−声劇用台本− ------------------------------------------------------------------------------- Delete−R(デリーター) 第6話 『受容』 ------------------------------------------------------------------------------- ■登場人物 レイス=正義(まさよし)=ランスフォート゛ 男27才位 触れることで相手の記憶を削除することができる能力を持つ。 ハーフで整った顔立ち。普段は軽いノリ。記憶削除能力の デメリットを抱えながらも、贖罪を繰り返す。 木村 由佳(きむら ゆか) 女25才 元ヒプノセラピスト(催眠療法士)。しかし、レイスと出会い その能力を知ってから、レイスと共に事務所経営を始める。 論理的な思考を基本とする。しかしレイスと行動を共にする ようになってから、少し感情的な部分が増幅した。 姉崎 奈緒(あねさき なお) 女21才 記憶削除の依頼人。 心を患った母と生活しており、過去に妹を亡くしている。 一部記憶の欠落が見られ、それはレイスが関与している。 北路 麻衣(きたじ まい) 女19才 記憶削除の依頼をしてきた若い女性。 姉崎 美緒(あねさき みお) 女 5才位:姉崎 奈緒の妹 姉崎 広美(あねさき ひろみ) 女35才位:姉崎の母親。 ------------------------------------------------------------------------------- ■配役(1:2:1) レイス♂(L27): 由佳 ♀(L20): 姉崎 ♀(L26): N 両(L11): 母親 ♀(L 2):被り推奨 ※省略化 美緒 ♀(L 1):被り推奨 ※省略化 奈緒 ♀(L 1):被り推奨 ※省略化 ※全キャラ性別を原作では設定しますが、劇においてその限りではありません。 ------------------------------------------------------------------------------- N :依頼人の姉崎 奈緒は、母親の記憶から自分を消して 欲しいという依頼を携えてやってきた。 しかし、レイス達と話をしている内に 自分の記憶の一部が既に消えていることを知る。 姉崎 :「それで! 妹はどうなったんですか!?」 由佳 :「落ち着いてください。」 由佳M :「・・・なんて、落ち着けるわけ無いでしょうね・・・。」 レイス :「・・・妹は、パニックになった母親の腕の中で何かを喋っていた・・・。 君は、テーブルの上に立ち尽くしてその光景を見下ろしている。 ・・・かすかに聞き取れるのは・・・『ごめんなさい』。」 姉崎 :「ごめんなさい?」 レイス :「そう・・・弱々しい声で『ごめんなさい』・・・ 『ごめんなさい』と繰り返している。」 由佳 :「・・・。」 姉崎 :「っ・・・。」 N :ハッとして、姉崎は両手で口元を覆い隠した。 そして、目をつぶり必死にその情景を思い出そうとしているようだった。 険しい顔に・・・より険しさを宿し、眉間には深いシワを刻み込む。 レイス :「母親は、何か叫んでいるけど私の・・・いや、君には聞こえていない。 まるで水中にいるような感覚で、全ての音が遠くぼんやりと聞こえる。 妹は君の目を見つめて、口をかすかに動かした。」 N :レイスは目を見開いたまま、記憶を凝視し続けている。 レイス :「『奈緒ちゃん』という妹の声が微かに聞ききとれたと思った途端 周りの音が耳に飛び込んできた・・・。叫び狂っている母親の声だ。」 ------------------------------------------------------------------------------- <回想:姉崎奈緒の幼少時の記憶(台所での事件現場)> ※この部分は、省略可 母親 :「奈緒! 奈緒!! 早くっ! 早く!! 救急車を呼んで! 早く!!!」 美緒 :「ご・・・めん・・・な・・・さい」 母親 :「あんたは何やってんの! まったく!!!」 奈緒 :「・・・美緒・・・ちゃん・・・・・・。」 ------------------------------------------------------------------------------- レイス :「君は、動けなかった・・・。 母親が救急車を呼ぼうと行動に移したのも遅かった・・・。 床には大量に流れた血が・・・溜まっている。」 姉崎 :「そんなっ・・・うそ・・・。」 N :姉崎が今、頭の中で見ているその映像は・・・レイスの言葉で作られた虚像。 その光景が凄まじいものであることに変わりは無いが、 それが自分の記憶なのか・・・そうでないかで、心の震え方は大きく変わる。 レイス :「・・・病院に搬送されたが、どうやら間に合わなかったようだ。 冷たく感じる病院の廊下と号泣する母親の声。父親の声。」 姉崎 :「・・・・・・。」 レイス :「はぁ〜。」 N :レイスは、まるで息を吹き返したように大きく深呼吸した。 そして姉崎の顔を見たが、彼女の目線はテーブルの方へ向いて固まっていた。 レイス :「これが、本来・・・君が持っているはずだった記憶の欠片だ。」 姉崎 :「・・・うそ。」 レイス :「残念だけど嘘じゃない。 実感はもう無いだろうけど、これは君に起こった現実の話だ。」 姉崎 :「・・・・・・。」 レイス :「消えたのは、事件に関連する妹のこと。その日以前の、 妹と一緒に居た時間の記憶は残っているはずだ。」 姉崎 :「そう言われると・・・確かに、小さい頃にいつも一緒にいた女の子が。」 由佳 :「子供の頃の記憶というものは、案外思い出さなくなりますから。 