コラム
(はじめに)
2005年初からコンテンツ作りを始めましたが、子育てパパとしてなかなか時間が工面できず、4月になってようやく一応ホームページらしい形が整い、一部のバリュー投資家の方にはご挨拶をさせて頂いたところです。最後に登場となったのがこのコラムです。バイ・アンド・ホールドという投資スタンスをとっているため、短期間にはコラムとして書き込むほど多くの株式売買を行わないこともあり、ここでは売買やパフォーマンスの動向についてのコラムのほか、投資や経済に関する一般的なコラムも掲載していきたいと考えています。
◇バーゲン相場の終わり2005年9月27日
バイ・アンド・ホールドでは、ベンジャミン・グレアム、ピーター・リンチ、是川銀蔵などの投資に学んでいますが、基本的に自主自立の運用を貫いており、現在の投資家やファンドをあまり参照しません(そうした時間的余裕がないのが実情ですが)。
そんな中で「さわかみファンド」は例外で、さわかみファンドのフォルダーとして、澤上篤人氏の投資哲学、運用スタイル、銘柄選別などに大いに共感し、参考にしています(もちろん、参考にしつつも、実際には自分に合うと思われる運用をしています)。このため、パフォーマンスの評価の一つの参照値として、TOPIXに加え、さわかみファンドも取り上げています。
さわかみファンドは、これまで、相場状況が極度のマイナスな中、日本経済・企業の復活を展望し、将来の納得(リターン)のために、現在の不納得を承知で断固とした買いを続けてきました。その大局観は変わらないものの、情勢判断には少し変化が生じたそうです。
すなわち、さわかみファンドの第6期(2005年8月23日決算)運用報告書において「バーゲンセール相場は終わり、運用として次なるステージに入ってきた」(4ページ)との認識を示しています。これは、「『堅実に成長する企業業績に沿った株価展開』を超えてくるような株価の暴騰が多少なりとも見られるようになって来」たからだそうです。その上で、今後は、「運用方針の大局は『買い』ですが、暴騰している企業に対しては、少しずつ丁寧な売りを続け、ポートフォリオの構築を進めて行く」こと、すなわち「大胆な買い、丁寧な売り」を実践するとしています。
バイ・アンド・ホールドも、今年入り後は同様な認識を持ち、投資総額でみた買い増しトレンドを維持しながらも、1〜3月頃と7月以降は、売り優先スタンスで臨み、市場価格(株価)が本源的価値を超えてきたような銘柄を結構売り切りました。今後は、ポートフォリオを入れ替える、という観点をますます重視していくつもりです。
ところで、さわかみファンドが第6期にポジションを減らした銘柄の一つにゼンリンがあります。運用報告書では個別の売買理由は記述されていないので、詳しいことはわかりませんが、バイ・アンド・ホールドも売却した銘柄です。バイ・アンド・ホールドとさわかみファンドでは、保有銘柄の重なりが必ずしも多くはないだけに、その中で売却時期が同じになることは稀だと思います。それで「ひょっとして、さわかみファンド」と同じ判断ができたか、と少し喜びました。
もちろん、バリュー投資の根本には自主自立がありますから、他の投資家の判断や行動に容易に影響を受けることは避けることが大切です。ただ、気分的には少し嬉しかったですね(^○^)。
◇株主優待 2005年9月13日
9月期末が近づいてきたということもあり、今日は株主優待について取上げてみたいと思います。優待狙いの株式投資の話はよく聞きますが、皆さんはどう思いますか?
