フォセットーCafe
au Le Ciel
Bleuー

製作 戯画
パルフェ、こんにゃく、ショコラのファンディスクである本作はファンディスクとしては満足のいく作品であったと思う。ただ丸戸氏書下ろしのメインシナリオである「里伽子抄」と「この冬空に歌声を」を除くシナリオは、脱カトレア記念日(実はこれも丸戸氏の担当)、陽だまりのヴァージンロードは合格点を与えられるレベルであるにしても、その他はシナリオの短さを含め平凡な出来だったと言わざるを得ない。所詮「ショートストーリー」の枠を出ない出来だった。それでも上に書いた2作品だけでも俺は十分元を取れたと思う。
ちなみに複数ライター制に関して俺は当初否定的な見方をしていたが、今となってはむしろそれで良かったとさえ思えている。何故なら丸戸氏が自身の担当するシナリオにのみ集中する事が出来たおかげで彼の担当シナリオが秀逸な出来になったからである。結果論かもしれないが、今ではそう思う。丸戸氏がファンディスクとして俺達ファンに伝えたかった事が上記の2作にこめられていたように思うのだ。
ミニゲーム(クイズ)は明らかにコアな丸戸ファン(信者とも言う)をターゲットにした物で、難易度は異常に高い。ステージ10に到達するのは至難の業と言えよう。又3作品からまんべんなく出題されるので、3作品すべてにそれなりの知識を持たないとステージ1すら越せない可能性もある。ポイント獲得で見られるおまけシナリオはこんにゃくの補足的なシナリオだが、「この星空に思い出をー」と「プレ・プロローグ」は一見の価値アリなので是非とも高得点を目指してもらいたい。ポイントとしては出来るだけ素早く答える事(コンポによってもらえる得点が倍になっていく)と、一度間違えた問題は必ずメモなりして二度と間違えないようにする事である。これからプレイする人は参考にしてもいいかもしれない。
全てのシナリオを一個一個評価していくのは他の人に任せ、俺が最も感動を覚えたシナリオである「この冬空に歌声を」の感想を書いてみようと思う。以下非常にクサイ文が続く事をご了承頂きたい。
このシナリオは本編のトゥルーエンドである「約束の日」の少し前、彼らの歌が完成するまでを描いている。丸戸氏はファンディスクであってもつぐみ寮のみんなが寮に残って幸せに暮らすハーレムルートを描こうとしなかった。そこをまず評価したい。夢は必ず覚めるという事実、それは曖昧に描くべきことではないし、描いてはいけないと思うのだ。正直このシナリオの彼ら7人は見ていて痛々しい。誰もがもうすぐやってくる別れを知りながらも最後のひと時まで思い出を残そうとする。そうすればするほど、別れの辛さは大きくなる。その目に自分達の今を刻み込もうとする事は決して悪い事ではないし、恥ずべき事でもない。だから見てる俺達は切ない。俺達は一足早く彼らの別れの歌を、悲しみの歌声を聴いているからだ。
航は雪が見たいと思った。35年間雪が降っていないその島で、生まれてこの方そこを離れた事がない田舎の少年が抱くどこにでもあるような幻想。そして、奇跡的に雪が降った。航の喜びは大きかったが、それは雪を見れたという感動だけではなく、つぐみ寮のみんなと別れる前にもうひとつ素敵な思い出を共有出来たというのが大きいのかもしれない。
結局雪は積もらなかった。
なんて事はない。たとえ奇跡が起こったとしても、全てがそう都合良くいくわけがない。彼らの別れが避けられないように。夢はいつか覚めるように。それでも彼らは決して思い出を作るという「痛み」を止めようとはしない。思い出が彼ら自身を傷つける以上に、彼ら自身に大切な物を与えてくれると信じているからだろう。
――奇跡ってのは、ほんの一瞬輝くのが美しいって約束でもあるのか・・・
彼らにとってその出会いは奇跡だったのかもしれない。7人が同じ時代に生まれ、同じ島に育ち、同じ寮に暮らす。どれだけ家族に飢えていても、どれだけ悲しい想いを抱えていても、そこには大切な仲間が待っている、そんな小さな奇跡。
――冷たさすら感じなかったけれど、小さな、かなりまばらな粒だったけれど・・・
――その白さと、儚さと、天から降りてくる遅さは、永久に、俺の記憶に、残る。
丸戸氏は結局最後までひとつのテーマを貫いた。夢は必ず覚める、それでもその想いは俺達の心の中にずっと残り、死ぬまで生き続ける。そういう事だろう。どんなに素敵な夢もいつか覚める。まして1世紀も生きられない俺らにとってそれは当たり前の事として受け入れなければならない事なのだろう。それでも、たとえ7、80年程度しかない人間の一生の内の数%の時間であっても、それは色褪せることなく彼らの胸に残り続けると思うのだ。数分間で止んでしまった白い雪が、端から見れば滑稽にしか映らない雪合戦ごっこが、彼らの胸にずっと残り続けるように。
航は青春の終わり、楽園の終焉を悟る。そしてそれは寂しい事ではない事を。航にそれを気づかせてくれたのが航が心待ちにしていた雪だったのである。多分季節が春だったら桜を使っていた気がする(笑)。丸戸氏の伝えたかったメッセージは確かに届いたと思うし、俺はやっとあの「さよなら」が悲しいだけの物ではなかったと思えるようになった。多分このシナリオをやらなかったら分からなかったし、今でも約束の日をプレイする度に心が掻き毟られる思いを抱く。それでも夢は必ず覚めるし、人はその先も生きていかなくてはならならないという現実の非情さを、丸戸氏は少しでも優しく希望を含んだ形で完結してくれたのだと思うのだ。
評価 名作(S)
今年ラストを飾るに相応しい作品となった。あくまで全体的な評価なので、もし丸戸氏書き下ろし作品のみの評価ならSSを付けても良いくらいの出来だと思う。この作品はどちらかというと「この青空に約束を-」をメインにしているのか知らないが、おまけシナリオを含めやたらこんにゃくシナリオが多い。だからといってパルフェ好きが失望する作りではないのでご安心を。里伽子抄だけでも十分元は取れると思う