アルバムを見たり、昔話をしている中でふと思い出したりもしますが・・・。」 姉崎 :「・・・父と母は離婚しました。母とは余り口を利かなくなってしまったので 昔のこととか話す機会はありませんでしたし。 でも、本当にそんな事件があったとして・・・ 母が変わってしまったのは、そのせいってことなんでしょうか。」 由佳 :「憶測に過ぎませんが、その可能性は極めて高いかと。」 姉崎 :「・・・私には原因が分からなかったけど。 もし、その事件が本当なら・・・きっと、それが原因だということなんですよね。」 由佳 :「そんなに主様のことが信用なりませんか!?」 レイス :「由佳・・・やめろ。」 由佳 :「っ・・・ですが。」 レイス :「正直、信じられる訳無いだろう? それにさ、そう簡単に受け入れられる様な話じゃないだろう?」 由佳 :「私は、主様が嘘つき呼ばわりされるのは許せません。」 姉崎 :「ごめんなさい。嘘つきと言っているつもりはないんですが・・・。」 由佳 :「貴女は、先程から何度も『事件が本当なら』とおっしゃっています。」 姉崎 :「それは・・・なんていうか。」 レイス :「だからぁ、いじめんなよー由佳ちゃん」 由佳 :「名前で呼ばないで下さい。」 N :レイスは、緊張をほぐす様に少しおどけて見せた。 レイス :「ふむ。さっきは何も言わなかったのになぁ。」 由佳 :「え? ・・・気付かなかっただけです・・・。」 姉崎 :「でも・・・やっぱり、直ぐには信じられないというか。」 レイス :「それでいいと思う。無理することはない。」 姉崎 :「だけど、美緒という名前。妹の名前だったんですね。 ・・・母がたまに口にしていたんですが、私の名前を間違っている とばかり思っていたので、驚きました。本当にあった・・・あ。」 N :姉崎は、慌てて口を押さえながら由佳の顔を見た。 それをほぐす様にしてレイスが口を挟む。 レイス :「それにさ、話の論点はそこじゃなかったはずだし。」 由佳 :「そうでした。貴女が母親に責められる理由があるか否かという話でしたね。 いまの記憶の話を踏まえると、どうやら・・・妹さんの事件の後から、 母親が貴女のことを責めるようになったのではないか。 と考えられますね。」 姉崎 :「・・・私が、救急車を呼ばなかったから?」 レイス :「ん?」 姉崎 :「私が、助けなかったから・・・。」 レイス :「いや、違う。そうじゃない。」 姉崎 :「そうなんだ・・・やっぱり、私が悪かったんだ・・・。 だから、お母さん私のことを。 妹を・・・殺したのは私だったから。だから・・・!」 由佳 :「姉崎さん、私の目を見て。」 N :飛躍し始める姉崎の思考を制するように、由佳は強い口調でそう言った。 由佳の目を見つめた姉崎の目は、怯え、うっすらと涙で濡れていた。 由佳 :「ゆっくり深呼吸して、落ち着いて・・・。大丈夫です。」 姉崎 :「・・・はい・・・。」 N :由佳の言葉で、姉崎は落ち着きを取り戻した。それは由佳の能力だった。 レイス :「君のせいじゃないんだ。君は悪くない。 君はまだ子供だったし、そんな手際よく対応できるわけがないだろう。」 姉崎 :「でも・・・。」 レイス :「君は悪くない。何でも自分のせいにするのは止めた方がいい。」 姉崎 :「・・・・・・。」 レイス :「君の母親の場合は、自分のした事で娘が怪我をし ・・・結果、死なせてしまった。 その事で自分を責め続けたんだろう。」 由佳 :「ですが、自分を責め続けても何も終わりません。 自責の念が膨らみ続けて、やがて心が破裂してしまう。」 レイス :「・・・人は、物事を忘れる理由があるということさ。 体や心が、自分を守るためにね。」 姉崎 :「だけど、妹が死んだことを忘れるなんて! 大切な人の事忘れるのは、ひどいと思います!」 由佳 :「忘れることは酷いことだとよく言われますが・・・。 それが正しいとは思えません。 少なくとも、私は。」 レイス :「だから君の母親はずっと忘れずに、あの事件の日から進めず。 やがて、責めるものも自分だけでは足りなくなり・・・君も加わった。」 由佳 :「苦しんでいる姿を見るのが辛いと言って、私どもに ”記憶を消して欲しい”と依頼をしてきたのは貴女です。 それは、今貴女が言ったこととは矛盾していると思いますが・・・。」 レイス :「まったくぅ・・意地悪いんだから・・・由佳ち・・・」 由佳 :「んんっ!」 N :由佳の咳払いで言葉を奪われたレイスは、肩をすくませてみせた。 そのまましばらく沈黙が続いた・・・。 姉崎 :「・・・そうですね。母の記憶を消すということは、そういう事ですよね・・・。」 レイス :「・・・・・。」 姉崎 :「ごめんなさい・・・やっぱり、依頼は無かったことにしてください。 分からなくなってきちゃいました・・・考え直してみます。」 由佳 :「わかりました。」 姉崎 :「本当にごめんなさい。勝手なことばかり言って。」 由佳 :「いいえ、私どもは構いませんよ。」 姉崎 :「私、妹のことを忘れていたなんて・・・最低です・・・。」 レイス :「それについては、全てオレが悪いんだ。君が気に病むことはない。」 姉崎 :「そういえば、さっきから自分が悪いと言ってますけど・・・何故ですか? 昔の私が記憶を消して欲しいと頼んだわけじゃないんですか?」 N :姉崎の記憶が消えたのはレイスの能力によるものだった。それはレイスも認めている。 しかし、どうしてレイスは彼女の記憶を消したのだろうか? レイスの『消した』という、『消えない』罪がその口から語られる。 レイス :「オレは・・・・・・」 -------------------------------------------------------------------------------