'08 年センター試験(化学)
08年1月20日開催のセンター試験本試、受験なさった方々の手応えは如何だったでしょうか?
今年も、センター試験(本試験)・化学の問題の概評を行いたいと思います。
[第1問]理論(原子・分子・イオン)、生活と化学
問1c の純物質でないもの、問2のヘリウム原子の大きさは、面食らった人が居るかも知れません。それでもナフサの何たるかを知っていて、原子の大きさがオングストローム(10-10 m)の単位で表せることを知っていれば何とかなったかと。問3、質量数の概念を知っていれば易しい。問4、a, b, c に関する連立方程式を立てれば解けます。問5、基礎的な知識を総動員する問ですが、標準的と言えます。
全体として基礎的な内容ですが、やはり穴はナフサとヘリウムですかねぇ?
[第2問]理論(熱化学、中和反応、酸化還元反応)
少ないスペースで色々問おうとすると、どうしても分野の軽重の差は出てきます。今年は熱化学の扱いが軽めでしたが、問1のモル計算と巧く結びつけまた出題でした。そんな問1、二酸化炭素と水のモル数が計算できれば、モル計算の出来る人には容易かと。
問2、化学平衡(電離平衡)を扱っていますが、本来は化学 II の範囲の題材です(詳しくは、例えばこちらを参照)。とはいえ、国公立大学の入試を念頭に置いていた人には、定型的で易しい問です。文系の受験生の皆さんにはきつかったか。それでも、a の中和滴定は電離平衡とは関係ないので(→、この事が意外と盲点か?)、こちらだけでも正解しておきたいところ。
問3の酸化数決定、問4の電気化学と、酸化還元反応に関連する題材が目立ちます。問4 b は、電子を含む反応式を正しく書けないと、計算の立式が出来ません。また、a で正解していることも必要になるので、第2問全体の中では難しめの問です。とはいえ、難易度としては標準的と言えます。
去年同様、今年も計算の多いここが最大の難関でしょう。第1問の問4と併せて、全体として酸化還元反応の比重が高かったですね。
[第3問]無機化学
今年の無機の出題は、内容的にも題材的にも、幅広くバランスが取れていたと思います。
問1、周期表の概要を理解していれば解ける問題。問2、ハロゲンの知識に関する総合的な問題。この2つはさっとクリアしたいところですが、割と細かいところを問うているので、試験場で「アレ?」とか思っちゃった方々は復習を。問3、ここにも酸化還元反応。単体が関与していれば必ず酸化還元反応。また、酸素との化合があればほぼ酸化還元反応なので、これは易しいはず。
問4、気体の捕集問題に計算とグラフの描図を絡めた良問。センター試験ゆえ選択式の問でしたが、国公立大学の2次試験や私立大学の本試験などでは、類似の題材で結論と理由を述べさせる出題が考えられます(勿論、大学によりけりですが)。加えた塩化アンモニウムの量に対して、発生した気体の量を考えさせると云うのが面白い問ですね。用意した水酸化カルシウムを丁度消費しきるのに必要な塩化アンモニウムのモル数を先に出しておくとラクでしょうか。
問5は、a が金属イオンの沈殿生成や錯イオン形成の問題で、正しい組合せを答えます。b が気体の発生の問題。反応式が正しく書けることが、解決の前提になります。
[第4問]有機化学
問1、センター試験では滅多に出ない高分子。各々の単量体の化学的な性質を理解していれば何とかなるはず。問2、脂肪酸の界面活性剤としての働きを問う問題。ミセルの形成に関しての知識が要りますが、親水性と疎水性の概念を知っていれば何とかなるはず。
問3、芳香族の付加反応、該当するものを見抜けたでしょうか。問4の構造決定、ややひねりがありますが、化合物Bのヨードホルム反応と、化合物Cの幾何異性体をヒントに解ききりたいところ。問5のサリチル酸メチルの合成実験は、高校の授業で実験を経験しなかった受験生の皆さん(→、最近は結構多いらしいですね...)にとっては b が難関だったか。
最後の計算問題・問6、フェノールの臭素化という芳香族置換反応が扱われています。しかし、水酸基(ヒドロキシル基)の配向性に関する知識が無くても、実は以下のようにすれば解決します。水素から臭素に置換された箇所が x ヶ所あるとすると、分子量は 89 + 79(x - 1) となります(→、理由を考えてみましょう)。x が1以上5以下であることを利用して、これに該当するものを選べばよいわけです。
<総評>
昨年よりも、出題内容はバラエティに富んでいます。しかし、著しく難しい問題は見当たりません。強いて云えば、一部の問いで要求されている知識が細かいことと、第2問の問2で若干の勇み足があったことくらいでしょうか。
概ね標準的な内容で、このまま高校卒業程度の学力判定に使える出題のセットだと言えます。計算問題も、去年が軽めだったので、標準的な水準に戻ったと言えます。難易度としては、昨年並みでしょう。
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