妄想を育ててしまう人間の心。

最近の健康番組では、鬱病や痴呆症や依存症を取り上げる事が多くなりました。
特に私が気になったのは『鬱病の最初は物忘れ』という意外とも思える症状と、
『物忘れをした自分に都合の良い理由を考える』という心理状況です。

その番組で、私は我が子の妄想の発生に納得しました。
そうか、人間はプライドの高い生き物だから、物忘れの恥はかきたくないんだ。
だから、我が子は『父はスパイ』と言って失敗ではなく、妨害された事にしたんだ。
それが、我が子の考えた『自分に都合の良い理由』だったんだと悟りました。

そういえば、昔からキ印の人の妄想は荒唐無稽でした。
たとえば、古くは
『ラジオの電波が頭に入ってくる』とか『周囲の人が自分を監視している』とか。
最近では
『テレビで俺の事を放送している』とか『盗聴器がしかけられている』とか。
今後は我が子の『この世界はCIAのコンピュータのシミュレーション』の様に、
バーチャル空間の妄想が増えるのではないでしょうか。

我が子も最初は鬱病の治療を受けました。
でもその時、我が子は会社に抜擢されて500Kmも離れた所で働いていました。
我が子が鬱病治療している事は会社からも知らされませんでした。
勿論、我が子も鬱病の治療を行っている事など話しませんでした。
私達の知らぬ間に、我が子に『自分に都合の良い理由』が育っていたのです。

誰からも心の救護が受けられずに『自分に都合の良い理由』は固定化しました。
そして『都合の良い理由』は肥大化し、鬱病という病名が統失という病名に変わりました。
本質的に、人間の心には妄想を育てる芽があったのです。

考えてみると、認知症の症状も統失によく似ています。
自分で財布を置き忘れたり、自分から孫にお小使いをあげたのに、
『誰かがお金を盗んだ』と思い込み、自分の忘れた事も忘れてしまいます。

記憶力の低下する心の病の『自分に都合の良い理由』とは、
高いプライドから出た自己弁護だったのです。
それが判っていたら、私は我が子にもう少し違った対応が出来ていたかもしれません。

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