な不安が精神医学的に問題になる。病的な不安を中核症状とする疾患が不安障害である。大まかにいって一般人口の約10%が何らかの不安障害を有すると推定されている(H.18.10.22)。


不安の治療に、もっともよく用いられている薬物は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬である。即効性があり、不眠の改善と身体症状の軽減に優れている。5-HT1A受容体部分作動薬であるタンドスピロンは、ジアゼパムと同等の抗不安効果が認められている。依存形成や鎮静作用が少く副作用が軽微なことから、長期治療において有用性が期待できる。SSRIは、現在日本ではパニック障害、社会不安障害、強迫性障害などの不安障害にも適応が認められている。外国ではその他に全般性不安障害、外傷後ストレス障害にも認可されている国が少なくない。効果発現までに2~4週間を要することが多い。副作用のプロフィルからは長期治療での有用性が期待できる。三環系抗うつ薬のイミプラミンにもパニック障害、全般性不安障害への有効性が示唆されている。効果の発現は遅いが、服用開始3~8週間で効果が明らかになることが多い。副作用の問題で次第にSSRIに取って代わられてきた(H.18.10.22)。


これらの抗不安薬は、不安障害そのものを治癒させるのではなく、病的な不安がもたらす心身の症状の軽減を図るものであり、心理社会的治療と組み合わせることによって優れた治療効果が得られる(H.18.10.22)。


パニック発作は急性なものだが、パニック障害(PD)そのものは慢性の病気である。
そのため、長期にわたって薬の服用が必要となるが、使用する薬をどのように選択するかが治療の鍵となる。
薬の選択を誤ると、いつまでたっても効果は現れない。 

つまり信頼できる病院&パニック障害の知識と治療の経験が豊富な医師を選ぶことが最も大切なことであると言える。

以下に書いたものが、主に治療に使われる薬である。
PD完治の為には、薬の組み合わせ方が治療を左右するとも言われている。

≪抗不安薬(ベンゾジアゼピン作動薬)≫
コンスタン、ソラナックス、セルシン、ワイパックス、セレナール、メイラックス、レキソタン、エリスパン、リーゼ、デパスなど

脳の神経をしずめて、不安発作を予防する。心因的な不安や緊張感もやわらげる。
定期的に服用するほか、広場恐怖のあるときは外出時に頓服することもできる。

≪三環系抗うつ薬≫
トリプタノール、トフラニール、アナフラニールなど

古くからある抗うつ薬である。よい効果が期待できるが、副作用がやや出やすいのが欠点である。
また、効いてくるまで少し時間がかかる。
抑うつ症状があるときに向いている。

≪SSRI≫
デプロメール、ルボックス、パキシル

パキシルの飲み始めの吐き気は徐々に軽くなるので、それほど心配いらない。よい効果がでるまで少し時間がかかる。抑うつ症状をともなうときに向いている(H.18.10.31)

パキシル(塩酸パロキセチン)

効能・効果:うつ病・うつ状態
パニック障害
強迫性障害

【応用】
摂食障害、過食嘔吐、月経前不快気分障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害など、いろいろな心の不具合に応用されることがあります。
用法 うつ病・うつ状態..通常、成人は1日1回夕食後、パロキセチンとして20~40mgを経口服用する。服用は1回10~20mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。なお、症状により1日40mgを超えない範囲で適宜増減する。
パニック障害..通常、成人は1日1回夕食後、パロキセチンとして30mgを経口服用する。服用は1回10mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。なお、症状により1日30mgを超えない範囲で適宜増減する。
強迫性障害..通常、成人は1日1回夕食後、パロキセチンとして40mgを経口服用する。服用は1回20mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。なお、症状により1日50mgを超えない範囲で適宜増減する。


トレドミン(塩酸ミルナシプラン)

ミルナシプラン(塩酸ミルナシプラン)は、2000年6月5日に日本で最初に認可されたSNRI抗うつ薬である。

商品名「トレドミン」として旭化成株式会社とヤンセンファーマ株式会社から出荷されており、剤型としては15mg錠と25mg錠が存在する。

効能・効果: うつ病・うつ状態

セロトニンとノルアドレナリンの再吸収を阻害し、気分を楽にして、不安や不眠を緩和し、気分を前向きにさせる。うつ病などに効果をもたらす。また、抑うつ状態を改善させ、やる気を出させる為にも処方される。三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬と同程度の効果とSSRI並の低い副作用が期待できる。とくにSSRIが体質的に合わず吐き気がなかなかおさまらない場合にトレドミンに替えると吐き気が少なく、うつ病にも有効である場合がある。通常、1日投与量30mg程度からはじめ、漸増し、100mg程度を数週間から数ヶ月使用する。なお、うつ病などが治ったと感じても医師の指示を仰ぎ、勝手に服用を中止してはいけない。


