妙法蓮華経序品第一

ところは古代インドのマガダ国の首都王舎城。
霊鷲山という小高い山。
多数の菩薩、声聞、辟支仏、阿羅漢たち。
諸国の王とその一族、比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷たち。
瞑想中の釈尊を衆人の熱気が取り巻いて、目覚めを待っている
釈尊の凄まじいオーラを感じながら。

暫くの後、弥勒菩薩が声を発した
「文殊師利よ、釈尊の凄まじいオーラは、
静けさの中にある、この期待感は、何なのか」と。

それに、文殊師利菩薩が答えて
「このような光景が過去にもあったことに覚えがある。
瞑想から覚めたとき、仏は大法を説いていた。
今度も、釈尊の口から素晴らしい教えを聞くことができるだろう」と。

妙法蓮華経方便品第二

その時、釈尊はゆっくりと、三昧より目覚めた。
衆人を見渡し、声聞の最たる舎利弗に話し掛けた。
「仏の成仏道とは、声聞や辟支仏が成仏と考えるようなものではない。
舎利弗よ、仏の説く成仏は、衆人にはとても信じられないもので、
その道を進もうとはおもえないが、これが真実の教えである。
故に、方便を用いて衆人を導くために、仮の教えを説いたのだ。
全ての仏が説く教えは、唯一つで真実の教えである。
衆人を導くために全ての仏が、方便を用いて仮の教えを説くのだ」と。

舎利弗は、代表して釈尊に問い掛けた。
「なぜ今、我々が信じてきた教えは、真実の教えではなく、
本当の真実の教えがあると説かれるのか。
ならば、本当の真実の教えを説いてください」と。

釈尊は、舎利弗に答えた。
「止めなさい。止めなさい。自我に固執した者達に、
仏の教えなど聞き入れられないだろうよ」と。

舎利弗は、懇願した。
「本当の真実の教えがあるならば、我々に説いてください」と。

釈尊は、舎利弗に答えた。
「止めなさい。止めなさい。自我に固執した者達に、
仏の教えなど聞き入れられないだろうよ」と。

舎利弗は、さらに懇願した。
「本当の真実の教えがあるならば、我々に説いてください。
自我に固執することなく、本当の真実の教えを信じます。」と。

その時、本当の真実の教えなど信じることができないでいる
多数の衆人が釈尊に挨拶をして、その場を去った。

釈尊は、舎利弗に答えた。
「本当の真実の教えを信じる者達だけに、
仏が本来説くべき唯一の真実の教えを説こう。
仏は、それぞれの状況や立位置を理解して、それぞれの
方便を用いて、仮の教えを説いていくのだ。
信じられない真実を少しずつ理解できるように、
声聞や辟支仏は、その途中で真実の教えに辿り着いて
成仏したと勘違いして、自我に固執してしまっている。
舎利弗よ、固執してはならない。
もっと柔軟に、仏の教えを信じ聞かねばならない。
仏は、唯一の真実の教えを説き導き、
全ての衆人を成仏させんが為に現れるのである。」と。

妙法蓮華経譬喩品第三

その時、舎利弗は大いに喜び、仏に感謝し、仏に語った。
「仏の言葉通り、我々は自我に固執していて、
仏の教えが耳に入っていませんでした。
もっと柔かい心で、仏の教えを信じ聞かねばなりませんでした。
何か違うと思いながら、成仏したように思っていました。
仏から今、唯一の真実の教えが説かれると聞き、
破裂しそうな喜びで一杯です。
仏の導く本当の成仏ができることを」と。

釈尊は、静かに舎利弗に語り掛けた。
「舎利弗よ、いつも柔軟な心で仏の教えを聞きなさい。
必ず、成仏できる。舎利弗よ、仏の唯一の真実の教えにより。」と。

さらに、舎利弗に語り掛けた。
「舎利弗よ、今一つの譬え話をしよう。
ある国に、大金持ちの長者が大邸宅に大家族で住んでいた。
この大邸宅には出入りする門は、唯一つだけで、
建物は老廃し、柱は朽ち、壁は剝がれ、棟は傾いている。

