わたしのバリュー投資
1.バリュー投資とは何か
2.資産のバリュー:ベンジャミン・グレアムの手法
3.資産のバリューと収益・成長のバリュー
4.他のバリュー投資家との違い
1.バリュー投資とは何か
投資の手法には、バリュー投資のほか、グロース投資、パッシブ運用(インデックス運用)、チャート分析、テクニカル分析など様々なものがあり、皆さんも耳にしたことがあると思います。これらは前提となる株式市場の効率性についての認識や、それを受けた投資戦略の有効性についての考え方が大きく異なっています。それぞれの立場からいろいろな検証が試みられていますが、これまでのところ、そのどれか一つだけが正しいとか、どれかが間違っているということは証明されていないのが実情のようです。何が正しいかは時代や地域によって変わるのかもしれませんし、成功する投資手法は複数あるのかもしれません。
バリュー投資はそのような投資手法の一つですが、様々な理論的な研究や成功した投資家の実例などから、その高い有効性が示唆されています。バリュー投資の中身ですが、一般に次の3つの要素から構成されると言われています(「バリュー投資入門」、pp.3〜4)。
@株式の市場価格は短期的には大幅で気まぐれな動きをする。
Aそれにもかかわらず、株式にはその基礎となるファンダメンタルな経済価値がある(換言すれば、株式の市場価格と本源的価値<intrinsic value>は往々にしてかい離する)。
B市場価格が本源的価値を著しく下回った場合に株式を買うという戦略は、低いリスクで高いリターンを生み出す。両者のギャップは「安全性マージン(margin of safety)」と呼ばれる。
上記の3点を読んで、「何だ、当たり前のことではないか」と思われた方は、きっとバリュー投資に向いています。この3点は、少なくとも「多くの人(学者、アナリスト、投資家等)はそう思っていない」という意味において、当たり前ではないからです。長い投資期間の間には、株価の動きや自分のライフステージ・心理状態にもアップダウンがあります。決して平穏な道のりではありません。その際に、諦めずにバリュー投資を堅持し、最終的に高いリターンを確保できるかどうかは、つまるところ、この3条件を信じることができるかどうかだと思います。
2.資産のバリュー:ベンジャミン・グレアムの手法
上記はバリュー投資の基本型を示したものです。本源的価値の算出と安全性マージンの設定の仕方には多種多様のアプローチがあり、それによって様々なバリュー投資の類型が生まれます。このホームページで採用しているのが資産のバリューに基づくバリュー投資で、バリュー投資の創始者と言われるベンジャミン・グレアムの古典的な方法をベースとするものです。資産のバリューでは、バランスシートの資産勘定やバランスシートには計上されない様々な無形資産の価値を基に本源的価値を算出します。バランスシートには資産が簿価や時価で計上されていますが、必ずしも価値を正確に反映している訳ではありませんので、項目毎に掛目を設定したり、個別に評価を行なったりしていくことになります。
資産のバリューを算出する方法は多数考えられます。有名なのはベンジャミン・グレアムの「ネットネット株」でしょう。グレアムは、バランスシートの資産勘定において、流動資産の掛目を1、固定資産の掛目をゼロとして、ここから負債・資本勘定の負債を差引いた金額を本源的価値としました。工場・本社ビル、機械、土地、投資有価証券等を無価値と想定するのですから、相当に固い、保守的な見積もりです。グレアムは、さらに株式時価総額がこの本源的価値の3分の2以下である株式のことをネットネット株と呼び、有望な投資対象としました。
グレアムの本源的価値の算出方法を基にして、このホームページがとっている銘柄選定基準は、
@グレアムのネットネット株のほか、
Aバランスシートにおいて流動資産から負債を差引いた金額が株式時価総額を下回る株式(「3分の2を下回る価格」というネットネット株の条件を緩めたもの)、
B現預金以外の流動資産(売掛金や棚卸資産等)や固定資産に0から1の間の掛目をつけるとともに、ブランドや顧客基盤、特許等の無形資産にも一定の価値を認め、より実勢に近い本源的価値を算出し、時価総額がこの本源的価値の概ね3分の2を下回っている株式、
という3種類です。@とAはBのバリエーションの一つとも言えます。そして、全銘柄についてBの方法によって本源的価値を測定すればいいのでしょうが、それには手間と時間がかかります。場合によっては幾つかの資産項目について本源的価値の推計が難しく、測定誤差が大きくなる恐れがあります。そこで、@やAについては、価格が本源的価値から十分な安全域分だけ下方に離れた割安な株式であると考えるのです。時間的、精神的に余裕のない子育てパパ・ママには、特に活用しやすい基準だと思います。本源的価値の推計や安全性マージンの設定の枠組みは、基本的に銘柄によらず同じですが、ある程度はセクターの特性や企業の個別事情等に基づいて調整を加えることもあります。具体例については、銘柄分析のコーナーで取り上げていますので、ご覧ください。
