声劇用台本
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■タイトル

  恋愛実況中継

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■ジャンル

  コミカル

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■登場人物
 
  実況(♂):漕代 実 [こいしろ みのる]実況アナ。独身。メイン。
  解説(♂):海瀬 強 [うみせ つよし]落ち着いた解説者。妻あり。
  男 (♂):瀬崎 優 [せざき すぐる]。普通の男子。
  女 (♀):奥村 香代[おくむら かよ]。普通の女子。
  
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■設定

 街角で見かける男女の恋愛を実況と解説でお送りする。

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■配役(3:1:0) 所要時間:15〜20分

  実況(♂)(L46):
  解説(♂)(L36):
  男 (♂)(L32):
  女 (♀)(L33):

  ※L**:セリフ数
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■台本

 女 :「ごめんね。遅れちゃって。」

 男 :「あ、いやいや。大丈夫だよ。」
 
 実況:「さぁ、始まりました。本日のメインイベント。
     今日でデート2回目という男女の試合が始まりました。
     実況は私、漕代。解説は、海瀬さんでお送りいたします。
     海瀬さん、よろしくお願いします。」

 解説:「よろしくお願いします。」

 実況:「早速ですが、この一戦どう見ますか?」

 解説:「そうですねー。デートは2回目ということですが、
     まだ、まだ。打ち解けてない感じをかもし出してますね。
     この一戦は、なにか期待できそうな予感がします。」

 女 :「待ったでしょ?」

 男 :「全然待ってないよ。気にしなくて大丈夫だって。」

 女 :「うそー。だって30分も遅れちゃったし・・・。」

 男 :「そうだっけ? そんな感じしなかったけど。
     もしかしたら、緊張してるからかも? 
     なんか、こうやって会うの久々だろ?」

 女 :「うん。そうだね。最近部活忙しかったから。」

 男 :「部活の方は、調子どう?」

 女 :「うん。まぁまぁかな。今度、練習試合あるんだ。」

 男 :「お、そうなんだ? がんばって!」

 女 :「ありがとう。試合に出れるか分からないんだけどね・・・。」


 実況:「早速ですが・・・。試合開始直後から、挑戦者のペースに持ち込めた感じでしょうか?」

 解説:「一見、彼女が遅れてきたことで挑戦者である彼の方が
     優位に立ったように見えますが。まったく関係ありません。」

 実況:「関係ない?」

 解説:「試合は、待ち合わせの約束をした時から始まっているということです。」

 実況:「つまり・・・?」

 解説:「とにかく、来てくれたことに感謝しましょう。
     試合に相手が来ない場合、それは挑戦者である彼の敗北を意味します。」
 
 実況:「さぁ、試合開始から、既に5分が経とうとしておりますが、
     両者共に距離を保ったまま、動きません。
     互いに相手の出方をうかがっているのでしょうか?」

 解説:「そうですね。しかし、どちらが先に動くかで流れが変わってきますよ。
     挑戦者の彼としては、ここでイニシアチブを取っておきたいところですね。」

 男 :「・・・じゃあ、そろそろ行こうか?」

 女 :「あ、うん。」

 実況:「おっと、先に動いたのは挑戦者の方だ。」

 解説:「いいですよ。」

 実況:「手元の資料によりますと、挑戦者は、現役高校生の瀬崎 優。
     全てにおいて平均的なファイターのようです。
     一方、受けて立つのは同じく現役女子高校生の奥村 香代。
     諸事情により、これ以上の個人プロフィールは公開できません。ご了承下さい。」

 解説:「私の情報によれば、二人は別々の学校に通っているようで、
     普段は互いの部活動があるために、もっぱら交流は
     携帯電話によるものなんだそうです。」