突然、屋敷のどこかで火の手が上がったとしよう。
火は四面に広がり、とても消火できないことに、
逸早く気付いた長者は、門の外に出て難を逃れた。
しかし、まだ大家族の誰も、門の外に逃れてない。
ゲームやお喋りに熱中して、火事に気付いていない。

今、『火事だぞ、皆早く逃げろ』と叫んだら、唯一つの門に集中し、
パニックになり、我先に逃れようとして、怪我をしたり逃げ遅れて
動けなくなったり、家族の者達が大混乱になるだろうと考えた。
そこで、『皆、門の外に出ておいで、今買ってきたばかりの
面白いゲームや着てみたいおしゃれ着、読みたい書物が沢山あるよ、
欲しい者は、門の外に慌てないで出ておいで』と叫ぶことにした。
家族の者達は、その声に導かれて慌てることなく門の外に逃れた。
門の外には、ゲームやおしゃれ着や書物は何もないことに気付いて、
家長である長者に、ゲームやおしゃれ着や書物を早く買ってと、
騒ぎ出した。
さて舎利弗よ、この長者は、嘘つきの悪人であろうか」と。

舎利弗は、釈尊の問い掛に答えた。
「まさか、この長者は唯、家族の者達を火事から救うが為に、
命を救わんが為に云ったこと。これは嘘ではなく、方便です。」と。

さらに、釈尊は続ける。
「舎利弗よ、仏もまた、仮の教えを説いて、衆人を導くのだ。
全ての衆人を成仏に導いて、救わんが為の過程として。」と。

妙法蓮華経信解品第四

釈尊と舎利弗の会話をじっと聞いていた
声聞四長老の須菩提、迦旃延、迦葉と目連は、
そろって、大いに喜び仏に感謝し、続いて語った。
「我々も今までの教えで充分と思い、年齢のこともあり、
仏の新たな教えを聞き入れるとこは、ありませんでした。
仏の教えを信じ聞きいる舎利弗の姿を目の前にして、
本当の成仏に向かい、前進しなければならないと思いました。
今の話を聞き、我々がどのように感じたかを譬えます。」と。

さらに、彼らはに語り始めた。
「ある国に、大金持ちの長者がいた。長者には一人の息子がいたが、
息子は、若年の内に父の家を出して他国旅して暮らしていた。
数十年も経て、長者は、息子を探す旅に出たが息子は見つからない。
それからさらに数十年過ぎて、長者は息子を探す旅に疲れ、
ある地で、財産を取り寄せ土地を買い屋敷を建て住み着いた。
あわよくば、この地に息子がひょこり訪れないかと思い。

ところが放浪の果て、息子が父の屋敷だとも知らず、その前に現れた。
長者は、従者に息子を近くに連れてくるように言ったが、
何も知らない息子は、怖がって慌てて逃げ去った。
長者は、従者に息子の後を追わせ、居所を突き止めた。
今の息子は、とても財産を引き付げる器量がないと長者は考え、
自分の元で雇って、少しずつ教育して考える力を付けさせた。
そして、年老いていく長者は徐々に自分の役目を引き継がせていった。
最後を迎えることになった長者は、家の者、近隣の主な者を集めて、
この男が自分の息子であることを明かして、全財産を譲り渡した。
息子は、真実を知り父の愛情を知り、心から喜んだ。

かの長者のように、仏はいつも大慈大悲のこころで我々衆人を
成仏させんが為に導いてくださっている。
仏は、少しずつその場その場に沿った、仮の教えを説きながら、
我々衆人を丁寧に慎重に、真実の教えに導き、成仏させている。
にもかかわらず、無知な我々は仏の心も知らず、何も気付いていない。
仏の仮の教えの後に、真実の教えがあることを夢にも思わず、
道途中で満足して、成仏したと勘違いしていたことに気付きました。
かの息子のように我々衆人は、真実の教えを知り仏の慈悲を知り、
成仏できることを心から喜んでいます。」と。


