声劇用台本
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■タイトル

  停電の夜に

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■ジャンル

  ラブ

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■登場人物
 
  高田 一祈[たかだ かずき](♂):26歳。サラリーマン。
  坂井 希 [さかい のぞみ](♀):24歳。OL。
  
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■設定

 停電した夜の恋人たち。
 忙しそうにし、最近彼氏が冷たいと彼女は不安になっていた。

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■配役(1:1:0)

  一祈(♂)(L59):
  希 (♀)(L60):

  ※L**:セリフ数
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■台本

  (SE:鍵を開ける音)
  (SE:扉の開く音)

 一祈:「ただいまぁ。」

  (鍵を開ける音を聞きつけて、奥から希が出てくる。)

 希 :「おかえりぃ。」

  (靴を脱ぎながら、一祈)

 一祈:「今日、停電あるって?」

 希 :「うん。さっき市役所の車が回ってたよ。」

 一祈:「そっかぁ〜・・・、何時からって?」

 希 :「予定だと、もう時間過ぎてるんだけど・・・そろそろ」

  (SE:ブン)
  (部屋に入ると同時に、部屋の明かりが消えた)

 希 :「キャッ!」

 一祈:「・・・ふう、なっちゃったな。」

  (SE:壁スイッチの音)

 希 :「? 何してるの? スイッチ押しても付かないでしょ?」

 一祈:「あ。停電だったっけ・・・ついつい。・・・ロウソクは?」

 希 :「ロウソクはダメだよ。火事になったらどうするの?」

  (スーツの上着を脱ぎながら一祈)

 一祈:「気をつければ大丈夫だろ?」

 希 :「でも、何があるか分からないでしょ? 危ないって。」

 一祈:「じゃあ、どうすんだよ?」

 希 :「懐中電灯買っておいたよ。一祈、なんにも準備してないんだから・・・。」

  (暗闇の中で、希が棚の方へ歩み出す)
  (そして、よろける)

 希 :「あっ!?」

  (突然、一祈にもたれ掛かる)

 一祈:「おお!? おいおい。あぶねーなぁ?」

 希 :「ごめん! なんか踏んじゃって・・・!」

  (一祈は、希の肩を抱きながら)

 一祈:「気をつけろよなぁ。」

 希 :「ごめん・・・。」

 一祈:「で、どこに置いたんだよ?」

 希 :「棚の引き出しに。」

 一祈:「棚?」

 希 :「ほら、写真の飾ってる棚の・・・上から二番目の引き出し。」

 一祈:「もう・・・停電になるの分かってんなら、外に出しとけよ。」

 希 :「えぇ〜・・・。」

 一祈:「ん〜・・・? あれ、どこだ?」

 希 :「ねぇ、一祈。」

  (懐中電灯探しながら)

 一祈:「なに?」

 希 :「なんかさ・・最近冷たいよね。」

 一祈:「は? 別にいつもと同じじゃん?」

 希 :「・・・そうかな。なんか・・・、他に誰か・・・」

 一祈:「手探りじゃ全然わかんねーな。・・・あ、携帯使えばいいのか。」

  (ズボンの右ポケットから携帯を取り出して開く)
  (明かりが付き、ほんのり周りが見える)

 希 :「無い?」

 一祈:「今、探してるっての。」

  (希が携帯の明かりを頼りに、一祈に近づく)

 一祈:「で? なんだっけ、さっきの話?」

 希 :「え、あ。・・・なんかさ。分かんないけど・・・もしかして他に」

  (そこまで話した時、一祈が懐中電灯を見つける)
  (携帯の待ち受け画面が希の目に映る)
  (待ち受け画面:希の笑った写真)

 一祈:「あ、これか! てか、小せーな。この懐中電灯。」

 希 :「・・・もうそれくらいしか売ってなかったんだもん。無いより良いでしょ?」

 一祈:「まぁ、な。停電とは言っても、こんなに暗くなるとは思ってなかったからなぁ。」

 希 :「信号も消えてるんでしょ?」

 一祈:「街頭も消えるってよ。危ねーよなぁ・・・気をつけろよ?」

 希 :「うん。わかった。」

 一祈:「んで、なんだっけ。”もしかして他に”って、何?」

 希 :「あ、ううん。何でもない。」

 一祈:「何でも無いってなんだよ?」

  (懐中電灯で希を照らす)

 希 :「んっ、まぶしぃい! 
     何でも無いったら、何でも無いの。貸して。」

  (懐中電灯を希に手渡す)

 一祈:「なんだよそれ・・・。訳わかんねーの。」

 希 :「いいの! ・・・ってゆーか、なんで私の写真なんか待ち受けにしてるのよ?!」
     
 一祈:「あ、バレた?」

 希 :「ま、いいけどさ・・・!
     ほら、こうやってビニールに懐中電灯を入れると光が拡散するんだって。」

  (ほんのりと、ビニール越しに部屋の中が照らされる)

 一祈:「へぇ。」

 希 :「外、どうなってるのかな?」

 一祈:「どうだろうな?」

  (二人はベランダへ歩み寄る)
  (SE:カーテンを開く音)