このサイトのトップ・ページにあるとおり、バイ・アンド・ホールドでは、投資の目的としてファイナンシャル・インデペンデンスや社会貢献などを考えており、いずれもリターンを上げることがその前提となります。この点からすると、優待そのもの、あるいはそれを利回り換算した優待利回りを狙って、株式投資をするというのは、必ずしも合理的でない面があり、邪道と言えるかもしれません。例えば、普通に運用すれば15%のリターンが期待できる時に、利回り換算で5%の株主優待を得るために資金を投入するのは無駄使いではないでしょうか。勿論、株主優待は配当やキャピタル・ゲインに比べ安定的に得られるリターンである、すなわちリスクが低いと想定すれば、その分だけ利回りが低くなってもよい訳ですが、そう言えるでしょうか。
バイ・アンド・ホールドが尊敬している投資家の中では、厳格なグレアムなら眉を潜めるかもしれないと思う一方で、遊び心のあるピーター.リンチなら許してくれるだろう、などと想像してみましたが、どうでしょうかね。
生身の人間としては、魅力的な優待があるとついつい魅かれてしまうのは事実です。例えば、外食の無料優待券などは魅力的ですよね。バイ・アンド・ホールドでは、株主優待関連銘柄として、居酒屋・天狗を展開しているテンアライドなどを保有しています。テンアライドでは千株保有者に対して3月末と9月末に1万円の優待券を配布しており、現在の500円前後の株価を基にすると、利回りに換算して約4%となります。子育てパパであるバイ・アンド・ホールドはほとんど飲みには行けないのですが、両親にプレゼントするなどして活用しています。
もちろん、優待に目が眩んで、割高な銘柄やリスキーな銘柄に引っ掛からないように注意する必要があります。それで魅力的な株主優待を提供している企業の中から、なるべく財務状態が良く、業績不安の少ない銘柄を選ぶことにし、投資額も限定しています。この点からすると、テンアライドは新興の居酒屋チェーンなどに比べて、株式市場で注目されることは少なく、成長性でも劣りますが、株主資本比率が高く、相応の健全性を有していると考えられます。
株式投資においては、自分の中にある「欲望」と「恐怖」とうまく戦って、極端な心理状態に陥ることなく、いかに冷静・合理的に銘柄の選別を行なうか、が成否を分ける大きなポイントでしょう。株主優待は、無料券やギフトなど、配当や値上がり益という金銭とは違った形で、投資家の「欲しいな」という気持ちをくすぐるので、それをうまくコントロールしていけば、投資力の幅も広がるかもしれません。
◇ワールドへのMBO 2005年9月6日
大手アパレル・メーカーのワールド(東証1部)が日本初のMBOにより上場廃止となるようです。バイ・アンド・ホールドはワールド株を保有していましたが、先週、市場で売却しました。
ワールドを最初に購入したのは5、6年程前ですが、実は、必ずしも割安であると評価していた訳ではありませんでした。当時、バイ・アンド・ホールドは、バリュー投資を中核としつつも、他の投資手法も実験的に試していました。ワールド株は高PER、高PBRで、どちらかというとグロース株的性格を有しており、またブランドという本源的価値を算出しにくい無形資産を有していました。こうした株にどう向き合ったらいいか、実戦で試してみたい、という気持ちがあったのです。
何度か売買を行い、結果としてまずまずのリターンを得ましたが、わかったことは、やはりバイ・アンド・ホールドにはバリュー投資の方が「しっくりくる」ということです。ここ数年はボックス相場が続いていたのでホールドしたままでしたが、最近はバリュー投資に専念しようと思うようになっていたので、MBOを契機とするプレミアム付価格での売り切りは丁度良いタイミングだったと思います。
ワールドは、ビジネスモデルとしては、製造から小売りまでを一貫して手掛けるSPA(製造小売り)の先駆的成功者であり、その革新性、正確性には定評がありました。ビジネスモデルには様々なものがありますが、この製造小売り、より一般的には、ITを活用した垂直的統合戦略は、その中でも極めて有効なものの1つだと思います。これは、現在ではバイ・アンド・ホールドが企業調査、銘柄選別を行なう際の一つの大きな着眼点となっています。
◇夏休みとサマーラリー 2005年8月25日
