脱ステロイドの定義・繁栄と衰退
脱ステロイドの定義
脱ステロイドといっても、人によって定義が異なる。ここでは、患者さんが「ステロイド外用を使わない」という選択をすることという一般的なシンプルな定義とする。
脱ステロイドは「ステロイド外用の副作用への対応」と書いている人もいるが、これは間違いである。なぜなら、薬剤による副作用が出た時にその薬剤を止めるという場面はしばしばあるが、それは当然の対応であり、他の薬剤で「脱〇〇」と言うことはない。ステロイド外用の場合だけ、特別に脱ステロイドと呼ぶなどということはありえない。
また、脱ステロイドを内服・点眼に用いている人もいるが、これも誤りである。歴史的には、脱ステロイドは外用にしか用いていない。特に、ステロイドの内服を医師の指示なく突然中断することは、副腎不全を起こし、時に命に関わる事態となるので止めてもらいたい。
さらには、病状が落ち着いてきたので、徐々にステロイドの量を減らしていることまで、脱ステロイドやら減ステロイドと呼んでいたりする。これも間違った使い方である。通常の治療でも、もちろん病状が良くなれば、ステロイドをやめていく。標準治療の一環だ。
脱ステロイドとは不思議な言葉である。そもそも、海外には「脱ステロイド」に対応する言葉がない(英語を含めて全言語で)。日本の、それも極限られた人たちが使っている言葉だ。医療関係者よりも一般の患者さんに多い。
「脱ステロイド」という言葉がなくなった時こそ、被害者がいなくなる時なのかもしれない。
脱ステロイドの繁栄と衰退
1990年頃から、マスコミを中心とするステロイドバッシングが起こった。そのため、「ステロイド忌避」を感じる患者さんが多くなり「脱ステロイド」を行う人が増えた。そして、その心の隙間につけいるように、不適切な治療を施行するもの(いわゆる効果のないアトピービジネス・民間療法)が現れた。これらの結果、多くのアトピー性皮膚炎の患者さんが悪化した。
こうした経緯の反省から、2000年頃よりアトピー性皮膚炎の治療が見直され始めた。
- 不適切治療による被害を検討するため、相談窓口を設けたり、調査班が作られたりした。
- アトピー性皮膚炎の国内のガイドラインが作られた。
不適切治療による被害の調査班の検討は、医学雑誌に報告されている。また、不適切治療による悪化・弊害は症例報告として医学雑誌に数多く掲載されている。こうして、アトピー性皮膚炎患者さんの「ステロイド忌避」は徐々に少なくなり、脱ステロイドを試みる人も減少し、その被害は年々少なくなっている。
さて、一部の方は「脱ステロイド」による被害ではなくて「不適切治療(アトピービジネス・民間療法)」による被害だと言われるかもしれない。しかし、ほとんどの「不適切治療(アトピービジネス・民間療法)」は標準治療のステロイド外用を否定することから始まっている。つまり、不適切治療のほとんどは「脱ステロイド」を伴っているのだ。さらに言うと「脱ステロイド」という方法自体に医学的な根拠がなく、不要に悪化した患者さんも多いのだ。
なので、このホームページのタイトルも、脱ステロイドによる被害とした。
脱ステロイドの問題
脱ステロイドの問題の根本は、ステロイド外用剤の副作用を過剰に煽ったことだ。それにより、本来は治療により良好な結果を得られる患者さん達が「ステロイド忌避」の感情を抱き、無用な脱ステロイドを行い、結果としてアトピー性皮膚炎を難治悪化させた。
ステロイド外用の使用をためらっている方、何となく怖いという方、そして脱ステロイドをしたが完治することもなく経過している方には、ぜひこのホームページを見ていただきたい。そして、もし迷うことがあれば、アマチュアではなく、その道のプロである医師に相談してほしい。
* 相談する医師は、一般的な見解を述べられる皮膚科専門(または皮膚に詳しいアレルギーの専門、小児であればアトピー性皮膚炎に詳しい小児科)のところを探してほしい。また、今の時代でも脱ステロイドを推奨する一部の医師もいるが、そのような医師はかなり特殊であることを認識すべきだ。もう一つ注意事項。皮膚科以外の科がメインであるが、患者数を増やすために皮膚科も標榜している医師がいる。しかし、そのような医師は専門性が違うため、相談は避けるべきだ。診察能力・知識に欠けていることが多い。