ジェイゾロフト(塩酸サートラリン、セルトラリン)

サートラリン(sertraline hydrochloride)は選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)タイプの経口抗うつ剤である。うつ病、不安障害の治療にも使用される。セルトラリンともいう。

塩酸サートラリンとしてゾロフト(Zoloft)の商品名でファイザー(Pfizer)より販売されている。日本においては、ジェイゾロフトとの商標で2006年7月7日より処方が開始された。なおアメリカ連邦食品医薬品局は1991年に承認している。

効能・効果:うつ病、うつ状態、パニック障害

サートラリンは強迫性障害心的外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、パニック障害、躁うつ病にも用いられる。

サートラリンはファイザーにより生産され、小型緑色の25mg錠、青色50mg錠、(または淡黄色100mg錠)で流通している。サートラリンは無臭、白色でやや水に溶ける結晶である。最低有用投与量は50mg/日で、それ以下の量でもなんらかの効果が期待できることがある。50mgで十分な効果が感じられない患者に対しては、最大200mg/日まで投与量を増加させる事が可能である。

しかし、日本においては初期投与量25mg/日 最大100mg/日と規定されている。また、新薬扱いのため、最長14日分までしか処方されない。塩酸サートラリンに限らず、抗うつ剤は一般的にいって、一定量を超えて摂取しないと全く効果がないことが多々ある(H.18.12.27)


        デプロメール、ルボックス(フルボキサミン)

フルボキサミン
は主に抗うつ薬および強迫性障害ならびに社会不安障害の治療薬として、日本では「デプロメール®」(明治製菓)「ルボックス®」(アステラス製薬、発売当初は藤沢薬品工業)の商標で販売されている。日本で発売されたSSRIとしては初めての製品で、購入には医師の処方が必要である。SSRI を「ハッピードラッグ」として飲む人もいるが大きな誤りである。安易な服用は脳本来の機能を混乱させ、取り返しの付かない事態となることが有り得る。服用は医師(主に精神科・心療内科等)と、使用の可否、適切な処方量、副作用への対処を十分に話し合うべきである。

25 mg 錠と 50 mg 錠がある。黄色い小さな錠剤である。

用法用量

通常、成人には1日 50 mg を初期用量として、最大1日 150 mg まで漸増し、1日2回に分割して経口投与するのが一般的である。なお、年齢・症状に応じて適宜増減する。1日 150 mg を越える量での処方で目覚ましい効果があったという海外の医学誌での報告がある。

なお、薬剤が咽喉部で溶けると激痛に見舞われるので、飲むときは必ず多目の水で一気に飲んだ方がよい。舌下で溶かして服用する方法も、溶けた薬剤が口腔粘膜に激痛をきたすため、やめた方がよい。

効果が現れるまでの期間

およそ2週間と言われている。

副作用

主な副作用は、吐き気、頭痛、眠気、そして主に胃や肝臓などの消化器へのダメージである。その他にも少数例ながら各種の副作用が報告されている。 副作用がある場合は医師または薬剤師に速やかに相談するべきである。

血中濃度

健康な成人男性に 50 mg 投与した場合、最高血中濃度は5時間ほどで訪れ、血中濃度半減期は9時間前後である。

注意

向精神薬の使用は医師と十分相談した上で行うのが安全かつ無難であり勝手に量を増減するのは好ましくない(H.18.12.28)


2005年4月施行の発達障害者支援法では、言葉の発達遅れのほか、コミュニケーションがうまく取れない自閉症読み書きなど特定の分野を習得するのが著しく困難な学習障害(LD)、注意力や多動性を自分でコントロールできない注意欠陥多動性障害(ADHD)などと定義している。LD、ADHDには原則的に知的障害はないか軽度だが、自閉症の知的障害の程度はさまざまで知的な遅れや言語障害がないものは高機能自閉症、アスペルガー症候群などと呼ばれる。これらの障害は脳機能の障害が原因と推定されるが、詳しいメカニズムは分かっていない