2ヶ月ほどご無沙汰してしまいました。6月末からパソコンの具合が悪く、なぜかサイトの更新ができなくなり、困っていました。そうこうしているうちに、子供が夏休みに入り、イベント続きで時間がとれなくなってしまいました。失礼しました。
今年の夏は、長めの旅行として、山へはキャンプ、海には海水浴&カニ・ヤドカリ取りに行きました。普段忙しいだけに、家族で過ごす貴重な時間でした。楽しかったです。このほか、近場では、夏祭りや遊園地、博物館に出かけました。快晴猛暑という日が多く、少しバテましたが、夏らしい夏はいいものです。家でかき氷を作ると、子供は大喜びしましたね。
さて、投資の方では、夏季相場は上昇続きでした。3月頃の高値を更新する銘柄が相次いだので驚きました。今年は本当に強いですね。こうした中、バイ・アンド・ホールドでは、基本的に、6月までは買い、7月以降は売り、というスタンスで臨みました(といっても長期保有が中心なので売買は少なく、さじ加減程度の話です)。買いは、中西製作所、日本ファイリングの買い増しなどで、売りは、キムラユニティ、ゼンリン、ノザワの売り切りです。売却銘柄は、いずれも3〜4年超保有し、ようやくターゲット価格に達したものです。十分なリターンを得るには時間がかかるものです。ノザワについては、石綿問題で急騰をみましたが、これは全く想定外のことでした。
当面は、売り優先で、キャッシュポジションを高めに保ち、何かの要因で下げた銘柄があったら買う、という方針で行くつもりです。
◇セントラルユニットへのTOB 2005年6月28日
今年はTOBの当たり年なのか、保有株の中から東急ロジスティックに続き2件目が出ました。今回は、ジャスダック上場の医療機器メーカー、セントラルユニットで、元社長の増田氏率いる投資組合によるものです(6月3日公告、買付期間:6月3〜23日)。提案によれば、セントラルユニットを単なる医療機器の提供ではなく、病院向けのトータル・ソリューション企業として事業の再構築を進めるとの戦略を打ち出しており、経営陣ほか幾つかの主要株主が賛同を表明しています。買付け価格は、過去1ヶ月の最終価格に12%のプレミアムを付した705円です。
さて、東急ロジスティックのTOBの際には、市場価格がTOB価格へ鞘寄せされる中で売却したバイ・アンド・ホールドですが、今回はどうしたと思いますか。答えは、ホールドです。
理由は、第1に東急ロジスティックと異なり、「過半数の株式を保有する親会社が存在しそこがTOBへの応募を決めている」というような決定的な状況ではないことです。こうした状況では少数株主はどうしようもありません。これに対し、セントラルユニットの場合には、目論見書によれば、買付け予定株数は発行済株式数の約10%で、その通りの買付けが行なわれた場合、特別関係者の保有率は約3割にとどまるそうです。また、「企業再編による対象者の上場廃止も視野に入れております」という説明が書いてありますが、どの程度確実な話なのかはっきりしていません。
バイ・アンド・ホールドには、主要株主の全てがTOBに賛同を表明している訳ではなく、必ずしも目論見通りにいくとは言い切れない、と思えました。また、もし目論見通りに行って、経営改革が成功し、企業価値そして株価が上昇した場合でも、上場廃止までに時間があれば、TOB価格を上回る価格での市場売却が可能かもしれないと思いました。
第2に、プレミアムが必ずしも十分でないと考えられることです。一般にTOBによるプレミアムは3割が相当と考えられることが多いようであり、12%はやや小さめのように思われます。セントラルユニットの本源的価値からしても705円というTOB価格は少し評価が低いように思われます。もちろん、いつ起こるかわからない株価上昇(本源的価値への回帰)を待つのではなく、相応のリターンを現時点で実現するというのもとても魅力あることですので、要はそのバランスということになりますが。
上記の点は、あるいはよく調べれば答えが見出せる問題かもしれません。しかし、バイ・アンド・ホールドはM&Aの専門家という訳ではなく、また調べるのに時間がかかりそうなこともあり、ごくシンプルに考えてみました。結果がどう出るかはわかりませんが、投資で重要なことは、自分のスタイルを貫くこと、別の言い方をすれば自分の得意でない分野に安易に首を突っ込まないことだと思います(「生兵法は大怪我のもと」)。
