−声劇用台本−
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Delete−R(デリーター) 第5話 『罪』

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■登場人物

  レイス=正義(まさよし)=ランスフォート゛   男27才位
    触れることで相手の記憶を削除することができる能力を持つ。
    ハーフで整った顔立ち。普段は軽いノリ。記憶削除能力の
    デメリットを抱えながらも、贖罪を繰り返す。
 
  木村 由佳(きむら ゆか)   女25才
    元ヒプノセラピスト(催眠療法士)。しかし、レイスと出会い
    その能力を知ってから、レイスと共に事務所経営を始める。
    論理的な思考を基本とする。しかしレイスと行動を共にする
    ようになってから、少し感情的な部分が増幅した。

  姉崎 奈緒(あねさき なお)  女21才
    記憶削除の依頼人。
    心を患った母と生活しており、過去に妹を亡くしている。
    一部記憶の欠落が見られ、それはレイスが関与している。

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■配役(1:2:1)

 レイス♂(L27):
 由佳 ♀(L27):
 姉崎 ♀(L21):
  N 両(L11):


※全キャラ性別を原作では設定しますが、劇においてその限りではありません。
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 N   :本日二人目の依頼人が、店【アンレーヴ】に訪れた。
      依頼人の名前は、姉崎 奈緒(あねさき なお)。
      半年前に、大学を自主退学して現在無職。
      木村 由佳の説明が一通り終り、
      これから姉崎の依頼内容を確認するところである。

 レイスN :「Delete−R(デリーター) 第5話 『罪』」


 由佳  :「それでは、依頼内容を確認させて頂きたいと思います。」
 姉崎  :「はい・・・。」

 N   :先ほどまでの明るい表情が一転して曇り。
      姉崎は、うつむき加減で静かに話し始めた。


 レイスM:「・・・ん。あね、さき・・・?」

 姉崎  :「実は、私の母の記憶を消して欲しいんです。」
 由佳  :「・・・はぁ。」

 N   :由佳は、大きく息を吸うと、深く長い溜息を静かについた。


 由佳M :「これは、契約範囲外ね・・・。」
 由佳  :「残念ですが・・・、それは・・・」
 レイス :「待て。」

 N   :レイスは、中断させようとする由佳の言葉を遮った。


 由佳N :「契約は、基本的に依頼者本人の記憶に限っています。
       他者の記憶を操作したいと考える場合もあるでしょう。
       ですが、それが本人の了承なく消すことが正しいのか?
       絶対的にそれが問題になると考えています。
       本人の了承を得るということは、依頼人に関して情報を
       開示せざるを得ません。これもトラブルの元。」

 レイス :「で、母親の記憶の何を?」
 姉崎  :「はい。母の記憶から・・・私を消して欲しいんです。」
 由佳  :「・・・。」

 N   :由佳は、姉崎の言葉に何か心当たりがあったように、
      ちらりと目の端でレイスを気に掛けた。


 由佳  :「自分を消して欲しい・・・ですか?」
 姉崎  :「・・・はい。」
 由佳  :「どうしてです?」

 N   :由佳は、契約範囲外と分かっていながらも、
      依頼者の意外な依頼内容に興味が向いてしまったようだ。


 姉崎  :「実は。私の母は心を患っていて・・・
       突然、私を見たり思い出したりすると大きな声を出して暴れたり・・・
       離れていても電話を掛けてきて、怒鳴り散らすんです。」

 由佳  :「なぜ?」

 姉崎  :「わかりません。けど、きっと私が何か悪いことをしたんだと思います。」
 由佳  :「貴女が・・・? 自分で理由も分からないのに?」
 姉崎  :「ええ・・・。」
 レイス :「まったく心当たり無いのか?」
 姉崎  :「・・・・・・はい。」

 N   :姉崎 奈緒は、目線をはずしてしばらく何かを思い出そうと
      していたようだが・・・何も浮かんではこなかったようだ。
      そして、その理由を・・・レイスは知ってた。


 レイスM:「やっぱりだ。彼女は・・・。」

 姉崎  :「私は、母が苦しんでいるのを見るのが辛くて。」
 由佳  :「なるほどね。」

 レイスM「・・・彼女に心当たりが無いのは、きっとオレのせいだろう。
      彼女と会うのは、これが2度目だ。」
 
 N   :レイスは、座りなおして姉崎に対して姿勢を正した。


 レイス :「すまない。君の記憶が抜けているのは、オレのせいなんだ。」
 由佳  :「主様(あるじさま)?!」
 姉崎  :「え?」


 レイス :「君は過去にも、オレのところへ
       母の記憶を消してくれと依頼してきたことがある。」

 姉崎  :「前にも?」
 由佳M :「私は知らない。・・・私と出会う前の話?」

 レイス :「だけど、母親の記憶はそのまま・・・消えたのは、君の記憶だけ。
       言うなれば、君はオレの能力の被害者だ。」

 由佳M :「被害者・・・。でも、依頼人の記憶を消すのは今でもやっている事。」

 レイス :「記憶が消えている今、そんなことを言っても実感は持てないと思う・・・。」
 姉崎  :「・・・私は・・・私は一体、何をしたんですか? 
       なぜ母はあんなになってしまったのです? 
       私をあんな眼で見るようになったんですか?!」