小中学生の約6%ともいわれる学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害のある子どもの支援強化のため、文部科学省は2007年1月6日までに、2007年度から二年間で、専門の支援員を現在の2.3倍に当たる3万人に拡充する方針を決めた。支援員は子どもの食事やトイレの補助といった日常生活の介助のほか、黒板の読み上げ、教員の話を繰り返して聞かせるなどの学習サポートを行う。3万人への増員で、ほぼ全公立小中学校に1人の配置が可能となる。


発達障害のある子どもに適切な教育を行うことを規定した改正学校教育法が2007年4月に施行されることから、国や自治体は体制整備を迫られている。


発達障害は幼児期に発見すれば、障害の程度が改善されるケースも多いことから、全国10地域を指定し、5歳児健診などで早期発見に取り組むモデル事業を行う(H.19.1.7)


去る1月13日に、金沢医科大学と北國新聞社が主催して「もの忘れと認知症~その対応と予防について」と題したフォーラムが開催されました。このフォーラムで金沢医科大学精神科の地引教授が発言(講演)しておられるので、その要旨を掲載しました。

医学の世界ではもの忘れのことを「記憶障害」または「健忘」と呼びます。認知症はこの記憶障害だけではなく、「場所や時間が分からない」「注意力や持続力が衰える」「思考による判断ができなくなる」といったように、脳全体の認知する機能が落ちてきた状態をいいます。
良性のもの忘れと認知症の中間には、軽度認知障害というレベルがあり、認知症にも初期・中期・後期があります。この違いは臨床心理士による記憶テストで客観的に判断できます。また、長谷川式簡易知能評価スケールという簡単な検査でも調べられます。
認知症は、大まかにアルツハイマー病型認知症血管性認知症に分けられます。前者には、65歳以前に発症する早発性と、65歳以降に発症する晩発性があります。悪性なのは早発性で、晩発性に比べて進行が速く、症状も多彩で、遺伝的要素が強いのが特徴です。
一方、血管性認知症高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病によって動脈硬化が進み、血栓ができることで脳梗塞が起こり、発症するものです。
アルツハイマー病型認知症は、昔の出来事は覚えていても、新しい出来事が覚えられません。発症してからの出来事を覚えられない前向健忘も顕著に起こります。また、過去の体験的記憶であるエピソード記憶や、知識的な記憶である意味記憶もダメージを受けます。ただし、言われたことをすぐになぞる即時記憶や、自動車の運転技術などの手続き記憶は残っています。
全般的な認知機能も低下しますが、初期の段階では人格が保たれていること、運動麻痺がほとんど起こらないこともアルツハイマー病型の特徴です。
高齢になってくると脳の中に老人斑ができます。アルツハイマー病の人は老人斑が極めて多く、しかも特殊な神経毒性を持っています。老人斑の病的な異常がアルツハイマー病の原因だと考えられています。
この老人斑の異常は、βアミロイドタンパクというタンパクの合成に関する遺伝子異常で起こるという仮説が最も有力です。また、老人斑が酸化されると神経毒性を持ち、神経細胞を壊すという仮説もあります。さらに、アポリポタンパクE4という特殊なタンパクを合成する遺伝子を持っている人が、アルツハイマー病になりやすいという説も有力になってきています。
家族にアルツハイマー病の人がいると、アルツハイマー病を発症する例が多いことから遺伝性もかなり強いとされています。しかし遺伝がないのに発症する例も多く、環境的な要因もあると考えられます。もちろん、高齢も大きな危険因子です。
認知症には、アルツハイマー病血管性認知症のほかに、ピック病狂牛病(クロイツフェルトヤコブ病)などさまざまなものがあるため、診断は大変難しく、専門医でなければ正確な診断はできないと考えた方がよいでしょう。
認知症の治療薬としては、日本ではドネペジルという薬が使われています。これには注意力や記憶力の減退の進行を予防する効果がありますが、効果は一年ほどしか続きません。
そのほか、非ステロイド性抗炎症薬、女性ホルモンのエストロゲン、ニコチン類似体、酸化作用を抑えるビタミンEなども使われています。また、これからの治療法として老人斑を壊したり、その合成を抑制する抗βアミロイドタンパク療法も盛んに試みられてきています。
認知症は根本的な治療が難しいため、心理・社会的治療も必要です。現在起きている問題を環境調整で解決することや、芸術療法、音楽療法、レクリエーション、作業療法など脳を刺激する刺激療法で進行を抑えることが大切なのです。
認知症の診療は、早期発見を主目的とするもの忘れ外来や神経内科、高齢医学科、精神科、脳外科などで受けられます。認知症が疑われるときは、早めに短期入院をして、きちんとした診断や検査を受け、治療の方針を示してもらうべきだと思います(H.19.1.29)