いずれにしても株式市場でTOBが活発化するということは、割安に放置された株式が見直される機会が増えていることだと考えられます。バリュー投資家にとってはチャンスが広がっているのではないでしょうか。
◇バリュー投資と株式価値 2005年6月18日
今回はオーソドックスなファイナンス理論とバリュー投資の関係を少し考えてみたいと思います。両者を比較することでバリュー投資の特徴がより明確になると思います。なお、ファイナンス理論のテキストはいろいろありますが、今回取上げる企業価値については、例えば「資本市場とコーポレート・ファインス」(新井・渡辺・太田著、中央経済社、1999年)などがよく整理されており参考になると思います。
さて、バリュー投資において根幹を占める概念の一つが株式の本源的価値(intrinsic value)です。これは、ファイナンス理論では、株式価値ないしは企業価値と言われるものです。企業価値は株式価値と負債価値を足したものですが、負債価値はあまり大きく変動せず、企業価値が増えれば株式価値も増えることが多いこともあって、慣例的に同様の意味で使われることがあるようです。
興味深いのは、ファイナンス理論における割引配当モデルやキャッシュフロー割引モデルのように、株式価値を将来キャッシュフローの割引現在価値として「理論的に」把握できるという考え方は、バリュー投資家、グロース投資家、あるいはパッシブ投資家にも受け入れられていることです。バリュー投資家では、グリーンウォルドやバフェットなどがそうで、例えばグリーンウォルドは「どんな投資対象の資産といえども、その本質価値は、資産がその所有者に対して分配できるキャッシュフローの『現在価値』(present value)によって決まるということは理論上広く認められている。」(『バリュー投資入門』、p.37)とはっきり述べています。
その上で、バリュー投資家が問題とするのは、理論的に正しくても、実際にそれを用いることが難しく、投資実務には役立たない点です。再びグリーンウォルドの言葉を借りれば、「理論的に正しいものが、実務的にも本質価値を見つける手段としてふさわしいモデルを提供するというわけでは必ずしもない(おそらく現在価値分析の実務的な価値は割り引いて考えるべきであろう)。」(同上、p.38)ということになります。特に、将来配当・キャッシュフローや資本コストを正確に計測することはプロでも大変です。この難点を解決するために、バリュー投資家は資産のバリューや収益のバリューなどの株式価値の代理変数を考案し、利用しているわけです。
このように見てくると、バリュー投資とは本来、正統なファイナンス理論と完全に矛盾するものではないし、一種の簡便法であるということがわかると思います。バリュー投資の経験のない方の中には、投資の世界では必ずしも多数派ではないバリュー投資に不安や疑問を感じる人がいるかもしれませんが、案外と理論的にもしっかりした考え方で、信頼の置ける投資戦略だと言えるでしょう。
また、バリューの測定はもともと便法ですから、時間をかけて細かいことに拘ったり、厳密さや正確さを血眼になって追求するようなものではないと考えられます。むしろ、のんびりゆったり構えて、要所高所から判断するのが王道だと考えられます。こうした点を踏まえ、子育てパパとして投資にあまり時間をかけられないバイ・アンド・ホールドでは、投資戦略の中ではバリュー投資、そしてバリュー投資の中では最もシンプルな資産のバリューに基づく投資を行なっています。
◇投資コラム 2005年6月10日
5月は総じてボックス相場で、バイ・アンド・ホールドでは、売り買いともとても静かでした。仕事などが忙しかったので丁度良かったかな(笑)、と思ったところです。今月の主な売買は、名古屋電機、山本化成の買い増しとTOBを受けた東急ロジスティックの売却でした。
ボックス相場からトレンド相場、あるいはトレンド相場からボックス相場への転換を予想することはできませんが、経験的には、年に何回かそうした局面が訪れるようです。バイ・アンド・ホールドのバリュー投資では、相場動向にはとらわれず、ひたすらターゲット価格(本源的価値マイナス安全域)まで下がったら買い、本源的価値まで上昇したら売りというシンプルな行動を愚直に繰り返すので、今はの〜んびり待つだけです。