 実況:「なるほど。この初々しさは、そういう理由によるものなんですね。」

 解説:「私の学生時代にも携帯電話があれば・・・」

 実況:「さあ、そんなことを言っている間にも、二人の会話は進んでいるようです。」
 
 男 :「でもさ、観にいく映画・・・アレで良かったの?」

 女 :「うん。面白そうだって思ってたし。」

 男 :「そう? 結構恐いらしいよ?」

 女 :「ね。CMとか凄く恐そうだったね。」

 男 :「恐いの平気なんだ? 好きなの?」

 女 :「うん。私、結構恐いの好きなんだ。」

 男 :「へー。以外。」

 女 :「以外?」

 男 :「んー。恋愛映画とか好きそうな感じがしてたから。」

 女 :「もちろん恋愛映画も好きだけどね。」

 男 :「へー、そーなんだ。」


 実況:「軽快に続いていた掛け合いでしたが・・・?
     ここで一拍、二拍、三拍と。
     間を取るにしては、長い沈黙のように感じますが・・・?」

 解説:「これはいけませんね。TAP状態に陥ってしまったようですね。」

 実況:「なんと、早くもTAP状態に?」

 解説:「御存知ない方もいるかもしれませんので少し説明しますと、
     Talk Air Pocketのことで、頭文字を取り、
     ティー・エー・ピーと言うんですが。
     これは、見えない”下降気流”によって、会話の推進力が失われた状態のことなんです。」

 実況:「解説の間も、沈黙は続いている訳ですが・・・
     では、そのTAP状態に陥った原因は何だと考えられますか?」

 解説:「出会いの初期、デート中の不測の事態発生。
     長年連れ添った熟年期など、状況によって原因は様々ですが。
     今回の場合は、ODT(オーディーティー)でしょうか。」

 実況:「ODT?」

 解説:「そうです。彼は、相手の答えに対して”相槌止め”をしてしまったのが失敗ですね。」

 実況:「”相槌止め”ですか?」

 解説:「話題が用意されていない場合は、現在進行の話題から何かを生み出すのが理想なんですが、
     ここで、相手の発言に納得し、そのまま自分の中へ受入れて終わらせてしまった。
     出来れば、”そうなんだ。”の後に、”いままでどんな映画を見たの?”
     くらいの言葉を付け足しておけば、この事態は避けられたと思います。」
 
 実況:「なるほど。それで、ODTというのは?」

 解説:「ODTというのは、”Otoko ha Damatte Thinking"(男は黙ってシンキング)
     つまり、男は黙って考えるということです。」

 実況:「ほう、そこはツッコむのは止めておきましょう。
     で、それがどういった関連性を持っているのでしょうか?」

 解説:「男は物事を考える時、黙ってしまう習性があります。
     逆に、女は喋りながら考える傾向があるのです。
     つまり、彼は会話をしながら考え事を始めてしまったため、
     意識がそちらの方へ飛んでしまったのでしょう。」

 実況:「たしかに。挑戦者・・・焦点が合っていないようだ。
     セコンドが居れば声を掛けて、意識を呼び戻す事もできるのでしょうが・・・。
     この公式戦ルールでは、セコンドは認められておりません。
     早くファイティングポーズを取らないと、最悪の場合・・・試合終了の可能性もあります。」

 解説:「女性にしてみれば、この沈黙が
     ”黙っちゃったわ、私の話聞いてるのかしら?”
     ”何か変なこと言ったかしら?”という誤解を招く種となり得るので、
     一刻も早く元気な声を聴かせて欲しいものです。」

 実況:「故郷からの便りを思わせる、そんな海瀬さんの解説でしたが。
     そうは言っても、これは二人の問題だ。
     彼の沈黙に彼女も合わせて沈黙している必要は無い。
     デートの良し悪しを全て男の双肩に重責として乗せてしまう世の中に。
     私は独り、世界に対して異を唱えたい。
     もちろん盛り上げたい、楽しいデートを過ごしたいし、過ごしてもらいたい!
     だが、そこまでのエンターテイメント性を私は持っていない!
     そんな私でも良いと言う方を大募集中です!」
 
 解説:「・・・? なんの話」

   (食い気味で実況)

 実況:「少し熱が入りすぎたようだ、今のは忘れていただきたい!
     そんなこんなの間にも、沈黙は深みを増しているようだ。
     この沈黙が、じわじわと心を締め付けている!
     今にも、心のきしむ音が聞こえてきそうです。」