慢性疲労症候群疲労感が半年以上続く。倦怠感や脱力感、頭痛、めまい、下痢、不眠、食欲不振などさまざまな自覚症状が出る。ただ、本人はつらいのに、検査では数値に異常は現れない。このため「異常なし」と診断され、病院をはしごする事例が少なくないという。2005年1月の金沢医科大学総合診療科の「疲労回復外来」の開設は、「行き場のない患者さんの「駆け込み寺」」とするためである。
疲労といえば、体を使った後に生じると思われがちである。が、慢性疲労は精神的な重圧など、さまざまなストレスが大きな原因と考えられている。ストレスが神経やホルモン、免疫の機能のバランスを崩し、疲れが抜けない状態に陥るのである。
疲労回復外来では、倦怠感を改善する漢方薬や、抗不安薬などを投与するとともに、患者からじっくり話を聞き、抱えているストレスを見極めて生活の助言を行う(H.19.2.16)


基礎試験の結果、アリピプラゾール(エビリファイ)ドパミンD2受容体に対して部分アゴニスト(パーシャルアゴニスト)として作用することが確認されている。アリピプラゾールはドパミン作動性神経伝達が過剰な場合にはドパミンD2受容体アンタゴニストとして作用し、低下している場合にはドパミンD2受容体アゴニストとして作用する。アリピプラゾールはこのような薬理作用を示すことからドパミン・システムスタビライザー(DSS)と称されている。また、アリピプラゾールはこのような薬理作用により、陽性症状や陰性症状を改善し、統合失調症に対して有効性を示すものと考えられている(H.19.2.16)


頭痛を主訴に外来を受診する患者は、緊張型頭痛が圧倒的に多いといわれてきたが、実際にはこれまで考えられてきた以上に片頭痛が多いことが明らかになってきた。15歳以上の有病率は緊張型頭痛22%、片頭痛8.4%とされるが、疼痛の程度は片頭痛のほうがひどく、日常生活に支障をきたす頭痛は主に片頭痛である。

最近、片頭痛治療薬の発展に伴い医療機関を受診する頭痛患者は増加しているが、その中で臨床的に問題となっているものに薬物乱用頭痛がある。片頭痛などの頭痛に急性期治療薬を連用することによって起こる薬物乱用頭痛の治療では、乱用薬物の中止が不可欠であるが、離脱療法を導入できても1年目までの再発率が高く、再発防止が大きな課題である。

薬物乱用頭痛
の患者は、早めに鎮痛薬を服用しないと薬が効かないという経験のため、痛みそのものよりも痛みに対する不安から連日鎮痛薬を服用しており、その対処行動の理解と行動変容への援助のためには心理社会的要因や行動科学的視点が必要になる。
治療には薬物の中止が不可欠であるが、単に断薬を指示しても離脱は困難である。過去のデータでは離脱療法の導入率は60~73%、5年のフォローアップスタディでは再発率が40%となっている。トリプタン製剤の乱用を含む最近のデータでは、離脱1年目の再発率が38%、4年までが42%との報告もあり、最初の1年の断薬に成功すればその後の再発リスクはかなり低くなると考えられる。また、再発率は原発の頭痛のタイプと乱用している薬物の種類に依存する。片頭痛よりも緊張型頭痛で再発しやすく(22%:73%)、エルゴタミン製剤やトリプタン製剤より鎮痛薬で(22%:19%:58%)リスクが高い傾向にある。つまり、適正なトリプタン製剤の服薬指導や予防薬による片頭痛の管理が成功すれば、再発はかなり防げると考える(花岡ら)(H.19.4.27)


