本当は怖い脱ステロイド


脱ステロイドの乳児への被害


乳児の重症アトピー性皮膚炎は、成長障害・低蛋白血症などの重篤な症状を起こす


乳児の重症アトピー性皮膚炎は、成長障害・低蛋白血症・電解質異常・血小板増多を高率に起こす危険がある。
以下の論文を紹介する。

    「低蛋白血症を伴った乳児重症アトピー性皮膚炎についての検討」
    アレルギー57; 853, 2008

    近年、(乳児)重症アトピー性皮膚炎に低蛋白血症や成長障害などを伴った症例が散見される。……上記期間(調査期間)に受診した1歳未満のアトピー性皮膚炎患者は119例で、うち15例が低蛋白血症を伴う重症アトピー性皮膚炎だった。半数近くの患者は身長・体重が3 percetnile未満、10%以上の患者が重度の低ナトリウム及び高カルシウム血症を呈していた。60%の患者が血小板数800×103/μL以上だった。当科受診後スキンケア、ステロイド外用、悪化因子の除去を中心とした治療を行ったところ、皮膚症状、検査所見は速やかに改善した。……(乳児)アトピー性皮膚炎は重症化すると低蛋白血症のみならず、成長障害、電解質異常、血小板増多を高率に起こす危険な病気であるが、適切な治療を行うことで改善させることが可能である。

乳児は、症状を訴えることはできない。それだけに、乳児のアトピー性皮膚炎に適切な治療を受けさせないことは、取り返しのつかない事態を生じさせる危険がある。

特に、全身に湿疹が拡がる重症アトピー性皮膚炎の乳児は、ただの皮膚の病気と考えては駄目だ。全身に影響を与える病気である、という認識を持って治療を考えてほしい。
この論文では、低蛋白血症を伴う乳児重症アトピー性皮膚炎の15例全例が、標準治療で速やかに症状が軽快している。とりわけ強調したいのは、低蛋白や電解質異常といった全身状態を表す検査所見まで改善している点だ。皮膚は、全身に影響を与える重要なファクターなのだ。

このように乳児重症アトピー性皮膚炎の15例全例が、標準治療で改善しているところを見ると、きちんとした標準治療(ステロイド外用を主体とした治療)をしていなかったと予測される。重症の乳児には、ステロイド外用を主体とした適切な治療を行って、全身状態・成長に影響を与えないように治療をしてほしい。



敗血症を併発して死亡した、オーストラリアの重症湿疹の乳児例
(両親のステロイド忌避)


海外でも、「外用ステロイド忌避」の傾向がある。以下は、海外で起きたステロイド忌避・ホメオパス治療による一例のニュースを要約したものだ。

    2002年のオーストラリアで、9か月の重症湿疹の乳児が、敗血症を患い死亡した事件があった。この両親が、医療を拒み続けた末の結果だった。父親がホメオパス(日本語にすると同種療法となるらしい、ただその効果は科学的・医学的に証明されていない治療法である)の専門家で、ホメオパスで治そうとしていたそうだ。

    両親は、医師の忠告を無視して、8か月になる重度の湿疹の子供をつれて、2週間半のインド旅行に出かけた。オーストラリアのシドニーに帰国後も、すぐに病院に連れて行かなかった。その子は、常に重度の湿疹を伴い、その合併症で苦しんでいた。
    旅行から1ヵ月後、眼合併症を併発したため、やっと両親が病院へ連れて行ったが、時すでに遅く、敗血症(細菌が全身に波及した重症感染症)のため息を引き取った。

    この子が亡くなった時には、低蛋白血症、亜鉛欠乏症、ビタミンA欠乏症に陥っており、細菌に対する免疫力が落ちていた。4か月時に6.5kgの体重だったのが、亡くなった9か月時には5.3kgになっていたという。そして、全身の重度の湿疹は、容易な感染症を引き起こす危険な状態を作り出していた。