 解説:「挑戦者もこの状態に気付いたようですが、既にがっちり極まってますからね。
     早く抜け出さないと心も会話も折れてしまいますよ。」

 実況:「沈黙のサブミッションで軋む心を押さえながら、
     黙々と歩く二人の前に、ティッシュ配りのおにーさんが現れたぁ。
     なにやら・・・彼の方にティッシュを差し出したぞ!
     さー、彼はどういう行動に出るのか?」

 解説:「・・・取りましたね。」

 実況:「おーっと、彼は差し出されたポケットティッシュを受け取ったぁ。」

 男 :「なんで、オレにだけ渡すんだろうね?
     そんなにティッシュ欲しそうな顔してたのかな? ははっ。」

 女 :「ふふ、どんな顔してたのぉ?」 
 
 実況:「ここで水を得た魚の如く、ティッシュを得た男子が息を吹き返した!」

 解説:「ちょっと例えがおかしい気もしますが。
     おにーさんの登場が挑戦者を救いましたね。」

 実況:「おにーさん、グッジョブ!」
 
 男 :「普通の顔してたんだけど・・・。ティッシュ欲しそうに見えたのかな?
     ・・・ん? ”出会いを求めているアナタに”・・・?」

 女 :「”出会い系”・・・。」

 実況:「おっと、喜びもつかの間。
     手に取ったティッシュを見つめる二人の雰囲気がぁ
     手に取るようにおかしくなってきたようだが?」

 解説:「ティッシュの袋の裏に、出会い系の広告が入っていたようですね。」
 
 実況:「これはなんという不運だぁー!
     出会って間もない二人の関係を変な感じで浮き彫りにしたような。
     しかし、あまり意識しなければ、なんてことはないただの広告に
     書きこまれている4つの文字。”出会い系”!
     読み上げたら、5文字じゃないかとツッコミを入れられてしまうであろうが、
     そのようなことは華麗にスルーさせてもらいたい。
     そして、肝心の二人は、この”出会い系”をスルーすることが出来るのか?」

 男 :「・・・出会い系だって。」

 女 :「・・・ね。」

 男 :「やったことある?」

 女 :「・・・何を?」

 男 :「出会い系。」

 女 :「えー?! ないよ!!」

 実況:「おーっと。挑戦者、とんでもないパンチを繰り出してきたぁ〜!?
     先ほどのティッシュ攻撃の打ち所が悪かったんでしょうか?」

 解説:「予想していない角度から入って来ましたからね。
     少し、混乱しているのではないでしょうか?」

 男 :「あ、だよね。何言ってんだろ、オレ・・・。」

 女 :「え、いや。ううん。
     瀬崎君は・・・そういうの、したことあるの?」

 男 :「オレ? ないよ!」

 女 :「そっか・・・だよね! 私もなんか、変なこと聞いちゃったな。」


 実況:「再び会話が動き出しましたが・・・なんとも危うい!
     まるで渓谷に架けられたロープの上で綱渡りをしているかのようだ。
     踏み外せば、奈落の底へ転落してしまうぞ!」

 解説:「リスクを恐れては相手の懐には踏み込めない。ということですね。」

 実況:「それはそうかもしれないが、突然のインファイト!
     両者拳を交えましたが、再び距離を取ります。」

 解説:「肌がピリピリするような緊張感ですね。
     この変則的な攻撃から次へどう繋げるのか気になるところですね。」


 男 :「・・・てゆーか、オレには関係ないし。もう出会ったから。」

 女 :「? 出会った・・・って?」

 男 :「別に、もう誰かと出会わなくてもいいかなって。」


 実況:「おーっと、これはどーしたことだぁ?
     照れくさそうに頭を掻きながら、彼女の顔を見つめる挑戦者〜!」


 女 :「・・・あ、そう・・・なんだ。」


 実況:「再び会話は止まりましたが、先程とは全く意味の違う沈黙だぁ!」

 解説:「いいですね。私にも同じような思い出が」 

 実況:「その話は長そうなので、今は勘弁願いたい!
     そして、時間はあっという間に映画終了の時刻です!
     たっぷり126分の恐怖映画を堪能したわけですが?」
     