妙法蓮華経薬草喩品第五

その時、釈尊は迦葉および衆人に語り掛けた。
「迦葉よ、そうじゃそうじゃその通り、よくぞ間違いに気付き
仏の慈悲を知り、真実の教えがあることに気付いた。」と。

さらに、彼らに語り始めた。
「この大地には、大小いろいろな草木が生えている。
その沢山の草木には、分け隔てなく恵みの雨が注がれる。
それぞれの草木は、それぞれに必要な分の水を吸い上げて、
それぞれの花を咲かせて、それぞれの実を付ける。
仏の慈悲もこの恵みの雨のごとく、いろいろな気性気分の衆人を
それぞれに合った方便を用いて、必要な分の水を吸わせるように
成仏へと導く、それぞれが花を咲かせ、実を付けるように。
草は草として、木は木として、尊敬と憧れの草木に成れ。
いろいろな気性気分の衆人もまた、成仏へと進め。
仏はいつも、それぞれの成仏に向かい、真実の教えを説くのだ。」と。

妙法蓮華経授記品第六

そして、釈尊は続けて衆人に語り掛けた。
「迦葉は、仏の慈悲を知り、それぞれの方便の意味を知り、
仏の真実の教えが説く、それぞれの成仏の花を咲かすであろう」と。

その時、目連と須菩提と迦旃延等は、皆ことごと迦葉同様に、
仏の慈悲も、それぞれの方便にも気付き、仏の真意に気付いていた。
それを釈尊に伝えたく、その機会を待っていた。

それを察知した釈尊は、衆人に語り掛けた。
「須菩提もまた、仏の慈悲を知り、それぞれの方便の意味を知り、
仏の真実の教えが説く、それぞれの成仏の花を咲かすであろう。」と。

さらに、釈尊は続けて衆人に語り掛けた。
迦旃延もまた、仏の慈悲を知り、それぞれの方便の意味を知り、
仏の真実の教えが説く、それぞれの成仏の花を咲かすであろう」と。

さらに、釈尊は続けて衆人に語り掛けた。
目連もまた、仏の慈悲を知り、それぞれの方便の意味を知り、
仏の真実の教えが説く、それぞれの成仏の花を咲かすであろう」と。


妙法蓮華経化城喩品第七

釈尊は力強く衆人に語り掛けた。
「遥か大昔より、本当の真実の教えを信じる者達だけに、
仏は、唯一の真実の教えを説き導き、
全ての衆人を成仏させんが為に現れるのである。
それぞれの状況や立位置を理解して、それぞれの
方便を用いて、仮の教えを説いていくのだ。
信じられない真実を少しずつ理解できるように、
自らの思い込みに、固執してはならない。
真実の教えを知らなければならない。」と。

さらに、衆人に語り掛けた。
「今一つの譬え話を聞いて、考えてみるがよい。
心優しい人々が住む繁栄の街に向かって、険しい山道を
忍耐強く進む一行があったとしよう。
この一行のリーダーは、聡明で状況の判断にも丈て、
苦難にも旨く対処して順調に旅を進めてきた。

旅も半ばと思われる頃、メンバーの足が止まりだし、
この旅がまだどれだけ続くのかわからないことや、
疲労による気力体力の限界を感じて、
今のうちに引き返そうと考え始めていた。

ここに来るまでの苦難を考えれば、戻ることなどできない。
リーダーは、目的地まで、メンバーを到着させる為には、
メンバーに一息つかせて、安心させようと考えた。
目的地までもう少しだと云って、近くの小さな町に誘導した。
メンバーは、この町で心安らかに休息し活気を取り戻した。

これからの生活の為に何をしようかと思いを巡らした頃、
リーダーは、我々が向かう目的地ではないことを告げた。
『さあ、心優しい人々が住む繁栄の街に向かって進もう。
これまでの苦難は乗越えた、これからの苦難は乗越えよう』と
再び忍耐強く目的地まで進み、全員到着することができた。