売りについては、基本的に本源的価値を売却価格と考えます。この段階では@とAの銘柄についても、Bの推計を行う必要があります。ただ、その時々の経済や株式状況によって、株価が本源的価値に到達しないで反落しそうな場合や、逆に本源的価値を超えてさらに上昇すると思われるような場合、あるいは売却で得た資金で購入すべき割安な株式が存在しない場合などがあります。こうした場合には、あまり大幅にはならないように留意しつつ、売却価格を本源的価値から上下にずらすことも考えます。
3.資産のバリューと収益・成長のバリュー
さて、このバイ・アンド・ホールドでは資産のバリューにフォーカスを当てており、収益や成長というバリューを明示的に検討していませんが、これは収益や成長を無視しているということではありません。実は、資産のバリューと収益・成長のバリューは理論的には同じものと考えることができるのです。
一般に資産の価値は、工場・機械、店舗、土地などの有形固定資産であれ、有価証券であれ、あるいはブランド、顧客基盤、特許等の無形資産であれ、それが将来にわたって生み出すキャッシュフローを合計したもの(割引現在価値)となります。一方で、これらの資産は市場で売買され値段がつけられます。前者は収益(とその成長)という点からみており、後者は資産という点からみていますが、どちらから見ても同じものですから、キャッシュフローの予想や市場価格が合理的なものであれば、最終的には両者の価格はともに本源的価値に等しくなります。
もちろん、キャッシュフローの予想には様々な不確実性が伴ないますし、売買価格については市場が存在しないために推測しなければならない場合(例えば、買い手の見つけにくいような土地や売却が難しい中古機械の価格など)などがあるので、実際には常に厳密に一致するという訳ではありませんし、たまたま両者が同じ金額になったとしても、それが本源的価値からかい離することがないとも言い切れません。
それではなぜ資産のバリューの方を選ぶかというと、資産のバリューでは、バランスシートを中心に過去や現在の明確な情報に基づくため、本源的価値の試算が簡単であるうえ、精度も高いと考えられるからです。これが、多忙な共働きパパ・ママにお勧めの大きな理由です。もちろん、収益や成長のバリューを試算することも手間はかかりますが有益です。バイ・アンド・ホールドでは、収益のバリューや成長のバリューは資産のバリューの検算用として用いています。もし、資産のバリューと収益のバリューが金額的に大きく違ってしまうなら、分析のどこかで間違っているのではないか、と考え直す訳です。
4.他のバリュー投資家との違い
最後に、このサイトにおける資産のバリューに基づく投資と他のバリュー投資家との違いにも若干説明しておきたいと思います。まず@ウォーレン・バフェットについてです。彼はバリュー投資家の間でも人気が高いのですが、バイ・アンド・ホールドでは、バフェットの成長力のある企業を妥当な価格で買う、という手法はとりません。この手法は将来を見通す高い洞察力に加え、時間的な余裕が必要だと思われるからです。次にA行動ファイナンスの理論についてです。これも最近とても人気があるのですが、行動ファイナンスは投資家心理・行動のバイアスに焦点を当てた、いわばテクニカルな分析であると考えられるため、参考にとどめています。程度問題ではありますが、あくまでグレアム流のオリジナルなバリュー投資、資産というファンダメンタルズに基づくバリューにこだわっています。グレアムの基準は、経済・株価状況やセクター等に依存しない普遍性の高いもので、もし忍耐強くそれを守ることができるならば、行動ファイナンスで得られているような知見を参考にしなくても良いと考えられます(ただ、それが難しいので、わたしも、行動ファイナンスの理論の一部については、株式格言とともに、精神訓として活用しています)。
一方で、部分的にはピーター・リンチの投資哲学や手法を取り入れています。例えば、@本源的価値の算出にあたっては、財務諸表に加え、企業の実地調査を行なうこと(この点は、是川銀蔵の住友鉱山株等への投資もとても参考にしています)、A共働きパパとして大人向けと子供向けの両方の商品やサービスに詳しいという消費者としての強みを活かして、身の回りの出来事から銘柄選択のヒントを得ること、Bグレアムは投資対象としては避けた赤字企業を含む業績回復株への投資を行なうこと、などです。