 解説:「いやー、いい映画でしたね。感動しました。」

 実況:「恐怖映画の何に感動したのか気になるところではありますが、
     それよりも気になる試合の方は、場所を変え最寄駅で未だ続いております!」


 男 :「来週は・・・部活?」

 女 :「え?」

 男 :「あ、いや。もし、暇だったら来週もどうかなって思って。」

 女 :「暇・・・? あ・・・うん・・・どうかな。」

 男 :「あ、そうじゃなくて。」

 女 :「ん?」

 男 :「ごめん、”暇”とかじゃなくて。
     ・・・また、”会いたい”と思って。」 

 実況:「おーっと、気持ちを投げましたが、少々弱いか〜?」

 女 :「・・・・・・。」

 男 :「来週、また会いたいんだ! 会える?」

 実況:「今度は、力強く投げたぁ!」

 解説:「いいですね、思い切って想いを投げかけましたね。」

 実況:「さぁ、その言葉が心のロープにゆっくりとのしかかり・・・」

 女 :「・・・うん。」

 実況:「まっすぐ戻ってきたー!」

 解説:「これは、綺麗に返ってきましたね。」

 実況:「さぁ、チャンスだぁ!
     挑戦者の顔には、もはや勝利を確信したかのような笑みが浮かびあがる!」

 女 :「でも、会えないかも。」

 男 :「え!? なんで!?」

 実況:「うおーっと!? なんだ、なにが起きたんだー?」

 解説:「一瞬できた心のスキに、カウンター気味に入りましたよ! これは痛い!」

 実況:「心の防御を一瞬、ほんの一瞬おろしてしまった。
     その隙間に、綺麗ぇーに入った! これは効いたぁ!」

 解説:「挑戦者、今にもヒザが折れそうですよ。」


 女 :「来週、部活あるかもしれないんだ。」

 男 :「あ・・・部活か、そっか。は、はは。」

 女 :「でも、来週の水曜日なら大丈夫だよ。瀬崎君は?」

 男 :「オレは大丈夫! 絶対大丈夫。何があっても空けるから!」

 女 :「ふふふ。でも、用事があるときはちゃんと言ってね。」


 実況:「一瞬、ヒヤっとさせられましたが。」

 解説:「KOされてもおかしくない場面でしたね。」


 男 :「突然かもしれないけど。
     次は友達としてじゃなくて、彼女として会ってくれないかな?」

 女 :「え? それって・・・。」

 男 :「香代ちゃんのことが、好きなんだ。オレと付き合ってほしい。」

 女 :「・・・。」

  (沈黙の間) 

 解説:「長い沈黙が(続いてますね)」

   (食い気味に、実況者)

 実況:「しぃ〜〜〜〜〜!」


 女 :「はい。よろしくお願いします。」(照れながら笑み)

 男 :「! こちらこそ・・・よろしく!」(照れくさそうに)

  (そっと手を差し出す彼、手を繋ぐ彼女)

 実況:「繋いだ手から感じる互いの想いが
     二人のハートを振るわせる!
     高鳴る鼓動ぉーがゴングとなって鳴り響くぅ!
     ここで試合終了ー!!」

 解説:「これは見事に落ちましたね。」

 実況:「まさかまさかの展開でしたが、最後はまるで
     これがお手本と言わんばかりのフォール!
     Fallin Love!」

 解説:「素晴らしいですね。純粋で綺麗な形を見せてもらいました。」

 実況:「これは語り継がれる一戦となったことでしょう。
     では、解説の海瀬さん。試合をご覧になった感想を一言お願いします。」

 解説:「今日はね、私も妻に花を買って帰りたいと思います。」

 実況:「はい。ありがとうございました。
     それでは、又、お愛しましょう。さようなら。」
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<おしまい>
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(2010-03-13 up)