    両親は、重過失による殺人の嫌疑を受け、オーストラリアの最高裁判所で公判が開かれた。2009年に、この両親に判決が下った。故殺罪で有罪、つまり虐待だと認定されたのだ。父親は最低6年最高8年、母親はは最高5年4か月、4年間保釈なしの量刑。


悲劇的な話だ。ここまで子供を病院へ連れて行かなかった例というのも珍しいと思う。 オーストラリアの司法は、これを虐待として、両親に有罪を言い渡したのだ。

私は、ホメオパスという治療法を知らない。日本では、あまり聞かないと思う。調べてみたが、日本で行われている民間療法に近いのだろうと解釈した。

この事件は、世界的に報道された。日本でも報道されたので、知っている人もいらっしゃるかもしれない。
ステロイド外用に対して、親は頑な拒否をするのではなくて、柔軟に考えてもらいたい。十分な判断能力のない子供が犠牲になるのは、つらいものだ。


参考にしたHP)
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/ wiki/wiki.cgi?page=%A5%DB%A5% E1%A5%AA%A5%D1%A5%B7%A1%BC%A4% CE%C8%EF%B3%B2
http://www.smh.com.au/news/ national/baby-gloria-the-hunt- for-truth/2007/11/05/ 1194117959740.html
http://www.news.com.au/ heraldsun/story/0,21985, 25428128-662,00.html



日本で起きた、乳児アトピー性皮膚炎の医療ネグレクトによる死亡例


インターネットより、抜粋。当時このニュースを見て、2010年になっても日本でこのような事件が発生するのかと驚いたものだ。

    <殺人容疑>7カ月の長男受診させず 宗教法人職員夫婦逮捕
    2010年1月14日(毎日新聞)

    福岡県警は13日、衰弱した生後7カ月の長男を受診させず殺害したとして、いずれも宗教法人職員の福岡市東区唐原4、(夫)容疑者(32)と(妻)容疑者(30)を殺人容疑で逮捕した。県警によると、自然治癒による回復を教えとする宗教の信者で、手かざしなどによる「浄霊」と呼ばれる方法で治そうとしていた。「医療行為を受けさせればよかったと後悔している」と、大筋で容疑を認めているという。
    逮捕容疑は、アトピー性皮膚炎を発症した(長男)に適切な診療を受けさせず、昨年10月9日午後8時ごろ、感染による敗血症で死亡させたとしている。

    県警によると、(長男)は母乳などの食事は与えられていたが、アトピー性皮膚炎で衰弱し、食事がとれない状態だったという。県警は治療を受けさせなかったことが死亡につながったと判断し、殺人容疑での逮捕に踏み切った。
    同10月9日夜、(長男)の意識がもうろうとしていることに気付いた(夫)容疑者が119番したが、搬送先の病院で死亡が確認された。死亡時の体重は通常の乳児の半分程度の4・3キロしかなく、アトピーで体の皮膚の多くがはがれた状態だった。病院が診療を故意に受けさせない「医療ネグレクト」の可能性があるとして県警に通報した。
    (夫)容疑者は調べに対し「病院に行こうと思ったが判断が遅れ、見殺しにしてしまった」と供述している。(妻)容疑者は「自分も母親に同じように育てられており、自然の力で絶対に治ると思った」と話しているという。

    (不要に個人名をあげるのは避けたいので、ここでは夫、妻、長男とした)

この後の続報は聞かないが、どうなったのだろう。裁判になったのだろうか?どちらにしても、なくなった子は戻ってこない。

医療ネグレクトとは、虐待の一種と考えられており(ネグレクト=虐待)、保護者が児童に必要な医療を受けさせないことをいう。特に、治療を受けないと子供の生命に重大な影響が及ぶ可能性が高いにもかかわらず、保護者が治療に同意しない、治療を受けさせる義務を怠たることをいう。

上記にオーストラリアの事例を紹介したが、日本でも同様のことが起こっているのだ。
母親の「自然の力で治ると思った」という部分から、教訓を読みとってほしい。自然の力ではどうにもならないときがある。こうなる前に、適切な治療に踏み切って欲しい。