◇是川銀蔵のバリュー投資(2) 2005年5月28日
今回は、是銀が「投資人生のまとめ」とした「投資五ヵ条」についてです。
@銘柄は人が奨めるものでなく、自分で勉強して選ぶ
A二年後の経済の変化を自分で予測し大局観を持つ
B株価には妥当な水準がある。値上がり株の深追いは禁物
C株価は最終的に業績で決まる。腕力相場は敬遠する
D不測の事態などのリスクはつきものと心得る
「投資五ヵ条」は、是銀さんの投資戦略がバリュー投資であることを、「カメ三則」より具体的に示していると思います。BとCは、皆さんご存知のグレアム流バリュー投資3原則の最初の2つに当たります。
バリュー投資の中でも、@とAが是銀の銘柄選別方針に関する特徴でしょう。@については、「だいたい、人の意見や新聞、雑誌の記事で儲けようという精神そのものがすでに失敗のもとだと私はいいたい。自分で努力せず、骨折らずに勤めの片手間で儲けようということではうまくいくはずがない」と強調しています。バイ.アンド.ホールは、子育ておよび仕事と平行して株式投資を行っており、銘柄選別についてはわたしのバリュー投資で挙げた3つの数値基準に依拠しています。ただ、銘柄選別にあたっては、子育てを通して得た自助・自立の精神と根気・長期的視野を最大限に活用していますので、少しマシな「片手間」かな程度に思っていますが、是銀の真剣さはとても足元にも及ばないところです。
また、Aについては、「大筋の判断ができた時、将来よくなる業界の会社の動きを『四季報』を参考にして調べる。会社の内容、収益力などを比較して、ベストと思われる会社の株を買っておく」とトップダウン・アプローチを説明しています。この点、バイ.アンド.ホールドは、セクターにはあまりこだわらず、またボトムアップ・アプローチをとっており、是銀とは戦略が異なります。ただ、上記の銘柄選定基準を用いると、これまでのところ、結果的に、一つのセクターで割安と位置付けることができた企業はせいぜい1、2社でした。是銀のように将来予想がうまくできるようになることは夢ですが、その前提として是銀の言う「毎日、継続して注意を集中する」ことができるようになるのは、子育てが一段落するずっと先のことになりそうです。
◇東急ロジスティックへのTOB 2005年5月21日
今月17日、バイ・アンド・ホールドの持ち株のひとつである東急ロジスティックに、ジャスダック上場のエスピーエスによる公開買付が公告されました。買付価格は1株593円と過去3ヶ月の平均株価に約30%のプレミアムを加えた金額だそうです。
東急ロジスティックは親会社の東急電鉄が約半数の株式を保有しており、東急電鉄がこの持ち株をエスピーエスに売却することを決めました。また、東急ロジスティックの取締役会は、公開買付への賛同を表明しており(それ以外に手はないでしょうが)、株主には上場廃止の可能性もあることから、公開買付への応募を推奨しています。
TOBがまず間違いなく成立すると考えられるため、少数株主には買付に応じるか市場で売却するかしか選択はなさそうです。バイ・アンド・ホールドが、東急ロジスティックを割安だと認め、購入したのは、2003年7月で、当時の株価は350円ほどでした。2年弱で約7割の上昇なので、まずまずリターンと言えますが、本質価値との対比で考えると、上場が維持されればもう少し上を展望できたかもしれません。いずれにしても、4月以降の調整で割安な銘柄が増えている局面だけに、貴重なキャッシュです。じっくり考えて、有功に活用したいと思います。
◇是川銀蔵のバリュー投資(1) 2005年5月15日
今回は、バイ・アンド・ホールドがベンジャミン・グレアム、ピーター・リンチと並んで尊敬する是川銀蔵氏、いわゆる“是銀”について少し紹介したいと思います。
是銀というと皆さん、どのようなイメージをお持ちでしょうか。「最後の相場師」「株で長者番付日本一」などが多いのではないでしょうか。しかし、その投資手法については、必ずしも評価が定まっていないようです。例えば、「偉大な投資家たちの株の買い方売り方」(宝島社、2004年6月)では、グロース分析、バリュー分析、ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析の4つのカテゴリーに属する投資家をそれぞれ紹介していますが、その中で是銀は、テクニカル分析に位置づけられています。もちろん、4つのカテゴリーは必ずしも互いに相容れないものではありませんし、是銀には、経済の循環的な変動を重視するという、テクニカル分析的な側面もみられます。それでも、私には、是銀の投資手法の本質は、ファンダメンタル分析に基づくバリュー投資にあるように思えます。