金沢大学大学院医学系研究科神経精神医学の三辺義雄教授らは、精神疾患の一種である統合失調症の発症に、特定のタンパク質の遺伝子変異が関与していることを突き止めた。ノーベル生理学・医学賞を受賞した米マサチューセッツ工科大の利根川進教授らとの共同研究で、統合失調症患者の体内ではこのタンパク質の遺伝子配列に高い割合で変異が見られることを確認した。このタンパク質を「標的」にした新薬開発により、新たな治療法の確立が期待される。
統合失調症の発症原因は分かっておらず、脳内の神経伝達物質の一種である「ドーパミン」の過剰分泌が有力な仮説として唱えられている。利根川教授はドーパミンの作用を調整する「カルチニューリン」に着目し2003年、カルチニューリンのはたらきを止めたマウスが統合失調症に似た症状を示すことを明らかにした。
人体でのカルチニューリンと統合失調症の関連を探るため、三辺教授は2006年10月末から浜松医科大学附属病院と金沢大学医学部附属病院で、日本人の統合失調症患者と、その両親124家族の協力を得て遺伝子情報を収集。理化学研究所(埼玉)とともに、カルチニューリン生産などにかかわる14の遺伝子群を対象に解析を進めた。
その結果、4つの遺伝子群で、家族内でも患者だけが異なる遺伝子配列を持つ場合が多いことを見つけた。4遺伝子群が統合失調症の発症に深くかかわるとみられ、このうち3遺伝子群の存在と関与は世界でも初めての発見となった。
三辺教授によると、これらの遺伝子群に作用する薬が開発できれば、ドーパミンを抑える従来の治療薬では治らなかった患者にも効果が期待できる。統合失調症の発症に関係する遺伝子は、人種によって異なるともされている中、三辺教授は「今後の研究で日本人以外の患者でも同じような結果が確認できれば、世界共通の新薬が開発できるだろう」と話している(H.19.5.29)。


基礎試験の結果、アリピプラゾール(商品名エビリファイ)ドパミンD2受容体に対して部分アゴ二スト(パーシャルアゴ二スト)として作用することが確認されている。アリピプラゾールはドパミン作動性神経伝達が過剰な場合にはドパミンD2受容体アンタゴニストとして作用し、低下している場合にはドパミンD2受容体アゴ二ストとして作用する。アリピプラゾールはこのような薬理作用を示すことからドパミン・システムスタビライザー(Dopamine System Stabilizer ; DSS)と称されている。また、アリピプラゾールはこのような薬理作用により、陽性症状や陰性症状を改善し、統合失調症に対して有効性を示すものと考えられる。

エビリファイは3、6、12mg錠と散剤(1%)があり、「通常、成人には1日6~12mgを開始用量、1日6~24mgを維持用量とし、1回又は2回に分けて経口投与する。なお年齢、症状により適宜増減するが、1日量は30mgを超えないこと」となっている。「糖尿病又はその既往歴もしくはその危険因子を有する患者には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与することとし、投与にあたっては、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと」とある(H.20.1.3)。


2007年10月26日にコンサータ錠(塩酸メチルフェ二デート徐放剤)が小児の注意欠陥/多動性障害の治療薬として承認された。塩酸メチルフェ二デートは麻薬及び向精神薬取締法に基づく第一種向精神薬に指定されている薬物であり、また、同成分薬による薬物依存症乱用を目的とした不適切な使用が社会的問題となっている。本剤の適正使用・適正流通管理を図るため、コンサータ錠適正流通委員会が定める基準により、登録医師、登録医療機関、登録管理薬剤師、登録薬局をリスト化する予定であり、同委員会への登録申請には、「コンサータ錠登録者講習会」を受講することが必須条件のひとつとなっている(H.20.1.19)。


1..リタリン(ノバルテスファーマ社)の保険適応であった遷延うつ病、難治性うつ病が削除され、ナルコレプシーのみに限定されました。
2.注意欠陥/多動性障害について、塩酸メチルフェ二デートの治療薬として新しくコンサータ(ヤンセンファーマ社)が承認されました(適応は注意欠陥/多動性障害のみ)。
3.ナルコレプシー、あるいは注意欠陥/多動性障害を治療し、リタリンあるいはコンサータを処方する会員は自ら登録する必要があります(登録制度)。
登録資格としては、精神神経学会会員 但し臨床経験5年以上、精神科臨床経験3年以上、専門医制度が発足する21年以降には精神科専門医である必要があります。
塩酸メチルフェ二デートの依存に関する講習会へ出席し修了書を取得します(コンサータの場合)(H.20.3.1)。


非定型うつ病の患者さんが急増しています。抑うつ状態は数時間から数日にとどまり、自分に都合の良い出来事に対しては気分がよくなるため、単なる「ご都合主義」と思われたり、人格の問題やヒステリーと考えられることもあります。特徴は、鉛のように重い身体的重圧感の訴えや過眠極端な体重増加または過食、顕著な引きこもりなどで、通常のうつ病の反応と異なることが報告されています。通常の抗うつ薬の効果はあまり期待できません。最も有効とされるモノアミン酸化酵素阻害薬やドパミン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬は日本では使えず、気分安定薬少量の非定型抗精神病薬の投薬が行われています。
いくつもの抗うつ薬が効かず、そのまま治療が放置されている方は診断を再考する必要があります(H.20.4.18)。


