Astro Guide 2008 Summer●星空案内2008・秋編 |
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2008年11月1日午後8時の空。
木星や夏の星座は西空低く傾いています。かわって、カシオペア、ペガサス、アンドロメダなど、ギリシャ神話の主人公たちが顔を見せます。作図にはアストロアーツ社製、ステラナビゲータ 6 を使用。 |
夏の1等星たちは西空低く傾き、南東の方角にはいつのまにか「みなみのうお座」のフォーマルハウトがポツリと光っています。秋の星空では唯一の1等星ですが、周囲を見わたしても夏の大三角のような1等星仲間がいる訳ではありません。それゆえ、かえって秋の寂寥感を感じてしまいます。
秋の星座はジミそうに見えて、その実絢爛豪華な絵物語が織込まれており、それが最大のウリになっています。王妃カシオペア、ケフェウス王、勇者ペルセウス、化けクジラ、天馬ペガサス、美貌のアンドロメダ姫・・ ギリシャ神話を演ずる豪華キャストの顔ぶれは、天文マニアならずとも、一度は見聞きした覚えがあるでしょう。山中児童センターのプラネタリウム投影でも、すっかり秋の定番となっています。
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アンドロメダ座は秋を代表する花形星座です。このヒロインに花を添えているのがアンドロメダ銀河、M31。近年まで「大星雲」と呼ばれていましたが、数千億にのぼる恒星の大集団であることが分かり、この種の天体は「銀河」と呼称が統一されています。撮影中、フレームの右上に流れ星が飛び込みました。
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日本でも人々がちょんまげを結っていた江戸時代、このM31を望遠鏡で観測した記録が残っています。ときは寛政5年旧暦7月20日(1793年8月26日)望遠鏡を製作した人物も、岩橋善兵衛というれっきとした日本人です。この望遠鏡を用い、日本初の星空観察会を主催したのが橘南谿というお医者さんでした。南谿らは月や惑星とともに、星雲状の微光天体にも望遠鏡を向けました。その際「(※1)さそり座の尻尾にあるM6、M7は星の集まりだが、アンドロメダ座のM31はボーッとした雲みたいな感じ」と書き記しています。天文の知識に関して当時の日本人は皆目無知だと思いがちですが、星団と星雲をきちんと区別しているあたりは、現代人も顔負けです。ちなみにこのM31が銀河系のはるか彼方にある巨大な星の大集団だ、と分かったのは20世紀の話です。
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木星はたそがれの夕空に姿を消そうとしています。望遠鏡で見ると、ガリレオが発見した4つの衛星が認められるでしょう。ただし、低空では大気の影響を受け、木星本体を観察するには決し良い条件とは言えません。左の画像は2年前、児童センターの13cm望遠鏡で撮影したものです。
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入替わりに金星が宵の明星として日没後の西空に輝き始めますが、本格的なシーズンは晩秋から初冬にかけてです。両者の観望期が交代する12月初旬は、日没後の西空で肩を並べ、初冬の風物詩になるでしょう。ちなみに、木星が再び暁の東天に姿を現すのはあくる2009年の春です。この年はガリレオが望遠鏡を宇宙に向けてからちょうど400周年にあたります。木星の衛星を発見したのも、このガリレオです。その功績を記念し、2009年は世界天文年に指定されました。
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ペガサス座51番星は、四辺形の近くにある5等級のありふれた恒星です。1995年、この星に惑星が発見され、一躍脚光を浴びることになりました。以来、太陽系外惑星は300個以上見つかっています。このなかに地球同様、生命を宿している惑星があるのでしょうか。右の画像は左の部分を50倍程度拡大したものです。
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ところで、今から13年前の1995年、秋の星空を舞台にちょっとした惑星騒動が起こりました。舞台の主役に躍り出たのは、ペガサス座51番星という、太陽によく似たありふれた恒星でした。というのは、この星に太陽系以外で初めて惑星が発見されたのです。惑星、となれば生命、いや宇宙人がいるのでは、と世界中の目がペガサス座の一角に注がれました。
その後の研究によると、この惑星の質量は地球の200倍もあろうかというジャンボ天体で、主星のわずか700万kmを回っています。これは地球と太陽の距離の1/20です。計算から導かれる惑星の表面温度は1000℃で、1年の長さはたった4日あまり。猛暑のさなか、4日ごとにカレンダーを書き直さねばならないペガサス座51番星人もなかなか大変ですね。太陽とペガサス座51番星は瓜二つですが、惑星の方はわが太陽系のいずれとも、似てもにつかないシロモノです。
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エチオピア王家の物語は、プラネタリウムでも秋の定番プログラムです。天馬ペガサスと鎖につながれたアンドロメダが、東の地平線から昇ってきたところです。
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ペルセウス座といえば、昨年の2007年、ホームズ彗星が史上最大の大爆発を起こし、大きな話題になりました。1965年、伝説のイケヤ・セキ彗星が雄姿を見せたのも晩秋の未明。しし座流星群がわが国で歴史的な出現をしたのも11月。やや気の長い話ですが、次回石川県で皆既日食が見られるのは2035年9月2日。同じく金環食が見られるのは2041年10月25日のことです。豊穣の季節にふさわしく、秋は天文現象の豊作期かもしれません。ついでながら、ちょうど100年後の2108年10月5日にも(※2)日本で日食が起こります。「きんしん」創立200周年にあたるこの年、日影を落とす100年後の地球はどのような姿になっているでしょうか。
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西洋では「プレアデス星団」、中国では「昴宿(ぼうしゅく)」そして、日本では「すばる」と呼ばれるおなじみの天体です。北東の空から姿を現す「すばる」は木枯らしとともに冬の到来を告げる使者です。
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「星はすばる」1000年前に活躍した女流文学者、清少納言も好きな天体のトップにあげています。実際、双眼鏡や望遠鏡の視野で明滅する星々はみごとというほかはありません。アンドロメダ銀河が西の横綱なら、プレアデス星団は間違いなく東の横綱でしょう。プレアデスが木枯らしとともに冬の到来を告げると、秋とは一転、きらびやかな冬の星座が続々姿を現します。オリオンや大犬など、冬の夜空に君臨する主役たちはぜひとも紹介したいところですが、残念ながら紙数が尽きました。また、機会がありましたらお目にかかりましょう。最後までお付き合い戴き、ありがとうございました。
この物語は金沢信用金庫・刊行の「ビジネスと暮らしの情報誌 きんしん Vol.121」に収載された内容をウエブ用に転載したものです。
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