是銀には、グレアムの「賢明なる投資家」やリンチの「株で勝つ アマの知恵でプロを出し抜け」などに匹敵する投資に関する名著とも言える「相場師一代」(小学館文庫、原題「自伝波乱を生きる」講談社)という本がありますので、以下では、「相場師一代」を頼りに、是銀のバリュー投資について考えてみたいと思います。
まず、是銀の投資法として有名な「カメ三則」を取り上げましょう。これは、
@銘柄は水面下にある優良なものを選んでじっと待つこと
A経済、相場の動きからは常に目を離さず自分で勉強する
B過大な思惑はせず、手持ちの資金の中で行動する
というもので、是銀が昭和35年に株式投資を再開した時に掲げた方針です。@はまさしくバリュー投資の根本原則ですし、Aはバリュー投資をファンダメンタルズ分析に基づいて行うことを示していると言えるでしょう。@について、是銀は「相場道の極意を説いた、『人の往く裏に道あり花の山』の訓にあるように『連れなき方に赴く』という道である。」との解説を加えており、逆張り的な意味合いも持たせていたようです。
カメ三則で注目すべきは「カメ」と名づけている点です。是銀は「ウサギは自分を過信しすぎて勝負を急ぐあまり途中で没落していく。一方、カメは遅いようでもちゃんとゴールに入っている。...カメになった心境で、じっくり時間をかけて買うことだ。」とバイ・アンド・ホールド戦略で臨む姿勢を打ち出しています。
こうしたカメ三則を用いて、思い切った勝負に出たのが、昭和51〜53年の日本セメント株への投資です。マクロ的には、オイルショックやロッキード事件などの経済・政治面で大きな混乱があり、ミクロ的にも日本セメントは赤字決算、減配で、株価に先安感が強かった時期です。最近で言えば、2002年後半から2003年前半の状況に似ているというところでしょうか。そうした中で、是銀は手持ちの資金6億円全てを日本セメントに投入します。この局面での、バリュー投資、バイ・アンド・ホールド投資、フォーカス投資ですから、相当の自信と忍耐力が必要だったと思います。
ここで是銀を支えていたのは、自ら行う驚異的とも言える量のリサーチだと考えられます。日本セメント株投資の場合には、政治情勢、財政政策、セメント業界の需給構造、業界内における日本セメントの位置・特色等を徹底的に調べ上げ、株価急騰を確信します。結局、是銀の判断は的中し、100円台前半で購入した株を300円台で売却し、「30億円という巨額の儲けを手にする」ことになるわけです。
◇投資コラム 2005年5月5日
年初からの上昇相場は3月後半以降、米国株安や中国デモなどを契機に反落しています。バリュー投資家にとっては久々に買いのチャンスが期待できるところです。もっとも、バイ・アンド・ホールドで注目しているバリュー銘柄をみると、それほど下げてはおらず、なかなか買いレンジにまでは至ってくれません。このところ下げ相場が少し強調されすぎているような気もしています。この一つの背景に、高安値の目処は、3月までが「昨年来」高安値であるのに対して、4月からは「年初来」高安に変わることがあるのではないでしょうか。4月が下げ基調である場合、年初来安値が続出することになるため、年初来安値更新という投資家には嫌な表現が量産されて、弱気を誘っているように思えます。
したがって、買い意欲はたっぷりなのですが、4月のめぼしい売買は、銘柄分析でも取り上げた名古屋電機の買い増しぐらいです。名古屋電機は、4月25日に2005年3月期の業績を上方修正して、現在は、少し強含んでいますが、引続き割安と判断できると思います。なお、この機会に短期的な業績変動に関する考え方を述べますと、バイ・アンド・ホールドでは、資産のバリューに注目して本源的価値を算出しているので、例えば、ある期の当期利益が上方修正されたといっても、通常はあまり気にしません。たとえ大幅な上方修正であったとしても、ストックである本源的価値の水準はフローである利益の水準よりずっと大きく、ある期の利益が変化しても、本源的価値はそれほど大きく変わらないことが多いためです(そして業績修正をフォローする時間的余裕がないためでもあります)。注目することがあるとしたら、業績修正が資産の本源価値に重大な影響を与える場合などに限られます。