2001年の池田小学校児童殺傷事件を糸口として、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った触法精神障害者の医療および観察等に関する法律である医療観察法が2005年(平成17年)7月15日に施行されてから満3年を迎えようとしている。本法の趣旨は触法精神障害者の治療すなわち病状の改善と、それにより再犯の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的としている。本法を概略的に述べると、まず対象者が心神喪失または心神耗弱を理由として不起訴処分おるいは裁判で無罪または減刑の判決を受けた場合、検察官の申し立てによって精神保健判定医(精神科医)による医療の必要性(治療反応性など)に関する精神鑑定が行われる。入院治療が必要か通院治療で良いかが決定され、いずれの場合も指定の医療機関でのみ行われる。通院治療の場合や入院治療後の退院の場合は、指定通院医療機関や保護観察所、市町村の3者が協議・連携して在宅の日常生活見守りや指導を行う。これらの処遇の決定は裁判官、精神保健審判員(精神保健判定医の中から選ばれる)、精神保健参与員(精神保健福祉士)の合議で行われる、従来の触法精神障害者の処遇は精神保健福祉法の措置入院制度にもとづき、精神科医のみがその責を担ってきたことをかんがみると、この医療観察法では裁判官弁護士精神保健福祉士保護観察所(特に生活環境調査を行う社会復帰調整官)などの多職種の人々が関与する。
現在、本法による指定入院医療機関として国公立病院14施設で354床が稼動しており、建設中を含めると400床が近々運用される予定である。北陸では富山県にあるNHO北陸病院の33床が平成18年2月に開設され稼動している。医療費は一般精神科入院の6倍以上、関与するスタッフも6倍近く、相当に手厚いケアが行われている。しかし一方では起訴や裁判の際の従来の精神鑑定と本法による鑑定とのくいちがい、「医療観察法による入院」というレッテルによる退院時の社会復帰の困難さや地域との摩擦、医療側職員のストレス過多などの問題点も多いという(H.20.6.1)。


K.Schneider(1939)は、統合失調症の実地診断上とくに重要な症状を一級症状としてとりあげた。(a)考想化声(b)会話形式の幻聴(c)自分の行為を批評する声の幻聴(d)身体的被影響体験(e)思考奪取、そのほか思考への干渉(f)考想伝播(g)感情、衝動や意志の領域における他からの作為や被影響のすべて(h)妄想知覚

Schneiderの一級症状は、幻聴、自我障害、妄想知覚の3つにまとめることができる。
妄想知覚は「(自宅の前を通る人を見て)、あれは自分の様子を窺っているに違いない」のように、知覚した事柄に異常な意味が付与されるものをいう。また例えば道を歩いているとき犬が吠えたのを聞き、突然「これは父親が死んだことを知らせているのだ」と確信するような場合である。


妄想知覚の特殊なものに替え玉妄想、カプグラ症候群Capgra's syndromeなどとよばれるものがある。これは人物誤認のうち、家族(夫、子ども)のように熟知している人物を、未知の人物で、しかも熟知している人物と瓜二つの人物(替え玉)と誤認するもので、女性に多く、統合失調症にみられることが多い(H.21.7.11)


統合失調症の診断は、ICD-10によれば、しかるべき(特徴的な)症状が、1か月以上、ほとんどいつも明らかに存在していなければならない。
妄想型統合失調症(F20.0)は臨床像は比較的固定した妄想が優勢であり、通常、幻覚とりわけ幻聴を伴う。発病は破瓜型や緊張型より遅い傾向にある。
破瓜型統合失調症(F20.1)は通常15歳から25歳までの間に発病し、「陰性」症状、とりわけ感情の平板化と意欲低下の急速な進行のため、予後不良となりがちである。
緊張型統合失調症(F20.2)は昏迷、興奮、拒絶症、ろう屈症などの行動のうち1つ以上のものが臨床像を支配していなければならない。
鑑別不能型統合失調症(F20.3)は上記のどの亜型(F20.0-F20.2)にも合致しないか、2つ以上の亜型の特徴を示す状態である。この亜型診断は精神病状態にのみ用いるべきであり、すなわち、残遺型統合失調症(F20.5)と統合失調症後抑うつ(F20.4)は除外される(H.21.7.13)。