 希 :「わあ。ホントに真っ暗ぁ。」

 一祈:「うはっ、すげーな。滅多に見れるもんじゃねーからな。」

 希 :「何か、不思議な感じ。」

 一祈:「お、星が良く見える!」

 希 :「え?」

 一祈:「ほら、オリオン座。あのベテルギウスとシリウスとプロキオンで冬の大三角形だ。」

 希 :「オリオン座は知ってる。」

 一祈:「”オリオン座”の左上にある星と、左にあるのが”こいぬ座”のプロキオンで
     下にある”おおいぬ座”のシリウスを結ぶと、でかい三角形になるだろ?」

 希 :「あの明るい星?」

  (星を指差す希の頬に顔を寄せて、指の先にある星を辿る)

 一祈:「違う違う、こっち。」

  (希の手を取って星を指し示す)

 希 :「ああ、分かった。アレか!」

 一祈:「オリオン座の左上には、ふたご座が見えるだろ。って、分からないか。」

 希 :「ええー? どれー?」

 一祈:「ちょっと分かりづらいかもなぁ。」

 希 :「ふーん。星、好きなの?」

 一祈:「うん。昔、田舎に居る時よく見てたんだよなー。
     辺りは暗かったし、都会みたいに光が多くないから良く見えたんだよ。」

 希 :「へぇ。」


 一祈:「神話とかも面白いんだぜ。例えば、オリオン座だと・・・
     ある話では、慢心したオリオンを懲らしめるために女神が放った大さそりの毒で
     死んじゃうんだ。星になったオリオンは、さそりが東の空に上り始めると
     逃げるように西の空へ沈んでいくとかね。」

 希 :「さそりって、さそり座?

 一祈:「そうそう。夏になると見えるだろ?」

 希 :「わかんない。見たこと無いかも。」

 一祈:「まぁ、話もいろいろあってさ。何が正しいとかは分からないけど、面白いと思わない?」

 希 :「そうだね。分かるようになったら楽しいかも。」

 一祈:「だろ〜? 昔は、そうやってずっと上見てたから首が痛くなっちゃってな。
     でも、なんか星見てるのが好きだったんだよなぁ。」
 
 希 :「ふ〜ん。初めて聞いた。」

 一祈:「そうだっけ?」

 希 :「うん。」

 一祈:「そっか・・・。」

 希 :「なんか子供みたいでカワイイ。」

 一祈:「見てたのは子供の頃だもんよ。」

 希 :「そうじゃなくて、今の一祈。子供みたいだったから。」

 一祈:「え? ・・・いいじゃん。」

 希 :「いいけど。ふふ。」

  (しばしの沈黙)

 一祈:「今度、俺の田舎に星・・・見に行くか?」

 希 :「・・・え?」

 一祈:「ちょっと遠いけど、見たくない? 景色?
     ・・・なんとなく、ノゾミには見てほしいって思ってさ。」

 希 :「なんで?」

 一祈:「なんでだろうな・・・?
     ・・・なんか、俺が過ごしたノゾミが居なかった時間をノゾミと過ごしたい・・・。
     って言っても分かんないかな? ん〜、なんて言えばいいんだろう・・・。」

 希 :「・・・・・・。」

 一祈:「もっと昔から一緒に居たかったっていうか。それを今から取り戻すっていうか・・・。」

 希 :「・・・ふふ。」

 一祈:「あれ、なんか変だったか?」

 希 :「ううん。なんとなく、分かった・・・気がするかも。」

 一祈:「落ち着いたら、行くか?」

 希 :「うん。」

 一祈:「両親にも紹介したいしさ。」

 希 :「え・・・。」

 一祈:「これからも、ずっと大切にしたい人だってね。」

 希 :「・・・。」

 一祈:「なんか、想像するとコッ恥ずかしいけどな! はははっ。」

 希 :「ふふ。」

  (希は、そっと一祈に寄り添って彼の肩に頭を預ける)
  (しばらく星の話をし続け、時に黙る)

 一祈:「あ。」

 希 :「明るくなった。」

 一祈:「停電終わりか〜。」

 希 :「そうみたいだね。」

 一祈:「また停電があったら、そん時はノゾミの話を聞かせてもらおうかな?」

 希 :「わかった。」

 一祈:「さて、電気も戻ったしネット、ネット・・・と。」

 希 :「もう! 節電は続いてるんだからね!」

  (希は、一祈を見つめながら小さく溜息を付いた)
  (カーテンを閉めながら、星を一瞬見つめる。)
  (カーテンの隙間が小さくなり、そして閉じられる。)
 
 希 :「あー! もう! こんなとこに脱ぎ捨てて・・・!」

  (生返事の一祈)

 一祈:「ん?」

 希 :「ん、じゃないでしょ? さっき、これのせいで転んだんだからね!」

 一祈:「んん? んー。」

 希 :「ちょっと、聞いてんの!?」

 一祈:「ん。」

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<おしまい>
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(2011-03-20 up)