仏もまた、このように全ての衆人を導くのだ。
それぞれの状況や立位置を理解して、それぞれの
方便を用いながら、真実の教えに導くのだ。」と

妙法蓮華経五百弟子受記品第八

その時、富楼那は、仏の慈悲に感謝し、心の中で呟く。
「仏は、偉大で神通力を用いて心理を見抜き、
方便を用いて信じられない真実の教えを、
衆人に少しずつ理解できるように説いていく。
全ての衆人を成仏させんが為にである。
唯、仏だけが持つ偉大な力なり。」と。

釈尊は、その心を見抜いて語り掛けた。
「富楼那は、仏の慈悲を知り、それぞれの方便の意味を知り、
仏の真実の教えが説く、それぞれの成仏の花を咲かすであろう」と。

その時、五百の阿羅漢は大いに喜び感謝し、仏に語った。
「仏の言葉通り、我々は自我に固執していて、
仏の教えが耳に入っていませんでした。
もっと柔かい心で、仏の教えを信じ聞かねばなりませんでした。
何か違うと思いながら、成仏したように思っていました。
仏から今、唯一の真実の教えのことを聞き、
それを聞いた諸先輩の感動と行動を見て、確信しました。
仏の導く本当の成仏ができること。」と。

さらに、彼らはに語り始めた。
「ある人の家に、諸国を旅する懐かしい親友が訪ねてきました。
二人は、酒盛りを交わしながら、大いに語り楽しみました。
そのうち親友は、酔いつぶれて寝入ってしまいました。
主人は、欠席のできない大事な用事がありましたので、
親友を起こさず、選別の為替を衣服の裏に縫付けて、出かけました。

親友は、目を覚めて主人が遠方に出掛けたことに気付き、
主人と挨拶できないまま、再び諸国を巡る旅に出掛けました。
親友は、衣服の裏に縫付た選別など全く知らぬまま、
日銭を稼ぎながら、その日の暮らしを営みながら旅をしていました。
それでも日々の暮らしができれば、旅を楽しんでいました。

そんなある日、偶然にも主人はこの親友と出会いました。
粗末な身なりをして、相変らずその日暮らしをしている姿を見て、
親友が、衣服の裏に縫付た選別に気付いていないことを知り、
すぐに選別の為替を換金して、楽な暮らしをするように勧めました。
まさかと衣服の裏を探り、選別の高額の為替を見つけました。
親友は、主人に感謝し、選別を見つけて喜び飛び跳ねました。

主人のように、仏はいつも大慈大悲のこころで我々衆人を
成仏させんが為に導いてくださっている。
この親友のように我々衆人は、真実の教えを知り仏の慈悲を知り、
成仏できることを心から喜んでいます。」と。


妙法蓮華経授学無学人記品第九

その時、阿難・羅羅は、今我々も仏の慈悲を受ける時と、仏に語った。
「仏は、偉大で神通力を用いて我々の心を見抜き、
信じられない我々に方便を用いて真実の教えを説き、
衆人に少しずつ理解できるように話し聞かせる。
我々全ての衆人を成仏させんが為にである。
唯、仏だけの持つ偉大な力なり。」と。

その時、学無学の声聞の弟子二千人は大いに喜び感謝し、仏に語った。
「仏の言葉通り、我々は自我に固執していて、
仏の教えが耳に入っていませんでした。
もっと柔かい心で、仏の教えを信じ聞かねばなりませんでした。
何か違うと思いながら、成仏したように思っていました。
仏から今、唯一の真実の教えのことを聞き、
それを聞いた諸先輩の感動と行動を見て、確信しました。
仏の導く本当の成仏ができること。」と。

その時、釈尊は、阿難に語り掛けた。
「阿難は、仏の慈悲を知り、それぞれの方便の意味を知り、
仏の真実の教えが説く、それぞれの成仏の花を咲かすであろう」と。

さらに、会中の新発意の菩薩八千人に語り始めた。
「学無学の声聞の弟子二千人は、仏の慈悲を知り、
それぞれの方便の意味を知り、仏の真実の教えが説く、
それぞれの成仏の花を咲かすであろう」と。


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