アルツハイマー病の認知症(アルツハイマー老年認知症senile dementia of Alzheimer type)の素因については、一卵性双生児での一致率が42.8%であるのに二卵性では8%(カルマン)で、一卵性双生児での一致率は高くはないが二卵性双生児よりも高く、成因として遺伝素因がある程度関与することがわかる。
老年認知症の家系では、老年認知症の出現頻度は一般人口のそれよりもかなり高い(4.3倍)ことも遺伝素因の関与を示唆している。アルツハイマー病は大多数が孤発例であるが、一定の頻度で家系内発症がみられ、一部は強い家系内集積を示し、多因子病と考えられている


統合失調型障害schizotypal disorder
これは統合失調症の病型ではなく、ICD-10では統合失調症と並ぶ独立した項目として取り上げられているが、統合失調症に近縁なものとしてここに記載する。
統合失調型障害とは、統合失調症でみられるものに類似した風変わりな行動、思考と感情の異常などがみられるが、今までに統合失調症を特徴づけるような典型的な病態は生じていないものをいう。統合失調症の遺伝負因のある人にみられ、人格障害に類似しており、遺伝的には分裂病のスペクトルの一部をなすと考えられるが、明確な概念ではない。ICD-10ではこの診断は単純型統合失調症、統合失調質性あるいは妄想性の人格障害から明確に区別しがたいので、一般的使用は勧められないとされている(H.21.7.14)。


早発性アルツハイマー病の症状
まず初期には記銘・記憶障害、上機嫌などが現れ、物忘れや仕事の失敗が多くなる。その後、知的機能の全般的低下(痴呆)が次第に顕著になり、これに巣症状が加わる、巣症状、すなわち大脳皮質障害による高次脳機能の障害には失語、失行、失認などがあり、健忘失語、構成失行、着衣失行などが目立つが、特に地誌的失見当(視空間失認)が早期から著明に現れる。

言語障害として語間代logocloniaがみられることがある。これは語の中間または終わりの音節をけいれん様に反復するもので、例えば「ワタシ」と言おうとすると「ワタタ・・・」「ワタシシシ・・・」などとなってしまう。そのほか保続がみられることもある。全身けいれん発作も一部の症例にみられる。

中核症状を改善できる薬物は少ないが、最近アルツハイマー型認知症(ATD)ではコリン作動性細胞が脱落することから、アセチルコリン(Ach)の機能を増強するためにアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるドネぺジルが開発された。血管性認知症(VD)に対しては脳循環代謝改善薬が使用されるが、これらは主として周辺症状にある程度有効である。ATDでも周辺症状に対しては脳循環代謝改善薬が有用な場合がある。
脳循環代謝改善薬は、わが国では多数開発され使用されてきたが、最近厳密な再評価が行われた。現在使用できる薬物は、主として脳代謝改善作用(神経伝達機能を改善)をもつ塩酸アマンタジン、主として脳循環改善作用をもつ二セルゴリン(サーミオン)、イブジラスト(ケタス)、ビンポセチン(カラン)などだけである(H.21.7.15)。


早発性アルツハイマー病の症状を縦断的にみると
第1期は次第に記銘・記憶障害を中心とする知的障害が出現しはじめ、空間失見当、徘徊などが現れる時期。第2期には巣症状も顕著になり、保続傾向、筋固縮、けいれんなどが目立つ。第3期には寝たきりになり、失外套症状に近い状態になり、全身衰弱などで死亡する。
全経過は4~6年のものが多いが、1~20年にわたる。

早発性アルツハイマー病型認知症65歳より前に発症し、より急速に荒廃する経過をとり高次皮質機能障害を伴うアルツハイマー型認知症。ほとんどの症例で失語、失行が認知症の経過の比較的初期から認められる。
晩発性アルツハイマー病型認知症発症は65歳より後で、通常は70歳後半かそれ以降である。緩徐に進行し、記憶障害が主な症状である(H.21.7.16)。


多発梗塞性認知症multi-infarct dementia
脳の種々の部位に脳血栓症(脳梗塞)による脳軟巣や小出血巣が多発すると、種々の精神症状、神経症状が生じる。特に認知症が前景に立つ場合を多発梗塞性認知症とよぶ。
諸種の精神機能の低下が一様ではなく、記銘障害が高度なのに理解力、判断力が意外に保たれているなど、精神機能がところどころまだら状に保存され、人格の中核も保たれていることである。これはまだら(斑)認知症lacunal dementiaと呼ばれる。これは小軟化巣が斑状、散在性に分布するために生じる。人格変化、易刺激性、易怒、抑制欠如などがあり、特に情動失禁emotional incontinence、すなわち些細なことで容易に泣いたり怒ったりする傾向が特徴である。アルツハイマー型認知症に比べると人格の核心が保たれているのが特徴である。うつ状態せん妄状態を起こすこともある(H.21.7.18)