◇子育てと四季報:私の経験 2005年4月26日
子育てとバリュー投資の関係にも書きましたが、この2つはとても親和性があります。子育てと四季報もその一つの例と言えますが、子育てのスキ間時間と四季報に基づくファンダメンタルズ分析の相乗効果について、私の経験をご紹介します。
さて、赤ちゃんの時は、ミルクを作って飲ませたり、オムツを替えたり、あやしたりと結構世話をすることが数多くあるものです。また、赤ちゃんは、暑いとか寒いとか、居心地が悪いとか、抱っこをして欲しいとか、いろんな理由でよく泣き、ママやパパを呼びます。それで、こまめに動き回ることになるのですが、ずーっと働きっぱなしというわけではありません。空き時間も結構あります。そんな時、皆さんは何をされているのでしょうか。
もちろん、家事をしたり、コーヒーを飲んだり、うたた寝をしたりも多いでしょう。そして読書が好きな人なら、本を読んだり、新聞を読んだりも。私もそうでした。ところが、・・・です。何かを読んでいる時に突然子供に泣かれたり、呼ばれたりして、すぐ飛んでいくと、戻ってきた時に、どこまで読んだのか、何を考えていたのか、きれいに忘れているんです(忘れやすい私)。気を取り直してまた読み始めて、先へ進めれば、それでいいのですが、またすぐ子供が泣く、あるいは電話が鳴る、宅配便が来る、と中断が繰り返されることがあります。そうなるとなんだか面倒臭くなって、ただボーっと休憩でもしていようか、という気分になります(怠け者の私)。
こうした経験を繰り返しているうちに、ある時「中断されて読む気がしなくなるのは、長文だったり、内容が複雑だったりして集中力を必要とするものだ」という当たり前のことに気づきました。そこで、短くてどこまで読んだか気にする必要のない読み物はないか、と考えた時に、思いついたのが「四季報」です。これは、どこを読んでも、読まなくてもかまわない。かまわないから気にならない。そして株式投資が好きな人なら企業経営に興味があるので、読んでいてそれなりにおもしろい。
というわけで空き時間に四季報をパラパラめくっていると、塵も積もれば山となり、四季報数号分読んだ後では、どんなセクターにどんな会社があり、どんな商品やサービスを提供しているかなどが、なんとなく頭に入ってきました。語学の勉強で言えばボキャブラリーが増えたよう感じです。良く言えば、体系的なボトムアップ・アプローチ、悪く言えば、雑学です。こうなると事例を数多く知っているため、投資尺度、投資戦略など概念的、理論的な話(語学の勉強で言えば文法のようなもの)を見聞きしても、理解しやすくなります。何より約3700社ある上場企業の全体を鳥瞰しているので、自分のまったく知らない事例は(直近のIPOを除けば)出てこない、という安心感が持てるようになります。喩えて言えば、悉皆調査とサンプル調査の違いのようなもので、サンプル調査では母集団とはかけ離れた結果が出てくるリスクがありますが、悉皆調査であれば、そうしたことはまず起こらない、と自信が持てるのと同様でしょう。
こうして3700社をみているうちに、この中でバリュー投資の観点から潜在的な投資先と考えることのできる企業はせいぜい1,000社くらいで、その中で特に有望なものは200〜300社、さらにその時々の状況で実際に買うに値する企業は数十社、という自分なりの分類がなんとなく出てくるようになりました(もちろん、ある企業がどのカテゴリーに属するかは、企業はファンダメンタルズおよび株価の変動につれて変化しますので、これらの数は常に一定ではありません)。これらのカテゴリーに属する企業は、セクターによるバラツキはありますが、いずれも各セクターにおいて最も割安なグループに属する企業になっています。銘柄分析で取り上げた企業などがそうした例に当たると思います。
(補論) 「賢明なる投資家へ道」管理人のKENさんの「投資コラム」で、時々赤ちゃんとたわむれつつ、セミナーの資料作成をされた話(4月24日)を拝見しました。できる人はできるものなのですね。私などは、よくシングルタスク人間と呼ばれています。