 レイス :「君は、なにも悪くない。」

 姉崎  :「そんな・・・悪くないって言われたって、私には分かりません!」
 由佳  :「主様・・・。」

 レイス :「わかった。だけど、オレの言うことを信じてもらえるか?」
 姉崎  :「・・・。」

 レイス :「君には、聞きたがっている話の記憶がない。
       だから、それが本当かどうか判断できないはずだ。
       君は自分で自分を悪く思っている節がある・・・だから、
       これから話す内容が君にとって納得いかなくても
       それが真実であったと受け止めてもらわなければならない。」

 姉崎  :「教えてください! 知りたいんです!!」
 由佳  :「姉崎さん。落ち着いて。”自分の記憶に無い、自分の話”を
       受け入れるのは、難しいことなの。」

 姉崎  :「・・・。」

 由佳  :「信じてもらえないのであれば、お話は出来ません。
       ただ、混乱を招くだけですから。」

 姉崎  :「・・・わかりました。」

 N   :姉崎は長い沈黙の後、小さく弱々しい声でそう言った。
      それを確認した由佳が、レイスを見つめて静かにうなずく。


 レイス :「くどい様だが、これから話すことは・・・君の記憶だ。いいね?」
 姉崎  :「はい。」

 由佳N :主様は、少し考えをまとめているかのように黙った後、
      彼女の記憶について語り始めた。
。

 レイス :「当時の君は、同じように母親の記憶から自分を消してくれ
       とオレに依頼をしに来た。君は妹がいたことを覚えているか?」

 姉崎  :「え・・・?」

 レイス :「妹が今どこにいるか・・・分かるか?」
 姉崎  :「・・・。」
 由佳M :「・・・もしかして。」

 レイス :「もったいつけた言い方をしたかな・・・そう、君の妹は死んだ。」
 姉崎  :「え!? そ、そんな・・・。」

 N   :姉崎はどこを見るわけでもなく、眼球をキョロキョロとせわしなく
      動かして小さく震え始めた。必死に過去の記憶を探っているという様相だ。


 レイス :「妹の死は事故だった。」
 姉崎  :「事故? 交通事故とか?」

 レイス :「いや、不慮の事故・・・と言ったほうがいいだろう。」
 姉崎  :「不慮の事故? 何が起きたんですか?」
 レイス :「・・・・・・。」

 姉崎  :「教えてください! 何が起きたんですか!?」

 レイス :「包丁が偶然・・・妹の首に刺さったんだ・・・。」
 姉崎  :「包丁・・・?」

 レイス :「そう。ちょうど夕飯を作っている時間だった。
       君と妹はまだ小さい。小学生くらいだろう・・・。
       君は退屈だったのか、隣の部屋から母親を呼んでいる。」

 N   :レイスの視線はテーブルを見つめたままだったが、
      視点の合っていない彼の眼は自分の記憶を見ているかのようだった。


 レイス :「夕飯を作っている途中だった母親は、君が呼んでいるから
       料理の途中で部屋の方へ行った。しかし、大した用事も無かったようで
       すぐに台所へ戻っていった・・・。」

 姉崎  :「・・・。」

 レイス :「君はその後を追い、母親にまとわりつき「邪魔しないで」と
       怒られている・・・。ふと台所を見ると妹が立っている。
       何かしているようだった。母親は、妹の頭を叩いて、また「邪魔しないで」
       と言った。君は目の前にあるテーブルに上った・・・次の瞬間、
       母親の悲鳴が・・・頭の中を突き刺すくらいの悲鳴だ。」

 姉崎  :「え・・・。」

 レイス :「母親の使っていた包丁で何かをしようとしていたのか・・・
       たぶん、料理の真似をしようとして包丁を手に取っていたんだろう。
       後ろから叩かれた拍子に、包丁がノドに刺さったようだ。
       途端に噴出す鮮血が・・・食材に、台所に・・・飛び散った。」

 由佳N :彼女の顔色は、抜け落ちたように青く・・・いいえ、白くなっていました。

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<第6話へつづく>