抗精神病薬
コントミン、ウィンタミン 精神科領域では1日50~450mgを分割経口投与。
レボトミン、ヒルナミン
ニューレプチル      通常成人1日10~60mgを分割経口投与。液は必ず希釈して使用。
フルメジン         通常成人1日1~10mgを分割経口投与。
フルデカシン        持効注25mg/1mL
                通常成人には1回12.5mg~75mgを4週間間隔で筋注。
ロドピン           通常成人1日75~150mgを分割経口投与。1日450mgまで増量できる。
ハロマンス、ネオペリドール
                持効注 50mg/1mL/1管
                通常1回量50~150mgを4週間隔で筋注。
トロペロン(チミペロン)  1日0.5~3mgより徐々に増量。1日3~12mg分割経口投与。注射あり。
オーラップ 1mg錠3mg錠通常成人には、初期量1~3mg、1日1~3回分割投与。症状に応じて4~6
                mgに漸増。最高9mgまで。維持量は通常6mg以下。
                (小児の自閉性障害など)1日1回1日量1~3mg。1日6mgまで増量可。
クロフェクトン(クロカプラミン)通常成人1日量30~150mgを3回に分けて経口投与。
ドグマチール(スルピリド)統合失調症1日300~600mgを分割経口投与。最高1日1200mg。
                うつ病、うつ状態1日150~300mgを分割経口投与。最高1日600mg。
                注射薬あり。
バルネチール(スルトプリド)躁病、統合失調症の興奮および幻覚・妄想状態。通常成人1日300~600mg
                1日1800mgまで増量できる。
リスパダール(リスぺリドン)通常、成人1mg1日2回より始め、徐々に増量。維持量は通常1日2~6mgを
                 原則として1日2回に分けて経口投与。但し1日12mgをこえない。
セロクエル(クエチアピン)通常、成人には1回25mg、1日2又は3回より投与を開始し、徐々に増量。1日
25mg錠、100mg錠、細粒 投与量は150~600mg。1日量として750mgを超えない。
ジプレキサ(オランザピン)通常、成人5~10mgを1日1回経口投与により開始。維持量として1日1回10
2.5、5、10mg錠      mg経口投与。1日量は20mgを超えない。
口腔錠5、10mg                
エビリファイ(アリピプラゾール)通常、成人1日6~12mgを開始用量。1日6~24mgを維持用量とし、1
3、6、12mg錠、散    回又は2回に分けて経口投与。1日量は30mgを超えない。    
ロナセン(ブロナンセリン)1回4mg、1日2回経口投与により開始し、徐々に増量。維持量1日8~16mg
2、4mg錠、散      1日量は24mgを超えない
ル-ラン(ペロスピロン) 通常1回4mg、1日3回より始め。徐々に増量。維持量として1日12~48mg。1
4、8mg錠         1日量は48mgを超えない。
エミレース(ネモナプリド)通常、成人1日9~36mg。1日60mgまで増量することができる。
3、10mg錠、細粒
ベゲタミンA(赤色錠)、B(白色錠)クロルプロマジン(A25mg、B12.5mg)、プロメタジン、フェノバルビター
                ルの合剤
(H.21.7.20)


エビリファイ(アリピプラゾール)

脳内でドパミンが過剰に放出されているときには遮断薬として抑制的に働き、逆にドパミンが不足しているときにはきドパミン作動薬として刺激する方向で作用します(ドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト)。同様に、セロトニンに対しても、調整的に作用することが示されています(セロトニン5-HT1A受容体パーシャルアゴニスト、セロトニン5-HT2A受容体アンタゴニスト)。

*適応外使用としてせん妄に使った症例報告が多くある。
*統合失調症では20mg以上使わないと基本的に効果がない。最高量30mg。
*適応外使用としてうつ病に使う場合はlow doseからが望ましい。(以上は大塚製薬のMRの話)


リスパダールについて
*6mg以下ではDopamineの遮断作用を、Serotoninが抑えるので副作用が出にくい。ただしアカシジアは非定型抗精神病薬のなかではもっとも出やすい。起立性低血圧の出現についてはかなり個人差がある。(以上はヤンセンファーマのMRの話)





            
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